膀胱機能障害とは?仕事をするうえでの注意点や働くうえでのポイントを解説

膀胱機能障害とは蓄尿・排尿にかかわる脳神経系から膀胱・尿道にいたるまでの障害です。その度合いによっては、日常生活に限らず、仕事においても障害が理由で困難が生じる場合があります。

そこで、今回は膀胱機能障害の方にオススメの職種・働き方など仕事選びのポイントや、実際に就職・転職活動を進める方法について解説します。

障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別のご病気を発症してしまったりする例も少なくありません。

そうならない様、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。

膀胱機能障害とは

膀胱機能障害とは

膀胱機能障害とは、蓄尿や排尿機能に障害がみられる疾患のことです。内部障害の一つに分類され、膀胱直腸機能障害と呼ばれることもあります。

原因としては、膀胱や尿道にかかわる神経異常が挙げられ、脳の指令がうまく伝達されないことで蓄尿障害や排出障害が起きると言われています。

 
キャリアアドバイザー
内部障害とは、身体障害者福祉法などで定められた7つの障害のことです。身体障害者手帳の交付を受けることで、さまざまな福祉サービスを利用可能です。さらに、障害者手帳を取得していれば、障害者雇用枠で配慮を受けながら働くことができます。

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膀胱障害機能を含む“内部障害”は7種類

膀胱障害機能を含む内部障害は以下7つの種類に分けられています。

  • 心臓機能障害
  • 呼吸器機能障害
  • 腎臓機能障害
  • 膀胱直腸機能障害
  • 小腸機能障害
  • 肝臓機能障害
  • ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害(HIV)

どの障害も体の内側の障害であることから、「一見すると障害があるように見えない」といった共通点があります。それぞれの障害について見ていきましょう。

心臓機能障害

心臓機能障害とは、心臓から全身に血液を送り出す機能が低下する障害のことです。不整脈・狭心症・心筋梗塞などが主な症状に挙げられ、大動脈や冠動脈の手術を経たり心臓にペースメーカーを埋め込んだりすると、心臓機能障害に認定されます。

先天性の疾患以外にも、生活習慣によって心臓に負担がかかり、発症・手術する場合もあります。心臓機能障害については下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

心臓機能障害の方は必見!身体障害者手帳を使って配慮ある仕事に就くには

呼吸器機能障害

呼吸器機能障害とは、肺や呼吸器が不全・機能低下し、日常生活に困難をきたす障害のことです。肺活量が著しく少なくなるほか、日常生活の動作でも息苦しさを感じるなどの症状が見られます。

原因は先天性の疾患以外に、生活習慣や環境によって生じることも少なくありません。本人の煙草や受動喫煙でも発症することがあります。呼吸器機能障害については下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

呼吸器機能障害とは?身体障害者手帳の活用法から日常生活・仕事での工夫まで解説

腎臓機能障害

腎臓機能障害とは、腎臓機能が低下・不全し、日常生活に制限が伴う障害のことです。主な原因は先天性のほか、病気や事故、生活習慣などが挙げられます。

腎臓機能障害は進行するまで症状が見られず、気が付くと思った以上に重篤になっていたといったケースが少なくありません。

一度進行すると元に戻らない疾患のため、早期の発見・治療が求められる内部障害です。腎臓機能障害については下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

腎臓機能障害をお持ちの方が仕事・転職を成功させるための5つのポイント

膀胱直腸機能障害

膀胱直腸機能障害とは、尿の出にくさや残尿感、頻尿、便が出にくい、肛門に力が入らないなど、膀胱や直腸に機能障害が生じることです。膀胱機能の障害には尿失禁や残尿感、頻尿などが挙げられ、直腸障害には便失禁や便秘、頻便などがあります。

なお、直腸機能障害については下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

直腸機能障害とは?DIエージェントが教える転職のコツ

小腸機能障害

小腸機能障害とは、小腸がさまざまな原因によって切除され、吸収面積が減少して消化吸収が妨げられた状態や、クローン病・アミロイドーシスなどの疾患によって吸収面積が減り、消化吸収が難しい状態のことです。

小腸は十二指腸や空腸、回腸までを指していて、広範囲を切除する疾患には絞扼性イレウス、腸間膜動脈血栓症、腸間膜静脈血栓症などが挙げられます。

また近年では、若年層に多いクローン病によって小腸に障害をきたすケースも多く、働く世代にとっては注意すべき疾患と考えられています。小腸機能障害については下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

小腸機能障害とは?仕事の悩みや働くうえでのポイントを徹底解説

肝機能障害

肝機能障害とは、何らかの原因によって肝臓が障害を受け、炎症を起こした状態のことです。肝炎と呼ばれることも多く、放置すると肝硬変や肝臓がんなどに進行する場合もあります。

「沈黙の臓器」と呼ばれるように、症状が極度に進行しなければ自覚症状が出ず、肝臓機能障害を指摘される多くの方も、健康診断による血液検査で発覚することがほとんどと言われています。肝機能障害については下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

肝機能障害とは?原因や治療法、仕事との両立についても解説

ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害(HIV)

ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害(HIV)とは、さまざまな細菌やカビ、ウイルスなどの病原体から守るために必要な免疫細胞に感染したウイルスによる障害のことで、1型と2型に分類されます。

免疫力の低下によってさまざまな病気を発症する状態のことを「エイズ」と呼び、決められた23種の疾患を発症した時点で診断されます。感染経路は性交渉・血液を介す行為・母子感染が最も多いとされています。HIVについては下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

働く人のための「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)・エイズ」解説|感染経路や検査・治療・予防方法も

概要・病因

膀胱機能障害は、肛門とつながる直腸の障害とあわせて発症しやすいことから、膀胱直腸機能障害と呼ばれることがあります。障害の主な病因には、脳の指令が膀胱にうまく伝達されない(神経異常)ことによる、蓄尿障害や排出障害です。

神経異常に陥る要因は、老化や生活習慣病をはじめ、脳梗塞・脳出血・脊髄や背骨の疾病・糖尿病などさまざまな病気が関係していると言われています。

膀胱機能障害の方にとって働きやすい職場

膀胱機能障害の方にとって働きやすい職場

膀胱機能障害をお持ちの方でも、働く方は多くいらっしゃいます。では、どのような職場が働きやすいと感じるのでしょうか。その特徴は大きく分けて4つあります。

医療設備のある環境

膀胱機能障害をお持ちの方が就職を希望する場合は、医療設備の有無について確認することをおすすめします。休養室や健康管理室、血圧計やAEDといった医療機器が設置されていれば、いつ体調不良が起きても迅速な対応が可能になります。

膀胱機能障害は直腸を含んだ膀胱直腸機能障害と呼ぶことも多く、その名称から排尿や排便困難、尿や便が漏れてしまうこと(尿・便失禁)などが見られることもあります。

このような症状から人工肛門や人工膀胱を増設する方もいらっしゃるため、医療設備のある環境は障害をお持ちの方にとっても働きやすい環境と言えるでしょう。

勤務の内容・時間の調整が可能な環境

就職を検討するうえでは、定期的な通院が必要になることを踏まえ、勤務内容や時間調整が可能かについて確認をしましょう。

膀胱機能障害をお持ちの方には人工膀胱を造設している方も多く、症状によっては2週間~1カ月周期での通院も必要になります。

長時間の勤務だと不安に感じる方であれば、フレックスタイム制や時短勤務を導入する企業を選ぶと長く働くことができるでしょう。

多機能トイレが設置されている

職場のトイレが多機能トイレかどうかもチェックしましょう。厚生労働省の『障害別にみた特徴と雇用上の配慮』では

ぼうこう疾患で尿路(尿管)を変更し、腹壁に新たな排泄口を造設したり、同様に、腸疾患で腸管の一部分を切除したり、あるいは腸管の通過障害を起こして便を肛門から排泄できない場合に、新たに肛門以外に便の排泄口(人工肛門)をつくる必要を生じる場合があります。

としていることから、カテーテルや自己導尿などが必要な方は、多機能トイレの設置、またはトイレに広いスペースが確保されている企業を選びましょう。

現在、病院・学校・公共機関に限らず、企業でも導入可能な多機能トイレが増えています。就職を目指す方は、就職を希望する企業に多機能トイレはあるかを確認しておくと、ストレスを感じることなく働けるでしょう。

引用元
厚生労働省|障害別にみた特徴と雇用上の配慮 第3章

テレワーク勤務制度がある

症状にあわせて臨機応変にテレワーク勤務ができる企業選びも有効です。テレワークとはインターネットを用いた働き方の一つで、オフィスに出社せずに自宅や好きな場所で働ける特徴があります。

障害をお持ちの方のなかには、通勤時間に対するストレスや公共交通機関で見られる通勤ラッシュに負荷を抱える方もいらっしゃいます。テレワーク勤務制度のある企業を選ぶと、通勤時間や通勤ラッシュのストレスや負荷を避け、体調にあわせて働くことができます。

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キャリアアドバイザー
膀胱機能障害をお持ちの方にとっては周囲のサポートが必要不可欠です。障害を持っていても働きやすい環境や配慮があり、きちんとした理解を得ながら働けるかをチェックしましょう。

膀胱機能障害の方が就労移行支援を活用した場合の就職活動

膀胱機能障害をお持ちであっても、理想の企業や働き方に向けて準備を進めたいと考える方は、さまざまなサービスをうまく活用しながら就職活動を進めましょう。

ハローワーク(職業安定所)

全国の都道府県に設置されるハローワークには、公的なサービスをもって障害をお持ちの方の就職をサポートする専門援助部門があります。ご自身の体調にあった企業を見つけたいときは、積極的に利用しましょう。

また、「どんな仕事だと続けられるか」「合理的配慮を得ながら働ける企業はあるか」などについて詳しく聞きたいときも適切なアドバイスを受けられるので、就職における不安や悩みがある方は一度相談してみるとよいでしょう。

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なお、合理的配慮については下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
合理的配慮をカンタンに解説!就活時の注意点や障害別の実施例もくわしく紹介

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害者向けの職業リハビリテーションサービスを提供する施設です。ハローワークとも連携しており、企業向けの障害への理解や定着支援のアドバイス、派遣も行っています。

最寄りのセンターをお探しの方は、地域障害者職業センター全国一覧からご確認ください。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「地域障害者職業センター」

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地域障害者職業センターの支援内容とは|障害者就業・生活支援センターとの違いまで解説

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは、設置された地域において就業・生活の両面について相談できる機関のことです。障害をお持ちの方が抱える就労に対する不安や悩みを相談でき、適切なアドバイスやサポートが受けられます。

2023年4月時点では全国に337箇所設置されているので、下記リンクか最寄りの機関を調べ積極的に利用しましょう。
厚生労働省「令和5年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)」

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、障害をお持ちの方による社会参加をサポートする就労支援サービスです。一般企業への就職をサポートするほか、就労経験がない方がビジネスマナーを学べたり、障害の開示方法についてアドバイスを受けられたりする施設です。

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障害をお持ちの方向け転職エージェント

もう一つ積極的な利用を検討してほしいのが、障害をお持ちの方に特化した転職エージェントです。ハローワークでは見つけられない優良企業情報を持っていることも多く、さらに「障害を持っていても年収アップにつなげられるか」「自分にはどんな仕事が向いているか」といった悩みも相談できます。

障害に関する豊富な知識を持つ専門カウンセラーが在籍しているので、手厚い支援を受けながら就職につなげられます。

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膀胱機能障害の方でも働くことは可能!体に無理なく働けるよう環境や条件を確認しよう

膀胱機能障害の方でも働くことは可能!体に無理なく働けるよう環境や条件を確認しよう

内部障害の一つである膀胱機能障害は、一目では障害があると判断されにくいことから、周囲の配慮が得にくいと悩む方が多くいらっしゃいます。また、カテーテルを使った自己導尿が必要な方は、自分に合う「働きやすい職場とはどんな環境か」を考えることも重要です。

このように、障害を抱えながら働く上では、障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。

今の職場を続けていくことに負担・不安をを感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

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監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。