ADHDは事務が苦手?特性・悩み・対策や向いている仕事を紹介

ADHDの方には多様な特性があり、苦手な分野もあります。たとえば、事務作業が得意でないと聞いたことがある方もいることでしょう。しかし、苦手分野に取り組むときや仕事で困ったときなどにできる対策もあります。

そこで、ADHDの方が抱えやすい悩みと対策方法、ADHDの方に適した仕事・働き方について詳しく解説します。特に現在の仕事で困りごとを抱えている方は、ぜひ今回の内容を参考にしながら、今後の働き方を検討してみてください。

ADHDとは

ADHDとは

ADHD(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)は、発達障害の一種で、日本語では「注意欠如・多動性障害」と呼ばれるものです。名前の通り、注意欠如(不注意)や多動に関連する症状が見られます。

ただし、ADHDの兆候があっても、確定判断ができるのは医師のみです。正式に診断されず「グレーゾーン」であるケースも見られます。

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ADHDの3つの特性

ADHDには大きく分けて3つの特性があります。それぞれの症状について見ていきましょう。

不注意

「不注意」の特性では、注意が行き届かず、見落としや見過ごしが起こりやすいです。また、何かを行うときに気が散りやすい傾向も見られます。特に、長時間になると注意力が持続しづらいようです。

忍耐力が必要な作業を避けがち、または嫌がる傾向もあります。物忘れや紛失、遅刻も多いことが特徴です。

多動性

「多動性」の特性では、じっとしていることが苦手で、貧乏ゆすりをしたりソワソワと歩き回ったりしがちです。おしゃべりが多く、声が大きい方もいます。おとなしくしているのが難しいため、順番待ちをするのも苦手な方が多いです。

衝動性

「衝動性」では、思い立ったら衝動的に即座に行動してしまうことが特徴です。周りに確認せずに自分の意思で勝手に物事を進める・相手のことを考えずに発言して相手を悲しませたり怒らせたりする・他人の行動を妨害する・人のものを横取りするなどの傾向も見られます。

 
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ADHDの方は、上記のような特性からさまざまな困難を抱えやすく、周囲の人々との人間関係に問題が起きることも少なくありません

ADHDの方の長所・強み

ADHDの方の長所・強み

前章のような特性があるADHDですが、ポジティブな特徴もたくさんあります。具体的には、以下のような点です。

  • 好奇心旺盛
  • 物事の判断が早く行動力がある(即断即決)
  • 豊かな発想力がある
  • 興味のあることにはとことん没頭できる など

ADHDの方は事務が苦手?仕事上で抱えやすい悩み

ADHDの方は事務が苦手?仕事上で抱えやすい悩み

ADHDの方は事務作業が苦手だといわれることもあります。そこで、ADHDの方が仕事をする上で感じやすい困難について解説します。

記入漏れ・やり忘れなどのミスや忘れ物が多い

ADHDは、不注意の特性により、確認作業などが苦手だったりほかのところに気を取られやすかったりして、ミスをしがちです。たとえば、必要事項や大事なことの記入・記録漏れ、誤字脱字などの記入間違い、やるべきことをし忘れるなどの傾向があります。

また、持参すべきものを家に忘れて来る、大切なものを置き忘れる・紛失するなどのケースも起こりがちです。

マルチタスクをこなしづらい

マルチタスクとは、複数のやるべき作業(タスク)を同時進行、または短時間で切り替えながら行うことです。

ADHDの方は、優先順位をつけたりスケジュール管理をしたりするのが苦手なため、同時進行のタスクが重なると、どこからどう手をつけていいかわからず困ってしまう傾向もあります。

気が散る・落ち着きがないなど注意力が散漫

不注意や多動性により、自分のデスクで落ち着いて座り続けることが難しいことも大きな悩みでしょう。周りの動きに気を取られて順調に業務が進まなかったり、ソワソワして立ち歩いたりしがちです。また、繊細な作業や処理が苦手な傾向もあります。

整理整頓が上手にできない

ADHDの方は片付けが苦手な傾向があり、デスク周りが散らかっているケースも多いです。

また、物をなくす・気が散りやすいなどの特性からもわかるように、使うものをどこにしまったかわからなくなったり、ほかのことに気が向いてタスク管理がうまくいかず書類が積み重なったりして、うまく整理整頓ができない方もいます。

遅刻しやすい・スケジュール管理がうまくいかない

ADHDの方は「遅れる」傾向も見られます。出勤時間や大事な商談の時間に間に合わない・締め切りまでに仕事が終わらないなどです。これは、時間の感覚が上手につかめなかったり、計画を立てて予定通りに何かをしたりするのが苦手な特性が原因と考えられます。

思ったことをそのまま口に出してしまう

ADHDの方は、頭に浮かんだらすぐ、相手のことを考えずストレートに感情や感想を伝えてしまいがちです。良いことであれば問題ありませんが、意図せず相手を嫌な気分にさせてしまうこともあり、人間関係に影響を与える恐れもあるでしょう。

ADHDの方が働く上でできる対策

ADHDの方が働く上でできる対策

つづいて、ADHDの方が仕事をする際に感じやすい、前章のような悩みや困りごとへの対策について解説します。

 
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自分の特性を理解し、ミスをするという前提で行動することも大切です

メモを取る・ToDoリストでタスクを管理する

メモを取る・やることをリスト化する方法です。大切なことや新しいタスクなどは、忘れないようにすぐにメモする習慣をつけましょう。

そして、やるべきことをリストアップした上で優先順位をつけます。自分一人では難しい場合、上司などに相談しながら決めてもよいでしょう。

なお、いろいろな媒体にメモやリストを書くのではなく、いつも同じツール(ノートやアプリなど)に記録し、すぐに確認できるようにしておくことも重要です。

ゲームの要素を取り入れる

興味のないことは進みづらいため、興味を持てるように遊び感覚でできるような要素を取り入れ、なるべく集中力を切らさないようにするのもおすすめ。「時間内にここまでやる」という目標を決めて頑張る・特定の業務に関して同僚と競い合うなどです。

クリアできると達成感を味わえ、楽しみながら働けるでしょう。

片付けのための時間を設ける

自分の作業場周辺の整理整頓をするためだけの時間を作るのもよいでしょう。仕事に追われているうちに物が散乱してしまうことは珍しくありません。心を落ち着けて片付けをしながら、自分の状況も整理しましょう。

アラームなどで時間管理をする

スケジュール管理が得意でない方は、アラームやリマインダーをセットし、出勤時間や作業時間を管理しましょう。特に複数のタスクを抱えている場合、時間を意識することは重要といえます。

また、任されている業務にもよりますが、1時間に1回などと決めて上司に進捗報告をする方法や、「25分作業をして5分休憩する」を繰り返す「ポモドーロ・テクニック」がおすすめです。

発言が誤解されやすいことを自覚し注意する

衝動的に発言したり、思ったままのことを口にしたりしやすい場合、自分でそのことを意識し、周りにも伝えておきましょう。大切な商談など普段あまり話さない相手と接するときには、万が一の場合にフォローしてくれる上司と一緒に行くなどの対策も必要です。

困ったときは転職も検討を!ADHDの方に向いている仕事・働き方とは

困ったときは転職も検討を!ADHDの方に向いている仕事・働き方とは

対策をしてもなかなかうまくいかない場合、転職も視野に入れましょう。

ADHDの方は、個人の特性によっても異なりますが、自分の興味のある分野に特化した仕事や、マニュアル通り・ルーティンでできる仕事、発想力を活かせる仕事などが適職です。たとえば、研究者・ジャーナリスト・プログラマー・デザイナーなどです。

また、働き方としては、フレックス制やテレワーク、フリーランスなどがよいでしょう。

ADHDの方が転職活動で利用できる支援機関

ADHDの方が転職活動で利用できる支援機関

ここからは、ADHDの方が転職活動をする際に相談に乗ってくれ、サポートしてくれるサービスを紹介していきます。

ハローワーク

ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。

ハローワークには専門援助部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置され、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。

一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。

参考
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。

センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。

障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。

引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。

利用者にとって、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得でき、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。

全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。

なかぽつは、全国に337カ所(令和5年8月22日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。

障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。

引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省

障害者向け転職エージェント

障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。

障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。

高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。

就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。

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ADHDの方も苦手なことを整理して働きやすい職場に出会おう

ADHDの方も苦手なことを整理して働きやすい職場に出会おう

ADHDの方は、特性上、事務仕事が苦手とされています。しかし、症状には個人差があり、働き方などを配慮してもらえば仕事をこなせるケースもあるので、事務職に就きたい方も諦める必要はありません。

また、どうしても苦手な場合は、ADHDの強みを活かした他の職種にチャレンジしてもよいでしょう。就労を諦めず、支援機関を利用しながら自分に合った仕事や働き方を探しましょう。

これから転職に向けて動き始めたい方は、ぜひ気軽に「DIエージェント」にご相談ください。DIエージェントは、障害をお持ちの方のための就職・転職支援サービスで、求職者のご希望や適性をもとに、アドバイスや求人紹介、応募時の対策などのサポートを実施しています。

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あわせて、ADHDの方に向いている仕事や、逆に適していない仕事もチェックしましょう。
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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。