ADHDの方は、仕事のミスが多いと聞いたことがある方もいるかもしれません。ミスをするのは、ADHDの特性上やむを得ないといえる部分。仕事上の悩みや困りやすい場面を知り、できる範囲でミス対策をすれば、改善も見込めることでしょう。
また、適切な環境が整った職場に転職する方法もあるので、転職先の例や転職活動をサポートしてくれるサービスについてお伝えします。
ADHDとは
ADHD(注意欠如・多動症/注意欠陥多動性障害)とは、先天的な脳機能の問題により、不注意・多動性・衝動性といった特性を持つ発達障害のこと。
特性によってミスをしやすい・忘れ物が多い・遅刻しやすい・じっとするのが難しく落ち着きがないなどの特徴が見られ、生活をする上でさまざまな困難を抱えやすいです。
仕事でミスばかりするのはADHDの影響?
ケアレスミスやタスクのやり忘れなど、仕事でミスが多い場合、ADHDが原因である可能性が高いです。ADHDには「不注意優勢型」「多動性・衝動性優勢型」「混合型」というタイプがありますが、それぞれの特性の現れ方によってミスが起こりやすくなります。
なぜミスが増えてしまうのか
では、ミスが増える理由とはどんな点なのでしょうか。
- 注意力が散漫
- 集中力が続かない
- じっとしていられない
- 思いつきで行動する
- 人の話をきちんと聞けない
- 途中で飽きる
- 忘れ物やなくしものが多い など
このような傾向があるため、やるべき仕事に注力できないと考えられます。
ADHDの方が仕事で感じやすい困りごと
前章の内容もふまえつつ、つづいては、ADHDの方が仕事において具体的にどんなときに困りやすいのかを解説します。
1. うっかりミスが多い
認識違いや確認不足などによる、失敗・ケアレスミスが多い傾向があります。たとえば、上司に指示された業務を勘違いする・やるべき仕事を間違ったり忘れたりする・誤字脱字が多い・計算間違いをする・大切な会議や商談を忘れてしまうなどです。
2. 遅刻する・納期に遅れる
スケジュール管理がうまくできず、出勤時間に間に合わない・期日までに仕事を完了できないという傾向も見られます。
やるべきことや与えられた仕事をどれくらいで完遂できそうかという見積もりが上手にできなかったり、朝の支度やタスクが重なってどう手をつけていいかわからず、処理しきれなかったりするためです。
また、ADHDでは睡眠不足を抱えている方も多く、寝坊して遅刻するケースもあります。
3. マルチタスクを実行するのが難しい
ADHDの方の多くは、マルチタスクも苦手です。複数の業務を同時に抱えると、何から手をつけていいかわからずパニックに陥ってしまうこともあります。ADHDの特性上、脳内で物事を一つ一つ整理しながら処理することが困難なためです。
ミスが多発したり、各タスクを終わらせられず中途半端になってしまったりする場合もあります。
4. 仕事に集中できない
気が散る・集中力が持続しないなどで、やらなければならない仕事が進まないという傾向も見られがちです。また、大切な会議などに参加しているときにうわの空になったりゴソゴソしたりしてしまい、注意を受けることもあるでしょう。
5. 自分の思うがままに勝手に行動してしまう
ADHDの特性である衝動性やこだわりの強さから、上司や仲間に確認を取らず我流のやり方で仕事をしてしまう方もいます。そのような、衝動的または自己判断の行動により、周囲に迷惑をかけたり注意されたりすることもあるかもしれません。
ADHDの方ができる仕事のミス対策
つづいて、ADHDの方がミス対策としてどんなことをすればいいのかを押さえましょう。
1. 自己理解をした上でリスト化や情報整理をする
まずは自分がミスをしやすいことを自覚し、自分がどんなときに困りやすいのかを把握することが大切です。その上で、やることのリストやメモを作ったり、一つ一つの情報を声に出す・マーカーを引くなどして整理したりしながら仕事を進めてみてください。
自分一人でどうにかしようとするのではなく、周囲の力を借りることも重要です。きちんと認識が合っているかを尋ねたり、不安なときは改めて確認したりして、抜け漏れや間違いがなるべく起こらないようにしましょう。
2. 目覚ましを複数回鳴らす・リマインダーをセットする
朝起きられない・出勤前の準備に時間がかかってしまう方は、アラームを何回も鳴らして時間を意識しましょう。納期の遅れへの対策としては、作業ごとにリマインダーをセットし、スケジュールを管理しながら行うとよいでしょう。
3. タスクの優先順位をつける
複数のやるべきことが重なった場合は、どれを先に片付けたらいいのかを上司などに確認して優先順位をつけます。タスクをリストアップして視覚化し、気持ちを落ち着けて一つずつ順番にこなしていくと、スムーズに進行しやすいでしょう。
また、タスクをまとめて渡さず小分けしてもらい、一つずつ着実に遂行する方法もおすすめです。
4. 気が散りにくいような環境を作る
注意力が散漫になると、ミスも増えがちです。そこで、集中して作業する時間と小休憩のサイクルを作り、だんだん長時間に延ばしていったり、視界に余計なものが入らないよう、作業に必要なものだけを机に置いたりするなどして、集中力が続くように努めましょう。
5. 確認を怠らない
ADHDの特性上、確認作業が苦手な傾向がありますが、何事も上司や同僚に確認するよう意識しましょう。また、上司の指示などで納得いかないことがあっても、妥協点を見つけて折り合いをつけることも大切です。
ADHDの方が働きやすい求人例を紹介
前章のような対策をしても、仕事を続けるのが難しい場合もあるかもしれません。そこで、ADHDの方でも働きやすいような環境がある求人の例を挙げます。
ALH株式会社|事務系オープンポジション
PCを使用したデータの入力やチェック、書類のファイリング、備品や消耗品の補充、郵便物の仕分け・発送などを担う、事務関連業務のオープンポジションでの契約社員の募集です。週2~3日は出社、週2~3日はテレワークというハイブリッド形式での働き方ができます。
月給は201,560〜206,560円で、時短勤務も可能。時短の場合の雇用形態はアルバイトで、時給1,200~1,230円です。残業はほぼなく、休日や社会保険などの制度もしっかり整っています。
引用元
ALH株式会社の障害者求人(ID:6854)|求人サイト・BABナビ(バブナビ)
株式会社キャメル珈琲|人事業務サポート
「カルディコーヒーファーム」の応募受付や採用関連事務などを行う、人事サポート業務の正社員の募集です。チームで協力しながら仕事をするため、通院などの配慮も相談しやすい体制。
東京都三鷹市にある2つのオフィスのいずれかで勤務します。月給は20万~22万円で、原則残業なしの土日休み(祝日は出勤)です。産休・育休などの休暇や社会保険の制度も整っています。
引用元
株式会社キャメル珈琲の求人(ID:1316)|求人サイトBABナビ(バブナビ)
ADHDの方が転職活動をするときに相談できる支援機関
ここからは、ADHDの方が転職活動をする際に相談に乗ってくれ、活動をサポートしてくれるサービスを紹介していきます。
ハローワーク
ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。
ハローワークには専門援助部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置され、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。
一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。
センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。
障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。
引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。
利用者にとって、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得でき、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。
全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。
なかぽつは、全国に337カ所(令和5年8月22日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。
障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。
引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省
障害者向け転職エージェント
障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。
障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。
高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。
就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。
ミスをしやすいADHDの方も適した仕事に就こう
ADHDの方はミスが多い傾向がありますが、適切な対策によって困りごとが軽減できる可能性は十分あります。また、ミス対策をしても今の仕事を続けるのが厳しい場合は、もっと自分に合った職場に転職するのもよいかもしれません。
ADHDの方が応募できる求人の例も紹介したので、支援機関を利用しながら自分の特性や状況に合った仕事を探しましょう。
「DIエージェント」は、障害をお持ちの方の就職・転職に特化したサービスです。専任のキャリアアドバイザーが、丁寧なヒアリングを実施した上で、ご希望・特性に合った求人の案内や企業との調整など、求職者の方を一対一でサポートします。
まだ転職は検討段階という方でもかまいませんので、どうぞお気軽にご相談ください。
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大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。