障害者のための「就労移行支援」を知っていますか? 就職・仕事の復帰に向けた準備ができ、条件によっては無料で受けられるサービスです。今回は「就労移行支援」の制度や基礎知識についてやさしく解説していきます。
就労移行支援とは
就労移行支援とは障害をお持ちの方・難病のある方が一般企業に就職するために必要な「訓練の提供・就職活動の支援・定着の支援」などをおこなう原則「通所型」の行政サービスです。
「障害者総合支援法」(正式名称「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)の「障害福祉サービス」の一つとして定められています。
例:「ワークイズ」 https://d-and-i.jp/service/workis/
参考:障害者の雇用・就労促進のための関係行政機関会議資料「就労移行支援事業 就労移行支援事業」
対象者
就労移行支援事業の利用条件は以下の3つに当てはまる方です。
- 18歳以上65歳未満の方
- 身体障害、知的障害、精神障害、難病のある方
- 一般企業への就労または開業を希望する方で、就労可能と見込まれる方
障害者手帳をお持ちでない場合でも、医師の診断書または意見書があれば、就労移行支援を利用できます。
初めて就業する方(就労経験のない方)だけでなく、体調を崩されフルタイムで仕事を復帰するには少し自信がない方なども利用できます。
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就労移行支援でできること
就労移行支援の事業所数は3,471箇所あり (2017年調査)、その特色や支援内容もさまざま。
ここでは株式会社D&Iが運営するワークイズのカリキュラム例を見てみましょう。

就労移行支援事業所で受けられるサービスは自分の理解と並行して働くために必要な基礎力のトレーニングをし、就職活動~内定~定着までを一貫してサポートします。
- 自己理解、障害理解のサポート
- PC訓練
- 社会人基礎力(ビジネスマナーなど)のトレーニング
- キャリアプランの設計
- 企業研究
- 模擬職場体験、見学
- 履歴書、職務経歴書などの作成、添削
- 職場実習
- 求人探し
- 面接練習
- 定着支援の定期面談
参考:厚生労働省「平成 29 年 社会福祉施設等調査の概況」
どのような人がサポートしてくれるの?
就労移行支援には専門知識をもった職員が一定人数配置されています。
- 職業指導員…障害をお持ちの方の希望や適性に合わせて就職のために必要な技術を指導・援助するなど、職業上の技術を習得させる訓練・指導を行います。
- 生活指導員…体調や生活リズムを整えるサポートをします
- 就労支援員…就職のために必要なスキルや就活ノウハウをアドバイスします
利用料金

就労移行支援のサービスは前年~直近の世帯所得次第で無料で利用できます。
お住まいの地域によって細かな条件が異なるので、詳細はお近くの市区町村の障害福祉課や利用したい就労移行支援へ相談してみてください。
手続きの流れ
各事業所ごとの強みや特徴、スタッフとの相性などもあるのでいくつか比較検討してみると良いでしょう。
通所する事業所が決定したら、以下のような流れで通所を開始します。
- 通所する事業所を選ぶ
- お住まいの市区町村の福祉担当窓口に「障害福祉サービス受給者証」の申請をする
- 認定調査がおこなわれる
※この間、「暫定支給」と並行して「体験利用」をする場合も - 「障害福祉サービス受給者証」支給決定・通所開始
認定調査~支給決定までに就労移行支援事業所では、利用者さんのお話を伺いながら今後どのようにトレーニングを経て就職をするのかプロの目線で「個別プラン」を一緒に練っていきます。
「就労継続支援」「就労定着支援」との違い
就労移行支援と似た福祉サービスの名称で「就労継続支援」「就労定着支援」があります。
それぞれの違いをみてみましょう。
「就労継続支援」とは?
「就労継続支援」とは体調の問題などで、一般企業等の就労が困難な方に、就労の機会とスキルアップのための訓練をおこなうサービスおよび事業所です。
実際に自分で手を動かしながら働き、フィードバックをもらいながら、安定的に就労できるように慣れていくための場所といったイメージです。
就労継続支援の「A型/B型」の違い
就労継続支援のなかでも「A型事業所」「B型事業所」をそれぞれ耳にしたことはないでしょうか。A型/B型の違いは雇用形態ともらえるお金に違いがあります。
下の表をご覧ください。
種類 | 雇用形態 | 仕事の対価 |
A型 | 雇用契約を結ぶ | 就労時間によって給料(最低賃金以上)が支払われる |
B型 | 雇用契約関係なし | 仕事量によって工賃が支払われる |
なお、「就労移行支援」は一般企業への就労とそのための準備が最大の目的なので、雇用契約を結んだり、お給料がもらえたりはしません。
「就労定着支援」とは?
「就労定着支援」とは一般就労を開始した人に対し、働くうえでの課題をサポートするサービスです。
就職後も「就労移行支援」と同じような仕事のスキルや生活に関するアドバイスがもらえたり、働き始めたからこそ出てきたお悩みを相談できます。
「就労移行支援」または「就労継続支援」から就職した方へのフォローは各事業所の義務となります。そのため各事業所を経て就職をした障害をお持ちの方は定着支援のサービスを6ヶ月間無料で受けられます。
さらに半年が経過した後は本人の希望(自己負担有り)によって3年間延長での利用が可能です。
※「就労定着支援」を独自で導入している企業も一部存在します。
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就労移行支援のメリット
ここでは就労移行支援を利用するメリットを3つ紹介します。
1.就職に必要なスキルも生活リズムも身につく
就労移行支援では仕事のスキル面のだけでなく、生活面やメンタル面のサポートやアドバイスが適宜受けられます。
対人関係に不安がある方も、グループワークなどでソーシャルスキルトレーニング(SST)を徐々に伸ばすこともできます。
認知行動療法やコミュニケーションスキルの一つであるアサーションのトレーニングなど、より快適に働けるためのカリキュラムも多様に用意されています。
また「まずは週に1度から始める」といったように、通所のペースやビジネススキル習得のレベル感・内容も相談しながら決められます。
療養期間が長く、就職が初めてという方などには利用をおすすめできます。
2. 企業に安心してもらうための根拠づくりができる
企業に就職するにあたって、あなたの実力を表せる客観的な実績を知りたがっています。
就労移行支援の「通所期間や通所頻度」・「おこなったトレーニング」は立派な実績になります。
「履歴書に書くことがない」という方は就労移行支援の経験を書けますよ。
- 【PR例】
- 履歴書に…「●●就労移行支援 週5日/98%の通所率」
- 自己PRに…「1年以上安定した通所ができている」「就職のためにパソコンスキルを伸ばしてきた、Excel中級レベルのことが速く正確にできるようになった」など
安定就労の見通しが立ち、社会人基礎力が身についていると判断してもらえるためです。
3. 就職活動の全面的なバックアップが受けられる
障害特性や病気に必要な配慮をしてくれる企業を探すのは、一人では難しいものです。
就労移行支援のスタッフは障害の知識だけでなく、障害配慮のある企業の情報をたくさんもっています。
その中から客観的に利用者に合った会社を選んだり面接対策やアドバイスをするので、一人で就職活動を進めるより効率的に良い会社に出会えるでしょう。
その他にも以下のようなサポートが可能です。
- 書類添削
- 面接対策
- 面接練習
- 面接同席
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就労移行支援のデメリット
就労移行支援を利用する上でのデメリットとなりうるのは「時間」と「お金」の問題です。
やや中長期的にじっくり自分のキャリアに向き合うサービス特性をもつため、「すぐに働かなければならない」「今すぐ収入を得たい」と思っている方にはおすすめできかねます。
原則、就労移行支援の利用中はアルバイトなどもできません。
※自治体によってアルバイト可の場合もあるのでご確認ください。
また、就労移行支援の事業所にも特色があるので相性の合う/合わないがある場合も……。
ぜひ利用の前にはいくつかの就労移行支援を比較してみてください。
「就労移行支援」のしくみはわかりましたか?
障害をお持ちの方が「働きたい!」と思った時に使える福祉サービスは意外にもたくさんあるものです。
株式会社D&Iは就労移行支援「ワークイズ」や障害者雇用に特化した人材紹介サービス「DIエージェント」、就労定着支援「ワクサポ」などを運営しており、障害をお持ちの方が幸せに働けるよう一貫したサービスを提供しています。
キャリアに悩んでいたらお気軽にご相談ください。
株式会社D&Iが運営する就労移行支援事業所です。緊急事態宣言前から東京都より唯一「在宅訓練の認可」。東京・神奈川・千葉・埼玉にお住まいの方がご利用いただけます。
「ワークイズ」では随時ご相談を承っております。資料請求や面談・見学のご相談はこちらのお問い合わせよりお申込みください。
就労移行支援事業所の通所を考えている方。どのようなポイントで施設を選びますか? 通いやすさ、プログラムの内容や雰囲気や支援員との相性…… より良い就職のために自分にマッチした事業所選びは欠かせません。 さらに最近では在宅訓練も可能な事[…]