聴覚障害者の仕事の悩みとは|コミュニケーションを円滑にする工夫とおすすめの職種を紹介

聴覚障害とは耳が聞こえにくい、またはまったく聞こえないという障害です。

その度合いによっては、日常生活に限らず、仕事においても働きづらさを感じる事もあります。

そこで今回は、聴覚障害の方にオススメの職種・働き方など仕事選びのポイントや、実際に就職・転職活動を進める方法について解説します。

障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別のご病気を発症してしまったりする例も少なくありません。

そうならないよう、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。

聴覚障害とは|聴覚障害の種類と等級

聴覚障害とは|聴覚障害の種類と等級

聴覚障害とは、音を聞いたり感じたりする器官に問題が生じ、話し声や周囲の音が聞こえにくくなることを指します。聞こえにくい状態でも補聴器なしである程度聞こえる、補聴器があれば会話ができる、またはまったく聞こえないなど状態はさまざまです。

聴覚障害はその聞こえの程度によって、おもに3つの種類に分けられます。

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聴覚障害の種類

聴覚障害の種類は、聞こえの程度や難聴を発症した時期などによって、以下のように聾(ろう)・難聴・中途失聴に分けられます。

聾(ろう) 聾(ろう)とは、ほぼ耳が聞こえないかまったく聞こえない状態です。生まれつき、または言語の習得をする前に聞こえなくなった場合を指します。聴力レベルは90dB以上と、難聴のなかでもっとも重度です。
難聴

難聴は、聴力はあるものの会話や音が聞こえにくい状態を指し、そのなかでも聞こえ方によって、伝音性難聴と感音性難聴、さらに両方の状態がある混合性難聴に分けられます。

伝音性難聴:外耳や中耳の機能不全による難聴。中耳炎などの病気が原因であるケースが多いとされています。
感音性難聴:内耳や神経系の障害によって起こる難聴。老人性難聴や突発性難聴などがあります。

中途失聴 生まれた時には聴力があり、言語を習得したあと聴力がなくなった、あるいは聞こえにくくなった状態です。原因には病気や事故、加齢などさまざまなものがあります。

聴覚障害をお持ちの方の仕事探しにおける困りごとや見つけ方のポイントなどは、以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
聴覚障害者の方の仕事について|仕事探しや働くうえでのヒントなど解説

引用元
厚生労働省|e-ヘルスネット

聴覚障害の等級

聴覚障害は、身体障害者福祉法に基づいて以下の4つの等級に分けられ、その等級によって身体障害者手帳の交付を受けることができます。聞こえの程度はデシベル(dB)で表され、数字が大きくなるごとに障害の程度も重くなると考えていいでしょう。なお、聴覚障害の等級に1級と5級はありません。

6級 両耳の聴力が70dB以上(40cm以上の距離の会話が理解できないほどの聴力レベル)。一側耳が90dB以上または他側耳が50dB以上の聴力レベル。
4級 両耳の聴力が80dB以上(耳元で話さなければ会話が理解できないほどの聴力レベル)。普通の会話レベルで最良の語音明瞭度が50%以下の聴力レベル。
3級 両耳の聴力が90dB以上(耳元で話さなければ大声でも会話が理解できないほどの聴力レベル)。
1級 両耳の聴力が100dB以上(全ろう)

引用元
厚生労働省|身体障害認定基準等について

聴覚障害をお持ちの方が職場で陥りがちなコミュニケーションの問題とは

聴覚障害をお持ちの方が職場で陥りがちなコミュニケーションの問題とは

聴覚障害をお持ちの方が職場で困りがちなケースとして、おもにコミュニケーションの問題が挙げられます。聴覚障害の方が、仕事をするうえで直面する困りごとはどんな場面で起こるのか、シチュエーションとともに紹介していきましょう。

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聴覚障害のある方が仕事がつらいと感じる原因とは?働き方の工夫や仕事の探し方、利用できるサービスを紹介

意思疎通のしにくさから人間関係の構築に時間がかかる

聴覚障害をお持ちの方は、大勢の人がいる場でそれぞれが会話を繰り広げるようなシチュエーションでは、会話を聞き取ることが難しいことが多いです。そのため、休憩中の複数人での雑談や飲み会の席での会話への入りにくさを感じることがあります。

細かいコミュニケーションを積み重ねることで深まる信頼感や親しみを感じられる機会が少ないことから、お互いの理解が深まりにくくストレスを感じてしまうことがあるかもしれません。

仕事上必要な情報がスムーズに手に入らない

会社に限らずコミュニティにおいては、ちょっとした雑談のなかでも実は重要な情報交換をしているというケースは少なくありません。上述したように気軽に雑談に混じることが難しい聴覚障害をお持ちの方にとって、必要な情報が手に入りにくいといったことが起こる可能性があります。

人事に関することや社内ルールなど社内情勢に関することがわからず戸惑ったり、突発的なトラブルが発生したときに何が起きたかわからず不安を感じたりといったこともあるでしょう。

職場での困りごとを解消するための工夫

職場での困りごとを解消するための工夫

聴覚障害をお持ちの方が、コミュニケーション上の困りごとを解消する方法にはどんなものがあるのでしょうか。ここからは、実際に使われているサービスやすぐにでもできる工夫を紹介します。

音声認識ソフトやアプリを使う

音声認識ソフトやアプリは、年々精度を増しています。聴覚障害をお持ちの方向けに開発されたものもあり、複数人と会話を共有できるものも。スマホやタブレットにダウンロードすることで、音声をテキストに変換してくれる機能をもち、キーボード入力や手書き入力など筆談に利用できる機能があるアプリも提供されています。

こういったアプリをすぐに立ち上げられる状態にしておくことで、急に話しかけられた時でもすぐに対応できます。また、会議やディスカッションの場でも活用できるでしょう。

電話リレーサービスを使う

2021年にはじまった比較的新しい国のサービスで、「電話リレーサービス」というものがあります。障害をお持ちの方の情報取得の権利の保障や、社会的障壁を取り除くための環境整備の一環として、自治体や企業に積極的な活用を呼び掛けているものです。

公共インフラのひとつで、電話でのコミュニケーションを円滑にします。オペレーターによるリアルタイムの通訳で、取引先との電話や社内の人が出先から電話をかけてきた際などに利用可能です。

また、110番などの通報をする時や病院の予約・連絡、家族との連絡や行政とのやりとりなどにも活用できます。

利用には料金がかかりますが、仕事の幅がグッと広がるので、是非会社に法人登録してもらえないか相談してみましょう。

筆談ツールを持ち歩く

とっさの対応にはやはりアナログな手法が手軽で早いでしょう。メモやコンパクトサイズのホワイトボードなどを常に持ち歩けば、突然話しかけられた時や急な用事を伝えたい時などに慌てずにすみます。

聞こえる人とスムーズなコミュニケーションをとるために、使えるものはできるだけ活用して自分自身が働きやすい環境を作っていきましょう。

聴覚障害をお持ちの方に向いている仕事とは?

聴覚障害をお持ちの方に向いている仕事とは?

聴覚障害をお持ちの方で、仕事探しをする際にどんな職種から選べばいいのかと悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。聴覚障害をお持ちの方には、集中して取り組めるデスクワーク中心の仕事が向いてるでしょう。

そこで、聴覚障害をお持ちの方の就職先としておすすめの職種をいくつか紹介します。

1.一般事務

一般事務は、書類作成やデータ入力など、決められた内容の事務作業をこなすことが多い仕事です。慣れてくれば、ひんぱんにやりとりする必要がなく、チャットやメールで連絡が済むケースも多いのでおすすめの仕事といえるでしょう。

2.CADオペレーター

CADオペレーターは、建築や土木、機械部品などさまざまな設計図をCADというソフトを使って作成する仕事です。CADには建築・土木系のものや産業機械系のもの、電気・電子系のものなど、それぞれ専用のソフトがあります。

顧客の意向や技術者の指示をもとに、設計図を完成させることを目的として、ひとりもくもくと作業をすすめる仕事なのでおすすめです。

CADオペレーターになるのに特別な資格は必要ありませんが、基本的な図面の書き方のルールを覚える必要があります。

3.システムエンジニア・プログラマー

システムエンジニアやプログラマーは、パソコンで使用するソフトのシステム設計やプログラミングを行う専門職。プログラミング言語の習得など専門の知識が必要ですが、システムの完成に向かってもくもくとパソコンに向かい、作業をすすめるという点ではCADオペレーターと通じるものがあるかもしれません。

クライアントの意向に沿って理想に近いものを作るためには、それなりのスキルが必要ですが、やりがいのある仕事だといえるでしょう。

先天性の聴覚障害を抱えた方が、システムエンジニアとして転職に成功した事例を下記の記事で紹介していますので、参考にしてください。
「譲れない条件がありました」聴覚障害のエンジニアが不安を乗り越え外資コンサルに内定するまで[転職成功事例 Vol.6]

テレワークでやれる仕事

上述したデータ入力やCADオペレーター、プログラマーやシステムエンジニアなどは、テレワークが可能なこともあります。そのほか、校正や編集の仕事、コピーライターやイラストレーターなどもテレワークでの仕事が可能なので、在宅でできる自分ができそうな仕事を探してみるのもいいでしょう。

筆談可能な聴覚障害をお持ちの方向けとして多い職種は?

筆談可能な聴覚障害をお持ちの方向けとして多い職種は?

障害者雇用枠専門の就職・転職サイトにある求人の例を紹介しましょう。筆談での対応可能な聴覚障害をお持ちの方向けの求人には、2023年9月時点で以下のようなものがあります。

  • 一般事務
  • 事務サポート
  • 人事・総務事務
  • 営業事務
  • データ入力
  • CADオペレーター
  • 建築設計
  • システムエンジニア
  • プログラマー

上述したおすすめの職業ともかぶる内容が多く、デスクワーク中心の求人が多数あります。

 
キャリアアドバイザー
決められた業務をこなすデスクワークは、在宅可能な職種が多いのも特徴です。

聴覚障害の方にとって理想的な職場とは

聴覚障害の方にとって理想的な職場とは

聴覚障害をお持ちの方におすすめの職業がわかったところで、職場環境についても整理してみましょう。聴覚障害をお持ちの方が働きやすい環境を手に入れるためには、第一に障害への理解がある職場が理想的です。

聴覚障害をお持ちの方が働きやすい職場環境の特徴を紹介します。

テキストでのコミュニケーションが多い

会話によるコミュニケーションがメインの職場より、テキストでのコミュニケーションが多い職場がいいでしょう。テキストメインでも業務の進行に支障がない仕事には、事務系やプログラマーなどテレワークが可能なことも多く、チャットやメールなどテキストで業務に関することのやりとりが完結するケースも多々あります。

障害に対する理解を深める努力をしてくれる

最初からすべてを理解してくれなくとも、障害に対する理解を深める努力をしてくれる職場が理想的です。社内で聴覚障害の支援ツールを導入していたり、合理的な配慮をしてくれたりして、聴覚障害の方が働きやすい環境作りへの取り組みを積極的にしてくれる職場であれば、安心して働くことができるでしょう。

困りごとを相談できる仕組みがある

社内にカウンセラーが常駐していたり、相談窓口を設定している会社であれば、困った時に相談しやすいでしょう。働く上での困りごとやメンタルヘルスの問題などを相談できる場所があるだけで、安心できる材料になります。

相談窓口の設置は雇用促進法の合理的配慮として義務付けられ、場合によって外部に委託されていることも。相談者のプライバシー保護や相談内容への対応措置などの義務もあるので、会社のサポート体制について調べておくのがおすすめです。

 
キャリアアドバイザー
2022年に施行された『障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法』によって、障害を持つ人への情報共有や働く環境への配慮などが求めやすい環境が整ってきているといえるでしょう。

聴覚障害をお持ちの方の就職・転職活動で頼れる機関とは

聴覚障害をお持ちの方の就職・転職活動で頼れる機関とは

聴覚障害をお持ちの方が仕事を探す上で、戸惑いや不安を感じることもあるかもしれません。そういった問題に自分一人で対応するのは負担が大きいため、利用できる支援について知っておくといいでしょう。

そこで、聴覚障害をお持ちの方が、就職や転職活動をするにあたって活用できる機関やサービスを紹介します。

1.ハローワーク

ハローワークは国が運営する就職や転職をサポートする機関です。ハローワークには、障害者に関する窓口が設けられており、障害に対する専門知識があるスタッフが相談に乗ってくれたりアドバイスしてくれたりする支援を受けることができます。

就職のための応募書類作成や面接指導などの支援も受けられ、事業主への雇用の働きかけなど求人開拓も行い、全面的にバックアップしてくれるでしょう。

関連記事
ハローワークとは?メリット・デメリットや障害のある方が利用するときのポイントまで解説

地域障害者職業センター

障害をお持ちの方の就職や復職に向けた、専門的な職業リハビリテーションの提供をしているのが特徴です。先述したハローワークとも連携しており、障害をお持ちの方の就職を総合的に支援する役割をもっています。

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地域障害者職業センターの支援内容とは|障害者就業・生活支援センターとの違いまで解説

就労移行支援事業所

自分に合ったスキルの習得や仕事選びをバックアップしてくれ、就職後も職場定着のためのサポートを受けることができるため、長く働ける仕事を見つけやすいでしょう。

4.障害者向けの就職・転職エージェント

障害者手帳を取得し就職・転職活動を行う、いわゆる「オープン就労」を目指す方専門のエージェントもあります。就職・転職エージェントは民間企業ですが、ハローワークなど公的機関と同じように無料で利用することができ、知識とノウハウを持った専門のアドバイザーによる就職サポートを受けられるのでおすすめです。

障害者専門の転職エージェントを利用するメリットやマッチングのコツについては、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらも参考にしてください。
障害者専門の人材紹介会社とは?利用するメリットやマッチングのコツ、おすすめの人材紹介会社を紹介

就職・転職活動をサポートする「DIエージェント」とは

障害があることでキャリアアップを諦めている方や、なかなか理想の職場が見つからず困っている方に是非活用していただきたいのが、DIエージェントです。

DIエージェントには専属のキャリアアドバイザーがおり、1対1で相談から職場定着までを全面的にサポート。障害者雇用専門のキャリアアドバイザーとして、求職されている方の経歴だけでなく、本人の希望や障害を考慮したキャリア診断を行い、理想的な職場への就職を成功へ導きます。

企業への人材提案も積極的に行っており、希望業界や希望職種求人の新規開拓にも数々の実績があるエージェントです。

 
キャリアアドバイザー
障害者雇用枠でのキャリアアップ転職や高収入の職場への就職など、数々の支援実績があるDIエージェントは、転職を迷っている方や障害者手帳申請中の方でも申し込み・相談が可能です。

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聴覚障害の方にはデスクワークがおすすめ。配慮を得られるぴったりの職場を見つけよう

聴覚障害の方にはデスクワークがおすすめ。配慮を得られるぴったりの職場を見つけよう

聴覚障害をお持ちの方が仕事をする上で悩みがちなコミュニケーションの困難は、アプリやサービスなどのツールを使って解決するのがおすすめです。デスクワークが主な事務系の仕事やCADオペレーター・システムエンジニアなどが向いている職種だといえるでしょう。

こういったデスクワークが主な仕事はテレワークが可能なことも多いので、体調が優れず通勤が難しい時などに、一時的にテレワークに切り替えることができるのもメリット。

障害を抱えながら働く上では、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。

今の職場を続けていくことに負担・不安をを感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。

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監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。