心臓機能障害の方でも仕事を続けられる?復職や転職、働きやすい職場環境について解説

心臓機能障害とは、心臓の働きに支障を抱える障害です。障害の度合いによっては、日常生活に限らず仕事においても困難が生じる場合があります。

そこで今回は、心臓機能障害の方が働きやすい職場環境や職種、求職活動で役立つサービスについて解説します。

障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別の病気を発症してしまったりする例も少なくありません。

そうならないように、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただければ幸いです。

心臓機能障害とは?

心臓機能障害とは?

心臓機能障害とは内部障害の一部で、人体の血液を送るポンプである心臓に障害または疾患がある状態のこと。日常生活などに制限や支障が出るケースが多いです。

また、大動脈や冠動脈の手術をしたりペースメーカーを埋め込んだりした場合、「心臓機能障害」に認定されます。

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代表的な疾患と症状

心臓機能障害に関わる疾患には、以下のようなものがあります。

  • 不整脈
  • 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)
  • 心不全
  • 弁膜症
  • 動脈・静脈疾患(動脈瘤、静脈瘤、動脈解瘤) など

先天性の疾患もあれば、生活習慣が原因で心臓に負担がかかり、発症したり手術が必要となったりする場合もあります。

心臓機能障害で日常的に起こる症状・困りごととしては、息切れや心臓に強い負荷がかかる活動を避ける必要があること。さまざまな活動が制限される場面もあるでしょう。

  • 倦怠感
  • 呼吸困難、息切れ
  • 手足のむくみ
  • 悪心
  • 嘔吐
  • 胸の締め付け感、灼熱感、圧迫感

なお、障害の程度によっては、ハードなスポーツをしても問題ない方もいらっしゃいます。

引用元
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害・職種別『就業上の配慮事項』-企業の経験12,000事例から-」

公益財団法人 日本心臓財団「心臓病の知識」

心臓機能障害の方が身体障害者手帳を取得するべきメリットとは?

心臓機能障害の方が身体障害者手帳を取得するべきメリットとは?

身体障害者手帳を持つメリットは多数あります。 代表的なものは以下のような点です。

  • 福祉サービスが受けられる
  • 等級によって医療費の控除が受けられる
  • 障害者雇用枠で配慮のある仕事に就ける

詳細は下記の記事に書いてありますので、参考にしてください。

認定基準と等級

心臓機能障害の認定は、規定の疾患がある場合や既定の手術を受けた経験、『メッツ表』をもとにした活動・運動負荷とそれに対する影響などを元に認定がおります。メッツ表とは活動と体への負荷が一覧になったものです。再認定の際にも参照されます。

また、心臓機能障害の等級は1級・3級・4級に分けられ、2級は存在しません

等級 内容
1級 心臓の機能の障害により 自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの
3級 心臓の機能の障害により 家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの
4級 心臓の機能の障害により 社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

引用元
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「心臓機能障害(1 級、3 級、4 級)」

1級

心臓機能障害の1級は安静時にも発作のリスクがある状態ですが、多くの方が手術をしてペースメーカーや人工弁を植え込み、問題なく日常生活を送っています。

しかし、ハードすぎる活動や過労、さらにペースメーカーなどに異常をきたすような強い電磁波の接触には注意が必要です。

3級

心臓機能障害の3級も、日常生活において慎重になるべきシーンが多数想定されています。 基本的には家庭内で穏やかな生活を送り、座った状態で作業することが推奨されます。

4級

心臓機能障害の4級は、3級に比べてやや活動範囲の広がりが見られますが、やはり落ち着いた状態での生活を送ることが推奨されています。スポーツや肉体労働(立ち仕事なども含む)には制限がある場合も多いです。

心臓機能障害4級の注意点

等級によって「身体障害者手帳」のメリットに大きな違いはありません。 しかし、心臓機能障害(内部機能障害)4級は、東京都を含む一部自治体では医療費の助成が受けられません。 お住まいの自治体の情報を確認してみましょう。

引用元
東京都福祉局「心身障害者医療費助成制度(マル障)」

心臓機能障害になったら仕事はどうする?

心臓機能障害になったら仕事はどうする?

つづいて、現役で働いている方が心臓機能障害になった場合、仕事はどうすればいいのかを解説します。

発症したての「急性期」

急に心臓機能障害を患った・入院して仕事を休まないといけないという状態に陥ると、焦って「仕事を辞めなければ」と考える方もいるかもしれません。

しかし、まずは担当医師に状態や治療に必要な期間などを確認して、職場に内容を伝えるところから始めましょう。職場に休暇や病気休業などの制度がある場合は、ぜひ利用してください。

 
キャリアアドバイザー
退職するか復職するかは、急いで結論を出さずに治療の間にゆっくり考えればよいので、まずは療養に専念することが大事です。

退院前に医師や職場とよく相談

退院・治療後に職場に復帰する場合、どんなスケジュール・どんな仕事内容・勤務時間・テレワーク可能かなどを医師や職場と相談しましょう。

職場によっては難色を示されることもありますが、企業には安全配慮義務があるため、必要に応じて医師から診断書や意見書をもらい、適切な環境についてよく話し合うことが重要です。

復職後も体調管理に気をつける

仕事に復帰することになっても、心臓に負担をかけず再発を防ぐため、下記の注意点を押さえ、体調と相談しながら働きましょう。

リハビリ勤務制度を利用する

いきなり元通りに働くのではなく、最初は短時間勤務で復帰し、数ヶ月かけて徐々に働く時間を延ばしていくなど、リハビリ勤務期間があるとよいでしょう。ただし、企業によっては対応してもらえないケースもあることには注意が必要。退院前の相談時に打診してみてください。

通院を続ける

心臓機能障害では長期的な経過観察が必要なため、自己判断で病院に行くのをやめてはいけません。医師から指示された通りに通院し、経過をチェックしてもらいましょう。

薬を飲み続ける

心臓機能障害の薬には、心臓の負担を和らげたり血栓をできにくくしたりする作用があります。落ち着いたからといって勝手にやめると、不整脈や血管の詰まりなどが起きてしまう恐れがあるので、処方された薬は指示された通りにきちんと服用を続けてください。

心臓機能障害者でも働きやすい職場や向いている仕事とは

心臓機能障害者でも働きやすい職場や向いている仕事とは

心臓機能障害の方が働きやすいのはどんな職場や職種なのでしょうか。

働きやすい職場の特徴

心臓機能障害をお持ちの方が働きやすい職場とは、以下のような特徴がある職場です。

  • 仕事と治療の両立に理解のある職場
  • デスクワーク中心
  • 通院のための時間調整ができる
  • 重労働を避ける(長時間勤務・立ち仕事・極端な移動をともなう業務)
  • 重い物を持ち上げるなど、体に負担がかかる仕事をさせない
  • 体調に応じて休憩が取れるなどの配慮をしてもらえる
  • 通勤の配慮がある(家から近い職場、オフピーク時間の出社、テレワーク)
  • 高電磁波に接さずに働ける(ペースメーカーなど医療機器の誤作動を防ぐため)

向いている仕事の例

心臓機能障害の方の場合、オフィスでの事務職(一般事務・データ入力・経理・人事など)やテレワークができる仕事(Webデザイナー・エンジニア・インサイドセールス・Webマーケターなど)のような仕事は、比較的肉体的な負担が少ないため向いているでしょう。

転職を考える際の参考にしてみてください。

心臓機能障害の方が仕事をしやすくするには

心臓機能障害の方が仕事をしやすくするには

つづいて、心臓機能障害を抱えていても負担をかけずに仕事をするにはどうすればいいのかについて解説します。

1. 周囲に配慮を求める

前章の「働きやすい職場の特徴」でも述べたように、労働時間や仕事内容などの配慮をしてもらうことは重要です。障害の度合いや通院のことなどを考慮してもらい、適切な配慮を受けましょう。

2. 障害者枠で働く

心臓機能障害の方は、前述した障害者手帳を持っていれば、障害者雇用枠で働ける可能性があります。自分の体の状態に合った働き方ができるので、検討してみてはいかがでしょうか。

3. 転職する

今の仕事を辞め、別の職場に移るという選択肢も考えられます。仕事探しに役立つサービスは後述するので、活用してみてください。

転職したほうがよい仕事の例

肉体労働・夜勤がある仕事・長時間または不規則な仕事・ストレスが多い仕事・周囲の理解が得られない職場などは、心臓機能障害の方には負担が大きいため、仕事を変えたほうがよいでしょう。ご自身の環境を考えながら、転職を検討してみてください。

求人情報も豊富

求人サイト「BABナビ」で「心臓」というキーワードで検索した結果、521件、総務アシスタント・一般事務・コールセンター・エンジニアなどの職種がヒットしました(2024年1月末時点)。また、件数は少ないですが、なかには完全テレワークが可能な職場もあります。

検索する時期や条件などによっても情報が変わるため、ご自身の環境にあわせて探してみてください。

引用元
BABナビ「『心臓』の求人」
BABナビ「『心臓』『在宅・テレワーク勤務』の求人」

心臓機能障害の方が転職する際に利用できるサービス

心臓機能障害の方が転職する際に利用できるサービス

心臓機能障害をお持ちの方が就職・転職を考える際には、求職活動をサポートしてくれるサービスを活用するとよいでしょう。どんなサービスがあるのかをご紹介します。

ハローワーク

ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。

ハローワークには専門援助部門が設けられており、専門の相談員を配置した窓口で、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。

一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。

参考
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターとは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。

センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。

障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。

引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。

利用者は、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得し、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。

全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。

なかぽつは、全国に337カ所(令和5年8月22日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。

障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。

引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和5年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省

障害者雇用に強い転職エージェント

障害者枠を持つ企業や障害者雇用を積極的に行う企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してみましょう。

障害者の方の求職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いです。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。

高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいでしょう。

DIエージェントの支援事例

DIエージェントの支援事例

これまでDIエージェントでご支援した、「心臓機能障害」をお持ちの方の就職事例をご紹介します。(※個人情報保護のため一部情報を伏せております)

心臓機能障害1級の方のお仕事例(通勤型)

配慮:ペースメーカー使用、業務上の配慮なし

学生時代よりアクティブに活動されてきた新卒のAさん。 一般枠での就職を中心に検討されていましたが、障害者雇用枠の存在を知り、可能性を広げるためにいくつかの企業を受けてみました。

結果として、Aさんにぴったりなチャレンジングな社風がマッチした企業から内定をいただきました。正当に評価される職場なので、将来的には管理職や役員としての活躍も期待できます。

 
キャリアアドバイザー
憧れの有名企業・勢いのある企業にも広く門戸が開かれているのが障害者雇用枠。 戦略的に障害者雇用枠を活用した事例ですね。

心臓機能障害1級の方のお仕事例(在宅型)

配慮:長時間労働の抑制(生活リズム安定のため)、月3日の通院配慮

地方在住のBさんはシステムエンジニア(SE)としての高いスキルをお持ちでした。長時間労働が一因となりお仕事にはブランクがありましたが、医師からの就業許可がおり、「無理をしない働き方」が実現できるテレワーク就労にチャレンジ。

企業様からもそのスキルを買われ、有名企業の特例子会社にて、フルリモートでいきいきと働いています。

 
キャリアアドバイザー
SEという職種柄、残業や不規則な働き方になりがちです。 しかしDIエージェントが扱うテレワーク求人は企業からの直接雇用でありながら短時間勤務もOK。
「自分らしい働き方」が叶うのが特徴です。

心臓機能障害3級の方のお仕事例

配慮:細動器利用のため高電磁波の接触しない就労環境

Cさんはこれまでバリバリと働かれていましたが、ブルガダ症候群を発症。年齢を重ねるにつれ、ワークライフバランスの見直しも考えていました。

キャリアアップと年収アップ、さらに残業の少ない環境を目指して障害者雇用枠を検討。複数の企業様からお声がかかりました。無事に転職を成功され、家族との時間も増えました。

 
キャリアアドバイザー
「障害者雇用枠は年収が低い」というイメージはありませんか? ホワイトな環境で年収500万円以上を目指すことも可能ですよ!

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心臓機能障害があっても仕事はできる!自分の働きやすい環境を見つけよう

心臓機能障害があっても仕事はできる!自分の働きやすい環境を見つけよう

心臓機能障害を発症したからといって、すぐに仕事を辞めたり「もう働けないんだ」と諦めたりする必要はありません。体の状態がよくなり、働きやすい環境が整っていれば、同じ職場に戻ることも十分可能です。

しかし、肉体的な負担の大きい職場などで働いている方は、転職したほうがよい場合もあります。自分に適切な職場を見つけて、負担をかけずに楽しく働きましょう。

障害を抱えながら働く上では、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。

今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。

「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でもかまいませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。