会社の外で働く「在宅ワーク(テレワーク・リモートワーク)」が広がっています。
障害をお持ちの方にとっても「通勤の負担が減る」「自分に合った環境で仕事に集中できる」などのメリットがたくさんあります。
一方で「求人や給料は?」「コミュニケーションの取り方が難しそう」といった疑問や不安もあると思います。今回は企業に所属しながら働く「在宅ワーク」のリアルに迫ります。
通勤しなくてOK「在宅ワーク」とは?
新しい働き方として注目されていた「在宅ワーク」。
今や家で軽作業をおこなう「内職」や「フリーランス(自営業)」の方のための働き方だけではありません。
2019年度には5,000人を超える方が雇用型テレワーカーとして働くようになっており、新型コロナウイルス流行の影響もあり2020年以降はさらに広がりを見せました。
まずはこの「会社の外で働くお仕事」の種類や言葉の意味を確認していきましょう。
参考:国土交通省『平成31年度(令和元年度)テレワーク人口実態調査-調査結果の概要- 』
「在宅ワーク」とは?
自宅にいながらする仕事の総称を「在宅ワーク」といいます。
企業に雇われているかどうかの雇用形態は問いません。
これまでは「在宅ワーク」というと自営業の方が自宅をオフィスとして働いたり、個人事業主としてブログで収入を立てたり、主婦の方がスキマ時間でアンケートに答えたり……といったイメージが強かったのではないでしょうか。
最近では企業に雇われながらフルタイムで主幹業務に携わる「在宅ワーク」も増えています。
在宅勤務
「在宅勤務」は雇用されている方の勤務形態を指す言葉といえます。
本来出社するべきオフィスなどがあり、「通勤」の対比として使われます。
「リモートワーク」とは?
オフィス・仕事場から離れた場所で働くことを「リモートワーク」といいます。英語の「romote =離れた・遠隔」と「work=仕事」を組み合わせた言葉です。
「在宅ワーク」「在宅勤務」が家でおこなうニュアンスが強い一方、「リモートワーク」や次で紹介する「テレワーク」は「いつでも・どこでも」働けるというイメージがあります。
「テレワーク」とは?
「テレワーク」とは「リモートワーク」と同じく会社から離れた場所(「tele = 離れたところ」)で働く働き方です。
総務省の資料では以下のように定義されています。
テレワークとは、ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方です。
パソコンやタブレットなど情報機器を使う側面がより強調されていますね。
2021年現在では「働き方改革推進支援助成金」などもあり、企業のテレワークを推進しやすい精度なども後押しになっています。
参考:厚生労働省『働き方改革推進支援助成金(テレワークコース) 』
「サテライトオフィス」とは?
本拠地のオフィスとは別に、離れた場所に設けた場所を「サテライトオフィス」と言います。
あるいは複数の企業や個人が共同利用するタイプの作業スペースを指すこともあります。
まるで「衛星(=satellite)」のように、都心の一等地に本社を構え、郊外・地方に事業所としてサテライトオフィスをおくケースも。
労働者は自宅から近距離のサテライトオフィスに通うことが多いです。人との交流や整備された情報環境などのオフィスの良さもありつつ、通勤のストレス軽減など「いいとこどり」の働き方だといえるでしょう。
障害者雇用の「在宅ワーク」って?
障害者雇用でも「在宅ワーク」のお仕事はあるのでしょうか?
答えは……あります!
テレワークが広まるにつれて、企業に雇われて働く「在宅ワーク」型の求人もどんどん増えてきています。
「在宅ワーク」のメリット
在宅ワークの最大のメリットは「通勤がなく、空間・時間の制約から解放される」ことでしょう。
通勤のストレスがなくなり「出勤が安定した」、「長く勤められた」との声も聞かれます。
以下は、「在宅ワーク」を希望される方の一例です。
- 身体障害をお持ちで通勤が困難な方
- 精神障害をお持ちで通勤にストレスを感じやすい方
- 発達障害などの感覚過敏から自分にあったオフィス環境で働きたい方
- 地方にお住まいで、通勤圏内での求人が少ない方
- 育児や介護で時間の制約がある方……など
聴覚障害や視覚障害の方も必要な機器をそろえれば、問題なくテレワークをすることができます。
また、対面で直接人と関わることが少ないので「人間関係のストレスが軽減された」と感じる方も多いようですね。
「在宅ワーク」のデメリット
「障害者雇用の在宅ワーク」のデメリットは通勤型のお仕事と比較して「求人数が少ない」・「年収が低い」傾向にあることです。
お仕事探しをする際は「在宅ワーク」のメリットと天秤にかけながら考えてみてください。
またテレワークに向いていない方はこのような方です。
- たくさん稼ぎたい
- 自己管理が苦手で、オン・オフの切り替えが付けられない
- 対面で活発にコミュニケーションを取りたい
- チャット等のテキストのみのやり取りに大きな苦手意識を感じる
注意点としては、働いている方に何かあった時すぐに駆け付けられるようにと、応募要件が「会社から遠すぎないこと」と定められており、求人は都市部在住の方に集中しがちなことです。
しかし、地方在住の方もフルリモートできる可能性もありますので、あきらめずにお仕事を探してみてください。
【求人事例】どんな仕事があるの?給料は?
まず「テレワーク」と名の付くものはPCを使った仕事が大多数を占めます。
障害者雇用の場合は職務範囲が厳密に限定されているものが多く、「事務アシスタント」などの職種が多いです。
しかし中には翻訳やコンテンツ制作などユニークなものやPCを使わない「保育園のお手紙・制作」のような軽作業など、お仕事の幅も広がっています。
お給料は、通勤型と比較して低めの傾向にはありますが、時には年収500万円クラスの求人が出るケースもあります。
「障害者雇用枠のお仕事をお探しの方の求人サイト BABナビ」に掲載されている実際の求人票を例にお仕事内容や年収などをみていきましょう。
※この情報は2022年4月6日現在の情報です
事例1:事務アシスタント(人事・営業)

在宅ワークで最も多い職種が「事務アシスタント職」です。
たとえば人事総務系の事務アシスタントであれば「勤怠管理・給与計算・社会保険の手続き」などを在宅で行うことになります。
PCは私物を利用してもらう場合が多いですが、こちらの求人の場合は会社からPCが貸与されます。
ベンチャー・IT企業だとテレワーク導入が進んでおり、企業側も慣れているので、ストレスなく「在宅ワーク」を始められる可能性が高いですよ。
事例2:営業アシスタント・電話業務

社名を伏せて、ピンポイントにスキルがマッチする人材を探している「非公開求人」もあります。企業から信頼されている人材エージェント経由でしか応募ができないレアなお仕事である可能性が高いです。
こちらは有名企業の商品を取り扱うため非公開となっています。
人とコミュニケーションをとるのが好きな方にオススメのテレフォンアポインターのお仕事です。
営業に関心がある方やしっかりした研修を受けてキャリアアップしたい方にもぴったりです。
事例3:SEなどWeb系職種

SEやプログラマーは個人で進められる仕事も多いので、会社も自宅も変わらずに落ち着いて働けます。
専門知識が必要なので、給料の下限も高いケースが多いです。
今後もIR人材は多くの企業から必要とされます。働きながらキャリアアップを目指せるので、「手に職をつけたい」「実力主義の会社で成果を出して稼ぎたい!」と思っている方にはぜひ検討していただきたい職種です。
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在宅ワークの1日~密着レポート~
より「在宅ワーク」のイメージをもってもらえるよう、テレワーク支援サービス「エンカク」を使った「1日のお仕事の流れ」をご紹介します。
どのように仕事を進め、コミュニケーションをとっているのか詳しく解説します。
仕事の準備
お仕事開始の前に、自宅の働く環境をチェックしてみましょう。
☑ほどよい明るさの照明・ディスプレイ調整で「目の疲れを防ぐ」
☑機器の配置や向き、工夫して「肩こりを防ぐ」
☑椅子や机を見直し、正しい姿勢の作業で「腰痛・疲労を防ぐ」
☑職場と同じく整理整頓も心がけて「気のゆるみを防ぐ」
より詳しい情報は厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生 管理のためのガイドライン」を参考にしてください。
勤務開始(勤怠打刻・体調管理)
朝、出勤時刻になったらPCを立ち上げてログインし、勤怠ボタンを押します。
「エンカク」では体調管理機能もついているので、自分から体調のことを言い出しにくい方もボタン一つで上司に知らせることができるので無理をしすぎることなく働けます。
長時間の通勤や満員電車のストレスがなく、朝から良いスタートがきれますね。
パジャマのまま作業を開始するのではなく、オフィスと同じような服に着替えたりメイクをしたりするとうまく切り替えができますよ。
チャットを確認してお仕事開始
チャットで朝の挨拶をして、今日のタスクや進捗の確認をします。
仕事の指示はチャットやメールで連絡を受けたりするので、「作業に集中しすぎて見落とした」といったことがないように、時間を決めて定期的に見るようにしましょう。
相手の様子をうかがいながら声がかけられるオフィス出社と異なり、テレワークではレスポンスに時差があることも注意です。
タイムラグがあっても自分で調べながら仕事を進めていく力も必要になってきます。
質問する時間を決めて、投げかけるのも有効です
作業開始:データ入力など
在宅ワークでは、基本的に一人でサクサク進めるお仕事が中心です。
最近は「録画された動画にテロップ用の文字起こしをする」ような仕事も増えています。
できあがった成果はクラウドにアップロードして、「調査報告完了」の連絡も入れましょう。
休憩
8時間勤務または6時間勤務の場合は、トータルで1時間休憩がとれることが多いです 。
集中のしすぎに気を付けて、適度に小休憩をとるようにしましょう。
昼食などで長時間離席する場合は「休憩に入る/休憩を終了して業務に戻る」とチャットなどでお知らせをします。
休憩時間は軽く身体を動かしたり、外に出て日光を浴びたりするとほどよくリフレッシュにもなって良いですよ。
お仕事再開:ビデオ会議やeラーニングを受講することも
休憩が終わったら、しっかり切り替えて午後もお仕事を頑張りましょう。
勤め先によってはビデオ会議などに出席してアイデアを求められたり、面談・1on1などで仕事の相談ができる場合も。
またある日は、eラーニングで動画を見ることもあります。
スキルアップをしてどんどん効率的に仕事を進められるようにしましょう。
業務終了
定時まで働いたらお仕事終了です。
日報を書いたり今日の業務の振り返りをしましょう。
「エンカク」では一日の最後に再度健康チェックがあります。自分でも気づかないうちにストレスの負荷がかかりすぎていないか確認できるのはよいことですね。
移動時間がないので、育児中の方は子どもを保育園に迎えに行ったり…といった予定が立てられやすいのも嬉しいポイントです。
事例:上肢障害をお持ちの方
実際にエンカクを使われている方のインタビュー動画も紹介します。
上肢障害のため慢性的な腕の痛みがあり、通勤が苦痛に感じていましたが……
家で働けることで特別な障害配慮が不要になり、自分のもっている力を十二分に発揮できるという方もいらっしゃいます。
関連サイト:株式会社D&I「エンカク」
「在宅ワークに挑戦したい!」でもまだ不安が…
在宅ワークの働き方のイメージはもてましたか?
慣れない働き方に最初はもちろん戸惑いもあるでしょう。しかし受けられる恩恵もたくさんあるとも感じていただけたのではないでしょうか。
D&Iでは「ワークイズ」(※)にて在宅で就労移行トレーニングをおこなえたり、「DIエージェント」の人材紹介で希望にあったテレワークのお仕事の紹介を受けられたりできます。
「通勤」がお仕事のネックになっている方は、ぜひ一度「在宅ワーク」も選択肢に入れてみてください。
※現在「ワークイズ」の就労移行トレーニングは東京・神奈川・千葉・埼玉にお住まいの方を対象としております。

(株)D&I創業者、代表取締役(2021年~)。15年以上の障害者雇用コンサルタント経験をもつ。 テレワーク型障害者雇用サービス「エンカク」の展開や地方創生×テレワークをテーマとした自治体連携等も推進している。