一般枠から障害者枠になると給料が下がる?仕事を続ける場合と転職の場合を解説

障害を抱える方にとって、障害の度合いによっては、日常生活に限らず仕事においても困難が生じる場合があります。もとは一般枠で働いていた方が障害を負い、仕事に支障をきたしてしまうこともあるでしょう。

そこで、障害者枠は一般枠よりも給料が下がるのかという点や、仕事は続けられるか、それとも転職すべきかなどを解説します。

障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別の病気を発症してしまったりする例も少なくありません。

そうならないように、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただければ幸いです。

障害者枠(障害者雇用)とは

障害者枠(障害者雇用)とは

障害者枠(障害者雇用)とは、「障害者雇用促進法」に基づき、障害者手帳を所持する障害者を採用するものです。

たとえば、民間企業では障害者の法定雇用率が2.3%と定められており、43.5人以上の従業員がいる場合、最低1人障害者を雇用しなければなりません。なお、この法定雇用率は、令和6年度からは2.5%、令和8年度からは2.7%と段階的に引き上げられる予定です。

引用元
障害者の雇用の促進等に関する法律 | e-Gov法令検索
事業主の方へ|厚生労働省
令和5年度からの障害者雇用率の設定等について|厚生労働省

 
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なお、国及び地方公共団体等では、同じく段階的に、障害者雇用率が3.0%(教育委員会は2.9%)に引き上げられることになっています。

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一般枠との違い

一般枠(一般雇用)とは、障害のあるなしなどに関係なく開かれている雇用枠のこと。対象者が限定されていないため、障害者でも応募は可能です。

一般枠から障害者枠に変わると不利になる?障害者枠で働くメリットや注意点

一般枠から障害者枠に変わると不利になる?障害者枠で働くメリットや注意点

もともと一般枠で仕事をしていた人が中途で障害を抱えた場合、どのような扱いになるのでしょうか。仕事を続ける場合と転職する場合に分けて、メリットや注意点に触れながら解説します。

仕事を続ける場合

障害による不当な差別は法律で禁じられています。そのため、障害を負う前と同じ仕事を続け、仕事内容が以前と変わらないのであれば、一般枠で給料もそのままです。

ただし、障害によって前と同等の仕事ができなくなるケースもあり、その場合は本人の承諾を得てから配置替え(およびそれに伴う給与変更)などの措置が取られます。

障害者枠への切り替えも可能

障害者手帳の交付を受けた場合、障害者枠に切り替えてもらって元の仕事を継続する方法もあります。障害の状況を考慮し、支援機関や職場と相談しながら決めましょう。場合によっては、障害年金と給与の併給も可能です。

周囲の「合理的配慮」が必要

障害によって服薬や通院の必要が出てきたり、仕事への対応に影響が出たりすることもあります。仕事を続けるにあたって、周囲からの理解と合理的配慮を得ることが欠かせません。

本人もわからないことが多いので、適宜話し合いなどを行い、本人も周囲も働きやすい環境づくりを行うことが重要です。

不当な解雇はNG

「障害者になった」という理由だけで一方的に仕事を辞めさせられるのは、前述した「不当な差別」に該当するためNGです。しかし、正当な理由によって正しい手続きが取られ、解雇されてしまう可能性もあることは否めません。

 
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以前と同じ仕事をしたくても、障害によって思うように働けず苦しむ方もいらっしゃいます。そのような場合は、転職も視野に入れて検討してみましょう。

転職して別の職場で障害者枠で働く場合

障害者手帳を交付してもらい、元の仕事を辞めて障害者枠の仕事に転職する方法もあります。

給料が下がる・職場環境が悪くなるというマイナスイメージを持つ方もいるかもしれませんが、本人の状態やスキルなどによっては向上するケースもあるので、悲観する必要はありません。

一方で、収入ばかりを重視してうまくいかないパターンもあるので、以下で2つの事例を紹介します。

年収80万アップ&職場環境も良好!Aさんの事例

一般枠から障害者枠への転職で、職場環境の改善と年収アップを同時に叶えた事例も多くあります。その中の1つとして、DIエージェント利用者のAさんの事例をご紹介します。

<<Aさんのプロフィール>>
年齢:30代半ば 障害内容:精神障害 うつ
経験:人材会社にて営業を5年、保険会社にて営業事務を3年
前職年収:250万
転職後の年収:330万

<転職検討~転職開始まで>
Aさんは、今回の転職の数年前に上司からのパワハラを起因としてうつ病を発症。その後も、「障害者枠への転職ではキャリアダウンになるのでは?」という懸念から、障害を開示せずに一般枠の派遣会社で就業されていました。

しかし、就業先での残業時間の増大により体調が悪化し、不安を覚え転職を決意。残業配慮が徹底されている環境で就業したいという思いから、初めて障害者枠での転職活動を開始されました。

<転職活動中>
転職活動では、障害者枠専門の転職エージェントである当サービス「DIエージェント」をご利用いただきました。

専任のキャリアアドバイザーからは、Aさんの今回の転職背景をふまえ、年収・業務内容・就業先の環境等の希望条件の整理をご支援。

Aさんは、カウンセリングを経て、(1)残業配慮があること、(2)経験を活かして、背伸びせず働ける業務内容であること、(3)最低限の生活費を考え年収250万以上が見込めること、の3点を重視しながら求人を選びました。

<内定~内定承諾まで>
結果的に、大手メーカーの総務事務にて年収330万のオファーを獲得。内定先の会社では、前々職のマネジメント経験や前職の事務経験を評価され、総務部の次期リーダー候補として、前職と比べ80万アップの年収にてオファーをもらうことができました。

また、内定後のオファー面談で、障害への配慮環境が整っていることも確認でき、Aさんは安心して内定を承諾しました。

年収にこだわって入社したものの、早期退職に..。Bさんの事例

<<Bさんのプロフィール>>
年齢:40代後半 障害内容:精神障害 統合失調症
経験:家電メーカーでの営業を10年、飲食店の店舗運営業務を8年、派遣会社で一般事務を1年
前職年収:400万

<転職検討~転職開始まで>
30代前半のときに長時間残業を起因として統合失調症を発症。Aさんと同じく、収入維持を目的にその後も一般枠で約10年勤務。しかし、残業により症状再発の傾向が見られたため、医師からの勧めもあり障害者枠での転職を決意されました。

<転職活動中>
転職活動は、求人サイトおよび障害者枠専門の某転職エージェントに登録。

症状の再発が見られたとはいえ、一般枠で10年就業してきたことへの自負があったBさんは、とにかく待遇の良い求人を紹介してもらえるようにアドバイザーに頼み込み、年収重視で求人を選んでエントリーを進めていきました。

<内定~内定承諾まで>
Bさんは無事に2社の内定を獲得。X社は医療機器メーカーでの営業事務ポジションでオファー額は年収350万。Y社は大手銀行の総務事務ポジションでオファー額は年収400万。

面接時に好印象だったのはX社で、障害への希望配慮について細やかにヒアリングしてくれ、入社後の相談窓口等を検討してくれる企業でした。一方、Y社の面接では、障害に関しては現在の体調や通院回数等、最低限の情報しか質問されませんでした。

一瞬の迷いはあったものの、最終的には年収の高さが決め手となり、BさんはY社の内定を承諾されました。

<入社後、ミスマッチが発覚>
しかし、いざ入社してみると、初めて触れる社内システムを利用した全社員分の勤怠情報チェック、来客や電話応対、郵送物管理など、慣れない業務を多岐にわたって任されることになりました。

Bさんは業務負荷を感じ、わずか入社3か月でご退職。年収が魅力とはいえ、入社後の就業環境をよく確認せずに入社を決めたことを後悔されていました。

障害者枠は入社後にミスマッチによる離職が多い

障害者枠は入社後にミスマッチによる離職が多い

前述したAさん・Bさんの例からわかるように、一般枠から障害者枠への転職でも年収アップや年収維持は可能といえます。また、最近では年収400万以上が見込める好待遇の求人もあり、「障害者枠=年収が低い」という認識が変わりつつあります。

しかし、障害者雇用においては入社後のミスマッチによる離職率も低くありません。

厚生労働省が公開している「平成30年版厚生労働白書」のデータによると、たとえば精神障害者の離職の個人的な理由として、下記のようなものが挙げられています。

  • 賃金、労働条件に不満・・・29.7%
  • 職場の雰囲気・人間関係・・・33.8%
  • 仕事内容が合わない(自分に向かない)・・・28.4%

「賃金、労働条件に不満」は、経験を積むにつれて更にキャリアアップしたいという前向きな考えによる転職動機も含まれるのに対し、「仕事内容が合わない(自分に向かない)」という理由からは、「こんなはずじゃなかった」「入ってみたら合わなかった」という、入社後に判明した残念なミスマッチであることがうかがえます。

そのため、転職活動で求人を選ぶ際には、表面的な待遇面のみでなく、配属先の状況や障害への配慮環境、自身に合った業務内容かどうかなどを慎重に考慮することが必要です。

引用元
厚生労働省「平成30年版厚生労働白書 精神障害者の離職の理由」

オープン就労/クローズ就労の違い

オープン就労/クローズ就労の違い

障害を負って転職する場合、オープン就労とクローズ就労の2つのパターンがあります。それぞれの違いや特徴を押さえましょう。

オープン就労

オープン就労とは、障害があることを公表して働く方法です。障害についてはじめから知ってもらえるので、配慮を得られる可能性があります。職場の上司や同僚に相談したり、周りからのサポートを受けたりしやすいでしょう。

しかし、職種やできる仕事内容などが限定されてしまう場合もあります。

クローズ就労

クローズ就労とは、障害を公表せずに働く方法です。職種が幅広く、障害を理由に不採用になることがありません。

ただし、実際に就労してから、配慮を得られず苦労するパターンもあります。障害について伝えていないがために、ストレスが溜まってしまうこともあるので、注意が必要です。

 
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このように、いずれもメリットと注意点があるので、自分に合った働き方を選択することが重要です。

一般枠から障害者枠への転職で利用できるサービス

一般枠から障害者枠への転職で利用できるサービス

もともと一般枠で働いていた方が障害を負い、転職を考える際には、求職活動をサポートしてくれるサービスを活用するのがおすすめです。どのようなサービスがあるのかをチェックしましょう。

ハローワーク

ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。

ハローワークには専門援助部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置され、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。

一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。

参考
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。

センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。

障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。

引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。

利用者にとって、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得でき、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。

全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。

なかぽつは、全国に337カ所(令和5年8月22日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。

障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。

引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和5年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省

障害者雇用に強い転職エージェント

障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。

障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。

高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。

就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。

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一般枠から障害者枠に変わることで、より働きやすくなる可能性も!

一般枠から障害者枠に変わることで、より働きやすくなる可能性も!

一般枠と障害者枠を比べてしまい、「一般枠のほうが給料がいいのでは」「障害者枠だと待遇が悪くなるのでは」といった不安がある方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。また、状態などによりますが、元の仕事を続けることも可能な場合があります。

大切なのは自分に合った職場で働くこと。転職する場合は、支援してくれるサービスを有効に利用しながら、働きやすく収入にも満足できる仕事を探しましょう。

障害を抱えながら働く上では、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。

今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。

「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でもかまいませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。