下肢障害とは、下半身(股から足にかけて)の機能が制限されている障害です。麻痺や欠損などがあり、障害の度合いによっては、日常生活に限らず仕事においても困難が生じる場合があります。
そこで、今回は、下肢障害の方におすすめの職種や仕事の選び方、実際に就職・転職活動を進める方法について解説します。
障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別のご病気を発症してしまったりする例も少なくありません。
そうならないように、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。
下肢障害とは?
下肢障害は、脚や足の指の切断・下半身の骨の変形など、下肢に機能障害を抱えた状態のこと。杖や義足、車椅子などを利用している方も多いです。失われた機能の度合いや欠損の状況により、1~7級の等級に区分されます。
1~6級に該当する場合、障害者手帳を交付してもらうことが可能です。また、状態によっては障害年金が受給できる場合もあります。
下肢障害のある方が仕事をする上でぶつかる悩み・壁とは
ここでは、下肢障害を抱える方の仕事における主な悩みとして、4つの点を解説します。
毎日の通勤が大変
下肢障害の方が通勤する際、電車やバスなどの公共交通機関を利用すると、特にラッシュ時には多くの人で混雑するため、危険が多く大変です。駅・バス停から職場までの道中も、雨などの悪天候で負担が増えたり、距離があると時間がかかったりしてしまいます。
マイカーで通勤できれば体や時間の負担は軽減されやすいですが、車通勤ができない職場もあるため、仕事探しが制限されてしまうでしょう。
トイレが不便だったり、ドアの開け閉めが出来なかったりすることがある
下肢障害を抱えている方にとって、身体障害者専用のトイレがない、手すりが設置されていないなど、職場での環境の配慮がないことも業務の妨げになります。
また、ドアの開け閉めをするにしても、開く方向やたてつけ状態によっては困難です。そのため、オフィス内での移動などに時間がかかってしまい、相手の理解度によってはマイナスに取られる場合もあります。
一見して分からない場合、周囲の理解が得られにくい
脚のしびれや麻痺など、目で見るだけではわかりづらい障害の場合は周りの人に困難を抱えていることが理解されにくいこともあります。そのため、「楽な仕事を選んでいる」「できるのにやろうとしていない」と思われるケースも。
前もって自分の状態を説明したり、困ったときにはできる範囲を伝えたりして、周囲からの理解と協力を得ましょう。
作業に時間がかかるなど、周囲と比べて引け目を感じてしまう
下肢障害を抱えていると、移動を伴う作業などの場合、どうしても時間がかかってしまいます。他人と比べて「できないこと」も多く、精神的負担を抱える方も少なくありません。
また、周囲からの理解は必要ですが、過剰に声かけやサポートをされることで、逆にプレッシャーや引け目を感じることもあります。
下肢障害の方でも働きやすい環境とは?
次に、下肢障害をお持ちの方はどんな環境だと働きやすいのか、職場探しのときにチェックしたいポイントを解説します。
障害への理解のある環境
まず、障害に対する理解の深い職場であることは欠かせません。下肢障害の方でも精神的負担を抱えることのないように、理解してくれる人々の存在が重要です。
過去に障害者を雇用した実績がある、もしくは障害者雇用を積極的に行っている会社は働きやすいといえるでしょう。仮に実績がなくても、社風がよくさまざまなバックボーンの方が勤務している職場もおすすめです。
一人ひとりの状態に応じた配慮をしてくれることが多いため、しっかりチェックしておきましょう。
会社内の設備環境
社内がバリアフリーになっているかどうかも必須項目。ただし、障害の種類や状態によって適切な整備は異なります。たとえば、視覚障害者には必要な点字ブロックも、歩行に困難を抱える下肢障害の方にとっては妨げになる可能性があるためです。
また、段差にはスロープがついているか、階の上り下りのためのエレベーターがあるか、仕事をする部屋だけでなくトイレやロッカーなどにも配慮がなされているか、といった点も確認しましょう。
サポートを求めやすい職場の雰囲気
ヘルプを出しやすい職場環境であることも大切です。仕事中に困難が生じた際、過剰な遠慮をせずにサポートをお願いしやすく、作業効率も向上しやすくなります。
下肢障害がある方に向いている仕事とは?
ここまでの内容も踏まえつつ、下肢障害をお持ちの方に向いている職種や業務をご紹介します。
事務系・コールセンター
事務の仕事は、ワードやエクセルなどを使用したり、経理業務を担ったりと、座ったままパソコンや書類を使って手作業で行うものが多いです。コールセンターは電話受付が主な業務のため、業務中の移動もほとんどありません。
そのため、下肢障害があっても仕事に及ぼす影響が少なく、適任といえるでしょう。
ITエンジニア
技術職であるITエンジニアは、主にPCと向き合ってキーボードとマウスの操作だけで済む仕事です。下肢障害の方でも、専門の知識や技術があれば活躍できるチャンス。スキルアップすれば収入の増加も見込めるでしょう。
データ入力
データ入力も、事務職と同様に座ったままの作業が大半のため、オフィス内での移動などの負担がかかりません。下肢障害をお持ちで、実際にデータ入力業務で活躍している方は多数いらっしゃいます。
リモートワーク・完全在宅勤務でやれる仕事
リモートワークや在宅勤務という働き方も増えています。下肢障害をお持ちの方も自分で勤務形態を選ぶことができ、通勤時間や移動のことを考えなくて済むなどの点がメリットです。
下肢障害がある方の仕事選びのポイント|成功への秘訣
最後に、下肢障害の方が仕事選びを成功するためのコツを押さえましょう。
ハローワークを利用する
ハローワークとは、就労を支援する公的機関で、正式名称は「公共職業安定所」です。窓口や施設に設置してある機械を使用し、全国の求人情報を検索することができます。
キャリアプランのイメージがつかめない・まだ仕事探しの方向性が決まらないという方は、窓口で職員に相談するとよいでしょう。アドバイスを受けつつ、仕事探しを支援してもらえます。
また、ハローワークでは、障害者の方向けに専用窓口を用意。障害の深い知識を持つ支援員から、仕事に関する情報の提供や就職相談など、さまざまなサポートを受けられます。
地域障害者職業センターを利用する
地域障害者職業センターとは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」が運営する職業リハビリテーションの施設。全都道府県に1カ所以上の設置が義務付けられており、障害をお持ちの方の就職に向けたサポートも行っています。
職業準備支援・ジョブコーチ支援・事業主に対する相談や援助など、総合的に障害者の就労を応援してくれます。
引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構
就労移行支援事業所を利用する
就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を希望する障害者の方の就労をサポートしてくれる施設です。トレーニングや実践訓練などを通じて、就職に必要なスキルを身につけることができます。
就職後も継続に向けたさまざまなサポートをしてもらえるため、巡り会えた職場に長く定着しやすいでしょう。
障害者向け支援のある転職エージェントを利用する
障害者雇用を専門に取り扱っている、転職エージェントを利用する方法もよいでしょう。障害をお持ちの方の採用を前向きに行う企業の情報を多く持っており、非公開の求人情報を得られる場合もあります。
高い専門知識を持ったアドバイザーが、就職前の準備から就職後の支援までしっかりアシスト。二人三脚で自分にぴったりの仕事探しができるでしょう。
無理なく長く働くために、自分に合った環境や働き方を検討しよう
下肢障害をお持ちの方は、仕事において障害を要因とするさまざまな悩みを抱えがちです。しかし、下肢に障害があったとしても、働ける場所やできる仕事は必ずあります。支援サービスも活用しながら、自分に適した職場を見つけましょう。
なお、障害を抱えながら仕事をする上では、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。
今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。
DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。
専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。
「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でもかまいませんので、ぜひお気軽にご相談ください。
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社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。