平衡機能障害とは平衡感覚に問題が生じる障害です。その度合いによっては、日常生活に限らず、仕事においても障害が理由で困難が生じる場合があります。
そのため、障害の特性に合わせた職種選びや働きやすい環境の整った会社選びが必要です。
そこで今回は、平衡機能障害の方にオススメの職種・働き方など仕事選びのポイントや、実際に就職・転職活動を進める方法について解説します。
障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。
合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別の病気を発症してしまったりする例も少なくありません。
そうならないよう、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。
平衡機能障害とは
人間には、平衡機能という姿勢を保つためのバランス機能が備わっています。なんらかの原因でこの機能が正常に働かなくなり、めまいを起こしたり起立や歩行が困難になったりする障害が平衡機能障害です。めまいやふらつきだけでなく、吐き気を伴うことも。
目をつむった状態で立っていられない、目を開けていてもまっすぐ歩けないなど、困難のレベルによって2種類の等級に分けられます。原因は、耳鼻にまつわる病気や脳機能が関係している場合などさまざまです。
平衡機能障害の種類と原因
平衡機能障害の原因は、病気や障害、ストレスなどさまざまです。ここでは、平衡機能障害の原因となるいくつかの例を紹介します。
メニエール病
内耳には、蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる音を伝達する渦巻状の器官があります。蝸牛は3つの管からなっており、それぞれにリンパ液が入っている状態です。
メニエール病は内リンパ水腫といわれることもある病気で、なんらかの理由によってリンパ液の流れが悪くなり、この蝸牛に過剰に水がたまることによって、耳鳴りや難聴を伴うめまい発作を繰り返します。
メニエール病の原因や治療法などの詳しい情報は、以下の記事で詳しく解説していますので併せてご覧ください。
メニエール病を克服するには?原因や治療法、症状が仕事に影響する場合の対処策などを解説
めまい
めまいの原因はさまざまで、上述したメニエール病以外にも耳鼻咽喉科の疾患があるケースも多いです。また、単発のめまいでは、貧血が原因の可能性もあります。
心因的なストレスによって引き起こされることもあるため、問診やMRIなどの画像診断、平衡機能検査などを行い、原因の特定をするのが一般的です。
良性発作性頭位めまい症
耳の中には耳石(じせき)と呼ばれる石が入っており、身体を右へ左へと傾けた時、この石が動くことで縦横の向きを感知しています。内耳は三半規管と耳石器に分かれていますが、耳石が三半規管に迷いこむことでリンパ液が動き、バランス感覚に異常をきたしている状態です。
迷い込んだ耳石を元の場所に戻すことができれば治療できますが、戻しにくい場合はリハビリなどを併用して治療を行っていきます。
前庭神経炎
ウイルス感染が原因として考えられており、内耳と脳をつなぐ前庭神経に炎症を起こすことで発症します。前庭神経は、三半規管や耳石の感知したバランス感覚を脳に伝達する機能をもっており、片耳だけに炎症が起きることによって、突然強い回転性のめまいが起きるのが特徴。
めまいは数日から数週間続きますが単発性で、強い自覚症状があるため入院が必要なこともあります。耳石の動きと関係なく起こるものなので、動かずにじっとしていてもぐるぐる回るように感じ、吐き気を伴うこともあります。
メニエール病と違い、難聴や耳鳴りなどの症状はなく、また脳神経の症状もありません。
脳性の平衡機能障害
内耳機能の問題やウイルス感染だけが原因ではなく、脳の障害からくる平衡機能障害もあります。脳梗塞の後遺症や脳性麻痺などが原因のケースも。
急性の強い平衡機能障害の場合、眼振がなくても小脳梗塞が起きている可能性があるため注意が必要です。高齢者の転倒の原因にもなり、転倒によって重大な怪我に繋がることもあります。
平衡機能障害の障害程度等級の基準
平衡機能障害をお持ちの方が、身体障害者手帳を取得する際に該当する等級について紹介します。平衡機能の等級の判断基準は、おもにふらつきの軽重です。そのため、判断のために目をつむった状態と目を開けた状態での起立や歩行の検査があります。
なお、障害福祉手帳の等級と障害年金の等級は別ものであり、障害年金の等級は2級と3級、障害手当金です。
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等級5級
身体障害の等級には1~6級までありますが、平衡機能障害が該当するのは5級と3級です。
5級の判定基準は、目を閉じた状態でまっすぐ歩くのが困難であり、10メートル以内に転倒したりよろめいたりして歩行できなくなる状態です。ただし、起立の維持は可能で、目を開けていれば10メートル以上歩くことができる場合に該当します。
等級3級
目を閉じた状態で起立を維持することができない状態で、目を開けていても10メートルをまっすぐ歩くことができず、転倒したりよろめいたりしてしまう状態です。そのため、3級の方の就労は大変困難だと考えられます。
一方で、障害職業複合センターのデータによると、3級に該当する平衡機能障害をお持ちの方の雇用事例として、社内のスロープや手すりの設置、職場に近い住居の確保、就業機器の導入など、企業側の改善が行われたとされており、企業側の受け入れ体制があれば就労することも可能です。
引用元
障害職業複合センター|平衡機能障害
平衡機能障害をお持ちの方が働きやすい職場とは
起立や歩行に困難がある平衡機能障害をお持ちの方が就労するためには、働きやすい職場環境が整っていることが大切です。平衡機能障害をお持ちの方が働きやすい職場の条件とはどんなものでしょうか。詳しく見てみましょう。
配置や環境の配慮
適切な人員配置や環境の配慮があることは、働きやすさにつながります。障害を考慮した仕事内容であることや、できるだけ座った状態で完結する環境作りなど、積極的に配慮をしてくれる職場であれば、安心して働くことができるでしょう。
たとえば社内での移動が多い場合、転倒などのリスクが増えることが考えられます。その場合、デスク周りに必要なものが配置されていればリスクを避けることができるはずです。また、スロープや手すりの設置、椅子もひじ掛けや背もたれがしっかりしているものであれば、座位を保ちやすくなります。
能力開発の配慮
障害の特徴や困難を理解し、職務を継続していくために必要な業務の振り分けや本人の得意分野の能力開発に配慮があることも大切です。障害があるからと単純な業務しか振られないなど配慮の方向性が間違っていると、やる気をもって働き続けることが難しくなることもあります。
障害の特性によってできることとできないことを考慮したうえで、本人の能力を引き出したり伸ばしたりする取り組みがある職場であれば、生き生きと働くことができるでしょう。
勤務時間の配慮
起立や歩行に困難がある平衡機能障害をお持ちの方にとって、通勤ラッシュは危険を伴うものです。そのため、できるだけラッシュの時間帯を避けたり送迎をしてもらったりする必要があります。
通勤ラッシュを避けるために通勤時間をずらすことができるよう配慮してもらったり、フレックス制を導入している会社を選んだりすることで、通勤時に起こりえる不安を軽減することができるでしょう。
平衡機能障害をお持ちの方に向いている仕事
平衡機能障害をお持ちの方には、座った状態で多くの仕事が完結するデスクワークが向いています。身体的な負担が少ないことや自分のペースですすめやすいことなどを条件に選びましょう。
2023年に更新された障害者雇用実態調査を見ても、やはり実際の就業先として事務系の仕事がもっとも多いことがわかります。
またテレワークが可能な仕事であれば通勤の負担を大幅に減らせるので、テレワーク可能な仕事を条件に探すのもおすすめです。
政府統計の総合窓口e-Stat|平成30年度障害者雇用実態調査
障害者雇用枠の事例
障害者雇用枠の求人の事例をいくつか紹介します。実際にどんな求人があるのかを知っておくと、目指すべき方向性や身につけるべきスキルが明確になってきます。
障害者雇用枠の求人を専門に取り扱う求人サイトを覗いてみると、以下のような求人募集がありました。
- 一般事務
- 営業事務
- プログラマー
- システムエンジニア
- 電話オペレーター
- CADオペレーター
雇用形態は正社員からパート・アルバイトまでさまざまで、在宅勤務が可能な求人もいくつか確認できます。求人に「在宅勤務」の文字がなくても、交渉次第で可能になるケースもあるので、いろいろな企業にアプローチしてみることも大切です。
平衡機能障害をお持ちの方におすすめの仕事探しの方法
平衡機能障害をお持ちの方が仕事探しをする際に利用できる機関や民間企業を紹介します。
障害をお持ちの方が就職活動をする際は、相談したりアドバイスをもらえたりする機関を積極的に活用するのがおすすめです。
1.ハローワーク
職業案内や職業訓練を統括する国の機関であるハローワークでは、障害をお持ちの方向けの窓口が設置されています。ハローワークは誰でも無料で利用でき、障害者雇用専門の窓口には専門の知識をもった職員がいるので、仕事に関する相談をしたりアドバイスをもらったりすることも可能です。
就職先の紹介だけでなく、応募書類の作成や面接指導などのサポートを受けることもできます。
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2.地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、各都道府県に設置してある機関で、障害をお持ちの方の就業を支援します。「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」により運営されており、職業カウンセラーやジョブコーチのサポートを受けることが可能です。
障害をお持ちの方の就職に向けたリハビリテーションや相談・援助を行い、総合的な就労支援をしてもらうことができます。
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地域障害者職業センターの支援内容とは|障害者就業・生活支援センターとの違いまで解説
就労移行支援事業所
障害や病気をお持ちの方が、就労に必要な知識やスキルを習得するために作られた「就労移行支援制度」をもとに、就労に向けたトレーニングをしたり職場定着のサポートをしたりする施設です。
自分に合ったスキルを身につけ、就労支援員や職業支援員など、プロのサポートを受けながら仕事を探せるのがメリット。基礎訓練から終業後のフォローまでをしてくれる施設なので、キャリアプランが不透明な方でも安心して利用することができるでしょう。
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3.障害者専門の就職・転職エージェント
民間の就職・転職エージェントの中には、障害者雇用を専門にするものもあります。障害の知識と就職支援の経験が豊富なキャリアアドバイザーに相談しながら、きめ細かなサポートを受けつつ就職活動をすすめられるのがメリットです。
就職・転職エージェントは、登録や相談などすべて無料で利用可能。実績のあるエージェントを選べば、数々の障害者雇用枠の就職を成功させてきたノウハウがあるので、迷ったときにも的確なアドバイスをもらうことができるでしょう。
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障害者専門の人材紹介会社とは?利用するメリットやマッチングのコツ、おすすめの人材紹介会社を紹介
障害者専門の就職・転職エージェント「DIエージェント」とは
障害者雇用専門の就職・転職エージェントとして10年の実績がある「DIエージェント」。専任のキャリアアドバイザーが、就職成功に向けたさまざまなサポートを行います。
DIエージェントは、専任のキャリアアドバイザーによる詳細なキャリア診断でマッチング率を高め、ご希望に沿った求人の提案だけでなく、違う職種への可能性を探ったり企業への提案で求人開拓をしたりすることも。
障害をお持ちの方のフルリモートの就業・転職にも、数々の成功実績があるのが特徴です。下記記事では、フルリモート職種への転職に成功した事例を紹介していますので、是非参考にしてください。
地方でフルリモート。障害を感じさせないコロナ禍の働き方 [転職成功事例 Vol.5]
障害者雇用の頼れる機関を活用して長く続けられる仕事を見つけよう
平衡機能障害は、病気やウイルスなどによって突然発症することが多く、吐き気を伴うめまいやふらつきによって日常生活もままならくなってしまうケースもあります。
平衡機能障害は、程度や継続の有無によって障害認定を受けることができ、障害者雇用枠での就職が可能です。障害が原因で、就職を諦めてしまった方や仕事を辞めざるを得なくなってしまったという方は、DIエージェントを活用して経験豊富なキャリアアドバイザーと二人三脚で就活をすることで、可能性を広げることができるでしょう。
障害を抱えながら働く上では、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。
今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。
DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。
専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。
「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でも構いませんので、ぜひお気軽にご相談ください。
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社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。