ASD(自閉スペクトラム症)だと就職できない?就職活動のポイントや向いている仕事を紹介

ASDの方にはさまざまな特性があるため、就職できないと聞いたことがある方もいるかもしれません。しかし、理解や配慮をしてくれる職場もあります。

そこで、仕事を探すときにチェックすべきポイントや、適性のある仕事・不向きな仕事について解説します。就職活動をサポートしてくれるサービスも紹介するので、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みください。

ASD(自閉スペクトラム症)とは

ASD(自閉スペクトラム症)とは

ASDとは、先天的な脳機能の問題によって起きるとされる「発達障害」の一種です。かつて「自閉症」や「アスペルガー症候群」と呼ばれていたものが統合されて、「ASD」と呼ばれるようになりました。

ASDでは、コミュニケーションや対人関係に困難を生じる・特定のものに対するこだわりが強い・音や光などの感覚に敏感・同じ行動を反復して行うなどの特徴が見られる傾向があります。

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ASDの方は就職できない?仕事探しでチェックしたいポイント

ASDの方は就職できない?仕事探しでチェックしたいポイント

ASDの方は就職できないと言われる風潮があります。たしかに企業によっては採用に積極的ではないところもありますが、決して就職できないわけではありません。そこで、ASDの方が仕事を探すときにチェックしたい点を押さえましょう。

1. 自分の特性に配慮してもらえるか

同じASDの方でも一人一人特性が異なるので、まず、自分は何が得意で何が苦手なのかを把握しましょう。

さらに、就職先企業に障害への理解があるか、自分の特性に応じた配慮をしてもらえるかどうかは重要です。障害関連の研修を行っている企業や福利厚生が充実している企業は、比較的対応がよい可能性が高いので、そのような企業を選ぶとよいでしょう。

2. 細かいマニュアルがある仕事か

ASDの方は、マニュアルに則って仕事をするのが得意な傾向があります。そのため、明確なマニュアルやルールが決まっている仕事だと、適性が高いことから評価されやすいでしょう。マニュアルが整備されているか、企業に確認することも大切です。

3. 自分のこだわりや得意なことを活かせるか

ASDの方には、興味関心があるものに対しては、知識や情報を集めてしっかり記憶する傾向も見られます。そのような得意分野では、高い能力を発揮し活躍できるはずです。そのため、自分が興味を持ち、専門知識を極めた業界などで働くとよいでしょう。

4. 段階的に慣れていき長く働けそうか

体調や症状によっては、いきなりフルタイムで働くのが難しい場合もあります。そこで、時短勤務ができ、慣れたら徐々に時間を延ばしていけるような職場もよいかもしれません。

また、同じ職場に定着して長く働けるのがベストなので、続けられそうな環境かどうかも確認しておきましょう。

5. 自分に合っていない業務を避けられるか

ASDの方は、人とのコミュニケーションが多い・取引先との交渉があるといったような業務は不得手であることが多いです。また、想定外の事態が起きたときに臨機応変に対応するのも難しい可能性があります。

そのような苦手な業務を避けられるかどうかも、前もって確認しておくと安心です。

 
キャリアアドバイザー
上記のような点をチェックするとともに、就職活動の際は支援機関を利用し、プロに相談したりアドバイスを受けたりするのがおすすめです。ASDではありませんが、広汎性発達障害の方の転職成功事例もあるので参考にしてみてください

ASDの方が仕事で感じやすい困難

ASDの方が仕事で感じやすい困難

つづいて、ASDの方が実際に仕事を始めてからどんな点でつまづきやすいのかも知っておきましょう。

曖昧な指示や暗黙の了解などが理解できにくい

仕事で指示や説明を受けたときなどに、不明瞭な内容は理解しにくい傾向が見られます。また、言葉のニュアンスや身振りで内容を察したり、その場の空気を読んだりすることも難しいです。

そのため、職場の人々には、常にはっきりとわかりやすい言葉で伝えてもらうようお願いしましょう。

報連相が苦手

ASDの方はコミュニケーションが得意ではないため、報連相(報告・連絡・相談)がうまくできないという面も。

そこからクレームや人間関係のトラブルに発展することもあるため、あまり報連相の必要がない業務を担当する・こまめに報連相ができるようタスク化するなどの対策が必要です。

予定の融通が利かない

ASDの方は、マニュアルがありパターン化された仕事が得意である反面、予定の変更への対応が難しいです。急に変わるとパニックに陥ってしまうこともあります。そのため、計画通りに進められる仕事がよいでしょう。

空調や部屋の明るさなどにストレスを感じて疲れやすい

感覚が過敏な方も多く、冷暖房が効きすぎている(寒い/暑い)・照明が明るすぎるなどの状況で強いストレスを感じやすいという特徴があります。敏感に反応して必要以上に疲れてしまうこともあるので、感覚の面での環境整備も重要です。

ASDの方に向いている仕事・向いていない仕事

ASDの方に向いている仕事・向いていない仕事

ASDの方にはどんな仕事が向いており、どんな仕事が向いていないのでしょうか。特徴や例を挙げます。

向いている仕事の例

ここまででも触れてきたように、ASDの方には、ルールがあり規則的にできる仕事や、コツコツと一人で進められる仕事が向いています。職種としては、事務・経理・エンジニア・デザイナー・ライターなどがあります。

向いていない仕事の例

ルールや予定を無視した突発的な対応・柔軟性が求められる仕事や、マニュアルがなくどのように進めていいのかが明瞭ではない仕事、高いコミュニケーション能力が求められる仕事は向いていない可能性が高いでしょう。

具体的には、営業・秘書・接客・管理職など、その場その場で臨機応変に振る舞わなければならないような仕事です。

職場に求めたい合理的配慮とは

就職先では、自分の特性をもとに、コミュニケーション・こだわり・感覚などについて配慮してもらうとよいでしょう。

たとえば、人の出入りや人との関わりが少ない部署にしてもらう・予定を変えず計画通りに進めさせてもらう・光や音などの過敏に反応するものは調整してもらうなどの配慮があると助かります。

また、事前には思いつかず働くなかで必要な配慮事項に気づいた際は、その都度お願いしてみましょう。

 
キャリアアドバイザー
通勤や人が多い場所にストレスを感じる方は、オフィスに出勤せず自宅で業務を進められる『テレワーク』ができる職場もよいでしょう

ASDの方でも働ける就職先の例

ASDの方でも働ける就職先の例

ASDの方が応募できる仕事にはどんなものがあるのか、求人サイト「BABナビ」に掲載されている求人の例を紹介します。

Sansan株式会社|データ入力

Sansan株式会社|データ入力

未経験可のデータ入力の仕事で、週20時間から勤務可能です。契約書や請求書といった書類のデータを切り取ったり打ち込んだりします。

1ヶ月程度本社に出社し、仕事に慣れた後はテレワークに移行。時給制で、時給は1,163円です。初月のみ1ヶ月契約、その後は問題がなければ3ヶ月ごとに契約が更新され、フルタイムで働く場合、年収は213万円程度になります。

引用元
Sansan株式会社の障害者求人(ID:8009)|求人サイト・BABナビ(バブナビ)

ASDの方の就職活動をサポートしてくれるサービス

ASDの方の就職活動をサポートしてくれるサービス

ここからは、ASDの方が就職活動の際に相談でき、サポートを受けられるサービスを見ていきましょう。

ハローワーク

ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。

ハローワークには専門援助部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置され、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。

一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。

参考
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。

センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。

障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。

引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。

利用者にとって、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得でき、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。

全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。

なかぽつは、全国に337カ所(令和5年8月22日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。

障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。

引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省

障害者向け転職エージェント

障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。

障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。

高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。

就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。

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ASDだからといって就職を諦めなくてよい!自分に合った仕事に出会おう

ASDだからといって就職を諦めなくてよい!自分に合った仕事に出会おう

ASDの方は就職できないと言われることもありますが、できないわけではなく合理的配慮を得られる職場もあります。自分にはどんな配慮が必要かを考え、適切な環境で就労することが大切です。

ASDだからといって働くことを諦めず、サポートを利用しながら自分の特性に適した職場を見つけましょう。就職を検討している方は、ぜひお気軽に「DIエージェント」にご相談ください。

障害者の方の就労に特化したDIエージェントでは、キャリアアドバイザーがマンツーマンでヒアリングやご提案などを行っています。就職・転職活動が初めての方も、誠心誠意サポートしますので、どうぞ安心しておまかせください。

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自閉症スペクトラム(ASD)の人に適した仕事や就職前に気をつけたいポイント

監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。