障害者の方が働くうえで気を付けたいポイント|働きやすい職種や働き方、仕事の探し方を解説

障害者の方が働くうえでは、何に気を付けるべきなのでしょうか。就職・転職に関する情報は世の中にあふれていますが、それに比べて障害者の方向けの情報は少ないと言わざるを得ません。
本記事では障害者の方が働くにあたって注意したいポイントや具体的な仕事の探し方、そして働きやすい職種などについて解説します。

障害者の方が働くうえで抱える悩み

障害者の方が働くとなると、障害者特有の悩みを抱えることは少なくありません。
多くの障害者の方が感じている悩みの一つが、上司や同僚とのコミュニケーションです。仮に障害者枠で雇用されていたとしても、職場によっては障害に対する理解や共有が進んでおらず、一人ひとりの状態に合わせた適切な配慮を得られないこともあります
「苦手な電話対応はしなくてよいと入社前は言われていたのに、他の人が忙しいからと対応せざるを得なくなった」
「同時処理ができないと伝えていたのに、複数のことを一度にお願いされる」などです。

また体力面で不安を抱えている人もいます。過度な緊張や薬の副作用などで疲れやすさ・眠気を感じやすい場合、フルタイムといった長時間勤務は身体的・精神的に大きな負担をかけてしまうことでしょう。

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障害者の方が働くときに気を付けたいポイント

障害者の方が働く際、気を付けたいポイントを次の項目でいくつかご紹介します。

周りの人と比べない

障害を持っている方の場合、通院のために休んだり、苦手な業務を免除してもらったり、体調の安定のために短時間勤務をしたりと、周囲と異なる働き方をする場合が多くあります。
「同僚は休んでいないのに私だけ・・・」「自分だけ特別扱いをされているようで周りに申し訳ない」と感じる方もいるかと思いますが、気にしすぎないことが大事です。障害に配慮してもらうことは、あなたがベストコンディションで仕事に取り組むために重要なことであり、それが会社のためでもあるからです。

悩んだときは早めに相談する

体調を崩すことなく、長く働き続けるために必須なのが、仕事上の悩みは早めに解決することです。業務内容や勤務形態、人間関係などで困ったこと、不安なことがあったら、上司や同僚などに相談しましょう。

内容次第ではすぐに解決しない問題も当然あります。しかし、相談してみると「悩んでいたなんて気づかなかった」「もっと早く言ってくれてよかったのに」というような反応が返ってくることも意外と多く、まずは話してみることが大事であることがわかります。一人で抱え込まないようにしてください。
また就職した後もフォローをしてくれるエージェントや支援機関もあるので、上手に活用すると良いでしょう。

自分の体調と相談しながら働く

自分の体調と相談しながら働くことも大切です。苦手で負担が大きい仕事内容や働き方を続けていると、体調を崩して疾患や障害が悪化する可能性があります。なるべくストレスを減らせるように、無理をしないで可能な限りの配慮をしてもらいましょう。
就業前に仕事内容が自分に合っているのかを、綿密にチェックしておくことも重要ですね。また、休日は友人と会ったり外出したりして気分転換する、自宅でのんびり過ごす、など自分にとってストレス発散になるような過ごし方をし、体力回復に努めることも大切です。

体調不良で休んでも必要以上に気にしない

もし体調不良で仕事を休んでしまったとしても、気にしすぎないようにしましょう。障害の有無に関わらず、誰でも体調不良で休むことはありえるものです。「元気になったら、また仕事を頑張ろう」くらいの気持ちで臨めると良いですね。
もし欠勤が長期で続くような体調不良の場合には早めに主治医に相談することや、職場への報告・連絡・相談を欠かさないようにするなども気を付けてみてください。


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障害があることをオープンにするべきか?クローズにするべきか?

障害があることを会社に開示して働くことを「オープン就労」、反対に開示せずに働くことを「クローズ就労」と呼びます。それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。

オープンにするメリット

職場環境や業務内容で配慮をしてもらえる

職場環境や業務内容で、配慮をしてもらえることが最大のメリットです。
疲労がたまりやすい場合は残業を免除してもらったり、人の視線を過度に気にしてしまう場合は座席の配置を隅の方にしてもらったり、一度に複数のことを処理するのが苦手な場合は一つずつ指示をしてもらったりと、一人ひとりの障害特性に合わせた配慮をしてもらえます。

通院日や服薬などで配慮してもらえる

定期通院日に休みをスムーズに取得できる、また職場でも堂々と服薬ができるのもオープン就労のメリットです。

支援機関にサポートしてもらえる

就労支援の専門機関があなたと企業との間に入って、仕事に関するサポートをしてくれます。自分からは企業に直接言いにくいようなことでも、支援機関が上手に伝えてくれるのは心強いですね。

オープンにするデメリット

求人の絶対数は少なくなる

障害について会社に開示する場合、配慮を得やすいように一般枠でなく障害者雇用枠を選ぶ人が大半です。障害者雇用枠は一般的な新卒・中途の求人と比べ絶対数が少ないのが現状です。

クローズにするメリット

求人の幅が広がる

一般枠で仕事を探すことになるため、オープンと比べると圧倒的に求人の幅が広がります。希望する業種や職種に就ける可能性も高まるでしょう。

クローズにするデメリット

業務内容や通院日などで配慮を得られない

障害を隠して就労することになるため、当然障害を理由にした配慮を得ることは期待できません。仕事内容や勤務時間、通院日の調整などで配慮を得られないため、負担やストレスが蓄積していく可能性があります。

障害が知られてしまうのではないかと常に不安を感じる

障害を企業に伝える義務はありませんが、「上司や同僚に知られてしまうのではないか」と常に不安を感じる人も少なくありません。

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障害者の方が働く時の仕事の探し方

障害者の方が仕事を探す場合、次のような機関を活用すると良いでしょう。

ハローワーク

まずはハローワークです。ハローワークには一般枠の他に障害者枠の求人もあり、ネット上でも求人を検索することができます。また専門の職員がいるため、仕事の探し方や応募の仕方、履歴書の書き方、面接のアドバイス、就職後のアフターフォローなどを受けることも可能です。

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障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは仕事に関する相談や具体的な支援と、金銭管理や健康管理などを含む、生活面での支援を一緒に行ってくれる場所です。
仕事の希望を聞き取った上で一緒に求人を探したり、面接に同行したり、企業との間に入ってさまざまな調整をしてくれたりします。

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障害者雇用枠に特化している就職・転職エージェント

障害者雇用枠に特化している就職・転職エージェントもあります。
登録をすると担当スタッフが求職者一人ひとりに付いて、これまでの経歴や希望条件などをヒアリングし、その内容をもとに条件に合う求人を紹介してくれるのが特徴です。
履歴書の書き方や面接の受け方に関するアドバイスの他、企業側に勤務形態や日数などの条件面の交渉もしてくれるので非常に助かる存在といえるでしょう。


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障害者の方におすすめの仕事

最後に障害者の方におすすめの仕事の一例を紹介します。

システムエンジニア(SE

システムエンジニアは、クライアントから要望を聞き取り、情報システムの企画、開発、運用、保守などを行う仕事です。開発の工程ごとに役割分担がされるため、得意な分野を担当すれば障害者の方も働きやすい職種といえるでしょう。
また、人とのコミュニケーションがメインになる仕事よりもPCに向かって黙々と作業することが得意な方におすすめの仕事です。

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プログラマー

プログラマーはシステムエンジニアが作った設計書を元に、具体的なプログラミングをする仕事です。
プログラミングを作ってはテストをして、エラーが検出されれば修正を繰り返す地道な作業です。一つのことを黙々と集中して取り組める人にとっては、働きやすい仕事内容といえるでしょう。

デザイナー

デザイナーといっても様々な分野がありますが、近年は特にwebデザイナーの人気が高まりつつあります。PCとインターネットがあれば在宅勤務もしやすいことから、障害者の方でも働きやすい職種であるといえます。
もちろんPhotoshop等のソフトを使うスキルやwebの知識・経験が問われる仕事ですので、実務経験を積むか、専門スクールで実務レベルの制作スキルを身に着ける必要があります。

事務職

障害者枠でも最も求人が多い職種の一つが事務職です。PCを使って計算をしたり、データ入力をしたり、備品や書類の管理をしたりするのが主な業務です。デスクワークのため身体的な負担が少なく、コツコツと仕事に取り組める人にはマッチする仕事でしょう。基本的に転勤がない会社が多いため、通院先の病院を変えたくない人にとっては安心です。

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まとめ

障害者の方が働くにあたって注意したいポイントや具体的な仕事の探し方、働きやすい職種などを紹介しました。特に、働く際に大前提となるオープン就労とクローズ就労にはそれぞれメリットとデメリットがあり、特に慎重に考える必要があります。
障害者枠での転職を検討している方や、もっと詳しい情報が知りたい方はDIエージェントにぜひご相談ください。

監修:高橋 平
障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザー。
早稲田大学卒業後、(株)D&Iに入社。 障害者雇用ソリューション営業、転職キャリアアドバイザーと幅広い領域を担当。現在はHRソリューション事業部の副部長として、DIエージェントの責任者を務める。