発達障害で障害者手帳は取得できる?申請方法や仕事例も紹介

発達障害とは、脳機能の問題により行動などに特徴が現れる障害です。日常生活や仕事において困難が生じる場合があり、障害者手帳を取得できる可能性があります。

そこで今回は、発達障害と障害者手帳の関係性を解説した上で、取得方法や手帳取得後に応募できる仕事の例などを紹介します。現在のご自身の状況と照らし合わせながら、ぜひ最後までご覧ください。

発達障害とは

発達障害とは

発達障害とは、生まれつき脳機能の働きに偏りがあり、小さいときから行動や情緒の面で特徴が見られ、生活にも困難が生じるもの。ADHD(注意欠如多動症)・ASD(自閉スペクトラム症)・LD(学習障害)といった種類があります。

外見からはわかりにくいため、周りからは「自分勝手」「手がかかる」「育て方に問題がある」などと思われることも多い疾患です。

また、生活における困りごとの内容や程度には個人差があることも特徴。周囲が特性を理解し、適切なサポートをすることが重要です。

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障害者手帳とは

障害者手帳とは

障害者手帳とは、心身に何らかの障害があることを公的に証明するための手帳。身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳の3種類があります。

手帳を取得するためには、医師から適切な診断を受けたのち、自治体への申請が必要です。交付されると公的にも民間でもさまざまな支援やサービスを受けられるので、交付要件に該当する方はぜひ取得を検討してみましょう。

発達障害の方は障害者手帳を取得できる?

発達障害の方は障害者手帳を取得できる?

実は、発達障害専用の障害者手帳はありません。ただし、医師から発達障害と診断された方は、以下の2種類を取得できる可能性があります。

精神障害者保健福祉手帳

発達障害のみであれば、「精神障害者保健福祉手帳」を取得するのが一般的です。精神障害者保健福祉手帳は、発達障害のほか、統合失調症・てんかん・うつ病などでも取得できる可能性があります。困りごとの状態に応じて、1~3級の等級に分けられます。

療育手帳

発達障害とともに知的障害をお持ちの場合は「療育手帳」です。療育手帳にも知能指数などを基準とした等級が設けられていますが、自治体で独自に規定されているケースもあり、判断基準は異なります。基本は重度の「A」と重度以外の「B」の2種類です。

「グレーゾーン」での障害者手帳取得は可能?

発達障害の傾向が見られても医師から正式に発達障害と診断を受けられない場合、「発達障害のグレーゾーン」といわれることがあります。グレーゾーンの場合、残念ながら障害者手帳の取得はできません。

 
キャリアアドバイザー
ただし、障害者手帳を持っていなくても、福祉サービスなどの支援を受けられる可能性はあります

発達障害の方が障害者手帳を取得する方法・流れ

発達障害の方が障害者手帳を取得する方法・流れ

発達障害の方が障害者手帳の交付を受けたい場合は、どのような流れでどうすればいいのでしょうか。精神障害者保健福祉手帳と療育手帳それぞれのパターンを解説します。

精神障害者保健福祉手帳の取得方法

精神障害者保健福祉手帳を取得する際は、精神科を受診→診断書を作成してもらう→手帳の申請書・診断書・証明写真など必要なものを揃えて申請→審査と等級の決定→交付という流れです。

なお、精神障害者保健福祉手帳は、初診から6ヶ月経過しないと申請できません。そのため、手帳を取得したい場合は早めに医師に伝えておくとよいでしょう。さらに、申請から交付までに1~3ヶ月かかる可能性があることも頭に入れておきましょう。

また、続けて所持したい場合、2年ごとに更新手続きが必要です。

療育手帳の取得方法

療育手帳を取得する際は、市区町村や都道府県の所定の窓口で申請→IQテスト・問診・面接による判定→審査→交付という流れです。

療育手帳も交付までに1~2ヶ月程度かかることが多いでしょう。また、前述したように、基準や等級の分け方などは自治体によって異なります。

 
キャリアアドバイザー
知的障害と発達障害を併せ持っている方の場合、精神障害者保健福祉手帳と療育手帳の両方を取得することも可能です。ただし、両方持つことによって大きなメリットやデメリットがあるわけではありません

障害者手帳の取得におけるメリット・デメリット

障害者手帳の取得におけるメリット・デメリット

つづいて、障害者手帳を取得することにはどんなメリットがあるのか、また、デメリットはあるのかどうかを解説します。

障害者手帳を取得するメリット

障害者手帳を持っている方は、税金の減免・医療費の助成・交通機関などの割引を受けられたり、障害者雇用枠で仕事に応募できたりといったメリットがあります。経済的な恩恵が大きいことが特徴です。

デメリットはある?

障害者手帳を持つことには、基本的にデメリットは「ない」と考えてよいでしょう。ただし、前述のように、交付してもらうために医師の診断を受けて所定の手続きをする必要はあります。

 
キャリアアドバイザー
なお、前述した通り精神障害者保健福祉手帳は2年ごとの更新が必要なため、都度申請し直さなければならないことは理解しておきましょう

発達障害で手帳を取得した方が応募できる仕事

発達障害で手帳を取得した方が応募できる仕事

発達障害で障害者手帳を取得した方は、障害者雇用枠への応募が可能です。そこで、どんな仕事があるのか、障害者枠専門の求人サイト「BABナビ」から具体的な求人例を挙げます。

MXMアスター株式会社|一般事務・事務サポート

MXMアスター株式会社|一般事務・事務サポート

データの入力・集計や調査業務などを行う事務、発送・仕分けや書類整理などを行う軽作業といった業務を担います。アットホームな雰囲気のなか、資格を持ったスタッフにサポートしてもらいながら働けることが特徴です。

月給はフルタイムの場合187,860円〜203,515円程度で、年2回の賞与もあります。障害による休暇制度(アスター休暇制度)や定期健康診断などの福利厚生も用意されており、発達障害をお持ちの方も働きやすいでしょう。

引用元
MXMアスター株式会社の障害者求人(ID:7752)|求人サイト・BABナビ(バブナビ)

ランスタッド株式会社|インサイドセールス

ランスタッド株式会社|インサイドセールス

オランダに本拠地を構える世界的な総合人材サービス会社の募集。クライアントターゲットリストの作成と更新・登録スタッフの提案活動・オーダーの入力など、幅広く営業サポート業務を行います。

出社とテレワークをかけ合わせたハイブリッド形式での就業で、7:00~22:00の間でのフレックスタイム制。月給は21万〜25万円で、保養施設・宿泊施設・レジャー・飲食・旅行など多様な優待サービスを受けられる福利厚生も魅力です。

引用元
ランスタッド株式会社の障害者求人(ID:7013)|求人サイト・BABナビ(バブナビ)

ポラス株式会社|CADオペレーター

ポラス株式会社|CADオペレーター

CADオペレーターとしての実務経験がある方向けの仕事。住宅図面や水道積算用図面の作成補助・環境計算・業務の進捗管理などを行います。研修が充実しており、スキルアップやキャリア形成によって成長できる職場です。

月給は契約社員で207,000円~、正社員で240,200円~で、年2回の賞与に加え、業績次第で決算賞与も支給されます。家賃補助や勤続旅行、資格手当、住宅手当など、充実した福利厚生も特徴です。

引用元
ポラス株式会社(ポラスグループ)の障害者求人(ID:1022)|求人サイト・BABナビ(バブナビ)

株式会社ソライズ|WEBデザイナー

株式会社ソライズ|WEBデザイナー

WEBデザイナーの実務経験をお持ちの方向けの募集。障害者手帳を持っていなくても、就労困難な理由がある方は応募可能です。デザインの制作やカスタマイズ業務などを担当します。

月給はフルタイムで181,000円~263,500円。前職の給与や経験などが考慮されます。必要に応じて、時短勤務やフレックスタイム、テレワークとのハイブリッド勤務なども相談可能です。

引用元
株式会社ソライズの障害者求人(ID:7017)|求人サイト・BABナビ(バブナビ)

発達障害の方の就職・転職活動に役立つサービス

発達障害の方の就職・転職活動に役立つサービス

発達障害の方が仕事探しをするときに利用できるサービスを紹介します。気になるサービスがあれば、お近くの施設におもむいたり、電話やインターネットなどで問い合わせをしたりしてみてください。

ハローワーク

ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。

ハローワークには専門援助部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置され、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。

一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。

参考
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。

センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。

障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。

引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。

利用者にとって、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得でき、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。

全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。

なかぽつは、全国に337カ所(令和5年8月22日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。

障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。

引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省

障害者向け転職エージェント

障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。

障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。

高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。

就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。

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発達障害での障害者手帳取得は可能

発達障害での障害者手帳取得は可能

発達障害と診断された場合、精神障害者保健福祉手帳(知的障害がある方は療育手帳)を取得できる可能性が高いです。手帳を交付してもらうと、特に経済面で多くのメリットがあるので、ぜひ取得を検討してみてはいかがでしょうか。

障害者手帳があれば障害者枠にも応募できるため、より自分らしく働けるようになるかもしれません。今回紹介した求人の例を参考に、自分に合った仕事探しをしてみてください。

なお、発達障害の方が就職・転職活動をする際は、「DIエージェント」のご利用がおすすめです。DIエージェントでは、障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働けるよう、就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。