大人の学習障害(LD/SLD)とは?仕事上での困りごとや働き続けるためのポイントを紹介

文字を読むことや書くこと、計算することなどが苦手な場合、実は学習障害(LD/SLD)の可能性があります。普通に学校を卒業したものの、大人になってから学習障害(LD/SLD)が発覚するケースも。

学習障害(LD/SLD)は、本人のやる気の問題でも努力が足りないからでもありません。しかし業務上、障害が原因で困る場面や負担を感じることも多くあるでしょう。

本記事では、大人の学習障害(LD/SLD)をお持ちの方が仕事で困ることやその対策、仕事を続けるためのポイントについて紹介します。

就職や転職で利用できるサービスについても紹介するので、働きやすい職場を見つけるヒントにしていただけると幸いです。

学習障害(LD/SLD)とは?

学習障害(LD/SLD)とは?

学習障害とは発達障害の一種で、知的な遅れはないにも関わらず、読み書きや計算などの特定分野の学習に困難を感じる特性のこと。LD(Learning Disorder)もしくはSLD(Specific Learning Disorder)と呼ばれることもあります。

読み書き・計算のすべてではなく、人によって文字を読むことが苦手だったり、文章を書くことに困難を感じたりするなど、苦手と感じる分野やその障害の程度はさまざまです。

またADHD(注意欠陥多動症)やASD(自閉スペクトラム症)を同時に持っているケースもあり、そういった方の場合、別の発達障害の特性と相まってさらに学習面での困難を感じる可能性もあります。

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社会人になって診断されることも|大人の学習障害(LD/SLD)

学習障害(LD/SLD)は生まれつきの脳機能の偏りによるもので、大人になって発症するということはありません。ただし子どものころには単なる苦手と考えられていたものが、大人になってから実は学習障害(LD/SLD)だったと判明することもあります。

国内で政府主導のもと、学習障害を持つ児童の理解啓発や指導方法・相談などに関する整備が行なわれたのは1995年以降です。

それまでは読み書きや計算が苦手なことが障害であるとは認識されなかったため、それ以前に子ども時代を過ごした方の多くは社会に出てから困難を感じ、診断を受けて初めてできなかった原因を知ったという方も多いでしょう。

 
キャリアアドバイザー
学習障害(LD/SLD)による困難が原因で、うつ病や不安障害などの二次障害につながることもあります。適切な対処法を知ることや自己理解を深めることが大切です。

引用元
羽山 裕子|日本における学習障害児教育の発展に関する一考察
独立行政法人 障害者職業総合センター|調査研究報告書 No.19『学習障害』のある者の職業上の諸問題に関する研究

大人の学習障害(LD/SLD)の種類とそれぞれの特徴

大人の学習障害(LD/SLD)の種類とそれぞれの特徴

学習障害(LD/SLD)は大人と子どもの区別なく、読む・書く・計算することの苦手分野ごとに3つの種類に分けられます。

それぞれの特徴と症状を見ていきましょう。

読字障害(ディスレクシア)

文字を読むことに特に困難を感じる方は、読字障害に分類されます。ディスレクシアと呼ばれることも多く、次に紹介する書字表出障害が含まれることも。

文字を判別することや意味を理解することに困難を感じやすく、その原因として似た字体を区別しにくかったり読み飛ばしてしまったりすることが挙げられます。

一文をまとめて理解するのではなく、文字の一つひとつを区切って読むために時間がかかってしまったり、全体の意味を理解しにくかったりするのが特徴です。

書字表出障害(ディスグラフィア)

文字を書くことに困難を感じる方は、書字表出障害に分類されます。上述した読字障害をお持ちの方は書くことが苦手なことも多いことから、2つの特性をまとめてディスレクシアと呼ぶことも多いです。

書字表出障害(ディスグラフィア)は、大きさが不揃いの字を書いたり枠の中に収めることが苦手だったりするのが特徴で、漢字を書く時に「へん」「つくり」を逆に書いたり、よく似た別の漢字を書いたりする傾向もあります。

算数障害(ディスカリキュリア)

計算ができない、数字をおぼえられない、時計が読めないなどの困難を抱える方は算数障害に分類されます。

数の概念を理解できず、計算のやり方をおぼえたり推測をしたりすることが苦手なのが特徴です。九九がおぼえられなかったり、数字の読み間違いや書き間違いを頻繁にしてしまったりといったことも。

計算ができないことで時間管理が苦手な側面もあるため、社会生活にも支障をきたしやすい障害です。

大人の学習障害(LD/SLD)と診断される基準

大人の学習障害(LD/SLD)と診断される基準

学習障害(LD/SLD)は、一般的にDSM-5という米国精神医学会が発行する基準に基づいて診断されます。

DSMは精神疾患における診断と統計のマニュアルで、「-5」は第5版ということを表し、2014年(日本語版)に発行されて以来、学習障害を診断する際の基準として利用されてきました。2023年にDSM-5-TRという改訂版(日本語版)が発行されたため、現在はDSM-5-TRが最新の基準です。

DSM-5-TRは判定を受ける人の年齢に関わらず用いられる基準で、文字や文章を読む時に不正確もしくは速度が遅い、正しく発音できない、文章の意味を理解できないなどの項目に1つ以上当てはまり、かつ6ヶ月以上継続している場合に学習障害と診断されます。

診断を受けたい時はどうする?

学習障害(LD/SLD)の診断を受けたい場合は、メンタルクリニックや心療内科、精神科などを受診するといいでしょう。

ただし大人の発達障害を診断する病院やクリニックは限られているため、事前に確認することをおすすめします。また日常生活や仕事などの相談もしたいという方は、発達障害者支援センターや精神保健福祉センター、障害者就業・生活支援センターなどの機関を利用するのもおすすめです。

なお、就職や転職で利用できる支援機関やサービスについては後述しますので、そちらも参考にしてください。

引用元
政府広報オンライン|大人になって気づく発達障害 ひとりで悩まず専門相談窓口に相談を!

大人の学習障害(LD/SLD)をお持ちの方が仕事をする上で感じる困難とは

大人の学習障害(LD/SLD)をお持ちの方が仕事をする上で感じる困難とは

大人の学習障害(LD/SLD)をお持ちの方が、仕事をする上でぶつかる困難について、具体的なシチュエーションを交えて紹介します。

読字障害(ディスレクシア)をお持ちの方にとって、マニュアルや資料を読んで理解することが難しいことが挙げられます。書字表出障害(ディスグラフィア)をお持ちの方は、メモをとったり書き写したりすることが苦手なため、報告書や稟議書などの書類作成ができない、または時間がかかる、またスムーズな情報のやり取りができないなどの困りごとも。

算数障害(ディスカリキュリア)をお持ちの方は、業務上の統計や分析などが困難だったり時計を見ることができない、予測を立てられないなどの理由で時間の管理ができなかったりするという困難があります。

 
キャリアアドバイザー
学習障害(LD/SLD)の種類によって困りごとや必要な対策は異なるため、それぞれの困難に対してできることを考えたり工夫したりする必要があります。

学習障害(LD/SLD)をお持ちの方が仕事を続けるためのポイント

学習障害(LD/SLD)をお持ちの方が仕事を続けるためのポイント

学習障害(LD/SLD)をお持ちの方が仕事をする際には、苦手をカバーするツールを利用したり周囲への理解を求めたりすることで、職場での困難やストレスを大幅に軽減することが可能です。

学習障害(LD/SLD)をお持ちの方が、一つの職場で長く活躍するために押さえておきたいポイントを見ていきましょう。

自分の苦手なことを認識する

自分自身の苦手なことの解像度が低い場合、対策のしようがなかったり合理的配慮を求めようにも正しく伝えられなかったりすることが考えられます。そこでまずは自分のウィークポイントを把握し、障害特性ゆえの困難や苦手なことを理解しておくことが大切です。

苦手なことが明確であれば、読み書きが苦手にも関わらず、毎日書類を作成しなければならない職場を選んだり、計算が苦手なのに数字のデータを扱う仕事を希望したりするなどのミスマッチを防ぐことができます。

周囲からの理解を得る

仕事をする上で職場での人間関係は重要ですが、障害への理解を得られない環境では、大きなストレスを感じる可能性も。

障害を隠したり苦手なことをごまかしたりしても、業務においてうまくできないことが続けば居心地は悪くなってしまうでしょう。

そこで周囲の人に障害への理解を求め、合理的配慮を得ることで心理的な負担を軽減し、長く働き続けることが可能になります。

アプリなどICTを活用する

学習障害(LD/SLD)をお持ちの方が苦手な分野は、音声ソフトや計算アプリなどを活用することでカバーできる場合もあります。

例えばボイスレコーダーやスマホの録音アプリがあれば、口頭での説明をメモしなくとも後から聞き返すことが可能です。また手書きは苦手だけどパソコンやスマホの入力はできるという場合は、パソコンやスマホなどのツールも活用しましょう。

文章を苦手な方は文章読み上げソフトを活用したり、計算が苦手な方は計算ソフトやアプリを活用したりすることで、仕事における苦手な部分をカバーすることができます。

障害者雇用枠での就職も視野に入れる

一般枠での就職では、障害への理解が得にくく苦手なことでも無理をしてやらざるを得ない状況になりがちです。障害者雇用枠で就職すれば、できる範囲の仕事をふってもらったり苦手をカバーする対策をとったりするなど、合理的配慮を受けやすくなります。

学習障害(LD/SLD)をお持ちの方が受けられる合理的配慮の具体例を見てみましょう。

  • マニュアルを図解にしたり絵を用いたり漢字を平仮名にしたりなど理解しやすい工夫をする
  • マニュアルの内容を口頭で教える
  • 文章読み上げソフトや計算アプリなどの使用を認める
  • 手書きの書類をパソコンで作成することを認める
  • 計算などが合っているか上司に確認してもらう
  • 苦手な仕事はなるべく他の人にやってもらう

ここで挙げた例以外にも、こうしたら負担を減らせるという具体策があれば積極的に伝えることで働きやすくなります。

学習障害(LD/SLD)をお持ちの方が就職や転職に活用できる機関

学習障害(LD/SLD)をお持ちの方が就職や転職に活用できる機関

学習障害(LD/SLD)をお持ちの方が、これから就職・転職活動をはじめる際に利用できる支援機関やサービスを確認しておきましょう。障害者雇用枠での就職を目指すのであれば、職業紹介だけでなくさまざまな支援を受けることが可能です。

ハローワーク

ハローワークは全国各地に設置された国の就職支援機関です。ハローワークには障害者専門窓口が設置されており、就職・転職先の紹介をしたり相談に乗ったり、必要な機関につなげたりといった支援を受けられます。

障害者手帳の有無は問われないので、学習障害が発覚してはじめての転職活動といった場合でも利用しやすいでしょう。

障害者就業・生活支援センター

都道府県の指導の下、NPO法人や社会福祉法人などが運営する障害者就業・生活支援センターは、ハローワークや企業、福祉事業所などと連携して、職業準備訓練や職場実習、職業の紹介など、一人ひとりに必要な支援機関とをつなげる役割を果たします。

また日常生活における困りごとも相談できるため、今すぐに仕事を紹介してほしい方よりも就職・転職に向けた準備をしたいという方に向いていると言えるでしょう。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、就職に向けたパソコンなどのスキル訓練やソーシャルスキルトレーニングの習得のためのカリキュラムなどを通所で受けられます。就職に向けた書類添削や面接対策だけでなく、生活・メンタル面のサポートも受けられるため、就職・転職に向けてしっかり準備したい方や手厚いサポートを受けたい方におすすめです。

基本的に就労移行支援事業所は通所が原則ですが、ワークイズはリモートで訓練を受けることが可能で、テレワークに向けたスキル訓練の習得に重きを置いており、卒業者の3人に2人がテレワークでの就職に成功しています。

引用元
就労移行支援事業所ワークイズ

転職エージェント

就職・転職を支援するエージェントには、障害者雇用専門のところがあります。民間のサービスですが、無料で利用することができ、障害に詳しい専属のカウンセラーがマンツーマンで就職をサポート。

障害をお持ちの方向けの求人を専門に取り扱っており、障害特性に合わせた職業紹介を行います。障害者雇用の支援実績が豊富なエージェントであれば、独自のルートをもっていることも多く、一般の市場では出会えない求人を紹介してもらえる可能性も高いでしょう。

障害者雇用の転職成功事例が豊富なDIエージェント

障害者雇用専門のエージェントとして10年以上の実績があるDIエージェントは、先に紹介したワークイズとも連携しています。

障害者手帳をこれから取得する方や取得を検討している方でも相談可能。本人の希望や経歴、スキルなどを丁寧にヒアリングしてキャリア診断を行い、一人ひとりに合った支援を行います。

書類作成や面接対策などの支援はもちろん、本人の強みを分析してスキルに合った求人を開拓するなど、長く働ける職場への就職支援がモットーです。優良企業のシークレット案件も取り扱っているので、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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合理的配慮が受けられる働きやすい職場を見つけよう

合理的配慮が受けられる働きやすい職場を見つけよう

大人の学習障害(LD/SLD)をお持ちの方は、障害特性ゆえに仕事をする上で負担を感じる場面が多くあります。無理をして適応しようとすると、うつ病や適応障害などの二次障害を発症する可能性も。

学習障害(LD/SLD)には、文字を読むこと・書くことが苦手なものと、計算や数字の理解が難しいものの3つの種類があります。働きやすい職場を見つけるためには、自身の障害の特性を理解することが大切です。

仕事における心理的な負担を減らすには、合理的配慮を受けられる職場への就職がおすすめ。苦手をカバーするためのツールの使用を認めてもらったり苦手な仕事を人に頼みやすかったりと、周囲の人に理解してもらいやすいため働きやすい環境を手に入れられるでしょう。

合理的配慮を受けられる仕事への就職・転職では、一人ひとりに合った手厚いサポートのDIエージェントがおすすめです。専属のカウンセラーに相談しながら安心して就職活動ができ、自分にぴったりの職場への就職や定着を全面的にバックアップします。

これから障害者手帳を取得予定の方や取得を迷われている方でも相談可能なので、ぜひお気軽にご相談ください。

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監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。