コミュニケーション障害とは、人との意思疎通に支障を抱える障害です。その度合いによっては、日常生活に限らず、仕事においても困難が生じる場合があります。
そこで今回は、コミュニケーション障害とはどのような障害なのかを詳しく解説した上で、おすすめの仕事や就職・転職活動に役立つサービスを紹介します。
今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。
コミュニケーション障害とは
医学的にいわれる「コミュニケーション障害(コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群)」とは、言語を使って他者とコミュニケーションを取る際に支障が出る障害のこと。
診断名としては「社会的コミュニケーション症」という言葉も用いられますが、今回は一般的に知られている「コミュニケーション障害」と表現します。
コミュニケーション障害の症状としては、以下のようなものが見られます。
- 語彙力が低め
- 読み書きが上手にできない
- スラスラと会話することが難しい
- 文章を上手に組み立てられない
- あいまいな表現や言葉以外の表現(表情・ジェスチャーなど)の理解が難しい
- 場面に応じた話し方ができない(例:敬語を使うべき場面でくだけた話し方をする) など
コミュニケーション障害の種類と特徴
コミュニケーション障害は5つの種類に分類されるため、以下でそれぞれの特徴を解説します。
児童期発症流暢症/小児期発症流暢症/小児期発症流暢障害(吃音)
児童期発症流暢症(小児期発症流暢症)とは、以下のような症状が見られるものです。
- 発語しにくい、どもる
- 一語の途中で不自然に途切れたり同じ音を繰り返したりする(「り…りりりんご」など)
- 一語の途中に不要な引き伸ばしが入る(「りーーんご」など)
- 言いにくい言葉を避けるために遠回しな表現を使う など
そのため、相手に伝えたいことがうまく伝わりづらく、スムーズな会話が難しくなります。急ぐ必要があるときや重要な仕事など、ストレスやプレッシャーを感じるとひどくなるようです。
なお、「児童期」「小児期」とつくように子どもの頃に発症し、一般的に大人になるにつれて回復するケースが多いですが、大人になっても続く方もいます。
語音症/語音障害
語音症とは、脳や耳などに異常がないのに、言葉をうまく発せられないものです。話すときに、口の開き方・呼吸・舌の動きのいずれかが何らかの理由によってうまく機能せず、発語が困難になって会話による意思疎通が難しくなります。
言語の発達には個人差があるため、いつからと特定することは難しいですが、幼少期に発症することが多いとされています。ただし、治療によって改善できるケースも多いです。
言語症/言語障害
言語症とは、話すこと・書くことに支障があるものです。
- 使える語彙量が少ない
- 文を上手に構成できない(主語や述語など)
- 文と文を繋いで文章としてまとめることが苦手 など
そのため、相手に自分の意思や話したいことを上手に伝えられず、コミュニケーションが困難になります。
発症は乳幼児期とされていますが、前述のとおり言語の習得には個人差があることから、幼児期以降に診断されることが一般的です。成人期になっても継続する可能性があります。
社会的(語用論的)コミュニケーション症/社会的(語用論的)コミュニケーション障害
社会的コミュニケーション症とは、社会生活において必要なコミュニケーションが困難な状態のことです。具体的には以下のような症状が見られます。
- 挨拶や報連相ができない
- TPOに合った話し方ができない
- 曖昧な表現への理解が困難
- 比喩やユーモアに対する理解力が乏しい(言われたことをそのままの意味で捉えてしまう) など
このように、社会的コミュニケーション症の方は、他者とのコミュニケーションにおけるルールへの理解や、非言語の部分(相手の表情・声色など)での状況判断が難しいとされています。
特定不能のコミュニケーション症/特定不能のコミュニケーション障害
特定不能のコミュニケーション症とは、「上記4つのいずれの診断基準にも当てはまらないが、コミュニケーション能力に支障がある」という状態。学校や仕事など社会生活に影響が出ることも多いです。
自分で判断するのは難しいため、専門家に診断してもらうとよいでしょう。
コミュニケーション障害の原因
コミュニケーション障害の原因ははっきりと解明されていませんが、遺伝が一因なのではと考えられています。
また、成長するにつれて改善されるケースも多い病気なので、どんなときにどんな症状が出やすいかを理解し、環境改善をすることも大切です。
コミュニケーションに支障が生じるそのほかの疾患
コミュニケーション障害以外にも、他者との意思疎通に困難をきたす疾患があります。どんなものがあるのか、特徴とともに押さえましょう。
LD・SLD(限局性学習症)
話す・聞く・読む・書く・推論するという能力のうち、いずれかのものに支障がある状態です。まったくできないわけではなく、程度にも個人差があるため、大人になってから仕事の場面などで気づくケースもあります。
ADHD(注意欠如多動症)
注意力が散漫・集中力が続かない・衝動的に行動する・人の話をきちんと聞くことが難しいなどの状態です。
一方的に相手に話し続けたり、じっとしておくべき場面でモゾモゾと動いてしまったりします。そのため、他者との関わりやコミュニケーションに支障が出ることも多いです。
ASD(自閉スペクトラム症)
自分の感情を相手に伝えることが苦手・相手の意思をくみ取ることが難しいなどの症状が見られ、対人関係に困難が起こりやすい疾患。限られたものにのみ興味を示したり、行動を起こしたりするといった様子も見られやすいです。
その他の疾患
ほかにも、聴覚障害・場面緘黙・社交不安症・知的障害など、さまざまな疾患・障害によってコミュニケーションに困難を抱える方がいます。専門家による慎重な診断が必要です。
コミュニケーション障害の方に向いている仕事
コミュニケーション障害では、仕事でも周囲の人々との意思疎通に支障が出やすいでしょう。そのため、人と関わることが少ない・マニュアルがあるルーティン作業・自分の裁量で進められるといった仕事がおすすめです。
そこで、参考として、コミュニケーション障害の方に向いている仕事の例を挙げます。
ランスタッド株式会社|<リーダーポジション>請求給与・事務職
請求書の作成・勤怠チェック・給与計算などの事務職。労務や経理のスキルも身につけられます。完全テレワークも可能ですが、ハイブリッド(出社とテレワーク両方に対応)ができるとなおよいでしょう。
月給250,000円~300,000円のほか、年に2回賞与を受け取れます。福利厚生も充実していることが特徴です。契約社員での募集ですが、正社員に登用される可能性もあります。
引用元
ランスタッド株式会社 首都圏集中プロセスセンターの求人(ID:7854)|求人サイトBABナビ(バブナビ)
コミュニケーション障害の方の仕事探しに役立つ支援サービス
コミュニケーション障害の方が就職・転職活動をする際は、プロの力を利用するとスムーズです。以下でおすすめの支援サービスを紹介するので、ぜひ活用してください。
ハローワーク
ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。
ハローワークには専門援助部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置され、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。
一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。
センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。
障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。
引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。
利用者にとって、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得でき、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。
全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。
なかぽつは、全国に337カ所(令和5年8月22日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。
障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。
引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省
障害者向け転職エージェント
障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。
障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。
高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。
就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。
コミュニケーション障害と診断されても多様な職場で活躍の可能性がある!
コミュニケーション障害では他者との関わりに困難が生じてしまうため、仕事をするのは無理だと感じるかもしれません。しかし、決して諦める必要はなく、コミュニケーション障害をお持ちの方にも働きやすい職場はきっと見つかります。
例を挙げたように職種も多種多様なので、就職活動の際には支援サービスも利用しながら「今の自分」に適した仕事を探しましょう。
なお、今の職場を続けることに不安を感じている方や、これから自分に合った仕事を探したい方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。専任のキャリアアドバイザーが丁寧にご希望をうかがい、お一人おひとりに適切な働き方・職場を提案させていただきます。
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社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。