障害者雇用枠では仕事に幅がないというのは本当?就職・転職活動のポイント

「すでに障害者雇用として働いているけど、仕事に幅がなくて面白くない」「障害者雇用に興味があるけど、自分のやりたい仕事はできるのかを知りたい」などと思っている人はいませんか?
障害者雇用は一般雇用と比べて働く場所や仕事内容が限定され、希望する仕事がないといった情報もあります。果たして本当なのでしょうか?
今回は障害者雇用に関する基礎的な知識から、応募や面接のポイントについて解説します。これから障害者雇用での就職・転職を考えている人は、ぜひ参考にしてください。

障害者雇用とは?

そもそも障害者雇用とは、障害者雇用促進法に基づく、採用上の特別枠のことを意味します。2020年6月現在、障害者雇用の対象となるのは身体障害者・知的障害者・精神障害者の3種類。基本的にはそれぞれの障害者手帳を持つ人が、障害者雇用の対象です。
発達障害者は基準を満たすことで精神障害者保健福祉手帳を取得し、障害者雇用として働くこともできます。
民間企業は全従業員の2.2%を、障害者雇用としなければいけません。2021年4月までにはさらに2.3%までアップする予定です。

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障害者雇用で仕事をするメリット

企業が障害者を雇用する場合、可能な範囲で働きやすい環境や仕事内容とすることが義務付けられています。
障害者雇用で仕事をするメリットを見ていきましょう。

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環境に配慮がある

まずは働く環境、例えば物理的環境に配慮があることです。
車いすでも移動がしやすいように入口がバリアフリーになっていたり、手すりが設けられていたりするなどです。
また刺激が多くあると集中できない人のための個室作業ブースや、仕事と休憩をスムーズに切り替えられるように休憩スペースを別に設けている企業もあります。もちろん企業ごとに差があるので、どのような配慮環境があるかは求人票を確認するのがポイントです。

業務に配慮がある

業務に配慮があることも、障害者雇用で働くメリットの一つですね。
障害が原因となって仕事をすぐに覚えられない人もいることでしょう。障害者雇用なら一人ひとりの仕事を覚えるペースや、可能となる作業量に応じて適時調整をしてもらえます。仕事をスタートしたばかりの頃は作業量や勤務時間を抑え、慣れたら少しずつ上げてもらうことも可能です。
また発達障害者の中には音声よりも、文字やイラストなどの視覚的なものの方が理解しやすいことも少なくありません。一人ひとり理解のしやすい方法で仕事の指示を考えてもらえるため、スムーズに業務に就くことができます。

理解が得られやすい

また、理解が得られやすいことも大きなメリットです。
企業は雇用する段階ですでに障害があることを知っています。どの程度の内容を公表するかにもよりますが、あなたが働く上で配慮してもらいたいことを伝えておくことで、さまざまな調整をしてもらえるでしょう。
例えば神障害者の中には、精神科に定期通院をしている人も少なくありません。一般雇用では理解が得られないことから、通院のために休むことが難しい職場もあります。しかし障害者雇用であれば理解が得られやすく、通院日の調整などもスムーズにできるはずです。

障害者雇用で仕事をするデメリット

障害者雇用にはメリットがある反面、当然デメリットがあることに注意をしましょう。働く前にデメリットを知っておくことで、「こんなはずではなかった!」と後悔するリスクを減らせます。

正社員の求人数が一般雇用に比べて少ない

障害者雇用は正社員の求人数が、一般雇用と比べると少ない傾向にあります。契約社員や短時間勤務の求人が多いということですね。

給与水準が低い傾向にある

2つ目は給与水準が低い傾向にあることです。例えば身体障害者の場合、他の障害種別と比べると平均給与は215,000円/月と高めではありますが、それでも一般雇用の男性337,600円/月、女性247,500円/月と比べると、まだまだ低い水準であることが分かりますね。

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職種はが少ない傾向にある

障害者雇用では事務職や軽作業などの職種が比較的多く、専門職は少ない傾向にあります。これは、事務職や軽作業を希望する求職者の方が多く、企業側も障害への配慮環境を整えるやすいことが関係しています。そのような職種を希望する人にはぴったりですが、仕事に幅を持たせたい、特定の職種で専門性を高めたいと思っている人にとってはもの足りなさを感じるかもしれませんね。

スキル・経験を活かしたい場合はオープンポジションがおすすめ

ご自身のスキル・経験を活かして仕事の幅を広げたい、もしくは専門性の高いキャリアを築きたいという場合は、「オープンポジション」求人に応募してみるのがおすすめです。オープンポジションとは、応募者の経験や適性に合うポジションがあるかどうかを応募した会社側が探してくれる形の募集形態です。ご自身のスキルと会社のニーズがマッチすれば、障害者枠でも専門性の高い職につくことは十分可能です。

障害者雇用で仕事が決まりづらいケースとは?

障害者雇用で仕事を探している人の中にはスムーズに仕事が見つかる人と、決まりづらい人がいます。仕事が決まりづらい原因を見ていきましょう。

働く準備が整っていない

まずは働く準備が整っていないことです。障害者雇用では就労準備性とも呼ばれています。
働く際に必要なのは仕事に関する知識や、直接的なスキルだけではありません。規則正しい生活を送って毎日定時に出社できるかどうか、勤務時間をこなせるだけの体力があるかどうか、報告連絡相談ができるか、そして精神面で安定しているかどうかなども求められます。例えば精神障害者の中には「早く働きたい!」と焦る気持ちが強く、症状が安定する前に就職活動を始めるケースも珍しいことではありません。
働く準備が整っていないと採用される可能性は低くなり、仮に採用されたとしても仕事が続かないことも考えられます。

ひとりで就職活動をしている

支援機関やエージェントなどを使わず、ひとりで就職活動をしていることも仕事が決まりづらい理由の一つです。
専門の支援機関やエージェントを利用すると、仕事探しや履歴書記入、そして面接対策に関して適切なアドバイスをもらえます。また企業側も「支援する人・関わってくれる人がいる」と理解し、採用に対して安心できるのですね。ひとりで就職活動をするよりも、選考通過率を高めることができるでしょう。
また身だしなみが整っていないことが採用に至らない原因となることも多く、支援機関やエージェントを利用すればチェックをしてもらえます。

障害者雇用の仕事を探すには?

障害者雇用の仕事はどのように探せば良いのでしょうか?
続いては仕事を探す主な方法を紹介します。

ハローワーク

ハローワークはおそらく多くの人が知っていますね。厚生労働省が運営をしている職業安定所で、職業相談の他にさまざまな求人を紹介してくれます。
障害者雇用も取り扱っており、求人件数は国内で最も多く、ハローワークの求人を通して就職する障害者の方も少なくありません。

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障害者雇用専門の転職エージェント

2つ目は障害者雇用を専門とする、転職エージェントです。ハローワークとは異なり、民間企業が運営をしています。
求職者と企業とのマッチングの他、多くのエージェントでは専任のアドバイザーが担当として付き、応募にあたっての相談をしてくれるのが特徴です。これまでの仕事経験や障害特性、希望などを丁寧に聞き取った上で、適した求人を一緒に探してくれます。
また書類や面接のアドバイスなども行ってくれるため、採用される可能性もグンとアップすることでしょう。

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企業の採用サイトや転職情報サイト

最後は企業の採用サイトや転職情報サイトです。
企業によっては障害者雇用枠を設けているところもあり、サイトから直接応募することができます。特に気になっている企業があれば、障害者枠の募集がないかをチェックしてみると良いでしょう。
また障害者の方向けの求人サイトもあるため、条件の良い募集があれば応募することも可能です。
最近は、Indeed(インディード)などの複数の転職サイトや採用サイトを一括で検索することができるアグリゲーションサイトの利用も人気です。

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障害者雇用専門の転職エージェントとは?

転職エージェントとは転職を希望している人と、企業とをマッチングしてくれる仲介会社のことです。先に述べたように、最近では障害者雇用を専門とする転職エージェントもあります。
エージェントを利用するメリットや、利用する際の注意点について見ていきましょう。

メリット

まずはメリットについてです。以下で説明するメリットを上手に活用することで、スムーズな転職ができるようになりますよ。

アドバイスやサポートをしてもらえる

ほとんどのエージェントでは登録をすると、専門のキャリアアドバイザーが無料で転職に関わる相談に乗ってくれます。
これまでの仕事内容や仕事で失敗したこと、障害のこと、勤務条件などを丁寧にカウンセリングした上で、条件に該当する求人を紹介してくれるのが大きな特徴です。
転職の相談から実際の転職活動、面接のアドバイスなど、トータルで支援をしてもらえます。

非公開の優良求人が多い

エージェントにはハローワークには届かない、非公開の求人が多く存在します。
企業が非公開とする理由は、優良求人であることが多いため。給与や休日などの待遇が良く、応募が殺到するのを避けるためです。
エージェントに登録をすれば、優良の非公開求人を紹介してもらえる可能性も高まるでしょう。

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マッチングしてもらえる

エージェントは企業からダイレクトに求人を受けているため、相手がどのような人材を求めているのかを理解しています。「この求職者なら、企業が求める人材に合うだろう」と判断をして紹介してくれるため、マッチング率が高くなるのです。

情報量が多い

最後は情報量が多いことです。求人を出している企業に関する情報量が多いため、職場環境や働くスタッフ、雰囲気などをしっかり把握しています。
インターネットやハローワークには載っていない情報も持っているため、スムーズに転職を進めて行けるでしょう。


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注意点

続いては注意点です。これから紹介する注意点を理解した上で、エージェントを利用するようにしてください。

希望しない求人を紹介される場合がある

エージェントによっては、希望しない求人を紹介される場合があります。理由はさまざまですが、「採用者数を増やして実績を作りたい」「企業からの紹介料を目的としている」などです。
もちろん、エージェントが客観的な視点から見てその求職者とマッチしている部分があるから紹介してくるというケースもあります。「なぜこの求人を紹介されたんだろう」と疑問に思う場合は、遠慮せずエージェントに質問してみるといいでしょう。

事務職が多い傾向がある

2つ目は事務職が多い傾向があることです。エージェントが取り扱っている求人は職種の幅が狭く、清掃や接客、そして軽作業などの求人は少なめとなっています。

地方の求人が少ない

最後は地方の求人が少ないことです。エージェントが持つ求人の多くは、首都圏や都市部のものとなっています。

障害者雇用の仕事探しで心がけること

最後に障害者雇用の仕事探しで、心がけておくべきことを3つ紹介します。

自分の病気や症状を正直に伝える

病気や症状、障害の特徴を企業に対して正直に伝えるようにしましょう。人によっては話したくないと思うことがあるかもしれません。しかしできるだけ正直に話しをすることで、その分の配慮を得られるメリットが生じます。
伝える際は専門用語を使わないことが大切です。「障害者雇用をしている面接官なら、当然知っているはず」と思わず、誰でも分かるような言葉で伝えるように心がけてくださいね。

配慮が必要な場合は明確に話す

2つ目は配慮が必要な場合は、明確に話すことです。まずは仕事をする上で、どのような配慮が必要なのかを自分自身で整理してみましょう。
「一度に複数のことをするのが苦手なので、一つずつ仕事をさせてほしい」「耳から聞いて理解するのが難しいため、文書で説明や指示を出してほしい」など、具体的な内容をピックアップしてみてください。
面接時に明確に伝えられれば、企業側も「このような配慮をすれば働ける人」と採用に対して安心感を持ってもらえます。

業務内容を把握する

最後は業務内容を把握することです。仕事内容が持っているスキルや、障害特性に合っているかどうかを検討してみましょう。
個人では判断が付かないことも多いため、やはり支援機関やエージェントなどの第3者に関わってもらうと良いですね。
また一部の企業では雇用前実習を採用しています。採用前に一定期間実習を行い、本人と企業の双方で適性を図るものです。実習の結果で採用不可となる場合もありますが、採用前に適性が分かるので痛みは少なくなるでしょう。

まとめ

「障害者雇用枠での仕事に幅がなくて面白くない」「障害者枠で自分のやりたい仕事ができるのか知りたい」という方が希望の仕事を見つけるためのコツをご紹介しました。ハローワークや転職エージェントなど、さまざまな手段を活用しながら自分に合った仕事を探されることをおすすめします。
DIエージェントでは、「一般枠と障害者枠どちらが自分に合うのか」「障害者枠の中で自分の希望に合う求人はあるか」といったご相談にも乗っています。興味をお持ちの方は、ぜひ下記よりお申し込みください。

監修:高橋 平
障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザー。
早稲田大学卒業後、(株)D&Iに入社。 障害者雇用ソリューション営業、転職キャリアアドバイザーと幅広い領域を担当。現在はHRソリューション事業部の副部長として、DIエージェントの責任者を務める。