就職や転職をする際は、必ず面接を受けなければいけません。発達障害をお持ちの方の面接ではどのような発達障害の特性があるのかを聞かれることも多いため、面接対策を事前にしておく必要があるでしょう。
また挨拶や態度、言葉遣い、身だしなみなどもチェックされるなど、確認しておきたいポイントは多岐に渡ります。
今回は発達障害をお持ちの方が面接を受けに行く際に、気を付けておきたいことを丸ごと紹介。面接に行く際の参考にしてください。
発達障害のある方の面接対策について
そもそも就職や転職において、なぜ面接が行われるのでしょうか。採用する側とされる側、双方に目的があるからです。
採用する企業側としては、求めている人材と応募者が合っているかを確認するために行われます。企業が求める人物像、そして企業に貢献してくれる人物かどうかを見極めるために行われるのです。
対して採用される側としては、自分自身のことを面接官に直接知ってもらうためのアピールの場。企業が求める人物像に沿って適切に自己アピールすることで、内定を勝ち取ることができるでしょう。
また面接官に良い印象を与えるためには身だしなみや言葉遣いといった、マナーを守ることも大切ですね。
発達障害のある方が面接を受ける場合に気を付けたいポイント
発達障害をお持ちの方が面接を受ける際、気を付けておきたいポイントがあります。
事前にポイントを理解して対策をすることで、面接官に好印象を与えることができるでしょう。
発達障害特性については必ず聞かれます
障害者枠で就職や転職をする場合、企業側はあなたに発達障害があることを知っています。しかし具体的にどのような障害特性があるのかは分かりません。
そのため面接では必ず、あなたの発達障害の特性を聞かれると思っておきましょう。
障害を聞かれると言われると構えてしまいそうですが、心配は不要です。そもそも障害者枠で雇用をする企業は、障害者の方の安全に配慮をする義務があります。障害者の方が安全に、そしてスムーズに仕事に就くための配慮に向けて、発達障害の特性を質問するのです。
そのためあなたの障害特性を的確に伝えられれば、採用に向けての安心感を持ってもらえます。得意なことと苦手なこと、どのような配慮があれば働けるのかを分かりやすく答えられるようにしておきましょう。
具体的な答え方については後述します。
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もしも面接で答えられる自信がない場合の対処法
人によってはどうしても口頭で話すことが苦手、面接で上手に答えられる自信がないこともあるでしょう。そのような時におすすめなのが自己紹介シートの活用です。
自己紹介シートとは、用紙に自分の「障害種別」や「得意なこと」「苦手なこと」、そして「配慮してほしいこと」などを文書でまとめたツールのこと。A4用紙1枚にまとめると適切な量になります。
仕事に関する具体的な配慮などをも盛り込み、面接前か面接時に企業へ提出しましょう。伝えたい内容を事前に企業に知ってもらうことで、口頭で伝えきれない部分を相手に理解してもらいやすくなります。
もちろん、それに頼りすぎず面接の中の受け答えでしっかり伝えきることがベストですので、面接対策は入念に行いましょう。
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発達障害のある方が面接で聞かれる主な質問内容と答える時の注意点
続いては発達障害をお持ちの方が面接で実際に聞かれる思われる主な質問項目と、答える際の注意点を紹介します。
これまでの職務経歴は?
まずは職務経歴です。
回答のポイントは、「どんな業務をどのくらいの期間経験したか」をまとめることと、「応募先の仕事内容に関すること」をピックアップして伝えること。これまでの経歴をすべてダラダラと話していては、企業側は疲れてしまいます。
具体的な仕事の内容と、仕事から培ったスキルで応募先の企業で生かせることを伝えてください。
【例】
これまで、2社で営業事務を通算5年経験しています。具体的には、Excelを使用した売上表の作成や伝票起票、電話応対を中心に行っていました。基本的な関数などのPCスキルは習得しているので、御社の〇〇の業務にも活かしたいと考えています。
前職の退職理由は?
職務経歴同様に、退職理由も必ず聞かれると思いましょう。
退職理由は人それぞれですが、共通するのは前の職場の悪口を言ってはいけないこと。「誰も私の障害について配慮をしてくれなかった」「毎日たくさんの仕事を押し付けられて大変だった」など、「〇〇された」「〇〇してもらえなかった」といった表現は要注意です。面接官に「不満ばかり言う人」と思われてしまうかもしれません。
理想的な退職理由は、前向きな内容とすることです。「もっと視野や可能性を広げたいと思ったから」など、「こんな働き方がしたい」という前向きな表現をすると面接官の印象が良くなりますよ。
【例】
前職では月80時間ほどの残業が常態化しており、そのままでは体調が悪化してしまうのではないかとという懸念がありました。残業へのご配慮をいただける環境で、体調を安定させながら長く働いていきたい思い、今回転職を決意しました。
志望動機は?
志望動機は理由と理由を裏付ける具体的な経験、そして企業にどの程度貢献できるかをセットで伝えるようにしてください。
応募先を志望した理由の後に、理由に関する過去の経験を述べます。これまでの仕事経験や学校で学んだこと、取得した資格などのエピソードを絡めて、志望した理由が確固たるものへと変わるでしょう。
さらにもし採用してもらえれば、企業側にどのようなメリットが生じるかも伝えると良いですね。
自己PRしてください(得意なこと・苦手なことは何ですか?)
自己PRをしてくださいと言われた場合は、前職経験の中で応募先の企業で生かせるものをピックアップして伝えましょう。どのような経験やスキルを培い、どのように生かせるのかを伝えます。
もし仕事経験がない人は、得意なことや苦手なことを自己PRとすると良いですね。苦手なことを伝える際は、苦手をどのようにカバーできるのかも話すようにしてください。
「あなたの障害について詳しく説明してください」「会社に配慮してほしいことはありますか?」等の質問があった場合の答え方
前述したように障害については必ず聞かれます。入社後の部署配属や割り振られる業務内容にも関わるため、嘘をつかずに話すことが大切です。
事前に自身の障害内容や特性について、伝えるべきことを整理しておきましょう。
ポイントは、苦手な業務や障害の関係ですることが難しいことに対し、どのような配慮があれば問題ないのかを一緒に伝えること。「一度に複数のことをできませんが、一つずつ指示を出してもらえれば問題ありません」などです。
配慮があればできる部分を強調して伝えることで、面接官に安心感を持ってもらえるようになります。
最後に質問はありますか?
ほとんどの面接では最後に、質問があるかどうかを聞かれます。純粋に応募や仕事内容、待遇に関しての質問があるかどうかを聞きたいだけでなく、企業への意欲があるかどうかを探っているものと考えましょう。
あえて質問をすることで、あなたの応募への真剣さをアピールできます。
入社までに身につけておくべきや学んでおくべきこと、社員にどのような働き方を期待しているかなどを聞いてみると良いですね。
面接当日に気を付けること
面接の最中だけでなく、開始前までに気を付けることも下記にまとめました。当たり前のようで意外に見落としがちな点もあるのでしっかりチェックしましょう。
常に面接官が見ていることを意識する
面接中は、面接官があなたのことを常に見ていると意識しましょう。面接官がチェックしているのは受け答えの内容だけではありません。
面接室へ入った時のあいさつや言葉づかい、受け答えの仕方が丁寧かどうか、姿勢、そして態度などあらゆるポイントに目を向けています。
表情、服装、身だしなみにも気を付ける
表情や服装などに注意を払うだけで、印象がグンと良くなります。
表情は笑顔を意識して、服装はダーク系のスーツを着用しましょう。シワやシミ、汚れが付いていないかをチェックしてください。
男性は髪の毛を短くまとめて、スッキリとした雰囲気に。髭をそって、手の爪は短くカットしておきましょう。靴下もスーツに合わせてダーク系にするのが無難ですね。
女性で髪の毛が長い人は、ヘアゴムなどでまとめます。メイクは派手にせず、ナチュラル感じに仕上げましょう。爪は長すぎず、マニキュアを塗る場合は派手な色は避けます。靴はパンプスをはき、ヒールの高すぎる靴はNGです。
面接会場には10分から15分前には着くようにする
面接ではたとえ1分でも遅刻をしてはいけません。交通機関の遅延や道に迷うことなどを予測して、面接会場に10分から15分前には着くようにしましょう。高層ビル内にある会社の場合、エレベーターが混雑する可能性なども考慮してください。
時間に余裕を持って自宅を出ることで気持ちにも余裕が生まれます。
面接を待っている時の態度にも気を付ける
面接会場で面接の順番を待っている時も、態度に気を付けてください。面接官ではない他のスタッフが見ています。
スマホで話しをしたり、いじったりすることはNGです。足を組んで座るのも避けましょう。
面接会場へ入ったらスマホの電源を切って、椅子に座っている間は姿勢を正すように心がけてください。
一般的な面接の流れ
一般的な面接の流れをチェックしていきましょう。予め頭の中でイメージしておくことで、面接当日に混乱しなくて済みます。
受付に行く
まず面接会場に着いたら、受付へ行きます。受付担当のスタッフに笑顔で礼儀正しく、「本日の〇時に面接のお約束をしております、〇〇と申します」と伝えましょう。面接官の所属部署や名前などを聞かれる場合もあるので、手元ですぐに確認できるようにしておくのがおすすめです。受付が済んだら控室などに案内され、面接開始まで待ちます。
名前を呼ばれたら返事をし、案内に従う
面接を待っている最中に名前を呼ばれたら、「はい」と返事をして立ち上がり案内に従って、面接室まで行きましょう。
入室する
面接室がドアへ閉まっている場合は、軽く3回ノックします。
「お入りください」と返事がされてから、「失礼します」と言いながらドアを開けて入室してください。部屋に入ったらドアの方を振り返って、ドアを静かに閉めます。再度面接官の方を振り向いて、ゆっくりと一礼をしましょう。
椅子の横(入り口に近い側)に立ち、面接官に明るい表情で挨拶する
面接官の前に椅子が準備されているので、入ってきたドアに近い方の横に立ちます。明るい表情を意識して、「〇〇と申します。よろしくお願いいたします」と言ってから一礼しましょう。
面接官から着席の指示を受けてから座ります。座る際は「失礼します」と声をかけるのを忘れないでください。椅子に浅く腰をかけて座り、背筋はピンと伸ばすようにしましょう。
面接官とのやりとり開始
椅子に座ったら、いよいよ面接のスタートです。上記で説明した志望動機や障害特性などについて、準備してきた内容を伝えましょう。
印象を良くするための方法
面接官からの印象を良くするためには、相手の鼻を見るようにしましょう。目をじっと見つめ続けると、相手に失礼になってしまいます。
受け答えは大きすぎず、小さすぎない声で行います。適切な声量が分からない人は、事前に家族や友人、支援機関のスタッフなどに確認してもらうと良いですね。
また前職や障害について、否定的な言葉を使わないことが大切です。
円滑なコミュニケーションをとる方法
受け答えをする際は結論から述べると良いですね。「〇〇です。なぜなら~」と、結論を述べてから理由を伝えると相手は理解しやすくなります。
応答が長すぎたり、反対に短すぎたりしないように注意しましょう。また面接官が質問したことと、違った内容の答えにならないようにすることも大切です。
退室する
面接官から面接終了の旨が告げられたら、「本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました」とお礼を述べてから立ち上がります。
椅子の左側に立って再度「ありがとうございました」と言いながら、一礼をしてください。ドアの前までゆっくりと進み、面接官の方を振り返ってから「失礼します」と言いながら再度一礼します。ドアを静かに開けて退出しましょう。
発達障害のある方が自信をもって面接に臨むためには
発達障害をお持ちの方が自信をもって面接に臨むためには、事前準備が大切です。
まずは質問される項目を想定して、それぞれにどう答えるかを考えましょう。紙に書き出してみるのも良いですね。言いたいことが整理されます。
家族や友人、支援機関のスタッフなどと一緒に面接の練習もしましょう。本番を想定して練習することで、どんどん自信が付いていくはずです。
ただしどんなに練習をして面接は緊張するもの。「緊張して当たり前」といったスタンスで臨むようにしてください。
企業研究をしっかりとする
面接を受ける前は企業研究をしてください。
応募先の採用ページや求人サイトなどに目を通し、企業情報を調べます。企業が求める人物像を理解し、効果的な自己PRを考えられるようになるでしょう。
また面接中にサイト上ですでに掲載されていることを質問すると、相手に失礼となってしまいます。掲載されていない内容を質問すると良いですね。
エージェント、転職支援サービスなどを使って面接対策をする
エージェントや転職支援サービスを利用して、面接対策をする方法もあります。
特に障害者の方の就職・転職に特化したサービスであれば、企業側が障害者雇用で求めるもの、そして面接でチェックしているポイントを熟知しているため、効果的なアドバイスを得られるはずです。
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まとめ
面接では、発達障害の特性や配慮事項、志望動機や自己PRなど、幅広い質問があります。しかし、事前に準備さえしておけば回答に困るような質問はほとんどありません。しっかり対策を行い、自信を持って面接に臨んでください。
障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザー。
早稲田大学卒業後、(株)D&Iに入社。 障害者雇用ソリューション営業、転職キャリアアドバイザーと幅広い領域を担当。現在はHRソリューション事業部の副部長として、DIエージェントの責任者を務める。