「仕事が続かない」とお悩みの精神障害者の方は必見。続けるための5つのポイントをくわしく解説

精神障害をお持ちの方で「なかなか仕事が続かない」とお悩みの方は少なくありません。仕事が続かないのは、努力不足や能力の問題ではなく、他の理由があるのかもしれません。
今回は主な精神障害の特性や仕事が続かない主な理由、そして続けるためのポイントを5つ紹介します。

精神障害をお持ちの方の半分は1年以内に離職している

精神障害を持ちながら就労している人の半数近くは、1年以内に離職しているという調査結果があります。
障害者職業総合センターが発表している障害者の就業状況等に関する調査研究によると、精神障害者の実に50.7%もの人が1年以内に離職していることが分かりました(発達障害は含みません)。身体障害者の離職率が39.2%、そして知的障害者の離職率は32%となっており、他の障害種別よりも精神障害者の離職率が高くなっていることが理解できますね。
離職する理由は人それぞれですが、まずは自分の障害特性を客観的に理解することが大切です。


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おもな精神障害と特性

精神障害と一口にいっても疾患の種類や症状、特性などはさまざまです。主な精神障害・疾患の特性を見ていきましょう。

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統合失調症

約100人に1人といった高い割合で罹患するといわれているのが、統合失調症です。症状の表れ方は人それぞれで、主に陽性症状と陰性症状の2つに分類できます
陽性症状とは幻覚や妄想などの症状のことです。自分への批判や監視をする旨の声が聞こえる、尾行されている、悪口を言われているなど周囲の状況を誤って解釈してしまう状態です。
陰性症状とは感情が乏しくなる、意欲が低下するなど、これまでにあったものが失われるものを指します。

参考:厚生労働省「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス」

気分障害

気分障害とは名前の通り、気分の変動によって生活に支障をきたす状態のことです。精神障害の中でも代表的なうつ病も、気分障害の中に含まれます。

うつ病

うつ病とは気分障害の中でも、うつ状態のみが長く続くものを指します。
気分が重くて前向きになれない、何かをするにも億劫になってしまう、今まで好きだったものに対しても楽しめない、集中できないなど、人によって症状はさまざまです。
また、食欲の低下や体のだるさ、疲れやすさ、頭痛や肩こりなどの身体的症状がある場合もあります。

双極性障害(躁うつ病)

双極性障害は躁うつ病とも呼ばれており、躁状態とうつ状態を一定周期で繰り返すものを指します。
躁状態とは気分が盛り上がってハイになっている状態のこと。とにかく絶えず行動をして、睡眠を取らなくても元気に過ごします。他者に間髪入れるヒマもなく話し続けたり、過度に活動的になったりするのが特徴です。

てんかん

てんかんとは脳細胞に電気的な興奮が突如起こることで、さまざまな発作が生じるものを指します。発作の内容は脳のどの部分に興奮が起こるかで異なるのが特徴です。
手足が震えるけいれんや、突っ張って硬くなる硬直、その他に意識が消失するような発作もあります。

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高次脳機能障害

高次脳機能障害とは交通事故や脳血管障害などが原因となって脳にダメージが残り、認知機能や行動機能に障害が発生するものを指します。
主な症状は以下の通りです。

  • 記憶障害 新しい物事を覚えられない、覚えたはずのことをすぐに忘れてしまう、同じことを何度も質問する。
  • 注意障害 集中できない、ぼんやりしていてミスがある、2つ以上のことを同時に行えないなど。
  • 遂行機能障害 一つの物事を達成するための順序を計画できない・社会的行動障害 小さなことでイライラして大きな声を出したり、時に暴力をふるったりする。自分の感情をコントロールすることができない。
  • 病識欠如 上記で述べたような症状があることに気が付ついていない。

パニック障害

パニック障害は以下で説明する強迫性障害や恐怖症と同じ、不安障害の中に分類される障害の一つです。パニック障害の主な症状はパニック発作と強い恐怖感や不安感です。

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強迫性障害

意味のないこと、不合理なことと頭の中では理解していても、浮かんでくる不安感を払拭するために同じような行動を繰り返してしまうものが強迫性障害です。手を何度も洗う、家を出ても何度も戻って火の元やカギを確認する、着替えに順序があり、途中で間違えると最初からやり直すなど多岐に渡ります。

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精神障害をお持ちの方が「仕事が続かない」と感じた際に考えられる5つの理由

精神障害をお持ちの方が「仕事が続かない」と感じた際、一般的には次に挙げる5つの理由が考えられるでしょう。

職場の人間関係がつらい

まずは職場の人間関係のつらさです。人間関係は障害者の方に限らず、多くの人が離職をする原因の一つ。毎日一緒に顔を合わせて仕事をする同僚だからこそ、関係性が上手く取れないと勤務時間中は苦痛を感じてしまうでしょう。
特に障害に対して理解を得づらい職場では、仕事に関する相談ができなかったり、周囲の心無い言葉に傷ついたりすることがあります。

疲れやすい

疲れやすさが、仕事が続かないことの原因となる場合もあります。精神疾患の特徴や症状の表れ方は人それぞれですが、体力的・精神的に疲れやすくて仕事が続けられない人は少なくありません。
「他の社員と上手くコミュニケーションを取らなきゃ」「ミスしないようにしないと」など必要以上の緊張感が続き、1日の終わり頃にはグッタリとしてしまうこともあるでしょう。また通勤ラッシュが原因で、出社時にはすでにバテてしまっている人もいます。

仕事内容がマッチしていない

仕事に就くことを優先して、自分が不得意な内容の仕事を選んでしまったケースです。
人と話をするのが苦手なのに接客業に就いてしまった、ルーチンワークが得意なのにイレギュラーに対応しなければいけない仕事に就いてしまった、聴覚過敏があるのに騒々しい職場を選んでしまったなどですね。

精神障害を隠して就職した

精神障害があることを隠して就職した人の中には、障害に関する理解を得られずに離職してしまったという人もいます。
障害者枠ではなく一般枠で就職をすると、多くの人は障害があることをあえてオープンにはしません。自分にとって不利に働くと感じるためです。
障害を隠す必要があるため体調が悪くても休めなかったり、業務内容で配慮を得られなかったりします。また障害が知られてしまうのではないかといった不安や、障害を隠そうとする負担も大きくなっていくことでしょう。

障害の状態が悪化した

最後は障害の状態が悪化したことです。就職した際は体調が良くても、過酷な労働条件や人間関係などが原因となって、症状や障害が悪くなってしまうケースです。
仕事だけでなく生活にも支障をきたしてしまい、仕事を辞めざるを得なくなります。

精神障害をお持ちの方が仕事を続けるための5つのポイント

最後に精神障害をお持ちの方が仕事を続けるための5つのポイントをご紹介します。

障害者枠で仕事を探す

1つ目は障害者枠で仕事を探すことです。前述したように一般枠では障害を隠す必要があるため、症状や障害に対する配慮を得ることは期待できません。
しかし障害者枠であれば障害があることを前提として採用されるため、可能な範囲での理解や配慮を得られることでしょう。

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勤務時間を短くする

勤務時間を短くするのも一つの方法ですね。収入や安定のためにフルタイム勤務を求める人もいますが、長時間労働が原因で離職するケースもあります。
無理をしてフルタイム勤務をした結果すぐに辞めてしまうより、短時間勤務でも長く続けた方が、結果的に多くの収入につながる場合もあるでしょう。
また最初は短い勤務時間からスタートして、「これなら大丈夫!」と思えるようになった時点で勤務時間を増やすのも良いですね。どのようなペースで働くかは、体調の安定のためには特に重要なことですので、主治医としっかり相談するようにしましょう。

ミスしても気持ちを切りかえる

ちょっとしたミスでも必要以上に気にしてしまう人は、気持ちを切りかえるようにしてみましょう。ミスは障害のあるなしに関わらず、誰にでもありえるもの。
あなたが心配しているミスは、実は周囲の人にとっては何でもないことも珍しいことではありません。ミスをしても深刻に考えず、気持ちを切りかえて次の仕事に取り組むようにしてみてください。

得意なこと・苦手なことを周囲に伝える

4つ目はあなたが得意なこと・苦手なことをまわりに伝えることです。仕事をする上でどのようなことが得意なのか、または苦手なので配慮をしてもらいたいのかをまとめて、一緒に働く上司や同僚に伝えてみましょう。
周りも客観的にあなたのことを理解することで、働きやすい環境を作ってくれるはずです。

ナビゲーションブックとは

ナビゲーションブックを知っていますか?障害者職業総合センターが推奨しているツールで、精神障害をお持ちの方が働くにあたって障害特性や配慮してもらいたいこと、その他セールスポイントなどをまとめたものです。作成にあたってこれまでの生活歴や病歴、就労歴を振り返ることで、客観的に自分自身のことを再確認することができるでしょう。
また口頭で伝えることが苦手という人でも、作成したナビゲーションブックを利用することで、企業側にスムーズに必要事項を伝えることができます。

主治医やカウンセラーに相談する

最後は主治医やカウンセラーに相談することです。就職が決まっても、精神科への定期通院は欠かさず行ってください。
「就職できたのだから、もう治療は必要ない」と思う人もいますが、危険です。仕事をしていく中で少しずつ疲労が蓄積して、気が付かないうちに病状が悪化する可能性もあります。
専門家でもある医師やカウンセラーとは定期的に診察や面接をしてもらい、様子をチェックしてもらいましょう。さらに仕事で悩んでいることを相談すれば、解決につながるアドバイスが得られるかもしれません。

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まとめ

仕事が長く続かないと感じる精神障害者の方は今回紹介した5つのポイントをぜひ参考にしてみてください。もし改善が見られない場合や、自力での解決が難しい場合には転職をすることも選択肢の一つです。また、DIエージェントでは転職を前提としないキャリアのご相談にも乗っています。「安易な転職はしたくないけれど、今の仕事をずっと続けられるかどうかわからない」など、転職をするかどうかお悩みの方もお気軽にご相談ください。

監修:安部 桐子
産業カウンセラー。EAP事業の立ち上げ経験を活かし、(株)D&Iに入社後には定着支援サービス「ワクサポ」と在宅型就労支援「エンカクトレーナー」を開始。現在は300名以上の障害者の定着化・戦力化に向けたサービスの統括をおこなう。