精神障害をお持ちの方で「なかなか仕事が続かない」とお悩みの方は少なくありません。仕事が続かないのは、努力不足や能力の問題ではなく、他の理由があるのかもしれません。
今回は主な精神障害の特性や仕事が続かない主な理由、そして続けるためのポイントを5つ紹介します。
精神障害をお持ちの方の半分は1年以内に離職している
精神障害を持ちながら就労している人の半数近くは、1年以内に離職しているという調査結果があります。
障害者職業総合センターが発表している障害者の就業状況等に関する調査研究によると、精神障害者の実に50.7%もの人が1年以内に離職していることが分かりました(発達障害は含みません)。身体障害者の離職率が39.2%、そして知的障害者の離職率は32%となっており、他の障害種別よりも精神障害者の離職率が高くなっていることが理解できますね。
離職する理由は人それぞれですが、まずは自分の障害特性を客観的に理解することが大切です。
平均勤続年数は長くなってきている
半分の方が1年以内に離職しているとは言うものの、精神障害をお持ちの方の平均勤続年数は、長くなってきています。
厚生労働省が5年ごとに調査している「令和5年度障害者雇用実態調査」によると、精神障害者の平均勤続年数は、「5年3月」です。前回のデータでは「3年2月」と発表されているため、平均勤続年数は長くなっているのがわかります。
ただし、身体障害者の「12年2月」、知的障害者の「9年1月」と比較すると、まだまだ短いのが現状です。
引用元
令和5年度障害者雇用実態調査の結果を公表します|厚生労働省
おもな精神障害と特性
精神障害と一口にいっても疾患の種類や症状、特性などはさまざまです。主な精神障害・疾患の特性を見ていきましょう。
統合失調症
約100人に1人といった高い割合で罹患するといわれているのが、統合失調症です。症状の表れ方は人それぞれで、主に陽性症状と陰性症状の2つに分類できます。
陽性症状とは幻覚や妄想などの症状のことです。自分への批判や監視をする旨の声が聞こえる、尾行されている、悪口を言われているなど周囲の状況を誤って解釈してしまう状態です。
陰性症状とは感情が乏しくなる、意欲が低下するなど、これまでにあったものが失われるものを指します。
引用元
知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス|厚生労働省
気分障害
気分障害とは名前の通り、気分の変動によって生活に支障をきたす状態のことです。精神障害の中でも代表的なうつ病も、気分障害の中に含まれます。
うつ病
うつ病とは気分障害の中でも、うつ状態のみが長く続くものを指します。
気分が重くて前向きになれない、何かをするにも億劫になってしまう、今まで好きだったものに対しても楽しめない、集中できないなど、人によって症状はさまざまです。
また、食欲の低下や体のだるさ、疲れやすさ、頭痛や肩こりなどの身体的症状がある場合もあります。
双極性障害(躁うつ病)
双極性障害は躁うつ病とも呼ばれており、躁状態とうつ状態を一定周期で繰り返すものを指します。
躁状態とは気分が盛り上がってハイになっている状態のこと。とにかく絶えず行動をして、睡眠を取らなくても元気に過ごします。他者に間髪入れるヒマもなく話し続けたり、過度に活動的になったりするのが特徴です。
てんかん
てんかんとは脳細胞に電気的な興奮が突如起こることで、さまざまな発作が生じるものを指します。発作の内容は脳のどの部分に興奮が起こるかで異なるのが特徴です。
手足が震えるけいれんや、突っ張って硬くなる硬直、その他に意識が消失するような発作もあります。
高次脳機能障害
高次脳機能障害とは交通事故や脳血管障害などが原因となって脳にダメージが残り、認知機能や行動機能に障害が発生するものを指します。
主な症状は以下の通りです。
- 記憶障害 新しい物事を覚えられない、覚えたはずのことをすぐに忘れてしまう、同じことを何度も質問する。
- 注意障害 集中できない、ぼんやりしていてミスがある、2つ以上のことを同時に行えないなど。
- 遂行機能障害 一つの物事を達成するための順序を計画できない
- 社会的行動障害 小さなことでイライラして大きな声を出したり、時に暴力をふるったりする。自分の感情をコントロールすることができない。
- 病識欠如 上記で述べたような症状があることに気が付ついていない。
パニック障害
パニック障害は以下で説明する強迫性障害や恐怖症と同じ、不安障害の中に分類される障害の一つです。パニック障害の主な症状はパニック発作と強い恐怖感や不安感です。
強迫性障害
意味のないこと、不合理なことと頭の中では理解していても、浮かんでくる不安感を払拭するために同じような行動を繰り返してしまうものが強迫性障害です。手を何度も洗う、家を出ても何度も戻って火の元やカギを確認する、着替えに順序があり、途中で間違えると最初からやり直すなど多岐に渡ります。
精神障害が仕事に与える影響
精神障害は、仕事にさまざまな影響があることが考えられます。障害の種類によって症状や影響の現れ方は異なりますが、いずれも仕事を続ける上での困難が生じてしまうかもしれません。
代表的な精神障害と、それが仕事に与える影響について見ていきましょう。
統合失調症の場合
統合失調症では、幻覚や妄想・思考障害・感情の起伏といった特性が現れる精神疾患です。発作により、仕事を続ける上で、さまざまな困難が生じてしまうかもしれません。
例えば、幻覚や妄想によって仕事の内容に集中できなくなったり、他者とのコミュニケーションが困難になったりすることが挙げられます。また、感情の激しい変動により、業務の進行が乱れたり、突然の激しい不安や怒りが現れたりすることも。
こういった症状は、特にチームでの業務や接客業など、対人関係が重要な仕事において大きな障害となると考えられるでしょう。
引用元
統合失調症|こころの情報サイト
てんかんの場合
てんかんのある人が仕事を続ける上で最も困難と考えられるのは、突然の発作による業務の中断や事故のリスクです。発作が起きるタイミングが予測できないため、危険を伴う業務や人が多く集まる環境での仕事には特に不安があると言えるでしょう。
また、発作への恐怖心や不安が常に伴い、それが心理的な負担となって、仕事に対するモチベーションや集中力に影響を及ぼしてしまうかもしれません。さらに、発作の後遺症や疲労感が残る場合もあるため、十分な休養が必要になることもあります。
引用元
てんかん対策|厚生労働省
てんかん | NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
気分障害の場合
うつ病や双極性障害といった気分障害では、ケースによって症状や影響が異なります。
うつ病では、持続的な憂鬱感や興味の喪失、エネルギーの低下が仕事に大きな影響を与えるかもしれません。例えば、集中力の低下や判断力の鈍化により、業務の効率が悪化してしまうことです。
双極性障害では、躁状態と抑うつ状態が交互に現れます。そのため、業務中にエネルギーが過剰に高まるときと、逆に完全に動けなくなる時が交錯します。それにより、業務のパフォーマンスに大きなムラが生じ、周囲とのコミュニケーションにも支障をきたしてしまうかもしれません。
パニック障害の場合
パニック障害は、予期しない激しい不安や恐怖感に襲われることが、仕事に影響を与える可能性があります。
もしもパニック発作が仕事中に発生すると、業務が続けられなくなり、その後の不安感や恐怖心も仕事に影響を及ぼすかもしれません。発作による体調不良や精神的な動揺から、仕事に復帰するのが難しくなることも考えられます。
加えて、発作が予期できないため、仕事に行くこと自体が不安になり、欠勤が増えてしまう可能性も。社会的な孤立感も強くなるため、仕事仲間との関係においても悩みが生じるなど、さまざまな影響があるかもしれません。
強迫性障害の場合
強迫性障害で仕事に影響を与える可能性のある症状は、繰り返し起こる強い思考や行動に囚われてしまうことです。業務の遂行に対する過度な不安感や、必要以上に過剰な確認行動の繰り返しなどが考えられます。
例えば、物事を確認する回数が異常に多くなり、仕事にかかる時間が長くなってしまう可能性があります。
また、同僚や上司との関係においても、自分の行動が他人にどう見られているかを過剰に心配してしまうことも。このことから人間関係での不安が強くなってしまい、日々の業務に重い負担をかけることになりかねません。
引用元
OCD(強迫性障害) | NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
強迫性障害|こころの情報サイト
精神障害をお持ちの方が「仕事が続かない」と感じた際に考えられる5つの理由
精神障害をお持ちの方が「仕事が続かない」と感じた際、一般的には次に挙げる5つの理由が考えられるでしょう。
職場の人間関係がつらい
まずは職場の人間関係のつらさです。人間関係は障害者の方に限らず、多くの人が離職をする原因の一つ。毎日一緒に顔を合わせて仕事をする同僚だからこそ、関係性が上手く築けないと勤務時間中は苦痛を感じてしまうでしょう。
特に障害に対して理解を得づらい職場では、仕事に関する相談ができなかったり、周囲の心無い言葉に傷ついたりすることがあります。
疲れやすい
疲れやすさが、仕事が続かないことの原因となる場合もあります。精神疾患の特徴や症状の表れ方は人それぞれですが、体力的・精神的に疲れやすくて仕事が続けられない人は少なくありません。
「他の社員と上手くコミュニケーションを取らなきゃ」「ミスしないようにしないと」など必要以上の緊張感が続き、1日の終わり頃にはグッタリとしてしまうこともあるでしょう。また通勤ラッシュが原因で、出社時にはすでにバテてしまっている人もいます。
仕事内容がマッチしていない
仕事に就くことを優先して、自分が不得意な内容の仕事を選んでしまったケースです。
人と話をするのが苦手なのに接客業に就いてしまった、ルーチンワークが得意なのにイレギュラーに対応しなければいけない仕事に就いてしまった、聴覚過敏があるのに騒々しい職場を選んでしまったなどですね。
精神障害を隠して就職した
精神障害があることを隠して就職した人の中には、障害に関する理解を得られずに離職してしまったという人もいます。
障害者枠ではなく一般枠で就職をすると、多くの人は障害があることをあえてオープンにはしません。自分にとって不利に働くと感じるためです。
障害を隠す必要があるため体調が悪くても休めなかったり、業務内容で配慮を得られなかったりします。また障害が知られてしまうのではないかといった不安や、障害を隠そうとする負担も大きくなっていくことでしょう。
精神障害をお持ちの方が利用できる支援制度
精神障害をお持ちの人が利用できる支援制度には、雇用促進や生活支援を目的としたものが数多く存在します。こういった制度は、障害を持つ人々が自立した生活を送るための手助けとなり、就労機会を増やすことを目指しています。
ここからは、精神障害をお持ちの方が利用できる支援制度について見ていきましょう。
障害者雇用促進法
障害者雇用促進法は、企業に対して障害者の雇用を促進するための法律です。平成30年4月1日から精神障害者も対象となり、障害者の雇用義務が課されるようになりました。
企業は一定以上の規模になると、障害者の雇用を義務化されます。この義務を達成するために、助成金や税制優遇措置といった支援がされています。
また、雇用した障害者に対して、就業支援を提供するための助成金も支給されることも。これにより、企業は障害者をより雇用しやすくなっていると考えられるでしょう。このような制度は、精神障害者が就業機会を得るための後ろ盾となっています。
引用元
障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わりました|厚生労働省
雇用保険
雇用保険は、従業員が加入する社会保険の中の一つ。もしも失業した場合、失業手当を受け取ることができ、もちろん精神障害をお持ちの方も利用することができます。
具体的には、失業した際に一定の条件を満たすことで、失業手当を支給されるほか、再就職支援や職業訓練などのサポートを受けられます。
精神障害者が失業した場合、特に職場復帰に向けた支援が重要となるため、雇用保険による支援を通じて、安定した生活基盤を築くことが可能です。また、障害者雇用促進法に基づいた企業で働いている場合、雇用保険の利用者は再就職の際に企業が提供する支援を受けやすくなります。
例えば、障害者専用の再就職支援プログラムなどです。障害者就職・職業訓練を行う機関を利用できたり、ジョブコーチ(職場での支援担当者)が提供されたりすることがあります。
引用元
雇用保険制度 |厚生労働省
職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について |厚生労働省
働きやすい職場を選ぶ5つのポイント
精神障害をお持ちの方が長期的に安定して働き続けられる職場を選ぶには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。自分の健康状態や働く環境をよく理解し、適切な支援を受けながら仕事をすることが大切です。
以下のポイントを参考に、自分に合った働きやすい職場を選びましょう。
1. 通院・治療は続ける
精神障害をお持ちの方が長く働き続けるためには、まず、通院や治療を継続することが非常に重要です。治療を中断したり、自己判断で服薬を止めたりすると働くどころか、症状が悪化し、日常生活や仕事により重篤な支障をきたすリスクが高まってしまいます。
医師の指導のもとで治療を続けることは、職場での適応や安定した生活を支える基盤となります。通院や治療が必要であることを職場にも理解してもらい、必要な配慮を得られる環境を整えることも大切です。
2.職場の雰囲気を確認する
職場の雰囲気や人間関係が自分に合っているかどうかを確認することは、精神障害をお持ちの方にとって非常に重要です。過度なプレッシャーやストレスの多い職場では、心身の健康に悪影響を及ぼしてしまうかもしれません。
反対に、協力的で温かい雰囲気がある職場は、ストレスの少ない環境で仕事がしやすいでしょう。
面接時や職場見学時に、スタッフの様子や職場の雰囲気をよく観察し、実際に働く人々がどのようにコミュニケーションを取っているかを確認してください。
3.配慮や支援がある企業を選ぶ
企業として支援体制や配慮が整っている職場は、長く安定して働き続けられる可能性が高いです。
例えば、障害者雇用促進法に基づき、障害者雇用を積極的に行っている企業や、障害者向けの就業支援プログラムが充実している企業は、障害を持つ従業員に対して適切なサポートがあるでしょう。
また、上司や同僚が積極的に配慮をしてくれる職場であれば、安心して働くことができます。面接時に「障害者向けのサポート体制や配慮はありますか?」と質問してみるのも一つの方法です。企業の支援体制について知ることは、働き続けるための安心材料になります。
4.フレキシブルな勤務制度の有無をチェックする
フレキシブルな勤務制度の有無は、職場選びにおいて重要な要素となります。
例えば、テレワークやフレックスタイム制度がある企業では、通院や体調の変化に応じて、柔軟に勤務時間を調整することができるでしょう。また、急な発作や体調不良に備えて、有給休暇や病気休暇を取りやすい環境も必要です。
フレキシブルな勤務制度が整っている職場は、精神的・身体的な健康状態に合わせて働けるため、長期的に安定した職場生活を送ることが可能になります。求人情報や面接で、こういった勤務制度が整備されているかを確認しましょう。
5. 精神障害をお持ちの方向けの就労支援を活用する
もしも適した職場を見つけられない場合、就労支援サービスを積極的に利用することをおすすめします。
就労支援サービスは、障害者専用の職業紹介や職場適応訓練、就業後のフォローアップを行っており、自分に適した仕事を見つけるサポートをしてくれるサービスです。また、仕事の探し方や面接時のアドバイス、職場で困った際の対処法など、専門的なサポートを受けることも。
なお、どんな就労支援サービスがあるのかについては、次項で詳しく紹介します。
精神障害をお持ちの方が利用できる就労支援サービス
障害者手帳をお持ちの方が利用できる就労支援サービスは一つではなく、いくつかあります。どんな就労支援サービスがあるのか、具体的に見ていきましょう。
ハローワーク
ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。
ハローワークには専門援助部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置され、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。
一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。
引用元
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。
センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。
障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。
引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。
利用者にとって、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得でき、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。
全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。
なかぽつは、全国に337カ所(令和5年8月22日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。
障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。
引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省
障害者向け転職エージェント
障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。
障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。
高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。
就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。
精神障害をお持ちの方が仕事を続けるための5つのポイント
最後に精神障害をお持ちの方が仕事を続けるための5つのポイントをご紹介します。
障害者枠で仕事を探す
1つ目は障害者枠で仕事を探すことです。前述したように一般枠では障害を隠す必要があるため、症状や障害に対する配慮を得ることは期待できません。
しかし障害者枠であれば障害があることを前提として採用されるため、可能な範囲での理解や配慮を得られることでしょう。
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勤務時間を短くする
勤務時間を短くするのも一つの方法ですね。収入や安定のためにフルタイム勤務を求める人もいますが、長時間労働が原因で離職するケースもあります。
無理をしてフルタイム勤務をした結果すぐに辞めてしまうより、短時間勤務でも長く続けた方が、結果的に多くの収入につながる場合もあるでしょう。
また最初は短い勤務時間からスタートして、「これなら大丈夫!」と思えるようになった時点で勤務時間を増やすのも良いですね。どのようなペースで働くかは、体調の安定のためには特に重要なことですので、主治医としっかり相談するようにしましょう。
ミスしても気持ちを切りかえる
ちょっとしたミスでも必要以上に気にしてしまう人は、気持ちを切りかえるようにしてみましょう。ミスは障害のあるなしに関わらず、誰にでもありえるもの。
あなたが心配しているミスは、実は周囲の人にとっては何でもないことも珍しいことではありません。ミスをしても深刻に考えず、気持ちを切りかえて次の仕事に取り組むようにしてみてください。
得意なこと・苦手なことを周囲に伝える
4つ目はあなたが得意なこと・苦手なことをまわりに伝えることです。仕事をする上でどのようなことが得意なのか、または苦手なので配慮をしてもらいたいのかをまとめて、一緒に働く上司や同僚に伝えてみましょう。
周りも客観的にあなたのことを理解することで、働きやすい環境を作ってくれるはずです。
ナビゲーションブックとは
ナビゲーションブックを知っていますか?障害者職業総合センターが推奨しているツールで、精神障害をお持ちの方が働くにあたって障害特性や配慮してもらいたいこと、その他セールスポイントなどをまとめたものです。作成にあたってこれまでの生活歴や病歴、就労歴を振り返ることで、客観的に自分自身のことを再確認することができるでしょう。
また口頭で伝えることが苦手という人でも、作成したナビゲーションブックを利用することで、企業側にスムーズに必要事項を伝えることができます。
主治医やカウンセラーに相談する
最後は主治医やカウンセラーに相談することです。就職が決まっても、精神科への定期通院は欠かさず行ってください。
「就職できたのだから、もう治療は必要ない」と思う人もいますが、危険です。仕事をしていく中で少しずつ疲労が蓄積して、気が付かないうちに病状が悪化する可能性もあります。
専門家でもある医師やカウンセラーとは定期的に診察や面接をしてもらい、様子をチェックしてもらいましょう。さらに仕事で悩んでいることを相談すれば、解決につながるアドバイスが得られるかもしれません。
解決が難しいときは転職も視野にいれよう
仕事が長く続かないと感じる精神障害者の方は、今回紹介した5つのポイントをぜひ参考にしてみてください。もし改善が見られない場合や、自力での解決が難しい場合には転職をすることも選択肢の一つです。
また、DIエージェントでは転職を前提としないキャリアのご相談にも乗っています。「安易な転職はしたくないけれど、今の仕事をずっと続けられるかどうかわからない」など、転職をするかどうかお悩みの方もお気軽にご相談ください。
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・障害者手帳を取得することによって、様々なメリットがあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
障害者手帳の等級・種類|取得するメリットや申請方法も紹介
・精神障害者保健福祉手帳について、詳しく解説しています。以下の記事も併せてご覧ください。
精神障害者保健福祉手帳の等級区分|精神機能や能力の状態の違い・取得のメリット・申請方法を解説
・精神障害をお持ちの方の就活について、詳しく解説しています。以下の記事も併せてご覧ください。
精神障害の方の就職は大変?就活のポイントやチェックされやすい点を理解しよう

大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。