体幹機能障害の方が仕事上で感じやすい壁・就職先に求めたい配慮とは?求人例や就労支援サービスも紹介

体幹機能障害(体幹障害)とは、病気やケガにより頸部や腰部などの体幹部分に支障をきたし、日常的な行動が制限される障害です。障害の度合いによっては、日常生活に限らず仕事においても困難が生じる場合があります。

そこで今回は、体幹障害の方の仕事における課題や職場に求めるべき配慮事項、求職活動で役立つサービスについて解説します。

障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別の病気を発症してしまったりする例も少なくありません。

そうならないように、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただければ幸いです。

体幹機能障害(体幹障害)とは?

体幹機能障害(体幹障害)とは?

体幹機能障害(体幹障害)とは、体幹の異常・損傷により、姿勢の維持や日常動作に困難が生じる障害です。体幹とは、頸部、胸部、腹部及び腰部を指します。

体幹だけではなく下肢や上肢と重複して障害をお持ちの場合も多く、杖や車椅子を利用することもあります。

引用元
障害者職業総合センター NIVR「障害・職種別『就業上の配慮事項』-企業の経験12,000事例から-」
医学情報・医療情報 UMIN「Mw3 体幹機能障害」

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体幹機能障害の原因

体幹機能障害の原因は、二分脊椎など先天性の障害である場合と、脊椎損傷や頸椎損傷などの後遺症である場合があります。

具体的な病気の例は下記のようなものです。

  • 脳梗塞・脳性麻痺・くも膜下出血などの脳に関する病気
  • 筋ジストロフィー症・多発性筋炎などの筋疾患
  • 関節炎・リウマチなどの関節の病気
  • 切断・変形などの負傷
 
キャリアアドバイザー
後天的に障害を負われた方は、リハビリを重ねつつ、障害の受容と理解を進めていきましょう。

身体障害者手帳における体幹機能障害の等級

身体障害者手帳における体幹機能障害の等級

体幹機能障害をお持ちの方は、申請によって「身体障害者手帳」を取得でき、様々な福祉サービスを利用できます。

身体障害者手帳は、障害の程度によって、1級・2級・3級・5級の等級に認定されます。それぞれの等級をみていきましょう。

引用元
東京都福祉局「第3 肢体不自由 – 障害程度等級表」

1級

体幹機能障害1級は、座っていることができない状態の場合に認定されます。コルセットなどの装具を使用すれば、姿勢の維持が可能な場合もあります。

また、完全に坐位が不可能なのではなく、下肢など他の障害との重複によって判定されているケースも多いです。

2級

体幹機能障害2級は、「座位または起立位を保つことができない」「立ち上がることができない」状態と定義されています。立ち上がるためには介助や装具が必要です。

装具の使用で一部の行動が可能にもなります。

3級

体幹機能障害3級は、歩行が困難な状態です。片脚で起立位の保持が不可能な場合も、3級に該当します。

5級

体幹機能障害には、4級はありません。

5級は体幹機能の著しい障害という状態です。立位の維持や座る・立ち上がることも可能で、装具を使うことでより改善が見込めます。就労する場合も少ない配慮で済むことが多いです。

体幹機能障害者に交付・一部助成される日常生活用具

体幹機能障害者に交付・一部助成される日常生活用具

身体障害者手帳取得のメリットは多数あります。体幹機能障害をお持ちの方にとって、「市区町村から日常生活用具の交付や修理費の一部助成を受けられる制度」はぜひ利用したいメリットの一つです。

障害をお持ちのご本人が市区町村長に申請します。身体障害者更生相談所等の判定や意見に基づく首長の決定により、補装具費が支給されます。おおよその購入額・修理費(基準額)が定められており、申請者の負担は原則1割です。

助成以外にレンタル(貸与)ができる場合もあるので、詳細はお住まいの市区町村に問い合わせてみてください。

以下では、働く上でも必要な用具について説明していきます。補装具にはそれぞれ耐用年数が定められていますが、それ以前に壊れた場合でも、ケースバイケースで再支給・修理が可能です。

引用元
厚生労働省「補装具費支給制度の概要」

歩行補助つえ(T字つえ)

「歩行補助つえ」は、歩行の補助となる杖です。その形から「T字つえ」とも呼ばれています。材質は木材・軽金属の扱いやすいものと指定されており、耐用年数は3年程度です。

多点杖

自治体によっては、上記画像のような多点づえやカナディアンクラッチにも助成が出るケースがあるので、確認してみましょう。

移動用支援用具(歩行器)

歩行器など、家庭内の移動に使用する「移動用支援用具」も助成の対象です。転倒予防や立ち上がりを補助するためのもので、耐用年数は8年程度といわれています。

自宅に設置する場合は手すりなども含まれます。工事を伴うものは自治体ごとに「障害者住宅改造費助成制度」が設けられている場合があるので、こちらも確認が必要です。

便器

体幹機能障害をお持ちの方が「座る・立ち上がる」動作をサポートするためには、トイレにも工夫が必要です。

手すりのついた腰かけ式の便器、または、和式を洋式にする腰掛便座・補高便座(住宅改修を伴わないもの)が対象になります。耐用年数は8年です。

その他、補助が受けられる日常生活用具

他にも、様々な日常生活用具の助成が受けられます。出費をおさえるためにも、このような助成は積極的に活用しましょう。

  • 移動用リフト
  • 入浴担架、入浴補助用具
  • 特殊寝台、マット
  • ネブライザー(吸入器)、電気式たん吸引器
  • 電磁調理器 ※自治体による

体幹障害をお持ちの方が仕事で抱えやすい悩み・課題

体幹障害をお持ちの方が仕事で抱えやすい悩み・課題

ここからは、体幹機能障害の方が仕事上で抱えがちな悩みについて解説します。

1. 仕事内容の制限

体幹障害では、障害を負っている部分に負担がかかる仕事は困難です。

前章で解説したような補助具を使うことによって、支障が少なく働ける方もいます。しかし、障害の度合いによっては残っている能力で行える範囲の仕事しか選べないケースもあり、できる仕事が限られてしまうことが多いでしょう。

2. 周囲への引け目

体幹障害の方は、補助具を使用して行動するケースも多く、一目で周囲に障害をお持ちであることが伝わりやすいです。そのため、フォローを受けやすい面もあります。

しかし、一方で、ご自身の状態への理解がなかったり、逆に気を遣われすぎたりすることが、負担になる・迷惑をかけているのではと不安に感じる方も少なくありません。人間関係において、必要以上に神経質になってしまう方もいるようです。

3. 体温・体調調整での困難

頸椎や脊髄が損傷していると、自律神経機能が失われ、発汗や血管の収縮などによる体温調節ができなくなります。夏などは適切に水分を摂取していても熱中症になりやすいという面があり、体調管理の面で困難さを抱える体幹障害の方も多いです。

体幹障害の方が職場で受けられる配慮

体幹障害の方が職場で受けられる配慮

体幹機能障害をお持ちの方が入社した場合、「どのような配慮が受けられるのか」「どんな配慮をお願いすればよいのか」が気になることでしょう。そこで、ぜひ受けたい配慮項目についてお伝えします。

 
 
企業選びのチェックポイントは…
✓通勤時や会社内バリアフリー環境など時間や移動に問題はなさそうか
✓仕事の量や人員面のサポートがありそうか
 
キャリアアドバイザー
企業内の多機能トイレの有無や社内スペースの広さを知りたい場合、エージェントを通じてだと聞きやすいですよ!

1. 通勤や勤務時間の調整ができる

体幹障害の方は、障害がない方に比べて移動だけでも負担が大きく疲れがちです。そのため、通勤や勤務の時間に対する配慮はぜひ求めたいもの。ラッシュ時間以外または自家用車での通勤OK・フレックスタイムや時短勤務ができるなど、職場の環境を確認しましょう。

なお、会社のバリアフリー環境が整っていない場合でも、テレワークが可能な企業であれば家にいながら仕事をすることができます。一番のメリットは通勤の負担がなくなることでしょう。

姿勢を保てないことで周囲の視線が気になる、歩くペースが周りに追い付けず心理的に負担を感じるという問題も解消できます。

 
キャリアアドバイザー
テレワークではタイピングスピードや基本的なパソコンスキルがより重視されます。チャットでのコミュニケーションにも慣れておきたいですね。

2. 社内の設備が整っている

バリアフリーなど、社内での移動への配慮も欲しいもの。スロープ(段差の解消)・多目的トイレ・手すりなどが設置されていると、体幹障害の方でもオフィス内で行動しやすいでしょう。

また、作業上の配慮として、自分が仕事をしやすいように高さを変えられる机やいすの導入を検討してもらうのも良いでしょう。

 
キャリアアドバイザー
バリアフリー機能が集約されている特例子会社での就職を視野にいれてもよいですね。

3. 周囲にサポートを求められる

障害に対する理解や配慮がないのも困りものですが、前述したように、必要以上に気配りや手出しをされることで自尊心が傷つく方も多いです。そこで、自分がサポートを欲するときに気兼ねなく周りの人に頼めるような環境が整っていると、安心して働きやすいでしょう。

体幹障害の方の就職・転職には障害者雇用枠という方法も

体幹障害の方の就職・転職には障害者雇用枠という方法も

 
キャリアアドバイザー
身体障害者手帳をお持ちの方は「障害者雇用枠」での就労ができます。
有名企業・大企業の求人が多数あり、配慮を受けながら自分らしく働けます!

そこで、2024年3月時点で障害者雇用枠専門の求人サイト「BABナビ」に掲載されている、体幹障害の方が応募できる求人の具体例を見てみましょう。

三井住友カード株式会社|企画・営業職

三井住友カード株式会社|企画・営業職

キャッシュレスに関する企画・営業職で、月給は220,000円~340,000円、年収は400万円~650万円、福利厚生や手当も充実しており好待遇。一部テレワークも可能です。応募には実務経験が必要ですが、経験をお持ちの方はさらなるキャリアアップを目指せるでしょう。

三井住友カード株式会社の障害者求人(ID:6549)|求人サイト・BABナビ(バブナビ)

株式会社ドウシシャ|社内ヘルプデスク

株式会社ドウシシャ|社内ヘルプデスク

通勤型のシステム関連のヘルプデスク業務です。SE(システムエンジニア)の経験をお持ちであれば、より専門的な仕事を任せてもらえる可能性もあります。

残業はほぼないのに固定で42時間分の残業代が支払われるシステムで、月給は280,000円~333,330円、豊富な福利厚生も魅力です。

株式会社ドウシシャ 東京本社の障害者求人(ID:1882)|求人サイト・BABナビ(バブナビ)

体幹障害の方が利用できる就労・転職支援サービス

体幹障害の方が利用できる就労・転職支援サービス

体幹障害をお持ちの方が就職・転職するには、求職活動をサポートしてくれるサービスを活用するのがおすすめです。どのようなサービスがあるのかを紹介します。

ハローワーク

ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。施設内に設置されている検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。

ハローワークには専門の相談員を配置した援助窓口が設けられており、障害をお持ちの方の就職活動支援を行っています。

一般枠の求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗り、障害をお持ちの方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。

引用元
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターとは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害者の方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。各都道府県に、最低1カ所以上設置することが義務付けられています。

センターでは、直接就職先を案内するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携し、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといったサポートを行っています。

障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。

引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは、障害者の方の職業面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事面と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などとも呼ばれます。

なかぽつは、令和5年8月22日時点で全国に337カ所設置されています。NPO法人や社会福祉法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。

障害をお持ちの方への就労サポートのほか、事業所に対する障害者雇用への助言や、関係機関との連絡調整などを行っています。

引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和5年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、訓練や就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス施設です。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。

利用者は、事業所に通いながら就労に必要な知識や技術を身につけ、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。

全国に3,300カ所以上存在し、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。

障害者雇用に強い転職エージェント

障害者枠を持っている企業や障害者雇用を積極的に行う企業の求人に特化した、転職エージェントを利用するのも良いでしょう。

障害者の方の求職活動における独自のノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いです。そのエージェントでしか取り扱っていないような、非公開の求人情報を得られる場合もあります。

エージェントでは、高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上で企業とのマッチングを行ってくれるのが特徴です。

就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいでしょう。

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体幹障害の方でも仕事しやすい職場を見つけよう

体幹障害の方でも仕事しやすい職場を見つけよう

体幹機能障害では、立つ・座る・移動するという行動への不自由があり、補助具を使用している方も多いです。仕事においても負担のかかる行動や作業は難しいですが、だからといって就業を諦める必要はありません。

仕事探しをサポートしてくれる公的機関や民間サービスも利用しつつ、自分に必要な配慮などを考えながら、働きやすい場所を見つけましょう。

障害を抱えながら働く上では、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。

今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。

「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でもかまいませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

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監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。