怪我や病気などで障害を持ち、障害者手帳の申請を検討している方や申請するかどうかを迷っている方向けに、本記事では身体障害者手帳の概要、取得方法、メリット・デメリットから、未取得でも受けられる福祉サービスを紹介していきます。
身体障害者手帳とは?
身体障害者手帳とは「身体障害者福祉法」に基づき、身体障害のある方の自立や社会活動の参加を促し、支援することを目的とした手帳です。
基本的な取得条件は「疾病や外傷等によって身体機能に障害があり、その障害が将来とも回復する可能性が極めて少ない状態にある」と証明できることです。
<発行元>
各都道府県知事(もしくは指定都市市長又は中核市市長)が交付します。
<更新の有無>
身体障害者手帳には、有効期限はありません。障害の状態が変わったり、障害がなくなったりした場合には、「等級変更」や「返還」の手続きをすることが可能です。
再認定制度の対象になっている方は、指定された期日までにあらためて診査を受ける必要があります。
身体障害者手帳に書かれていること

身体障害者手帳は発行元の自治体によってデザインや形式の違いなどはありますが、所有者の情報にくわえて障害の程度などが書かれています。
- 顔写真
- 交付日
- 氏名
- 生年月日
- 住所
- 障害名
- 等級
- 運賃の割引種別
- 発行元……など
最新の改正情報は厚生労働省のサイトを確認
医療の進歩や社会情勢によって「身体障害」に関わる制度も日々変化しています。最新の情報は厚生労働省のホームページから確認してください。 直近では以下のような法改正や通知がなされています。
- 小腸機能障害の認定基準が改正(令和2年4月)
- 視覚障害の認定基準等の見直し(平成30年7月)
- 腎臓機能障害の認定基準等の見直し(平成30年4月)
また東京都や大阪府箕面市などの一部の地域で、持ち運びに便利で耐久性にも優れたカード形式の障害者手帳の導入も始まりました。(令和2年~)
障害者手帳を申請しようか迷っているけれど、その実態について詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。 本記事では、障害者手帳の内容、対象疾患や等級、受けられるサービス、申請方法などを詳しく解説します。また、障害者雇用枠で就職をする[…]
身体障害者手帳の対象疾患・等級
身体障害者手帳の交付対象となっている疾患・等級について解説します。
対象疾患
- 視覚障害
- 聴覚又は平衡機能の障害
- 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
- 肢体不自由
- 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害
- ぼうこう又は直腸の機能の障害
- 小腸の機能の障害
- ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
- 肝臓の機能の障害
身体障害者手帳の等級とは
上記の障害は程度や日常生活に及ぼす支障により7段階の等級に分けられ、1級~6級までに該当する場合および、7級に該当する障害が二つ以上重複している場合に手帳の交付対象となります。
身体障害者手帳の申請・取得方法
続いて、身体障害者手帳の取得方法や紛失・破損した場合の対応について解説します。
身体障害者手帳の申請
(1) 診断書(もしくは意見書)の書式を取得する
お住まいの市区町村の障害福祉窓口にて、診断書(もしくは意見書)の書式を受け取ってください。
(2)指定医(※)に診断書を書いてもらう
指定医とは、都道府県知事が定める医師を指します。区市町村の障害福祉担当窓口に問い合わせるか、かかりつけ医に指定を受けているかどうかをご確認ください。
(3)診断書を(1)の窓口で提出する
(4)手帳が交付される
明確な基準はないものの、一例として東京都では各区市町村の窓口に申請してから通常1ヵ月程度で身体障害者手帳が交付されます。
ただし、提出された診断書・意見書の内容によっては指定医に照会などが必要となり、日数がかかることがあります。
申請時に必要なもの
申請時に必要なものは「身体障害者診断書・意見書」「写真」「交付申請書」「マイナンバーがわかるもの+本人確認書類」の4点セットです。
1.身体障害者診断書・意見書 (発行から1年以内のもの)
前述の通り、用紙はお住まいの区市町村の障害福祉担当窓口にて入手してください。
2.申請する方の写真
縦4cm×横3cmの大きさで、上半身が写り、脱帽して撮影したものを使用してください。
3.交付申請書
用紙はお住まいの区市町村の障害福祉担当窓口にて入手できます。
4.マイナンバーカード+本人確認書類
平成28年1月1日以降、身体障害者手帳の申請には「個人番号(マイナンバー)」の記載が必要になりました。 本人確認も必要になので、番号確認と身元確認のできる書類(個人番号カードもしくは個人番号通知カード+運転免許証など)の掲示をします。
手帳の申請に費用はかかる?
交付申請そのものに費用はかかりませんが、指定医に診断書を作成してもらう際に診断書料がかかります。
金額は病院毎に異なりますが、5,000円程度としている病院が多いようです(※)。
また、自治体によって助成制度を設けている所もありますので、気になる方は検索サイトで「障害者手帳 交付申請用診断書料助成 〇〇市」のようにお住まいの市区町村名を含めた検索をお試しください。
※あくまで目安ですので、必ず受診する指定医に確認してください。
手帳を紛失・破損したときは?
手帳の申請時と同様にお住まいの市区町村の障害福祉窓口にて再交付手続きが可能です。
その際には、再交付申請書(窓口で入手可能)や顔写真、印鑑、本人のマイナンバーなどが必要になります。
平均的には2~4週間で交付され、郵送での申請ができる地域もあります。
再交付を希望する場合は市区町村のホームページで詳細を確認しましょう。
身体障害者手帳の取得メリット
身体障害者手帳を取得するメリットはどのようなものがあるか一つずつ見ていきましょう。
医療費の助成
障害者手帳をお持ちの方の医療費負担が軽減される制度です。
身体障害者手帳1級・2級の方(心臓・じん臓・呼吸器・ぼうこう・直腸・小腸・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫・肝臓機能障害の内部障害については3級も含む。)は医療機関での医療費の自己負担が、原則1割になります。
※医療費の助成については地方自治体ごとに制度の名称や内容が異なります。
お調べになる場合は、検索サイトで「障害者 医療費 助成 〇〇市」のようにお住まいの市区町村名を含めた検索をお試しください。
障害者雇用
従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。
例えば民間企業の場合、従業員を45.5人以上雇用している企業は、障害者を1人以上かつ従業員の2.3%にあたる人数の障害者を雇用することが定められています。(令和3年3月~)
障害者手帳を持っている方は、この法定雇用率で定められる枠での就業が可能です。特に身体障害者手帳をお持ちの方は転職市場でも「売り手」の状態が続いています。
なお障害者手帳を持っていても障害者枠で就業することは義務ではなく、一般枠で就業することは問題ありません。
- 下肢障害などにより移動に制約のある場合に、出社時間をずらしラッシュを避けて通勤できる
- 聴覚障害などにより口話が難しい場合に、メール・筆談・チャットツールなどを通じて社内コミュニケーションを取ってもらう
- 内部障害や上肢障害などにより、力仕事が身体に過度に負担となる場合、重量物の運搬などを業務内容から免除してもらう
参考:厚生労働省「障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関する Q&A」
障害者雇用枠で応募する際の注意点
企業ごとに求人への応募段階で手帳を取得済みか、申請中(取得見込み)であっても応募できるかは異なります。
手帳の申請中に求人への応募を検討されている方は、応募したい企業に確認する必要があります。
補装具の助成(補装具費支給制度)
義肢・つえ・補聴器・車いすなどの補装具の購入または修理で必要な費用について、本人は原則1割負担(所得によっては無料)で済むようになる助成制度です。
ただし、購入後の申請や、障害者本人または世帯員のいずれかが一定所得以上の場合は対象とならないため注意してください。
対象となる補装具の種類・上限の価格・個数など細かい条件があるため、申請をご検討の場合にはお住まいの市区町村の担当窓口で相談してみましょう。
障害者住宅改造費(リフォーム費用)の助成
住宅リフォーム費用の給付が受けられます。例えば、住宅内の段差解消のバリアフリー工事やスロープ・手すりの設置費用を助成するものです。
各種納税の軽減
所得税・住民税・相続税・自動車税などの軽減が受けられます。
等級によっては一定の金額の所得控除が受けられます。
参考:国税庁「障害者と税」
交通機関の割引
交通機関(鉄道・バス・タクシー・航空旅客機・船舶など)によっては障害者手帳をお持ちの方は割引が適用となる場合があります。
ご利用になる交通機関の運営会社のホームページでの確認をおすすめします。
身体障害者手帳を取得するデメリット
個人の価値観によりますが、障害者であるという認定を受けることに抵抗を感じる方もいるようです。
ただし手帳を所持していることを開示することは義務はなく、手帳の返納も可能です。
【よくある誤解】生命保険などに入れない?
「身体障害者手帳」の有無それ自体で生命保険・医療保険の加入が断られることはありません。
しかし、生命保険には加入できるかの審査があるので、その規定に触れるかが問題となってきます。
たとえば「がん保険」に加入する際は視覚障害や心疾患などをお持ちでも問題ありません。
保険サービスによって審査基準が異なるので加入の前に確認をしてみましょう。
手帳がなくても受けられる「障害年金」
「日本年金機構」によって運営されている年金制度で、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
「障害基礎年金」「障害厚生年金」の2種類があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。
なお、障害年金を受け取るには、年金の納付状況などの条件が設けられています。
障害年金は条件を満たせばもらえる制度ですが、「一体いくらもらえるの?」とその金額が気になる人が多いと思います。 この記事では、障害年金受給の条件や金額の計算方法、さらに障害年金以外のお金にまつわる制度まで詳しく解説します。「自分は障害年金[…]
障害者手帳の等級と障害年金の等級は違うので注意
障害年金と障害者手帳は発行主体が異なるため、認定基準も異なる点が注意です。
障害者手帳を取得せずに障害年金を受給されているケースもあれば、障害者手帳を持っていても障害年金支給の対象とならない場合もあります。
障害基礎年金
障害基礎年金は国民年金に加入している間に該当の障害について初診を受け、その後も一定の障害の状態にあり、保険料納付要件を満たしている点などが受給要件です。
詳細は下記のサイトからご確認ください。
- 1級 : 977,115円+子の加算
- 2級 : 781,700円+子の加算
参考:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」
障害基礎年金を申請したい場合
障害基礎年金を申請したい場合には、下記のページで請求するときに必要な書類などを確認できるのでご覧ください。
障害厚生年金
厚生年金に加入している間に該当の障害について初診を受けていることや、一定の障害の状態にあること、保険料納付要件を満たしていることなどが受給要件となります。
また、年金額は厚生年金に加入していた期間の長さ、給与の額(支払っていた保険料の金額)などで異なります。詳細は下記のサイトからご確認ください。
- 1級 :(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕※
- 2級 :(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕※
- 3級 :(報酬比例の年金額) 最低保障額 586,300円
※その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算されます。
参考:日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」
障害厚生年金を申請したい場合
障害厚生年金を申請したい場合には、下記のページで請求するときに必要な書類などを確認できるのでご覧ください。
まとめ
障害者手帳に関する制度やサービス、取得していない場合にも受けられる福祉サービスなどは幅広く存在することがおわかりいただけると思います。
特に働く環境に関して障害配慮が受けられるメリットは大きく、就職・転職を機に「身体障害者手帳」を取得する方もたくさんいらっしゃいます。
障害者枠での就職・転職の進め方や採用市場の現状を知りたい方、自分にあった職場の探し方に悩んでいる方は、障害者枠に特化した転職エージェント「DIエージェント」にお気軽にご相談ください。