うつ病だと仕事は休めない?休職する方法や利用できる制度・手当を解説

うつ病と診断を受けても、業務的、あるいは金銭的な問題などにより、休職に踏み切れない方も多いでしょう。今回は、うつ病と診断を受けたものの、あらゆる事情で休むことに抵抗がある方へ、仕事を休むときに利用できる制度・手当を中心に解説します。

また、休職したあとに復職または転職を検討する際の方法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

うつ病と診断|金銭面が不安で休職に踏み切れないときは

うつ病と診断|金銭面が不安で休職に踏み切れないときは

うつ病と診断されたことに加え、体調そのものも思わしくないと、誰しも「休みたい」と思うものです。

しかし仕事を休むと職場へ迷惑を掛けてしまう、さらには金銭的に困窮するのではないか、など、いくつもの不安が押し寄せ、休職に踏み切れないといった方も多いでしょう。

しかし、うつ病と診断され、休職を選択する場合は、健康保険の保険料をきちんと支払っていることで傷病手当の支給対象になります。

傷病手当では自身の給与の3分の2相当額を受け取ることができるので、金銭的な不安をカバーすることができます。

なお、うつの状態によって異なるものの、軽度であれば約1ヵ月、中度であれば3〜6ヵ月程度、重度であれば1年またはそれ以上と休職期間に目安があります。休職を検討するときは、自分の症状がどの部分に位置するのかを照らし合わせながら検討してみてください。

 
キャリアアドバイザー
金銭的な不安により休職を踏み切ることに躊躇していた方は、こちらの記事を参考にしながら休職手続きを進めましょう。

ここからは、うつ病と診断を受け、休職を選んだときに利用できる制度を紹介します。

 
キャリアアドバイザー
日本にはさまざまな制度・支援があり、条件をクリアしていればどなたでも利用・交付が受けられます。
豊富に整備された制度・支援の中でも、ここではうつ病と診断を受けて休職した場合を対象とした制度を紹介します。

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自立支援医療

自立医療支援とは、継続的な通院による医療費の自己負担額を軽減する目的を持つ公費負担医療制度のことです。うつ病と診断を受けた後、継続して通院が必要になることを踏まえ、必要な手続きを行うことで、医療費の自己負担額をカバーすることができます。

詳細については以下の記事をご覧ください。

引用元
自立支援医療制度の概要 |厚生労働省

障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)

精神障害者保健福祉手帳とは、一定程度の精神障害状態にあることを認定する障害者手帳の一種のことです。精神障害者の自立、社会参加の促進を目的に、手帳の交付を受けた方はさまざまな支援や福祉サービスを受けることができます。

一例としては、税金の控除や医療費の助成、公共交通機関や携帯電話料金等の割引を受けることが可能です。

詳細については以下の記事をご覧ください。

引用元
障害者手帳について|厚生労働省

傷病手当金・失業手当

傷病手当金とは、病気で休業中の被保険者とその家族の生活を保障する目的でつくられた制度のことです。病気・ケガなどにより、会社を休み、事業主から十分な報酬が得られない場合に給与の3分の2相当額が支給されます。

失業手当は、就職を検討中であるものの、現状、仕事が見つかっていない状態の方に現金支給される制度で、退職した会社で雇用保険に加入しており、保険料を支払っていれば対象となります。

ただし傷病手当金と失業手当は併用できません。症状や状況に合わせて必要な手当を申請しましょう。

引用元
傷病手当金 | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
基本手当について|ハローワークインターネットサービス

障害年金

障害年金とは、障害のある方の生活を保障する目的から、現金支給が行われる制度のことです。国民年金または厚生年金を支払っている方は、障害認定を受けることで受給できます。

なお年金の申請が行えるのは、うつ病の症状で病院にかかった日、いわゆる初診日から1年6ヵ月を経過した日以降です。

うつ病と診断を受けた時点での申請はできないので、初診日からどれくらい経過しているかを確認の上で申請してください。

また申請後は通過・支給開始までそれぞれ2~3ヵ月かかると言われています。医師の診断書も必要なので、申請にあたっては比較的時間がかかることを念頭に置きましょう。

引用元
障害年金とは|NPO法人障害年金支援ネットワーク

生活保護

生活保護とは、生活が困難な方を対象とした自立をサポートする制度のことです。

日本では「健康で文化的な最低限度の生活を保障するための保護を行う」としており、日本国民であればどなたでも受給できます。

制度を利用するにあたってはいくつかの条件があり、居住する地域が定める最低生活費よりも収入が下回っていることが必須です。

また、売却によってまとまった資金が得られると判断できる土地・高級品・車などを保有している場合、これらを手放すことを条件とする自治体もあります。

利用に際しては最寄りの自治体にどのような条件が設けられているのかを確認しましょう。

引用元
生活保護制度 |厚生労働省

うつ病が落ち着き、復職を検討するなら

うつ病が落ち着き、復職を検討するなら

うつ病が落ち着き、復職を検討する際は、無理なく業務に取り組めるよう、社内に職場環境の調整を申し出てみましょう。

また、うつ病は再発しやすい疾患でもあるため、完治してから職場に復帰したとしても、職場環境の調整は必要になるかもしれません。

発症前は多くの仕事をこなせたとしても、うつ病を罹患後は体力の低下がみられることも多く、人によってはこれまでの業務に難しさを感じることがあります。

そのような場合に備えて、自分に合った働き方を考え、上司に相談してみましょう。

  • フレックスタイム制
  • 時短勤務
  • テレワーク
  • 部署の変更

在籍する会社によっては、時短勤務やテレワークに対応しているケースもあります。出勤時の通勤ラッシュに強い不安感を抱くといった方は、日々の始業・終業時間を自分で決められるフレックスタイム制を利用する方法が有効です。

また、在宅勤務に対応した会社であれば、通勤回数をひと月数回と決め、そのほかはテレワークに切り替えるといった方法もあります。

 
キャリアアドバイザー
体調や精神面など、総合的な部分を客観視した上で自分に合う働き方をみつけ、上司や担当部署に相談してみましょう。

うつ病により、転職を検討するなら

うつ病により、転職を検討するなら

うつ病の発症によって当面の間働くことが難しいと判断したときは、転職を考える方もいらっしゃるでしょう。

しかし、うつ病は気分の落差が大きく判断力の低下を招きやすいという特性から、この時点で大きな決断をすることは避けるのが望ましいです。

症状が落ち着き、物事を冷静に判断できるようになったときに、現職を離れる、あるいは転職を検討しましょう。

うつ病は、改善した人の60%が再発、2回罹患した人では70%、3回罹患した人では90%と再発率が高くなる傾向にあります。

再発率の高さ、そしてこれまでは療養期間であったことを念頭に置き、当面の間はリハビリ期間および再発予防期間であることとした上で転職を目指しましょう。

ここからは転職を検討する際に取り入れてほしいことを紹介します。

 
キャリアアドバイザー
先のことを考えただけでも不安感が襲うといったときは、療養を優先し、少しずつ取り組むよう心がけましょう。
もしすでに退職した方であれば、これから紹介する項目を取り入れながら、自分のペースでゆっくりと転職先を探していきましょう。

引用元
コラム・活動事例・資料編|厚生労働省

転職するならまずは体力作りから

うつ病によってしばらく休職していた場合、体力は以前に比べて低下しています。体力が低下していると、これまではできていた多少の無理がきかないことから、転職活動を行う際は、体力作りも並行して行うよう心がけましょう。

例えば休職期間の間、寝具にいることが多かった場合は、朝は決まった時間に起きる、昼食はできるだけきちんと取る、夜は決まった時間に眠るよう意識するなど、基本的な生活習慣に戻るよう取り組んでみましょう。

特に、朝から午前中の間に起床し、太陽の光を浴びると、不安感を緩和する脳内ホルモンの一種「セロトニン」が分泌され、心が穏やかになると言われています。

引用元
幸せホルモンには種類がある!出し方を学ぼう!健康管理検定 後援:文部科学省

体力作りプラスアルファを求めるなら精神科デイケア

スポーツやレクリエーション、創作活動などに参加しながら体力作りに取り組みたいといった方は、精神科デイケアと呼ばれる施設がおすすめです。精神科デイケアは精神障害と認められた方を対象とした、日帰りで利用できる施設です。

体力作りを目的としたレクリエーションなどが行われているので、無理のない範囲で体力作りに取り組むことができます。

また精神科デイケアの中にはSST(Social Skills Training)と呼ばれるプログラムがあり、うつ病の再発予防に関する知識を身につけることもできます。

 
キャリアアドバイザー
SSTについてまとめた記事もあります!
興味のある方はこちらも併せてチェックしてみてくださいね。

自分に合う仕事を探す方法は3つ

体力作りに励み、基礎体力を上げることができたら、次は自分に合う仕事を探しましょう。

ここではおすすめの方法を3つ紹介します。

就労移行支援・就労継続支援を利用する

うつ病を罹患していた方は、就労移行支援、または就労継続支援の利用が可能です。

就労移行支援とは、障害などをお持ちの方の就職をサポートする福祉サービスのことです。この場合、障害者雇用ではなく、一般企業に通常枠で就職を希望する方にとって必要な訓練の提供および就職活動の支援、定着支援などが受けられます。

一方、就労継続支援は、体調等によって一般企業での就労が困難と判断した方に、就労の機会やスキルアップにつなげられる訓練が受けられるサービスおよび事業所です。

利用を検討する際は、自分の状況と各特徴を照らし合わせて決めると良いでしょう。

 
キャリアアドバイザー
就労移行支援および就労継続支援についてはこちらも併せてチェックしてください。

ハローワークの利用

うつ病と診断された後、障害者手帳の交付を受けたものの、症状の経過が良く、できれば障害者手帳の交付は受けたまま再就職したいと考える方もいらっしゃるでしょう。

そのようなときは、ハローワークを訪ねてみましょう。

障害者手帳の交付を受けたままハローワークで就職先を探す場合は、障害者専門窓口をご利用ください。障害者専門窓口の利用によって、自分と会社双方のニーズにマッチした求人が見つかりやすいほか、就業後であってもハローワークの担当者によるサポートが受けられるメリットがあります。

障害者雇用に特化した転職エージェントの利用

障害者雇用に特化した転職エージェントの利用もおすすめです。当サイトを運営するDIエージェントは、障害者手帳を提示した上で就職・転職活動される方のための転職支援サービスです。

DIエージェント以外にも、障害者雇用枠を取り扱う求人サイト「BABナビ」などを運営し、サービス全体で1,600社以上の取引実績、そして7,500名以上の就職支援実績があります。

うつ病があっても働きたい、自分に合う会社を見つけたいといった方は、この機会にぜひお気軽にDIエージェントへご相談ください。

 
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就労に対して不安がある方をはじめ、自分に合う仕事について知りたいといった方も歓迎しています!
いつでもお気軽にご相談ください。

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適切な制度・手当を活用すればうつ病でも休むことはできる!

適切な制度・手当を活用すればうつ病でも休むことはできる!

うつ病を発症した後も、さまざまな理由から休職を決断できずにいる方も多いです。この記事を読むまでの間、心身共に非常に辛かったことでしょう。

日本にはうつ病の方が利用できる制度や手当が豊富に整備されているので、まずは本記事を参考にしながら、支援・手当の概要について理解を深め、自分に該当するものはないかをチェックしましょう。

うつ病の治療には医療費や公共交通機関の交通費などがかかりますが、条件を満たしていれば、ご紹介した制度・支援によって自己負担額をカバーできます。本記事で紹介した支援・制度等を活用しながら、ゆっくりと療養してください。

症状が落ち着いた頃、自分に合う会社へと転職を希望される際は、障害者雇用に特化した転職エージェント「DIエージェント」をぜひご利用ください。

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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。