うつ病と診断され、仕事はどうすればいいのかと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。実際に「もう仕事ができないかも」「働くのはつらい」という思いを抱えている方は少なくありません。しかし、職場によっては「休職」ができる可能性も。
そこで、今回は、うつ病の診断を受けた方の休職について解説します。今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。
うつ病の方が転職に成功した事例もあるので、ぜひ参考にしてください。
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うつ病診断後に仕事を休むには診断書が必要|休職手続きの流れ
うつ病と診断された場合、今の仕事を休職するためには医師の診断書を職場に提出しなければなりません。そこで、どのような手続きをどんな流れでやればいいのかを解説します。
なお、休職せずに辞める方法もありますが、休職期間中に様子を見ながら検討してもかまわないので、職場に休職制度がある場合はぜひ利用しましょう。
1. 医療機関で診断書を書いてもらう
まずは担当医にうつ病の診断書を書いてもらう必要があります。発行には数日~数週間を要することもあるので、早めに依頼しましょう。
なお、自分がうつ病かもと感じたときに相談しやすい医師がおらず、うつ病の診断を受けられる病院を探したい場合、職場の産業医などに相談して紹介してもらう方法もあります。
2. 職場の休職制度について確認する
休職制度は義務ではなく、職場によっては導入されていないこともあることは事実。また、適用の対象に関する規定もあるので、就業規則などでチェックするとともに、人事や総務、上司などに確認を取る必要があります。
制度について職場に確認したい項目を下記で押さえましょう。
給料・手当
企業の規定によって異なりますが、休職中は無給の場合が多いです。
こう聞くと「無収入は困る」と休職をためらう方もいるかもしれませんが、給料がもらえない場合は傷病手当金(詳細は後述)を受け取れる可能性があります。傷病手当金の目安は、給料の3分の2程度と考えておきましょう。
社会保険
健康保険や厚生年金といった社会保険は、休職中も発生する費用。無給では給料からの天引きができないため、会社が立て替えて後から清算するというケースが多いですが、支払い方法を確認しておくと安心でしょう。
休職可能な期間
どのくらい休職が認められるかも企業ごとに異なります。休職する理由や勤続年数などで違いを設けている企業もあるようです。
自分の休職できる期間が、医師が判断した「必要な休養期間」より短い可能性もあるでしょう。休職期間が満了したときにまだ休職理由(うつ病)が解消されていなければ、自然退職や解雇という扱いになることもありえます。
そのほかに休職中に会社とのやりとりが必要になる場合もあるので、どうやって連絡を取るかという手段や連絡頻度、担当者なども確認しておくことが大切です。うつ病という病気の特性上、あらかじめ決まっていれば、心身の負担も比較的抑えられるでしょう。
復職方法
休養したのち復職が可能になったときにどうやって復帰するか、復職の条件はどんなものなのかなどを確認することも大切です。スムーズに復職できるよう、しっかり理解しておきましょう。
3. 必要な休職手続きを行う
診断書の準備ができ、確認しておくべき内容がわかったら、職場に必要な書類を提出して休職の申請をします。これで休職の手続きは完了です。
休職中に傷病手当金をもらうには?4つの条件
社会保険に加入している場合、休職中は給料の支給がなくても、前述したように「傷病手当金」を受け取れる可能性があります。傷病手当金とは、ケガや病気による休業の際に被保険者や家族の生活を保障してくれる制度です。
そこで、傷病手当金を受け取るための4つの条件について理解しましょう。
引用元
病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会
1. 業務外の事由で療養するための休職であること
まず、業務外の理由での休業であること。傷病手当金は、健康保険での病院受診・治療に限らず、自費診療の場合でも、業務外の病気やケガによって働けないことの証明があれば受給できることが特徴です。入院でなく自宅療養の場合でも受け取れます。
業務外の事由かどうかの判断は、人事や健康保険組合に確認しましょう。
2. 仕事ができない状態であること
次に、1で判断された病気やケガのために「働けない」状態であること。この際、休業を希望する側が自己判断で「仕事ができない」と申告するのではなく、病気・ケガの状態や任されている仕事内容を考慮し、医師など療養担当者の意見をもとに判定されます。
3. 連続した3日間を含む4日以上働けなかったこと
傷病手当金は、1の事由によって仕事を休んだ日から続けて3日間(待期)経ち、4日目以降も仕事に就けなかった場合に、4日目以降から支給されます。つまり、待期の間は手当の支給対象外。ただし、待期には土日や公休日なども含まれます。
4. 休業中に給料が支給されないこと
傷病手当金は業務外の病気やケガで休業する際に生活保障をしてくれる制度なので、休職している間に職場から給料をもらえる場合は給付されません。ただし、支払われる給料が傷病手当の金額より低い場合は差額を受け取れます。
うつ病での休職期間の目安と休職中の過ごし方
うつ病で休職する際の期間の目安はどれくらいで、休職期間中はどのように過ごせばいいのでしょうか。
休職期間はどれくらい?
やや古いデータですが、「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」によると、うつ病を含む精神的不調での1回目の病休日数の平均は107日(約3.5ヶ月)という結果があります。
この病休期間はうつ病だけのデータではなく、また、あくまで平均値のため、目安として理解しておきましょう。
引用元
主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究|厚生労働省
休職している間はどう過ごす?
休職中は、リラックスやストレス解消ができる方法を身につけ、心と体をしっかり休めて、睡眠・食事・活動といった生活リズムを整えましょう。休養しながら気分を落ち着かせることが重要です。病状が落ち着いてきたら、復職に向けた体力づくりもしておくとよいでしょう。
うつ病から仕事に復帰するときに大切なこととは
ここまでは、休職の流れや休職中のことについて解説してきました。うつ病の方が上記のように休職を経たのち、復職するときは、下記の点に留意することが大切です。
1. 自己判断でタイミングを決めない
いつ復職するかは自分勝手に決めるのではなく、担当医・産業医・上司などと相談しながら決めましょう。
担当医が「復職可能」と判断しても、職場にとっての「回復」基準には達していない可能性もあり、復職しても再発する恐れがあるため、慎重に決定する必要があります。治療も勝手にやめないようにしてください。
2. 無理をしない
復職後にいきなり元の業務量をこなそうとしたり、休職した分を取り戻そうと頑張りすぎたりすると、結局心身に負担がかかって再発する可能性があります。そのため、再発のリスクを考え、様子を見ながら働くことも非常に重要です。
3. リワークプログラムを利用する
精神的な疾患で休職した方に対し、スムーズな職場復帰を支援するサービス「リワークプログラム(復職支援プログラム)」を利用するのもおすすめです。
リワークプログラムは、病院や地域障害者職業センターなどが実施するほか、企業が自社社員に向けて独自に行っていることもあります。仕事の勘を取り戻すために、ぜひ活用してみましょう。
うつ病と診断されたら仕事を辞めずに休む方法もある!
うつ病になった場合、医師の診断書があれば、職場の休職制度を利用して仕事を休みながら療養できる可能性があります。休職制度が設けられていない企業もありますが、今の仕事を続けたいなら、まずは一度職場に相談してみましょう。
なお、うつ病の休職期間は数ヶ月にわたるケースが多いため、焦らず仕事を休んでいる間に復職についてゆっくり考えれば大丈夫です。また、状況によっては、休養したのちに転職を検討してもかまいません。
転職におけるゴールは「採用されること」ではなく「自分らしく働ける環境で長く続けること」だと言えます。その視点で、 障害の特性に合った業務に就くことや、障害への理解や配慮のある環境選びが大切です。
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社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。