うつ病になった場合、休職や退職をする方が多いです。休職した場合、休養後に元の職場に復帰できればよいですが、場合によっては辞めざるを得ないこともあるかもしれません。
では、うつ病の方が転職や再就職を考えるときにはどうすべきなのでしょうか。転職活動のポイントや知っておきたい点も伝えるので、これから転職したい方は参考にしていただければ幸いです。
うつ病になった方が転職・再就職を考えるには
まず、うつ病を患った方が転職や再就職について考える場合、どうすればいいのかについて解説します。
休職して冷静に検討する
うつ病のときは気分が沈んで意欲もわかないため、一旦仕事を離れて休み、落ち着きましょう。
病が判明すると、「仕事のせいでうつ病になったのかもしれない」「今の職場が合わないから早く辞めたほうがいいのでは」などとマイナスに考えてしまうかもしれません。
しかし、体調が悪いときは焦りばかり感じて冷静な判断ができない可能性があるため、まずは休養して気持ちと体調を落ち着けることが重要です。状況によっては、休職や治療ののちに同じ職場で働き続けられることもあります。
自分勝手に判断しない
退職や転職といった重大な決断を、自分一人の判断で行わないことも大切です。前述のように、うつ病のときは冷静な判断ができにくい状態になっています。家族や友人、医者などに相談する、支援機関の窓口に行くなどして、周囲の力を借りることをおすすめします。
休職中に利用できる経済支援
休むことが大事だとわかってはいても、休職すると経済面で不安を感じる方もいるかもしれません。そこで、休職中に受けられる可能性がある経済的な支援について知っておきましょう。
傷病手当金
傷病手当金は、一定の条件を満たして休職する場合、もらえる可能性がある手当です。条件とは、社会健康保険に加入しており、業務外で病気やケガを負って働けないことなど。
働いていたときの給与額の約3分の2に相当する金額を受け取れるので、該当する場合はぜひ申請して給付を受けましょう。
なお、休職中に給与が出る場合、原則として傷病手当金は支給されませんが、給与が傷病手当金より少ない場合は差額を受け取れます。
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働く人のための「休職」「傷病手当金」ガイド|人には聞けない疑問にもお答えします【障害分野にも詳しい社労士監修】
うつ病で仕事を休職するには診断書が必要!手続きや休職期間、もらえる手当、復職について知ろう
引用元
病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|協会けんぽ
障害者手帳
障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)を申請・取得する方法も検討しましょう。手帳を持っているからといって直接お金をもらえるわけではありませんが、税金の控除や交通機関などの料金の割引を受けられるため、経済的な恩恵はあります。
転職活動のときに役立つ可能性もあるため、持っていて損はないでしょう。
障害年金
障害年金とは、病気やケガで生活に支障を抱えている方のための公的な年金です。障害者手帳を持っていない方も、要件を満たせば受給できます。保険料を滞納せず納めている(または免除を受けている)ことなどが条件です。
詳しくは年金事務所などに問い合わせて確認してみてください。
引用元
障害年金|日本年金機構
うつ病の方が転職や再就職活動を行うときのポイント
ここからは、うつ病の方の転職活動時のポイントを押さえていきましょう。
1. 自己分析・自己理解をする
自分に合った環境で働くために、まずは自分の状態を正確に知ることが大切です。ストレスなどマイナスの感情を感じやすい場面や、ストレスによってどのような状態になりやすいかを把握するほか、自分の強みや弱点なども理解しましょう。
自分ではわかりづらい場合は、第三者に聞いてみるほか、下記のようなストレスチェックを試すのもよいでしょう。
5分でできる職場のストレスセルフチェック|こころの耳(厚生労働省)
2. 自分にとって働きやすい職場を探す
前項の内容をもとに、自分にとって適切な働き方を考え、適した環境が整っている職場を探します。たとえば、下記のような点をチェックするとよいでしょう。
- ノルマがなく自分の裁量で進められる
- 納期にゆとりがあってマイペースで行える
- 周りから協力やサポートをしてもらえる
- 自分の特性やスキルに合った業種である
- 時短勤務やテレワークができる など
3. 通院や治療は継続する
転職活動をするときは、医師に相談することも重要です。必ず医師の許可が出てから始めてください。
また、転職活動中も、終了してよいと言われない限り通院や治療は続けます。自分で勝手に通院をやめたり、服薬などの治療を中止したりすることは控えましょう。
4. 支援サービスを活用する
転職活動を支援してくれる機関や窓口を利用すると、自分の希望や状態を理解してもらった上で活動を進められます。具体的なサービスについて後ほど紹介するので、利用してみてはいかがでしょうか。
障害者雇用枠を検討する方法も
前述した「精神障害者保健福祉手帳」を取得していれば、障害者雇用枠での再就職も狙えます。うつ病を開示することにより、必要な配慮を受けながら働けることがメリットです。
1つ目のポイントで伝えた、自分の状態や特性を理解しておくことは、職場で配慮を受ける際にも役立ちます。
うつ病の方が転職活動をするときに知っておくべきこと・注意点
うつ病の方が転職活動をするときには、知っておきたい点や気をつけたい点があります。どんな点なのか、以下で詳しくチェックしましょう。
休職中に転職活動をしてもかまわない
休職しているのに転職活動をしていいのかと気になる方もいるかもしれませんが、法的には問題ありません。ただし、前述したとおり医師の了承は得てからのほうがよいでしょう。
休職について応募先に知られてしまう可能性がある
休職中であることをわざわざ伝える必要はありませんが、聞かれた場合は嘘をつかず話しましょう。また、もし聞かれなくても、入社時の手続きなどの書類から知られてしまう恐れがあることは頭に入れておいてください。
転職より復職のほうがよいケースもある
そもそも、「うつ病になったから辞めないといけない」「転職しなければ」と思い込む必要はありません。職場自体には問題がなく働き続けたい場合、配置換えや業務量の調整などの配慮をしてもらうことで、辞めずに続けられるケースもあります。
うつ病の方の転職事例
ここで、うつ病の方の実際の転職成功事例を紹介します。
長年システム開発を行ってきた50代の男性は、コロナ禍で求人数が減っており、なかなか仕事が決まらなかったため、事務職なども含めてエントリーしていました。
そんな折、営業事務のポジションに応募した企業にて過去の経歴が評価され、意図せずSE職として迎えてもらえることに。ご希望を上回る年収370万円というオファーで入社が決定しました。
この事例のように、求人票には載っていなくても、応募した方の経歴やスキルをもとにポジションを用意してくれる企業もあります。選考の際に相談してみるのもよいでしょう。
引用元
転職決定者から見る成功ポイントも解説!7~8月の障害者転職成功事例 ver.2
うつ病の方の転職先にはどんなところがある?
ここでは、うつ病の既往歴がある方の転職先にはどんなものがあるのか、障害者向け求人サイト「BABナビ」から求人例をピックアップして紹介します。
株式会社ソライズ|WEBデザイナー
IT関連業務を行っている企業のWEBデザイナー職です。サイトのデザイン制作やCMSのデザイン制作などを担います。障害者手帳を持っていなくても、就労が困難な方は、必須条件(実務経験など)を満たせば応募可能です。
月給はフルタイムで181,000円~263,500円、時短勤務やフレックス制も応相談。また、通勤とテレワークのハイブリッドも可能です。賞与が年2回、昇給が年1回あります。
ほかにも社会保険完備・交通費全額支給・福利厚生ありと、働きやすい待遇が整っていることが特徴です。
引用元
株式会社ソライズの障害者求人(ID:7017)|BABナビ
株式会社堀場製作所|オープンポジション
京都府にある分析・計測機器メーカーのオープンポジションでの募集。設計開発・IT関連・国内外の営業・貿易事務など、応募者の適性をもとにポジションを決定してもらえます。外国語スキルがある方は、語学力を生かせるチャンスです。
月給は180,000円~200,000円、年収は240万円~280万円で、12ヶ月の契約満了後に賞与をもらえます。その後正社員への登用の可能性もあり、正社員になると年収は400~600万円程度に。基本は通勤型ですが、状況に応じて一部テレワークも可能です。
引用元
株式会社堀場製作所の障害者求人(ID:6562)|BABナビ
うつ病の方の再就職・転職活動を支援してくれるサービス
うつ病の方が仕事を探すときには、支援してくれる窓口などを頼るのもおすすめです。そこで、うつ病の方の転職活動をサポートしてくれるサービスを紹介します。
ハローワーク
ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。
ハローワークには専門援助部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置され、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。
一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。
センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。
障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。
引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。
利用者にとって、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得でき、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。
全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。
なかぽつは、全国に337カ所(令和5年8月22日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。
障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。
引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省
障害者向け転職エージェント
障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。
障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。
高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。
就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。
うつ病後の転職・再就職も不安にならなくてよい
うつ病の方が転職を考えるにあたっての行動の進め方や、転職活動のポイントなどを解説しました。自分一人で抱え込んで焦ったり無理をしたりするのはよくないので、周りにもよく相談し、体調が安定してきてから動き始めましょう。
転職活動には、「DIエージェント」の利用がおすすめです。専任のキャリアアドバイザーが一人ひとりの希望や状態を丁寧にヒアリングし、提案やアドバイスを行うので、ぜひ一度気軽にご相談ください。
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大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。