うつ病は再発する?発症後の仕事への対処や復職・退職のポイントも解説

うつ病とは、精神的な不調から身体にも影響が出てくる病気です。一度回復しても再発する可能性があり、仕事に影響を及ぼすこともあります。

そこで、今回は、うつ病になってから仕事を休み復帰するまでの過程や、再び仕事をするときに気をつけたい点などを解説します。

障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別のご病気を発症してしまったりする例も少なくありません。

そうならないよう、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。

なお、うつ病の方が転職した際、「希望以上のオファーをもらえた」「年収が大幅にアップした」という成功事例もあるので、ぜひ参考にしてください。

うつ病とはどんな病気?再発しやすい?

うつ病とはどんな病気?再発しやすい?

うつ病とは、気分が落ち込んでやる気が出ないなどの精神的不調から、疲労感や睡眠障害などの身体的な不調も引き起こされ、生活に支障が出る病気。日常生活にとどまらず、仕事にも影響を及ぼす恐れがあるため、慎重な対応が必要です。

ここでは、うつ病の再発リスクや治るかどうかについて解説します。

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再発率は約60%

うつ病の再発率はおよそ60%といわれており、一度回復しても再び症状が出る方が多い傾向があります。

さらに、再発するごとに次の再発の可能性が高くなるとされていることも事実。数年後、人によっては数十年後に再びうつ病に襲われる方もいます。再発の要因は、環境の変化や身近な相手との別れなどさまざまです。

再発率は高めですが、適切な治療や予防によって再発リスクを抑えることは十分可能なため、一度うつ病になったからといって諦める必要はありません。

うつ病は治らない?

うつ病には回復するための過程があり、それぞれの段階に合った治療などを行うことが大切です。症状が落ち着いた状態のことは、「完治」ではなく「寛解」と呼びます。寛解しても「完治」ではないので、再発予防をしっかり続けることが大事です。

 
キャリアアドバイザー
寛解後に再発しない方もたくさんいらっしゃいますが、二度とならないという保証があるわけではありません。医師と相談しながら様子見や予防をしましょう

うつ病発症から再び働くまでの流れ

うつ病発症から再び働くまでの流れ

うつ病になってから再び仕事ができるようになるまでの流れは、おおむね下記のような4段階です。

1. うつ病の診断を受ける

不調を感じたらまずは病院に行き、医師からうつ病の診断を受けましょう。仮にうつ病でなかった場合も、ほかの病気である可能性があるため、専門家に見てもらうことは大切です。

なお、診断により仕事を続けるのが難しい状況の場合、診断書をもらうこともポイントです。

2. 休職して静養する

次に、診断書をもとに、職場で休職のための手続きを行います。ただし、勤務先に休職制度がない・同じ職場に籍を残すことが難しいなど、場合によっては退職しなければならないこともあるでしょう。

休職中や退職後は、あまり仕事のことは考えず心身をいたわることが大事です。じっくり療養に努めましょう。

3. 復職の検討・準備をする

体調が落ち着いてきたら、仕事に戻ることを考え始めます。医師や職場の上司などとも話し合いながら検討しましょう。戻る意思を表明する・生活リズムを仕事に合わせて整えるなどの準備も必要です。

4. 復職または再就職する

医師の判断を受け、仕事をしても問題ないと言ってもらえたら、職場とスケジュールを調整していよいよ仕事復帰です。

また、退職している場合は転職活動を行い、再就職を目指しましょう。活動を支援してくれるさまざまなサービスがあるので、後述します。

 
キャリアアドバイザー
職場に迷惑をかけているから早く復職しないと、と焦る必要はありません。無理をして復帰し、再発しては元も子もないので、復職後に無理なく働き続けられる状態まで回復できているかどうかも重要です

うつ病後の復職や再就職のポイント

つづいて、うつ病ののちにまた働く場合に確認しておきたいポイントを解説します。

1. 無理なく働ける勤務形態や職種か

再発リスクを減らすためにも、柔軟な働き方ができるとよいです。たとえばフレックスやテレワークといった働き方だと、体調に合わせて仕事しやすいでしょう。通院にも融通が利きます。

同じ職場に復帰する場合、状況にもよりますが、元の業務と全く同じではなく、量や部署などを調整してもらいましょう。ノルマや残業がある仕事は控え、スケジュールを自分で決められる・納期に余裕があるなど、自分のペースで進めやすい仕事にすると負担がかかりにくいです。

 
キャリアアドバイザー
上記のような柔軟な働き方ができる仕事やマイペースでできる仕事・働き方のほか、業務の内容や作業量にムラがない定型・定量的な仕事もおすすめです。仕事について考え直す機会があれば、ぜひ検討してみましょう

2. プロに相談する

職場の相談窓口や産業医などに相談したり、転職する場合は転職を支援してくれるサービスを利用したりして、再び働く際の困りごとや不安を払拭することもポイントです。

支援サービスでは、プロのアドバイザーや相談員が親身になって話を聞いてくれ、状態や特性などに合った仕事探しを手伝ってくれます。

3. リワークプログラム(復職支援プログラム)を利用する

リワークプログラムとは、心身機能の回復やリハビリなどを行い、復職した際にスムーズに働けるようサポートしてくれるもの。医療機関・地域障害者職業センターなどが実施しているケースや、企業独自に行っているケースがあります。

具体的な支援内容は実施機関によって異なるため、確認してみましょう。

また、職場によっては完全な復職の前に「試し出勤」ができるところもあります。いきなり元通り働くことが不安な場合は、ぜひ活用してみてください。

4. 障害者雇用枠で働く

うつ病で精神障害者保健福祉手帳を取得していれば、障害者雇用枠に応募することが可能です。自分の症状に応じて周囲の合理的配慮を得ながら働けるので、もともとの一般枠で働くよりもよい環境で働ける可能性が高いでしょう。

仕事を再開したのちに気をつけること

仕事を再開したのちに気をつけること

前章の内容はうつ病の方が復職や再就職する「前」のことですが、ここでは仕事を再開した「後」に気をつけたいことも頭に入れましょう。

1. うまく体調を管理する

うつ病は「仕事ができるようになったら安心」というわけではありません。再発を避けるためにも、その日の体温や気分を記録するなどして、油断せず体調管理を行うことが重要です。睡眠や食事などの生活リズムも整えましょう。

2. ストレスを発散する

ストレスを溜め込まず、適度に解消することも大切です。仕事を抱え込んだり、完璧に仕上げないとと自分を追い込みすぎたりするとよくありません。

また、終業後や休みの日は仕事とは頭を切り替え、軽い運動や家族・友人との食事などで楽しく過ごしながら上手に息抜きをしましょう。

3. 規則正しく生活する

前でも触れましたが、生活リズムや生活習慣にも注意しましょう。決まった時間に起床・就寝する、1日3食栄養バランスのとれたものを食べる、カフェインやアルコールの摂取を控えるなど、健康的な生活を心がけることが大事です。

4. 治療を継続する

復職や再就職をして「仕事をする」という生活に戻ると、うつ病が治ったような気になって、勝手に薬の服用を中止したり通院をやめたりする方もいます。しかし、再発リスクなどを考えると自己判断は危険きちんと医師の指示に従うことが非常に重要です。

5. 無理なく働く

仕事をしなかった期間を考えて焦り、「休んだ分を取り戻そう」と考える方がいます。しかし、せっかくまた仕事ができるようになったのなら、早く元に戻ろうとするよりも、これから長く働き続けられることのほうが大切。無理をして悪化や再発しては元も子もありません。

6. きついときは抱え込まずに相談する

仕事の再開はあくまで通過点です。「再び仕事を始めたけどやっぱりつらい」というときは、一人で抱え込まず周りに相談してください。家族・職場の人・医師など、親身になってくれる相手は必ずいます。

うつ病の方の再就職に役立つ支援サービス

うつ病の方の再就職に役立つ支援サービス

うつ病の方が再就職を目指すときは、転職活動をサポートしてくれる窓口やサービスを利用するのがおすすめです。そこで、どんなサービスがあり、どんな支援をしてもらえるのかを見ていきましょう。

ハローワーク

ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。

ハローワークには専門援助部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置され、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。

一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。

参考
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。

センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。

障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。

引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。

利用者にとって、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得でき、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。

全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。

なかぽつは、全国に337カ所(令和5年8月22日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。

障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。

引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省

障害者向け転職エージェント

障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。

障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。

高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。

就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。

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うつ病の方が再び仕事をするときは再発に注意して慎重に

うつ病の方が再び仕事をするときは再発に注意して慎重に

うつ病は再発のリスクを伴う病気のため、仕事は無理せず十分に休み、落ち着いてから仕事を再開する、または別の職場に転職することが大切です。

再就職の際のポイントや、回復後に仕事を始めてから気をつけたい点なども解説しましたが、再び働けるようになったからと焦ったり、逆に油断したりせず、体調管理をしながら少しずつ社会復帰を目指しましょう。

障害を抱えながら働く上では、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。

今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。

「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でもかまいませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

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監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。