50代の障害者雇用が「難しい」のは本当?現状と転職のポイント、事例を紹介

50代が近づいている、または50代に突入した障害をお持ちの方の中には、就職や転職について迷っている方も多いのではないでしょうか。実際に50代の就職・転職は「難しい」「思うように進まない」などと見聞きし自信をなくしてしまっている方は少なくありません。そこで、今回は50代の障害者雇用について解説します。

今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。

障害者雇用の現状

障害者雇用の現状

障害者雇用の現状は、法定雇用率が引き上げられたことで、増加傾向にあります。厚生労働省の「令和4年 障害者雇用状況の集計結果」を表にすると、民間企業・公的機関・独立行政法人いずれも増加していることがわかります。

民間企業
  • 雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新
  • 雇用障害者数は61万3,958.0人、対前年差1万6,172.0人増加、対前年比2.7%増加
  • 実雇用率2.25%、対前年比0.05ポイント上昇
  • 法定雇用率達成企業の割合は48.3%、対前年比1.3ポイント上昇
公的機関
  • 雇用障害者数、実雇用率ともに対前年で上回る。
  • 国 :雇用障害者数 9,703.0人(9,605.0人)、実雇用率 2.85%(2.83%)
  • 都道府県:雇用障害者数 1万409.0人(1万143.5人)、実雇用率 2.86%(2.81%)
  • 市町村:雇用障害者数 3万4,535.5人(3万3,369.5人)、実雇用率2.57%(2.51%)
  • 教育委員会:雇用障害者数 1万6,501.0人(1万6,106.5人)、実雇用率2.27%(2.21%)
独立行政法人など
  • 雇用障害者数、実雇用率ともに対前年で上回る。
  • 雇用障害者数 1万2,420.5人(1万2,244.5人)、実雇用率 2.72%(2.69%)

※()は前年の値

引用元
令和4年 障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省

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50代の障害者雇用率は比較的高い

50代の障害者雇用率は比較的高い

50代の障害者雇用率は、比較的高いと言われています。厚生労働省の「平成30年度障害者雇用実態調査結果」をもとに雇用率を表にすると、4種の障害のなかでも身体障害者の50代の雇用率が高いことがわかります。

  19歳以下 20代 30代 40代 50代 60代以上
身体障害者 0.2% 6.4% 16.2% 25% 28.2% 23.6%
知的障害者 8.8% 38.9% 26.9% 12.3% 10.1% 2%
精神障害者 0.4% 15.5% 26% 28.7% 23.7% 5.5%
発達障害者 2.5% 32.8% 38.7% 22.1% 3.9% 0.1%

同省のデータを見てわかるように、障害者雇用を考える企業は増加傾向にあり、障害別で見ると身体障害者と精神障害者のニーズは特に高いと言えるでしょう。

引用元
厚生労働省:平成 30 年度障害者雇用実態調査結果

 
キャリアアドバイザー
50代の障害をお持ちの方は雇用率が高い傾向にあることから、「転職は難しい」「転職せずに今の仕事をがんばろう」と考える必要はありません。
次章では、具体的になぜ就職・転職に難しさを感じにくいのかという理由についてご紹介します。

50代の障害者雇用でも難しさを感じにくい3つの理由

50代の障害者雇用でも難しさを感じにくい3つの理由

厚生労働省のデータを見ると、50代の障害者雇用率は比較的高い傾向にあることがわかります。では、具体的な理由はどこにあるのでしょうか。

1.50代の就職・転職市場が多い

1つめは、50代の就職・転職市場が多いことです。障害者求人の転職市場は、一般雇用に比べて多い傾向にあります。その理由は、障害者の年齢が上がっているためです。

実際、厚生労働省の「令和3年雇用動向調査結果の概況」を見ると、障害者枠に限らない50代男性の就職(入職)率は約11%、女性で約18%、転職率は男性約10%、女性約15%と極めて低いです。これは一般雇用の場合、20~30代を中心に採用されていることや、50代の就職・転職ではスキルや即戦力などを求めていることが原因と考えられます。

一方、障害者雇用の場合、中途障害の方も多く全体的な年齢層が高めであることから、50代の方の就職・転職市場も活発であると考えられています。

引用元
厚生労働省:令和3年雇用動向調査結果の概況

2.一般事務ができるなどの条件が多い

2つめは、一般事務ができるなど、障害者雇用に特化した条件が多いことです。50代の一般雇用では、スキルや即戦力につながる能力を求めるのに対し、障害者雇用では、一般事務レベルでもよいとする企業や、障害内容・誠実さ・勤務態度などを重視する傾向にあります。

なお、厚生労働省の「平成30年度障害者雇用実態調査結果」の身体障害者の職業を見てみると、事務的職業が32.7%と最も多いことがわかります。

つまり、企業側が障害者を雇用するときは、一般雇用基準で判断するのではなく、障害を知ったうえで、どのような働きができるのかを重視することが、50代の障害者雇用率の高さにつながっていると考えられるでしょう。

引用元
厚生労働省:平成 30 年度障害者雇用実態調査結果

3.障害者雇用枠という特別枠であるため

3つめは、障害者雇用枠という特別枠であることです。上述したように、企業が障害者を雇用する場合は、一般雇用枠とは別の基準で判断しています。

一般事務レベルでよいとする企業や、障害内容を踏まえて問題なく働けるかなど、企業独自の判断基準で採用することから、障害者雇用枠は特別枠と言えます。

一般雇用では、きちんと働けることはもちろん、誠実さやマナーはビジネスシーンにおいて必須スキルですが、障害者雇用では、企業の採用基準に柔軟性を取り入れていることも、就職・転職の高さにつながっていると言えるでしょう。

 
キャリアアドバイザー
中途で障害を受傷することも多いことから、障害者枠の平均年齢は比較的高い傾向にあります。実際に、DIエージェントでも20代の方と同じくらい50代の内定者が毎月出ています。

もしスキルや経験で一般枠の若手の方と比較されることに懸念をお感じの場合は、障害者枠での転職を検討することをお勧めします。

障害をお持ちの方が転職するときのポイント

障害をお持ちの方が転職するときのポイント

ここからは、障害をお持ちの方が転職するときに参考にしてほしいポイントを紹介します。

業務経験、スキルの洗い出しをする

転職に向けて動くときは、業務経験やスキルの洗い出しから始めましょう。一般雇用で転職する場合は、50代は特にスキルや即戦力が求められます。しかし障害者雇用では、誠実な対応ができるか、障害内容を踏まえ自社でも問題なく働けるかなど、さまざまな理由から判断するケースが多いです。

まずは、業務経験を洗い出し、これまでに努力した業務や会得したスキルなどを紙に書き出し、自己PRにつながるものはないかを明確にしましょう。そのうえで、障害内容や性格を整理し、転職を希望する企業にとって、どんな働きができるのかアピールできることを明確にするのがおすすめです。

障害についてオープン・クローズにするかを決める

次に、障害についてオープンにするかクローズにするかを決めましょう。オープンで働く場合は障害に対する配慮を受けて働くことができます。一方、クローズで働く場合は、障害に対する配慮を受けることができません。

下記ページでは、クローズ就労とオープン就労について詳しくまとめています。障害について開示するメリットやデメリットなどにも触れているので、この機会にあわせてご覧ください。

障害や体の変化に対する受容度をチェックする

次に、就労したい企業を見つけ、障害や体の変化に対する受容度をチェックしましょう。障害の内容によっては、いつどのように状態が変化するかわからない場合もあります。このことを踏まえ、障害の症状や体調に変化があった場合について、柔軟に対応してくれるかを見極めることも大切と言えるでしょう。

柔軟な思考を維持する

50代は加齢に伴い、業務や仕事への姿勢にこだわりを持つ傾向にあることを企業は把握しています。そのことを踏まえ、50代の面接では固執した考えを持たず、柔軟な思考を持っていることをアピールしましょう。

就職・転職につなげたいと考えるのであれば、退職理由や過去の人間関係、失敗した経験や乗り越えた経験などを洗い出し、柔軟性の高さをアピールできるよう心がけましょう。

謙虚な姿勢を保つ

上述したように、50代は経験してきた業務も多く、人生経験も豊富であることから、固執した考えを持っていたり、高いプライドがあったりする傾向があることを、企業は把握しています。

そういった意味でも、キャリアや業務経験などをアピールするときは、固執した考えやプライドによって印象を悪くしないよう気持ちを切り替え、謙虚な姿勢でアピールするよう心がけましょう。

 
キャリアアドバイザー
応募する企業によっては、上司が年下となる可能性もあります。
実際に面接で「年下の社員が上司になるが大丈夫か?」と聞かれるケースも多々あります。
その様な時にも率直なお気持ちをPRできるよう、今までの経験を振り返っておくとよろしいかと思います。

50代の障害者雇用における事例

50代の障害者雇用における事例

50代での障害者雇用は、年々増加傾向にあります。DIエージェントでも、58歳で条件アップ転職を実現させた方がいらっしゃいます。

下記ページでは、公益財団法人日本生産性本部に転職された方を特集したインタビュー記事を確認できます。もともとは事務職としてキャリアスタートしたものの、自身の体調悪化や介護・結婚・出産・育児などさまざまなライフスタイルの変化によって、都度退職を余儀なくされたRさん。

40代で本格的にエンジニアとしての専門性を高め、2021年2月に最後の転職活動をスタート。転職活動の流れなどもまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。

50代で障害を持ち始めた方におすすめの支援・サービス

50代で障害を持ち始めた方におすすめの支援・サービス

ここからは、50代で障害を持ち始めた方におすすめの支援・サービスを紹介します。ここで紹介するのは、身体障害者手帳と転職エージェントの二つです。

身体障害者手帳

障害者雇用での就労では、身体障害者手帳が必要になります。厚生労働省では、従業員数が一定数以上の規模の事業主には、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にしなければならない義務があります。

障害者の範囲は、身体障害者手帳(療育手帳や精神障害者保健福祉手帳もあります)の所有者を実雇用率の算定対象としているため、障害者雇用で就労を予定する方は、身体障害者手帳の取得手続きを進めましょう。

なお、DIエージェントでは、障害者手帳について詳しくまとめた記事もあります。詳しく知りたい方は下記ページをご確認ください。

引用元
厚生労働省:事業主の方へ

転職エージェント

障害者雇用はもちろん、オープン就労による一般雇用で就労を希望する方もいらっしゃるでしょう。そのようなときは、転職エージェントを利用するのがおすすめです。

転職エージェントは、利用者の要望に沿った就職・転職になるよう、エージェントが担当し、最適な求人を紹介します。

DIエージェントは、障害をお持ちの方に特化した転職エージェントで、50代の障害をお持ちの方も20代と同数の内定者を出している高い実績があります。

DIエージェントでは、障害者雇用についてまとめた記事が豊富にあるので、ぜひこの機会に下記ページもご覧になってみてください。

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50代からの就職・転職は難しくない!

50代からの就職・転職は難しくない!

50代の障害者雇用の就職・転職は難しいものではありません。その理由は、障害者雇用枠は一般雇用とは別枠であり、就職や転職につながりやすいほか、採用では誠実さを重視することが多いためです。企業にとっては、障害によって転職を検討する高いスキルや専門性を豊富に持つ人材と出会い、雇えるというメリットもあります。

50代の就職・転職が難しいと言われているのは一般雇用の一部であり、障害をお持ちの方のオープン就労を支援するDIエージェントでは毎月20代と同数の内定者が出ています。

50代の就職・転職において不安がある方はぜひ一度DIエージェントへご相談ください。DIエージェントでは「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ため、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でも構いませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。