障害者雇用の給料はどれくらい?障害ごとの平均と収入アップにつなげる方法を解説

障害雇用枠で就職・転職を考えている方の中には、給料を懸念されている方も多いのではないでしょうか。実際に、求人を見ていて「障害者雇用枠は給与が低い」「今までの生活が維持できない」という印象から、障害者雇用枠を諦めてしまう方も少なくありません。そこで、今回は障害者雇用の給料について解説します。

給料が低く見えることには様々な理由がありますが、経験や希望する働き方、仕事を探す方法などによっては、キャリアアップを実現することも可能です。

今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。

障害者雇用の給料平均

障害者雇用の給料平均

障害者雇用は、身体障害者・知的障害者・精神障害者・発達障害者の4つに区分されています。厚生労働省の「平成30年度障害者雇用実態調査結果」では、それぞれの給料平均を以下のように記しています。

障害の種類 平均給料
身体障害者 21万5,000円(超過勤務手当を除く所定内給与額は 20万4,000円)
知的障害者 11万7,000円(超過勤務手当を除く所定内給与額は 11万4,000円)
精神障害者 12万5,000円(超過勤務手当を除く所定内給与額は12万2,000円)
発達障害者 12万7,000円(超過勤務手当を除く所定内給与額は 12万3,000円)

最も高い平均給料は、身体障害者の21万5,000円です。次いで発達障害者・精神障害者・知的障害者となっています。つまり、障害の種類によって平均給料が変わることがわかります。

引用元
厚生労働省:平成30年度障害者雇用実態調査結果

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一般雇用とは

障害者雇用のほかにも、一般雇用があることをご存じの方も多いのではないでしょうか。一般雇用とは、応募条件さえクリアしていればどなたでも応募できる求人のことです。

身体障害者手帳を含む各手帳の有無にかかわらず、どなたでも応募でき、障害への配慮を必要としない方が多く就労しています。

障害者雇用は、身体障害者手帳のほか、療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の所持者を対象とした雇用枠です。それぞれの雇用には、働き方や環境への配慮の有無に違いがあることを押さえておきましょう。

障害者雇用の給料が低くなる理由

障害者雇用の給料が低くなる理由

厚生労働省の「平成30年度障害者雇用実態調査結果」に基づき、1ヶ月当たりの平均給料を12ヶ月で計算すると、身体障害者は約260万円、知的障害者は約140万円、精神障害者は約150万円、発達障害者は約150万円です。

ボーナスなどは考慮していないため一概にいうことはできませんが、国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」を確認すると、日本の給与所得者全体の平均年収は458万円であることから、障害者雇用の給料は低いことがわかります。

ここでは、なぜ障害者雇用の給料が低いのか理由を解説します。

引用元
厚生労働省:平成30年度障害者雇用実態調査結果
国税庁:令和4年分 民間給与実態統計調査

雇用形態

1つめは雇用形態です。厚生労働省の同データからそれぞれの正社員雇用(有期契約を含む)の割合を見てみましょう。

障害の種類 正社員雇用割合
身体障害者 52.5%
知的障害者 19.8%
精神障害者 25.5%
発達障害者 22.7%

身体障害者の正社員雇用割合は約50%と高い数字です。しかし、障害者雇用全体の正社員雇用割合を見ると、まだまだ少ないことがわかります。

契約社員や派遣社員などの非正規雇用では、基本給を除く手当・賞与・昇給がない場合が多いです。このように、正社員では得られる待遇が非正規雇用によって受けられないことは、給料が低くなる要因と言えるでしょう。

業務内容

2つめは業務内容です。障害の内容・度合いによっては、業務内容に制限が設けられることがあります。制限がないケースと比較すると、業務内容でも大きな差が生まれがちであることも、障害者雇用の給料が低くなる要因です。

キャリア形成

3つめはキャリア形成です。たとえばマネジメント職の場合、役職手当がついたり昇給したりすることがあります。しかし企業側の障害への間違った配慮によって、簡単な業務内容だけを任されるケースでは、手当や昇給に必要な評価が受けられず、結果的に給料が低いままです。

さまざまな配慮によるキャリア形成の難しさも、障害者雇用の給料が上がらない要因のひとつです。

勤務時間

4つめは勤務時間です。障害をお持ちの方への配慮が、結果的に給料を低くしているといえるかもしれません。厚生労働省の同データの「雇用している障害者への配慮事項」を見ていきましょう。

障害の種類 配慮内容
身体障害者 61%が「配慮している」と回答
そのうち51.9%が「通院・服薬管理等雇用管理上の配慮」と回答
知的障害者 51.6%が「配慮している」と回答
そのうち57.6%が「短時間勤務等勤務時間の配慮」と回答
精神障害者 55.0%が「配慮している」と回答
そのうち 70.8%が「短時間勤務等勤務時間の配慮」と回答
発達障害者 40.3%が「配慮している」と回答
そのうちが 76.8%が「短時間勤務等勤務時間の配慮」と回答

表からもわかるように、企業の多くが障害をお持ちの方への配慮として「短時間勤務等勤務時間の配慮」を取り入れています。

時短勤務は、就労者が企業に提供できる勤務時間が短くなることです。働いていない分の給料は発生しないので、配慮を受けた分だけ給料が低くなると考えられるでしょう。

減額特例許可制度による最低賃金の減少

日本の最低賃金制度には「最低賃金の減額の特例許可申請」と呼ばれるものがあります。これは、一般労働者に比べて著しく労働能力が低いなどの場合に、使用者(企業など)が都道府県労働局長の許可を受けることを条件に、個別に最低賃金の減額を申請するものです。

減額申請対象は以下のケースがあります。

  1. 精神又は身体の障害により著しく労働能率が低い
  2. 試用期間中
  3. 職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練を受ける者のうち一定のもの
  4. 軽易な業務に従事
  5. 断続的労働に従事

このように、障害の内容や度合いによっては、最低賃金の減額の特例許可申請によって給与が低くなる可能性があります。

なお、減額特例許可が下りた場合でも、労働基準監督署で許可された業務以外の業務に就くときは、一般的な最低賃金額が適用されます。

引用元
滋賀労働局:最低賃金の減額の特例許可申請について

 
キャリアアドバイザー
減額特例許可制度については、事業主が申請すれば必ず許可されるということではなく、労働者に対して、減額する理由と金額について明確に説明する必要があります。
事業主による労働能力が低いとの判断だけで減額の許可はおりず、手帳の写しや業務にあたっての支障を示すことが求められるとされています。

障害者雇用で給料を増やす方法

障害者雇用で給料を増やす方法

障害者雇用であっても給料を増やすことは可能です。具体的な方法は3つあります。

資格取得を目指す

1つめは資格取得を目指すことです。就労中に仕事に有利な資格を取得すると、資格手当がつく場合があります。資格手当は、一時金タイプと毎月の給料に上乗せして支給されるタイプがあり、上乗せして支給されるタイプであれば、ひと月数千~数万円ほど給料を増やすことができます。

企業に資格手当がない場合でも、資格取得を目指す価値はあります。働きながら資格取得を目指すことは、現在の業務に対して高い意欲や熱意があるからです。

その努力は企業にも伝わり、大きく評価される場合があります。特に、難易度の高い資格ほど専門性があることから、資格取得によって新しい業務を任され、より高い給料を得る可能性を上げることにもつながります。

正社員登用制度を利用する

2つめは正社員登用制度の利用です。先述したように、障害者雇用の給料が低いのは、正社員雇用の割合が低いことが関係しています。そのようなことから、将来的に正社員として働けるよう、正社員登用制度のある企業に応募するのがおすすめです。

ただし、全ての企業が正社員登用制度を導入しているわけではありません。気になる企業を見つけたら、正社員登用制度があるかを確認するとよいでしょう。

経験のある業界・職種に転職する

3つめは経験のある業界・職種への転職です。先述したように、障害者雇用では、障害の内容・度合いによって、配慮として業務時間が短縮したり、業務内容が制限されたりする場合があります。

しかし、過去に経験したことのある業務に応募すれば、業務内容に適した働き方が身についているため、所定の業務を遂行できると判断されやすいです。

さらに、在職期間が長いほど業務経験が豊富で即戦力と判断されるので、キャリアアップ転職につながる可能性も高まります。

ご自身に合った職種の求人があれば、積極的に応募してみるとよいでしょう。

障害者雇用を探す方法

障害者雇用を探す方法

ここからは、障害者雇用を探す方法を紹介します。これから障害者雇用で就労を希望する方は、ぜひ参考になさってください。

ハローワーク(職業安定所)

全国にはハローワーク(職業安定所)が設置されています。ハローワークには、公的なサービスを利用しながら、障害をお持ちの方の就職をサポートする専門の窓口があります。

今後の就労について不安がある方や、どんな職種が向いているのかなどを知りたい方は、積極的に利用してみるとよいでしょう。

就職フェア・合同説明会

就職フェア・合同説明会は、複数の企業が一堂に会し、ブースを出して自社の特徴をアピールするものです。内容は企業説明会と同様で、企業理念や強みなどを理解する機会を得られます。

参加することで企業の考えを知ることができ、就労のイメージが湧きやすくなります。気になる企業が就職フェアや合同説明会を開催しているときは、積極的に参加するとよいでしょう。

転職エージェント

転職エージェントは、就労先を探す人をエージェントがサポートし、希望や目的に沿った求人を紹介するサービスです。

DIエージェントでは、障害をお持ちの方を対象とした転職エージェントで、毎月一定数の内定者を出しています。就職・転職を希望される、障害をお持ちの方お一人おひとりの希望や目的を細かくヒアリングし、適切な求人をご紹介しています。

転職エージェントを利用したことがない方でも安心してご利用いただけるよう、利用方法や今後の不安についてのご相談も受け付けています。

理想的な就労先を見つけたい方はもちろん、ご自身にあった企業や職種はなにかをお知りになりたい方もお気軽にご相談ください。

 
キャリアアドバイザー
気になった機関やサービスなどがあれば、積極的に利用し、情報取得や就職(転職)に役立ててみましょう

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障害者雇用の給料はケースによってさまざま

障害者雇用の給料はケースによってさまざま

障害者雇用の給料は、障害の内容や度合いによって異なります。しかし、正社員登用制度を導入する求人を探したり、転職エージェントを活用し、キャリアアドバイザーと二人三脚で理想的な就労先を見つけたりすることで、給料を増やすことができます。

就労について不安がある方や相談したいことがある方は、まずはお気軽にDIエージェントにご相談ください。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。

「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でも構いませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。