構音障害とは、発音に支障が出る障害です。障害の度合いによっては、日常生活に限らず仕事においても困難が生じる場合があります。
そこで今回は、構音障害の方におすすめの職種や仕事の選び方、実際に就職・転職活動を進める方法について解説します。
障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別の病気を発症してしまったりする例も少なくありません。
そうならないように、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。
構音障害とは
構音障害とは、言葉を発するときに、何らかの問題によって発音(構音)が不明瞭だったり誤っていたりする状態です。
通常、発声の際には唇・舌・顎などの器官を使用しますが、構音障害の方は上手に器官を動かせず、発音・リズム・アクセントなどが思うようにいかない、はっきりしないなどの支障を抱えています。話したい相手とうまくコミュニケーションが取れないことも多いです。
構音障害の種類・原因
構音障害は、原因によって4つの種類に分類されます。それぞれの特徴を押さえましょう。
器質性構音障害
器質性構音障害とは、唇や舌などの発声を司る器官が特徴的な形をしている・欠損しているなどの理由で、適切な発音ができない状態です。外傷や裂傷などによって器官に異常がある場合に見られます。
運動障害性構音障害
運動障害性構音障害とは、神経や脳の疾患により、唇や舌などの筋肉運動が制限されて発音や発声に影響が出るものです。筋萎縮性側索硬化症(ALS)・パーキンソン病・脳卒中・脳性まひなどの病気が原因になりえます。
聴覚性構音障害
聴覚性構音障害とは、聴覚障害(音や声を聞き取りづらい、もしくは全く聞こえない)のため、手本になる発音や自分がどう発声しているかをうまく聞き取れず、正確な発声が習得できない状態です。
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機能性構音障害
機能性構音障害とは、ここまでに紹介したような異常が見られないにもかかわらず、正確な発音ができないもので、原因は不明とされています。
一般的に「赤ちゃん言葉」といわれる、「みかん」を「みたん」、「せんせい」を「てんてい」などと発音してしまうような状態。主に幼児期に生じる異常で、誤って身につけてしまったクセや運動機能の未熟さなどから、独特の「音のひずみ」ができてしまいます。
構音障害の治療
構音障害の治療は、医師・歯科医師・言語聴覚士などの専門家が担当することが一般的です。治療法としては、下記の3つに大別されます。
発音補助装置
外傷や手術などで位置がずれた下顎の位置を戻す・発声する際に上顎と舌をくっつきやすくする・鼻漏れを防ぐなど、構音障害をお持ちの方の個々の状態に合わせた装置を装着して、発音の改善を狙う治療法です。
外科的治療
唇・舌・軟口蓋・下顎など、発音に影響を与えている器官の形態を、手術によって発音しやすい状態に整える方法です。医師や歯科医師が執刀します。
構音訓練
上記の治療の後に行われるもので、舌や唇といった発音に関連する器官の運動能力を向上させるための訓練です。言語聴覚士が指導にあたり、正しい発音ができるようにリハビリを行います。
構音障害の方が働きやすい職場環境とは?
構音障害をお持ちの方が就職・転職する場合、どんな環境だと仕事をしやすいのでしょうか。事前にチェックしておきたいポイントをご紹介します。
1. 障害に対する理解や合理的配慮がある
まず、構音障害の特性を理解し、状態に合わせた配慮を行ってくれる企業がよいでしょう。過去に構音障害や聴覚障害など、同様の障害をお持ちの方の採用実績があると、理解度も深いと考えられます。
なお、配慮においては周りの方が過度の負担を負うのではなく、構音障害の方がサポートが必要なときに遠慮なく申し出られるような人間関係ができていることも重要です。
2. 障害の状態に応じたサポートツールが利用できる
物理的なサポート環境もチェックしましょう。文字起こしができるソフトや音声入力アプリ、メールやチャットにて業務上のコミュニケーションが完結するなど、社内で円滑なコミュニケーションが図れるようなツールを使える環境だと仕事がしやすいです。
また、自分の意思を伝えるのに手話を使いたい方の場合は、職場に手話が理解できる同僚や上司がいると心強いのではないでしょうか。
構音障害の方に向いている仕事
つづいて、前章の内容もふまえつつ、構音障害をお持ちの方でも働きやすい職種にはどんなものがあるのかを見ていきましょう。
データ入力・事務
PCへの入力や書類作成、伝票への記入など、データ入力や事務系の仕事は構音障害の方でも就きやすい職種です。あまり人と会話をせずに進められるというメリットがあります。
ITエンジニア
IT系に強い方は、SE(システムエンジニア)やプログラマーなどのITエンジニアを目指してみてはいかがでしょうか。PCを用いてシステムを設計する仕事で、デスクワークがメインになるので構音障害をお持ちの方でも取り組みやすいです。
ご経験のある業務
中途で構音障害を負い、これまでと全く同じ業務ができなくなった場合でも、同じ職種で今のお体でできる範囲の仕事を任せてもらえるケースもあります。
求人内容にぴったり当てはまらなくても、できることとできないことを明確にした上で応募時に相談すれば、配慮していただける可能性も。そのため、ご自身の経験のある業種での転職や再就職を完全に諦める必要はありません。
構音障害の方が仕事を探すのにおすすめのサービス
ここからは、構音障害をお持ちの方が仕事探しをするときに利用できるサービスをご紹介します。
ハローワークを利用する
ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のことです。窓口や施設に設置してある検索機から、全国の求人情報を調べることができます。
仕事探しの方向性が定まっていない方やキャリアプランのイメージがつかめない方は、窓口で職員に相談してみましょう。アドバイスをもらいつつ、仕事探しを手伝ってもらえます。
また、ハローワークでは、障害を持つ方向けの相談窓口を設置。障害について専門的な知識を持つ支援員が担当になり、仕事に関する情報の提供や就職相談など、さまざまな支援を実施しています。
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地域障害者職業センターを利用する
地域障害者職業センターとは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」が運営する職業リハビリテーションの施設です。全都道府県に1カ所以上の設置が義務付けられており、障害をお持ちの方の就職に向けたサポートも行っています。
ジョブコーチや職業カウンセラーなど、障害者の就労について詳しく相談しやすい専門家に支援してもらえる点がメリットです。
参考
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構
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就労移行支援事業所を利用する
就労移行支援事業所とは、「障害者総合支援法」に基づき、一般企業への就職を目指す65歳未満の障害をお持ちの方に対して、就職に必要な知識や技術の習得をサポートする事業所です。
日々の通所を通じてスキルアップができ、就労支援員や職業支援員など、相談しやすいプロのサポートを受けながら仕事を探せることがメリット。全国に3,300カ所以上あるので、利用したい方は市区町村で手続きをしましょう。
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障害者向け支援のある転職エージェントを利用する
数ある転職エージェントの中から、障害者雇用を専門に行っているエージェントを利用する方法もおすすめです。障害者採用を積極的に行っている企業の求人を取り扱っており、場合によっては非公開の求人情報も得られます。
専任のアドバイザーがつき、就職前の準備から就職後の支援までをトータルでサポートしてくれる点がメリットです。障害の状況に合った仕事探しができ、ニーズに適した企業とマッチングしやすいでしょう。
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便利なサービスを活用して長く働ける仕事を見つけよう
構音障害には種類があり、障害の度合いにも個人差があります。構音障害をお持ちの方も、自分の障害を壁と感じずに楽しく仕事ができるよう、働きやすい職場や職種を探してみましょう。
障害を抱えながら働く上では、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。
今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。
DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。
専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。
「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でもかまいませんので、ぜひお気軽にご相談ください。
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社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。