メニエール病を克服するには?原因や治療法、症状が仕事に影響する場合の対処策などを解説

働く世代もかかることの多い「メニエール病」。めまいや耳鳴りなどの症状がみられる難病です。
この記事では既に診断を受けた方や「もしかしたらメニエール病かもしれない」と思っている方に向けて、原因や主な治療法といった基礎知識、働く上での注意事項を解説していきます。
使える制度もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

メニエール病とは?

メニエール病とは耳に異常が起き、強いめまいや耳鳴り、吐き気を感じるなどの症状があります。またその不調は一度だけではなく、日常的に繰り返され生活に支障が出ることが多いです。

2015年までは厚生労働省に難病指定されていましたが、現在は難病リストより除外されています。
しかし症状の程度によって、聴覚障害・平衡機能障害、または精神障害の二次障害として障害認定されることもあります。
「ただのめまい」だと我慢するのではなく、早めに病院で受診することが大切です。

参考:公益財団法人難病医学研究財団 難病情報センター「メニエール病」

メニエール病の症状および特徴

メニエール病の主な症状や2つの特徴について解説していきます。

主な症状

メニエール病の主な症状として、グルグルと目がまわるような回転性のめまいが起こります。自分または周囲の物がフワフワとしているような浮遊感を感じる人もいます。
それによって吐き気・嘔吐が引き起こされることもあり、このような状態は数十分から数時間続きます。

また、耳・聞こえに関しての異常も代表的な症状です。
「ブーン」「ザーッ」というような低音の耳鳴りが起こります。
耳が詰まり感・圧迫感や低音の聞こえづらさを感じることもあるでしょう。悪化すると難聴につながるリスクもあるので注意が必要です。

いずれも一過性のものではなく、反復されるのが特徴です。

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特徴1:発作前に前兆があるケースもある

メニエール病は突然めまいの発作が起こることが多いです。
しかしめまいの発作前に聴覚症状が予兆的に表れることもあります。
以下のような症状があるようでしたら、横になれる・座れる場所に移動して、ふらつきに備えることができるでしょう。

  • 耳閉感
  • 耳の圧迫感
  • 耳鳴り

特徴2:再発するケースが多い

メニエール病のめまいを始めとした症状は一時的なものではなく、反復性があります。
また発症後1~2年程度で症状がおさまること多いですが、数年以上発作が続く人もいます。
再発し、発作を繰り返すたびに聴力が下がるケースもあるので早めに対処しましょう。

メニエール病と似た症状がみられる病気

メニエール病の特徴であるめまいや耳鳴りなどが見られても他の病気である可能性もあります。
代表的なものが突発性難聴です。こちらの場合は長期化することはありません。
また、めまいだけでなく手足のしびれやろれつが回らなくなった場合には脳梗塞など脳のトラブルである可能性が高いです。
いずれにしても、早期の医療機関への受診をオススメします。

参考:e-ヘルスネット(厚生労働省)「突発性難聴について」

メニエール病の診断、診察科目は?

メニエール病は耳の異常なので、基本的には耳鼻咽喉科にかかります。
めまいに関しての医療機関は日本めまい平衡医学会の「めまい相談医一覧」から調べることができます。

メニエール病の診断は難しいとされており複合的な判断が必要です。
病院では以下の検査をされることがあります。

  • 【問診】普段の様子やどの程度継続しているか、めまい以外の症状の有無を確認します
  • 【眼振(がんしん)検査】めまいの発生時の目の動きを確かめます
  • 【聴力検査】低音が聞き取れるか、難聴の有無・進行度を調べます

メニエール病を発症する原因

メニエール病を発症する原因は疲労や睡眠不足など、ストレスとの関係が深いと言われています。
耳の奥(内耳)にある「蝸牛」という気管にリンパ液が過剰に貯まる(内リンパ水腫)ことで各発作が現れます。
原因とその対処について詳しく見ていきましょう。

ストレス

メニエール病は身体的、精神的なストレスが発作に関与するとされています。
ハードワークや長時間労働、家庭内外の人間関係の不和などが引き金となります。

また、几帳面な人・まじめすぎる人はストレスを抱えやすく、メニエール病を発症する確率が高いと言われています。

生活を整え、適切にストレスを発散していくことが必要です。

睡眠不足

睡眠不足も発症誘因に関与するとされています。
睡眠障害は過度の不安などなんらかのストレスによって引き起こされることが多いです。
悪循環になりますので、まずはストレスの要因から離れ、休息をしっかりとるようにしましょう。

遺伝的な要因

日本において、メニエール病は遺伝性疾患であるケースは稀だとされています。
特定の遺伝子変異とその他の遺伝的要因・環境因子など複合的な理由によって発症します。

食事

「食生活によって発症する可能性は極めて少ない」というのが、現代医療の見解です。
もちろん「ストレスを過度な飲酒で発散する」「就寝前に暴飲暴食をする」のはメニエール病に関わらず心身ともに悪影響です。
規則正しくバランスのとれた生活習慣を送ることはストレスの軽減など根本の解決に近づくでしょう。

メニエール病になりやすい人の特徴

メニエール病とストレスの関係は強く、ストレスを感じやすい人はメニエール病にもかかりやすい傾向にあります。
性格的に我慢や心配しがちな人・頑張りすぎてしまう人、繊細なタイプなど、自覚がある人は意識的にストレスを解消するようにしましょう。

 
CA

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メニエール病の治療法

メニエール病の代表的な治療法は「薬物療法」「生活習慣の改善」「外科手術」が挙げられます。

薬物療法

症状や進行度によって、種類の異なる薬を用いて改善を図ります。
メニエール病の原因は蝸牛にたまるリンパ液です。これを排出するよう利尿剤を用いることがあります。
また、めまいへの対処として点滴や抗めまい薬が処方されることがあります。

生活習慣の改善

既にお伝えしてきた通り、ストレスをためない・解消することがメニエール病の治療には重要です。
規則正しい生活を送り、十分に休息・睡眠をとりましょう。
そして、身体を動かし有酸素運動をするとリフレッシュになります。

ストレスへの対処がうまくいかない場合は、心療内科やカウンセリングを受けることも検討してみてください。

外科手術

薬物治療や生活改善を3~6か月継続しても症状が続く場合、最終手段として外科手術が行われるケースもあります。
内リンパ嚢開放術・前庭神経切断術などが代表的です。
入院が必要となりますので、会社を一定期間休む必要があるでしょう。

メニエール病を繰り返す時の対処法

根本的な治療として、疲労をためないようにしストレスを緩和させることが必要です。
ストレスの原因がわかる場合は、なるべくそのストレス要因から離れましょう。

普段できるストレスを緩和させる具体的な方法を紹介します。

  • 悩みやストレスがあったら相談をする
  • 「完璧を目指さない」「落ち込んでも気持ちを切り替える」など考え方を変える
  • 動物や植物とふれあう
  • 好きなことに没頭する
  • 適度な運動(ウォーキングやヨガ、エアロビクスなどの有酸素運動)
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メニエール病が仕事に影響する場合の対処策

メニエール病はストレスや疲労が原因です。ストレスや疲労に比例して症状が重くなるケースもあります。
ここでは症状が仕事に影響する場合の対処策を具体的に説明します。

医師へ相談する

まず専門家である医師と「症状にあった治療と休養方法」を相談しましょう。
症状によっては残業制限や休職、治療に専念するため退職を検討します。
残業制限や休職の際には診断書が必要となり、産業医面談を行う場合もあります。

勤務先に相談する

また仕事を続けていく上では、上司や同僚に相談し、理解を得ると治療に専念しやすいでしょう。
時短勤務や仕事量の調整など労働環境の改善や、上司やメンバーとの人間関係にストレスが起因する場合は人事に配置換えの相談をしてみるのも有効です。

運転や業務内容に支障が出ないように調整する

運転を要する場合や移動・立ち仕事が多い職種、医療関係の仕事に症状が出ると非常に危険です。仕事中に症状が出るようであれば、これらの仕事を避けてもらうようにお願いをする必要があります。

発作が起きたとき、休める環境があるかも今一度確認しましょう。

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メニエール病と診断された場合に受けられる支援制度

メニエール病と診断されると、受けられる支援制度があります。
制度を知っておくだけで、医療費が不安な方や仕事を離れる場合にも安心できますね。

傷病手当金

会社をメニエール病悪化のためまたは手術のために休む場合、休業期間中に「傷病手当金」がもらえる可能性があります。
受給にはいくつかの条件があります。

  • ① 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  • ②仕事に就くことができないこと
  • ③連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  • ④休業した期間について給与の支払いがないこと
  • 引用:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき | こんな時に健保」

    受給期間は最長1年6か月です。
    健康保険組合から支給されるため、国民健康保険への加入者は対象外となります。
    詳しくはこちらの記事も参考にしてください。

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    障害年金

    定めのある障害等級に該当する場合、障害年金を受けられる可能性もあります。
    「メニエール病のために働けない、収入が下がりそうだ」という場合は、受給の申請も検討すると良いでしょう。

    第2節/聴覚の障害
    2 認定要領
    聴覚の障害による障害の程度は、純音による聴力レベル値(純音聴力レベル値)及び 語音による聴力検査値(語音明瞭度)により認定する。
    <略>
    (8) 聴覚の障害(特に内耳の傷病による障害)と平衡機能障害とは、併存することがあるが、この場合には、併合認定の取扱いを行う。
    引用:日本年金機構「聴覚の障害 認定基準」

    第4節/平衡機能の障害
    2 認定要領
    <略>
    (4) めまいの自覚症状が強く、他覚所見として眼振その他平衡機能検査の結果に明らかな異常所見が認められ、かつ、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものは、併合判定参考表の8号(3級又は障害手当金)と認定する。
    引用:日本年金機構「平衡機能の障害 認定基準」

    加入している年金の種類によって受給条件などが異なるため、年金事務所に確認をしてください。

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    障害者手帳

    メニエール病で仕事・生活に大きな支障が出ている場合は、「障害者手帳」を取得できる可能性があります。
    難聴やめまいがひどい場合は、聴覚または平衡機能の身体障害として、また強いストレスによる精神障害を発症しているとみなされます。
    障害者手帳を取得すると複数の福祉サービスを受けることができます。

    • 医療費の助成
    • 税金の控除
    • 非課税化
    • 補聴器など補助具購入費用の助成

    受けられる福祉サービスは自治体や障害の程度によって異なりますので注意してください。

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    CA

    メニエール病は手術によって完治したり、症状が数年で緩和されることもあります。
    「一般枠への転換ができる企業」を企業選びの条件にしてもよいですね。

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    メニエール病でも仕事を続けるには?CAからのアドバイス

    障害者手帳が取得できれば、メニエール病を開示して、配慮を受けながら安心して働くことができます。障害者雇用を実施している会社は大企業も多く、キャリアアップも叶うかもしれません。

    それでは障害者雇用枠で働くためのコツとポイント、また現在の仕事を続けていく上でのヒントをキャリアアドバイザー(CA)がお答えします。

    まず診断を受けたら?選考通過のコツは?

    選考書類や面接でお伝えすべきは「どんな時にどんな症状が出るのか=どの程度体調について自己理解しており、向き合えているか」です。
    診断を受けた際には、これまでの生活環境を振り返り、何か大きく変わった点がないか、確認してみることをおすすめします。

     
    CA

    「発症のきっかけ」「自己対処」は面接でもよく聞かれる質問です。

    また、めまいや体調不良が起こるタイミング(天候・気圧など)がある程度予想がつく場合は、会社にもお伝えいただくことで周囲も受け入れしやすくなります。

    障害者枠で働くと会社からどんな配慮が受けられる?

    まずは通院への融通(フレックス制)や休憩への配慮が挙げられます。
    頓服薬の効果が出るまでのおおよその時間などもわかれば、薬を飲むための小休憩を認めていただける場合もあります。

     
    CA

    医務室、休憩室の有無はエージェントを通じても確認ができますよ!

    他にもDIエージェントをご利用されたメニエール病をお持ちの方には、通院の配慮、テレワークの働き方、難聴のため聞き返してしまうことへの理解や電話対応以外の仕事の割り振りなどがありました。

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    まとめ

    メニエール病はめまいを伴う大変さにくわえ、周囲にはなかなか深刻度が伝わらないのもつらいですね。
    頑張りすぎてしまうみなさん、まずはストレスや忙しさから距離を置いて、ゆっくりと確実に回復につとめてくださいね。
    生活や仕事を変えることで、大きく体調が改善するかもしれません。

    「これからどうしたらよいのだろう」と迷ったら、ぜひDIエージェントにもご相談ください。

    監修:井村 英里
    社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。