DIエージェントを通じて転職に成功した皆さんのエピソードをご紹介します。今回はNULアクセシビリティ株式会社(現:BIPROGYチャレンジド株式会社)に転職をされた伊藤空さんが、4か月の転職活動の苦労を乗り越え、自分にしかできない天職に巡り会えた経験を伺いました。
「特例子会社での働き方は?」「当事者だからこそできる仕事とは?」そんな疑問にも答えてくださりました。経験者が語る「エージェントの上手な利用法」もぜひ参考にしてください。
障がい:心臓機能障がい 1級
経験: システムエンジニア(SE)として企業に所属し12年半の経験を積み、個人事業主としても活躍。上流工程、プロジェクトリーダーや新人育成も得意とし最前線で働いていたが、2018年に拡張型心筋症を発症し、体調管理とキャリアの両立を考えるように。
就職先:NULアクセシビリティ株式会社(日本ユニシス株式会社の特例子会社)*にウェブアクセシビリティ検査技術者としてご就職 【完全在宅勤務】
*2022年4月よりNULアクセシビリティ株式会社は「BIPROGYチャレンジド株式会社」に、日本ユニシス株式会社は「BIPROGY株式会社」に社名が変更になりました
本記事の内容は2021年9月取材当時の内容です。年齢は転職当時のご年齢です。また、新型コロナウイルス感染症対策としてビデオ通話にてインタビューを実施しております。
多すぎる希望条件、長期化する転職活動…DIエージェントで3週間のスピード内定までの道のり
――本日はよろしくお願いいたします。伊藤さんはDIエージェントを通じて、2021年の3月にNULアクセシビリティさんにご入社、このインタビューをしているのが2021年の9月なので約半年が経ちましたね。働き始めてみていかがですか?
かなり業務の調整をしていただいているので、働きやすい職場だと感じています。
――それは良かったです! まずは今回の転職活動を振り返ってみていかがでしたか?
私は障がいや治療、家庭との兼ね合いのために「制限」や企業にお願いすべき「条件」が5つほどあり、転職は苦戦し4か月以上かかってしまいましたね。
――その5つの条件を教えていただけますか?
1つ目は、「障がい者雇用枠」であること。体調や通院の都合があるので、障がい者雇用をしている企業であれば「配慮」の相談が期待できるのではないかと思っていました。健常者と同じルートで入社したとしても「なんで同じように勤務できないの?」と言われてしまうと困るので、始めから障がい者雇用をおこなっている会社に絞っていました。
2つ目は有給/無給関わらず、「通院休暇」制度があるところです。月1回通院が必須ですから、通院を認めていただける会社さんが良いと考えました。
3つ目は、「残業、休日出勤がない」働き方。私は妻と共働きで、2歳の息子もいます。育児は私がメインで担当しているので、夜や休日の時間帯は働けないことを理解してくださることが必要でした。今は定時の17時になったらパソコンの電源をオフにして子どもと向き合う時間ができています。
――素敵なお父さん! ワークライフバランスも重要ですよね。
そして、4つ目が「雇用形態」で、契約社員か正社員を希望していました。お願いしたい配慮も多いのでパート・アルバイトも検討しましたが、社会保障のことを考えるとやはり譲れませんでした。
5つ目が最重視していた「完全在宅ワーク」の働き方です。私には心臓にポンプを埋め込んでいる関係で外出制限があります。外出時には常に誰かに付き添ってもらわなければならず、外出や通勤も頻繁にできません。在宅であれば健常者と同じように働けることもあり、これは外せない条件でした。
――伊藤さんの今のお住まいは秋田県ですよね?
はい、そもそも近場に仕事がなく、さらに「在宅ワーク」ができる会社はより限られます。世に出ている在宅ワークの求人は、「最初の研修期間3ヶ月は毎日出社」「在宅ワークは週4日まで」という企業がほとんどです。
さらに障がい者雇用で探すと転職の難易度はグンと上がってしまいまして……。
長い転職活動にピリオド、DIエージェントで3週間のスピード内定!
――条件的にはかなり厳しかったと。具体的にはどのように転職活動を進めていましたか?
最初は「エージェントを通さないで自分で応募するしかないかな」と思っていたので、一般枠もあるような大手求人サイトで「障がい者雇用」と検索して見つけたところに応募をしていましたのですが、全然書類も通らず。
そこで心臓を悪くした前の転職時は「エージェント」を使っていたなと思い出し、大手の障がい者雇用のエージェントも見つけられたのですよね。そこでいろいろ話したところ「他にも障がい者雇用に特化したエージェントはある」と教えてくれて。
しかしその大手エージェントでは条件に合う求人が見つからず、その後4社ほどエージェントに登録するも全滅で……。2ヶ月待ってようやく1件求人をようやく紹介してもらえる、書類選考の結果も3ヶ月待っても来ないといった状況でした。
あきらめずに可能性を少しでも増やそうと色々と探していたところ、まずは障がい者雇用専門の求人サイト「BABナビ」にたどり着き、同じ運営元のDIエージェントにも紹介をお願いしたところすぐにNULアクセシビリティを見つけてきてくださって。そこからはトントン拍子で、登録して3週間後には内定が出ました。
「障がいがあるからといって縮こまっているのは嫌だ!」社長にぶつけた思い
――うまくいった理由などは思い当たりますか?
一つはNULアクセシビリティが求める要件にぴったりはまったことです。
特例子会社という障がい者雇用を前提とした会社のため働き方に柔軟性があり、私の5つの条件はクリアになりました。
また入社後はウェブアクセシビリティ業務の資格取得が必須で、私もこれまでのエンジニア経験やビジネス全般の資格取得をしていた経験を活かしたいと思っていたのでピッタリでした。
もう一つは会社の目指す方向性がマッチしていたためでしょうか。
寺嶋社長には面接で何度か「なんで障がいがあっても働こうと思ったの?」と聞かれたのですよね。
それに対して私は「障がいがあるからといって委縮して何もしないのではなく、自分の力の許す限り、社会貢献していきたい!」「それによってきちんと対価を得て、人生を前向きに歩んでいきたいんだ」と伝えました。寺嶋社長からは「そういう理由であるならうちの会社に合いますね」と言われ、内定をいただきました。
――感動的な決定ですね。素晴らしい面接のご回答でしたが、DIエージェントからの面接サポートなどはありましたか?
いくつかのエージェントに登録して転職サービスの特徴も色々あると気付きました。早くたくさんの求人数を紹介するのが得意なところ、じっくりカウンセリングした上でピンポイントに紹介をする提案営業タイプのところ。DIエージェントさんはどちらかというと後者でしょうか。
エージェントのキャリアアドバイザーさんとも「働くとは?」「人生の到達点はどうなりたいか?」と深い話ができました。思いを伝えた上で、第三者の広い視点を新しい可能性を提案していただく、エージェントの力を借りるというのは必要だったと感じました。
面接前には「NULアクセシビリティはどういう会社か」「面接は意欲重視で見られる」といったことも教えていただきました。
また私が一番気になっていた条件面も先立って書面で開示しており、気になる点は細かく応募先企業に確認いただいたので安心でした。エージェントによっては、こちらから食らいついて聞いていかないと詳しい条件を全部教えてくれないところもありますので……。
条件面での懸念がない中で、面接では人となりを見てもらうように専念できたのもすごく良かったです。
――「残業時間の話を質問したら落とされるのではないか?」などと思いながら面接臨むのとは心持ちも違いますね。
実は転職が決まった時、一番喜んでいたのは家族でした。何か月ももがいて暗い表情をしていた私を見てすごく心配していたようです(苦笑)。
ですから私をサポートしてくれたDIエージェントのキャリアアドバイザーさん達には感謝してもしきれませんね。
ウェブアクセシビリティとは? NULアクセシビリティでの働きがい
――ではご就職先のNULアクセシビリティという会社さんについて聞いてみたいのですが、社名にも冠している「(ウェブ)アクセシビリティ」とはどのようなものか教えていただけますか?
ウェブアクセシビリティを一言でいうと、「誰もが利用しやすいホームページ」です。
障がい者や高齢者などいろいろなハンディのある方でもウェブサイトから必要な情報を取り出せるようなつくりになっていることを検査するのがNULアクセシビリティの主業務です。
たとえば、目が見えない・見えづらい方でも、集中して長い文章を読むのが苦手な方でも、的確に公的機関の情報にアクセスできるにはどのような機能が必要で、構成になっていないといけないかをチェックする。
私自身でプログラムを組むのではなく、ツールを使ってJISの基準や国際規格で決められたものを満たしているかを確認し、検査証(レポート)にまとめる仕事です。当事者の立場に立って、お伝えする「発信力」が問われますね。
――なじみがない仕事ですが、この転職をきっかけに知った職種ですか?
そうですね。ウェブアクセシビリティ検査技術者検定の資格を取得し、あとはコツコツと経験を積んでいく。先輩に教えてもらいながら進めていく職人のような世界でもあります。
私自身は過去にもシステム会社に勤めていましたが、そもそも「Webを閲覧するのにハードルのある人が見る場合どうしたらいいか?」といった想像はしたこともなかったので、この仕事に就いてからたくさん発見があります。
私は自分から発信したりアイデアを出すことは好きだったのでその強みを活かしながら、当事者としても「障がいをお持ちの方に貢献できている」という点でもやりがいを感じています。
――まさに「伊藤さんだからこそできる」天職だったのですね!
良い会社に巡り会えたと思っています!
特例子会社×ベンチャーのメリットがあった
――NULアクセシビリティ株式会社は、日本のSIerのリーディングカンパニーでもある日本ユニシス株式会社(現:BIPROGY株式会社)の子会社として、2018年に設立され、2019年に特例子会社(※)認定を受けた会社ですが、そのメリットを感じられることはありますか?
グループ会社内の仕事を請け負うので、安定して受注できることでしょうか。私からのフィードバックも対等に反映されやすいと感じます。
無理のない業務量に調整していただいており、IT業界にありがちな長時間労働に深夜残業といったこともありません。
それに新しい会社ということもあり、走りながら考えるベンチャー企業らしい雰囲気があります。
会社の戦力として「自分が会社を作り上げていく」「会社をもうワンステップ先に進める提案」ができているのは嬉しいです。
特例子会社とは、障がい者の雇用の促進・安定のために作られた会社を指します。事業主は「親会社」と呼ばれ、子会社に対し意思決定や役員の派遣をし、親会社で発生している仕事の一部を任せます。
参考:DIエージェント「『特例子会社』のリアル!給料・定着率・メリットデメリットなど実態を紹介」
特例子会社とは、障害をお持ちの方の雇用促進と安定のため、母体となる会社が出資して設立された会社のことです。 しかし、名前を聞いたことがあっても、実際にご自身が利用できるのか・どのようなメリットがあるのか・どうすれば就職できるのかは知らない[…]
――伊藤さんは一般企業でのご経験もありますが、雰囲気の違いなどはありますか?
今一緒に働くメンバーにも障がいをお持ちの方がいて、就労移行支援を経て入社するなど実社会でも勤務経験が少ない方もいらっしゃいます。そういった方々をフォローしたりもしていますね。
NULアクセシビリティとしても、「もっと様々な仕事を積極的に請け負うことで障がい者でも活躍できる可能性を広げたい」という思いがあります。現場チームリーダーとしてメンバーを支え、活躍していきたいです。
――入社後のギャップなどはありませんでしたか?
最近では会社の規定を変えてまで「新型コロナウイルス感染症のワクチン接種のために会社を休む場合は、特別休暇扱いに」といった制度を作ってくれたのが良い驚きでした。
障がい者の優先接種があり「休暇を取らなきゃ」と思っていたのですが、引け目を感じることもなくワクチンを接種しにいけたのは嬉しかったですね。
――ベンチャー企業らしい柔軟性ですね。合理的でありながら社員に対する思いやりを感じます。
在宅ワークでも寂しくならないアイデアを自分から提案
――完全在宅ワークだと他の社員さんとのコミュニケーションはどのようにとられているのでしょう?
私自身はおしゃべり好きなタイプではあるのですが、会社にはそれぞれの障がいの特性があったり、落ち着いて話したい人もいたりと相手に合わせたコミュニケーションをとっていますね。リモートであればなおさらで、「自分から話しかけるのが苦手そうだな」という方には積極的に話しかけています。
あとは私からの提案で雑談チャットルームを設けてもらいました。オフィスで勤務していた時と違って、ちょっと仕事のことを聞いたりしたい際は相手の人となりを知らないと声がかけづらかったり、報連相が遅れてしまったりといったことがあると思います。雑談は人との仲を結び付けたり、煮詰まった時に気晴らしになったりする効果もありますので。
――それならリモートワーク特有の孤独感も感じなさそうですね。他にもメリットはありますか?
私は現在秋田県に住んでいますが事業所が東京となるため、東京の最低賃金がお給料のベースになっているのですよね。配慮事項がたくさんありましたので給料に対してはそこまで望んでいませんでしたが、想定以上のお給料をいただけることになって、そこは嬉しい誤算でした。
――秋田と東京では最低賃金に200円近い開きがあるので、かなり大きな差になりそうです。
会社の外で働く「在宅ワーク(テレワーク・リモートワーク)」が広がっていますが、障害をお持ちの方にとっても「通勤の負担が減る」「自分に合った環境で仕事に集中できる」などのメリットがたくさんあります。 一方で「求人や給料は?」「コミュニケーシ[…]
「障がいがあるからといって諦めなくてもいい」それが障がい者雇用枠の良さ
――実はDIエージェントがおこなったアンケート調査結果から「障がい者枠で働かれている方の3割が業務過少を感じていた」ということが明らかになったのですね。「やる気はあるのに力を発揮できない」とモヤモヤを抱える方は多いようですが、伊藤さんは会社の期待もある中で自ら仕事を創りにいっていますよね。
「障がいはあるけれどもいろいろなことにチャレンジをしたくて、失敗は怖いけど意欲はあるんだ!」という方は、ダメ元でもその思いをぶつけてみればいいのではないかと思います。結果として自分にとって最善の企業に巡り会えることに繋がります。何ヶ月も仕事が決まらなくて焦る気持ちもよくわかりますが、諦めずにいればある時ふと自分に合う条件・共感できる会社の求人が出てくる可能性があるのですよね。
障がい者雇用をしている会社は分かった上で採用をしています。障がいがあるからといって、小さく縮こまっていなくていいんです、諦めなくていいんです。
――大事なことですね。では最後にこれから障がい者枠での就職・転職活動を始めようと思われている方にアドバイスをお願いします!
「障がい者雇用」という情報の少ない中、一人で活動するのはなかなか難しいと思います。
悩まれているなら、エージェントさんの力も借りながら色々な企業と出会っていくことをオススメします。
「名前を知らなかったけど良い会社」というのは大きい求人サイトには求人を出していないこともあるのだと知りました。
特に障がい配慮など勤務条件の折衝において、「残業できません」「通勤やりたくありません」といったことは自分からは言いづらい! でも必ず伝えなければいけないので、エージェントさんを通して企業に伝えてもらえば聞いてもらえることがあるんです。
障害者枠で転職を検討中の方の中には、ハローワーク、求人サイト、転職エージェント等、色々な手段がある中で、何をどう活用したらいいか迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。 本記事では、その中でも特に転職エージェントをおすすめする理由[…]
「面接官の記憶に残る」内定に近づくためのアドバイス
また障がい者雇用の面接では
「あなたはこれができますか?」「できます」
「こっちはできますか?」「できません」
といった一問一答になりがちです。しかしそこで終わらずに、「私はこのような制約はありますが、○○という技術で補うこともできれば、こんな貢献ができます!そうすることで、~~のような社会を実現したいです」と、自分の思いを伝えてみても良いのではないでしょうか?
これはキャリアアドバイザーさんの助言もあって。「伊藤さんの良さはその熱意だから、面接ではそこをしっかり伝えつつ、簡潔に話せるといいですね」と言われ、自分で文章に書いてみてブラッシュアップしたりと……。
きっとそこまで考えているライバルも少ないでしょうし、何百人と相手をしている面接官の記憶にも残るのではないかなと(笑)
――これから面接を受ける方にはぜひ参考にしていただきたいアドバイスです。
今日は自分で仕事を作っていく楽しさばかりをお話しましたが、「決められ仕事をコツコツと進めたい」「アレコレとやるのではなく専門性のある仕事を極めてきたい」という志向の方もいると思いますので、それをきちんとエージェントさんに伝えてみてください。いつかは必ず自分の探し求めた会社に巡り会えます!
――ウェブアクセシビリティに携わるやりがい、NULアクセシビリティのカルチャー、DIエージェントの魅力から仕事観・人生観まで盛りだくさんのお話をありがとうございました! 伊藤さんのような熱量を持った方と企業様をお繋ぎできるよう、これからも頑張っていきます。
◆NULアクセシビリティ株式会社(現:BIPROGYチャレンジド株式会社)の求人詳細をクリックして見る(外部サイト「BABナビ」)
この記事を読んで、NULアクセシビリティ株式会社やウェブアクセシビリティのお仕事に興味を持たれた方は奮ってご応募ください。