上肢障害の等級・制度を知る!労災認定や仕事探しについても解説

上肢障害をお持ちの方に向けて、この記事では障害等級や労災認定などの制度についてわかりやすく解説していきます。 障害者雇用専門のキャリアアドバイザーから、お仕事探しのポイントや仕事をする上で気を付けたいこともお伝えします。障害理解を深め、よりよい職場に出会うヒントが見つかれば嬉しいです。

上肢障害とは?

上肢とは肩から各関節を含む手指までの範囲を指します。 ものをつかむ・持ち上げる・支えるなどの日常的な動作・運動や、手指を細かく動かす複雑な動作を行うことができない状態が続く場合、上肢障害と診断されます。 上肢障害は、上肢に当てはまる部位に欠損があるもの(欠損障害)以外に、関節の変形により痛みが出たり、可動域に制限が生まれる「変形障害」や関節の可動域が制限され、屈曲・伸展などの動きができない状態や、麻痺などにより筋力が通常よりも少なく、動作に制限が生まれる「運動機能障害」などに分類されます。

下肢障害や体幹機能障害と合わせて「肢体不自由」と総称される場合もあります。

参考:UMIN「Mw1 下肢障害」
ハートシティ東京「肢体不自由」

上肢障害の代表的疾病

上肢障害の代表的な疾病には以下のものがあります。

  • 上腕骨外(内)上顆炎
  • 手関節炎
  • 書痙(しょけい)※文字を書く際に震えや痛みがある
  • 肘部管症候群
  • 腱鞘炎
  • 回外(内)筋症候群
  • 手根管症候群

脳梗塞・脳内出血などの後遺症により、上肢の麻痺症状が残る場合があります。 多発性硬化症(MS)・パーキンソン病・筋萎縮性側索硬化症( ALS )などの指定難病の進行により、上肢障害の認定を受けることもあります。

参考:難病情報センター「筋萎縮性側索硬化症(ALS)(指定難病2)」
兵庫県難病相談センターホームページ「多発性硬化症の基礎知識と療養のポイント-神経難病の知識-」

上肢障害で身体障害者手帳が取得できる

障害の状態に応じて「身体障害者手帳」を取得することが可能です。 ここでは身体障害者手帳のメリットや等級についてわかりやすく解説します。

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身体障害者手帳をとるべきメリットは?

身体障害者手帳を取得するメリットが複数あります。 代表的なメリットは以下が挙げられます。

  • 医療費の助成
  • 税金の控除
  • 補助具購入費用の助成
  • 障害者雇用枠での就労

障害を開示するかどうかは個人の意思によりますので、デメリットは実質無いといえるでしょう。

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身体障害者手帳の等級と上肢障害の認定基準

身体障害者手帳における上肢障害の各等級と認定基準を解説します。 わかりやすい図解は長野県立総合リハビリテーションセンター作成の「身体障害者手帳・肢体自由(欠損・機能全廃)早見表 」を参考にしてください。

参考:障害者職業総合センター NIVR「障害・職種別『就業上の配慮事項』-企業の経験12,000事例から-」
厚生労働省「障害等級表」
厚生労働省「身体障害者障害程度等級表」

1級

上肢障害1級は両上肢の機能が全廃した状態、または両手の手関節から先が欠損している状態の場合に認定されます。 この場合の「全廃」とは、肩関節・肘関節・手関節・手指の全ての機能を失った状態を指します。

 
CA

障害者雇用において、身体障害者手帳の1級・2級は「重度」、3級・4級は「中度」、5級・6級は「軽度」と見なされます。

2級

上肢障害2級は両上肢の機能の著しい障害や両上肢のすべての指が欠損している状態、または片方の上肢の上腕の2分の1以上欠損している状態、片方の上肢機能が全廃している状態の場合に認定されます。
この場合の「著しい障害」とは握る・積む、撫でる(手、指先の機能)、物を持ち上げる、運ぶ、投げる、押す、ひっぱる(腕の機能)等の機能に制限がある場合を指します。

3級

上肢障害3級は両手の親指とひとさし指が欠損もしくは機能が全廃している状態の場合に認定されます。
この場合の「全廃」は、箸を持つ・文字を書くなどができない状態を指します。 また片方の上肢のすべての指が欠損もしくは機能が全廃している状態の場合も含まれます。

4級

上肢障害4級は両手の親指が欠損もしくは機能が全廃した状態、片手の親指とひとさし指が欠損もしくは機能が全廃した状態、親指・ひとさし指を含む計3指の欠損もしくは機能が全廃した状態の場合、認定されます。また片方の上肢の肩関節・肘関節・手関節のうちいずれか一関節の機能を全廃しているケースも4級に当てはまります。
4級の全廃とは、関節の可動域が30度以下の場合や、筋力テストの値が著しく低い状態を指します。

5級

上肢障害5級は両上肢の親指の著しい障害、片手の親指の機能全廃、片手の親指・ひとさし指を含む計3指の著しい障害、片方の上肢の肩・肘・手関節のいずれかの機能に著しい障害があると認定されます。

6級

片手のひとさし指を含む計2指の欠損もしくは機能全廃、片手の親指の機能の著しい障害がある場合、6級と認定されます。

 
CA

機能障害だと、一見して障害があると分からない場合もあります。負担がかかる動作を避けてもらえるように配慮のお願いができるとよいですね。

7級

片方の上肢の軽度な機能障害や、親指・ひとさし指以外の指の機能の全廃等が含まれます。
7級のみでは身体障害者手帳の取得はできませんが、その他の身体障害をお持ちの場合は、合算した障害等級で手帳が発行されることがあります。(たとえば、上肢障害7級と下肢障害7級の認定が降りている場合など)

参考:厚生労働省「身体障害認定基準」

障害年金

障害の程度によって障害年金を受給できる可能性もあります。
身体障害者手帳とは等級や認定基準が異なります。日本年金機構の「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(第7節 肢体の障害・第1 上肢の障害)」に詳細があるので確認してみてください。

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上肢障害をお持ちの方が使える用具と補助

障害者手帳が交付されている場合、日常生活を不自由なく送るための用具の購入にあたり補助・助成が利用できることがあります。 上肢障害をお持ちの方が使える用具をまとめました。

  • 義手:上肢の一部もしくは全部をなくした方が機能を補うために使用する人工の「手」です
  • 上肢装具:低下した筋力の補助・変形の矯正・体重支持のために使う用具です
  • キーボード補助具:通常のキーボードより大きく、キーが押しやすい構造になっているものや、足で入力できるものもあります
  • 音声認識ソフト:音声でPCの各機能を立ち上げたり、文字入力を行うことができるソフトです
  • マウス補助具:マウスを握らなくてもわずかな力で動かすことが可能なものや、トラックボール・ジョイスティック式で操作可能なものなどがあります
  • ハンズフリー電話機:受話器の上げ下げをしなくても架電・受電ができます。ヘッドセットマイクなどを併用します。

参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構「上肢障害と支援機器」
厚生労働省「障害者支援機器の活用ガイドブック」

後天的な受傷(交通事故や労災認定)

上肢障害の診断を受ける方には生まれつきの方もいれば、脳梗塞やその他の疾病により後遺症として受傷される方や、交通事故や労働災害(以下、「労災」)が原因で後天的に受傷される方もいます。後天的に受傷された方が知っておきたい福祉制度や支援機関などをお伝えします。

 
CA

後天的に受傷された方は、お体の状態を受け入れるのに時間がかかるかもしれませんが、日常生活においてご自身にできることから少しずつ慣れていくことが、社会復帰への近道となります。

交通事故と後遺障害認定

交通事故の場合、一定期間治療を行ったものの完治に至らない場合は「後遺障害」と呼ばれます。

後遺障害が残り日常生活や仕事上支障が出る場合は、後遺障害認定をおこなうことで補償が受けられます。
後遺障害の認定手続きを行うには、医師からの「後遺障害診断書」が必要になります。 その他必要書類をそろえて、加害者側が加入している保険会社に提出することで、申請手続きが完了します。 必要書類の手続きが難しい場合は、弁護士に相談してみるのもよいでしょう。認定結果に応じて支払われる慰謝料が算定されます。

参考:国土交通省「交通事故にあったときには」

労災認定について

通勤・仕事中の事故や上肢に負荷のかかる作業を継続することで、上肢障害を受傷された場合、労災として認められるケースがあります。 上肢障害における労災とは、「上肢等に負担のかかる作業を主とする業務に 相当期間従事した後に発症したものであること。」「発症前に過重な業務に就労したこと」「過重な業務への就労と発症までの経過が 医学上妥当なものと認められること」の3つすべてに当てはまる状態を指します。

参考:厚生労働省「上肢障害の労災認定」

上肢障害で労災認定がおりた事例

上肢障害は工場での危険物取扱作業や反復作業や建設業・保育や介護などの体力仕事をきっかけに受傷が多いイメージがあるかもしれません。しかし事務職でも上肢障害を受傷、かつ労災認定されるケースもあります。

事務職の方が腱鞘炎を発症したケース
 
Aさん
 データ入力業務を2年間勤めていたAさんは、肘から指先へのしびれを感じ、医療機関から「腱鞘炎」と診断を受けました。
労災の判断基準となったのは他の社員の方との作業量の差です。 同様の作業を行っていたスタッフと比較して、3か月間、業務量が10%以上多いことが判明して、労災認定となりました。
参考:厚生労働省「上肢障害の労災認定」

上肢障害をお持ちの方の仕事~障害者雇用枠で働くには?

仕事をするにあたって企業に求める配慮事項が明確であるほど、企業側もサポートしやすいため就職・転職活動においては選択肢が多いと言えるでしょう。
障害者雇用専門求人サイト「BABナビ」の掲載求人を参考に見ると、上肢障害者の採用実績がある企業は大手・有名企業を中心に常時100件以上あります。
事務職や管理部門系職種・コールセンターなど、様々な職種で活躍されています。

上肢障害をお持ちの方が働く上での悩みや工夫

上肢障害をお持ちの方が働き始めてからのお悩みで「業務スピードやボリュームのミスマッチ」のご相談をよくいただきます。
就職・転職活動を失敗しないためのアドバイスとしては「選考を進める上で企業側と業務量や負荷のすり合わせをおこなう」ことを推奨しています。

  • 現在の自身の体がどのような状態にあるか、進行性かどうか
  • 可動域はどの程度か
  • タイピングのスピード
  • 専用のキーボード・マウスなど作業効率を上げるための必要機器
 
CA

たとえば可動域の伝え方も「腕の角度は90°まで動く」といった数字にくわえて、「頭上の物を取るのが難しい」など具体的なシーンを伝えられると、面接官もイメージがしやすいです。

  • 配属先の人数構成
  • 1日の業務の流れ
  • 電話応対の多さ
 
CA

上記からおおよその業務量の予想がつきます。残業時間も含めて聞きづらい質問はエージェントのCAに聞いてもOKです!

障害者雇用枠で受けられる配慮とは?

障害者雇用枠で働く最大のメリットは、可能な限りで障害配慮のある環境で働けることです。
それでは入社後に上肢障害に対してどのような障害配慮が受けられるのでしょうか?
障害・職種別『就業上の配慮事項』-企業の経験12,000事例から-」をもとに等級別に確認してみましょう。
企業選びや面接で障害配慮を質問する際にも参考にしてください。

上肢障害1級への配慮例

社内の設備・バリアフリー環境が整っているかは重度の上肢障害をお持ちの方には必須のチェックポイントになります。
たとえば、「自動ドアの可否」「ドアは重すぎないか」「入室キーをタッチする箇所は手が届くか」などを確認します。
その他、仕事をする上で必要な支援機器を会社が用意してくれることもあります。

上肢障害2級~4級への配慮例

重量物や大型の荷物の運搬は避けるように業務を制限していただいたり、片手入力による作業スピード低下の理解などが挙げられます。

 
CA

選考書類や面接では「何kg程度の物なら持つことができるのか」も伝えておけると良いですね。

上肢障害5~6級への配慮例

見た目にはわかりづらい分、ピンポイントで発生する業務制限(お茶くみ・紙をめくって数える・高所のものをとるなど)の周知やメンバーへの協力をしてもらえる企業もあります。そのためには選考時にこちらから具体的に助けが必要なこと・できないことを伝えていきましょう。

テレワークの働き方

痛みの症状があったり満員電車での移動に不安がある方には在宅ワークもおすすめです。
ご自宅が作業場になるので、業務に従事しやすいようご自身で作業環境を整えることも叶います。

上肢障害をお持ちの方がテレワークで働いた感想も参考にしてみてくださいね。

ただしテレワークはすべての企業で取り入れているわけではないため、まだまだ完全在宅ワークが可能な求人は少なく、業務の幅が限られたり、パート・アルバイトなどの時短勤務のものも多いのが現状です。雇用形態や昇給制度なども確認するようにしましょう。

働き方のイメージ「テレワークをする車いすの男性」

上肢障害をお持ちの方におすすめの求人例

働くイメージが湧くように、「上肢障害」をお持ちの方の採用実績がある・積極採用中の企業の求人例を見てみましょう。

EAファーマ障害者採用の求人票
▲クリックすると求人詳細が見られます(外部サイト:BABナビ)

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こちらの求人は最高年収が700万円で、「持株制度」「社宅制度」などの福利厚生も充実しているので収入アップが大いに見込めます。
オープンポジションのためこれまでの経験と障害配慮を元に配属が決まります。スキルアップを目指したい方にもオススメの職場です。

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上肢障害をお持ちの方の転職成功事例

DIエージェントを利用して転職が成功された方のエピソードをご紹介します。何を軸に転職活動を進め、どのようなアクションを起こしたのか参考にしてみてください。

先天性の上肢障害3級の転職成功事例

Tさん(40代・女性)
障害自体は軽度なため、PC入力・書字は通常通り行うことができますが、酷使しすぎたり、片腕をかばいすぎて腱鞘炎になる恐れがありました。日常生活にも支障が出ることを懸念して「身体障害者手帳」を取得されました。

ご自身にできること・できないことをしっかり切り分けてお伝えされたため、配慮を受けながらも業務内容は制限なく幅広く仕事を任せてもらえるような環境での就業が叶いました。

業務中の事故による頸椎損傷により上肢(2級)・下肢(2級)の転職成功事例

Yさん(40代・男性)
前職で事故にあい「身体障害者手帳」を取得されました。 専門職からのキャリアチェンジにあたってPC教室に通い、1からPCの使用方法を学んだり、 ご自身にできる業務を明確にすることで、配慮を受けながら社会復帰が叶う職場への転職が叶いました。

 脳梗塞による上肢(7級)下肢(4級)の転職成功事例

Sさん(50代・男性)
障害受傷当時はリハビリに専念され、社会復帰を目指してアルバイトとして就業を開始していらっしゃいました。 アルバイトでの経験を通じて、ご自身にできる業務・できない業務を知り、必要な配慮事項を明確に伝えることができました。今回の転職では業界・職種が合う会社にてステップアップを叶えました。 年収600万以上のハイクラス転職を決められた一人です。



 
CA

3名とも、障害受傷の原因や時期はさまざまでしたが共通事項は「ご自身のお体の状態や必要な配慮事項についてしっかりと説明ができたこと」でした。 特に想定される配属先で発生する業務に照らし合わせて、「できる/できない」を伝えると企業側もイメージがしやすくなります。

まとめ

障害者枠には「事務職」での採用が多く、上肢障害をお持ちの方は「どんな業務が自分に合っているのか?」という点で悩まれることが多いかと思います。ご自身のお体の状態や必要な配慮事項をしっかりお伝えすることができれば、業務の制限を受けず、希望の職種・業界を目指すことも可能です。
お仕事のことでお悩みがあれば、ぜひDIエージェントにご相談ください。 求人の選び方や、面接での障害の伝え方など、イチからアドバイスいたします! キャリアカウンセリングでお会いできるのを楽しみにしております。

監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。

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