聴覚障害者の方の仕事について|仕事の探し方や働くうえでのヒントを解説

聴覚障害とは、周囲の音声を聞き取ったり感じたりする器官になんらかの障害があり、音を聞き取りにくかったり、ほとんど聞こえなくなったりしてしまう状態です。その度合いによっては、日常生活に限らず、仕事においても障害が理由で困難が生じる場合があります。

そこで、今回は、聴覚障害の方にオススメの職種・働き方など仕事選びのポイントや、実際に就職・転職活動を進める方法について解説します。

障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別のご病気を発症してしまったりする例も少なくありません。

そうならない様、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。

聴覚障害とは?

聴覚障害とは?

聴覚障害とは、耳が聞こえないまたは聞こえづらい状態をいいます。聴覚障害について、等級や聞こえの種類について詳しく説明します。

DIエージェントの完全無料キャリア相談に申し込むボタン

障害者手帳の4つの等級

身体障害者手帳では、聴覚障害はどの程度聞こえるのかで6級・4級・3級・2級の4段階に等級が分けられています。等級は、聴力検査または、語音明瞭度検査の結果によって判定されます。

等級による障害の度合いは以下の通りです。

等級 聴覚障害
6級

1 両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの)

2 一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの

4級

1 両耳の聴力レベルが80デシベル以上のもの(耳介に接しなければ話声語を理解し得ないもの)

2 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50パーセント以下のもの

3級 両耳の聴力レベルが 90デシベル以上のもの(耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの)
2級 両耳の聴力レベルがそれぞれ 100デシベル以上のもの(両耳全ろう)

引用元
厚生労働省|身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第 5号)

聞こえの程度による種類

聴覚障害は、身体障害者手帳の等級とは別に、聞こえの程度などによってろう・難聴・中途失聴の3種類に分かれます。

ろう

「ろう」とは、100dB以上の聴力レベルで、身体障害者手帳では2級に相当する状態や、両耳がほぼ聞こえず日常的な会話の第一言語を手話としている方を指すことが多いです。音声での言語を習得するよりも以前に聴力を失っている方がほとんどです。

難聴

「難聴」とは、音は聞き取りづらくても聴力が残っている状態のことを意味します。どの程度聞こえるのかは人によって異なります。聞こえづらさにつながっている原因や器官の場所によって、「伝音性難聴」「感音性難聴」「混合性難聴」3つの種類に分かれます。

中途失聴

「中途失聴」は、音声での言語を習得したあとに、事故や病気などで聴力を失った方が該当します。コミュニケーションは手話ではなく言語で行う方が多く、耳がほぼ聞こえない状態でも話せる人がほとんどです。

聴覚障害者の方が仕事をするうえで困ること

聴覚障害者の方が仕事をするうえで困ること

聴覚障害の方が仕事をするとき、いくつかの起こりやすいトラブルがあります。仕事を探すときには少し気を付けておくことをおすすめします。

疑問点を確認しづらい

聴覚障害があると、単に聞き取りが難しいだけだと思われがちですが、聞き取るだけでなく、自分がキャッチした情報が正しいかどうかを確認するのが難しいという問題があります。例えば、相手に何度も聞き返すことを申し訳なく思って質問しづらかったり、確認するタイミングがつかめなかったりするなどです。

また、口話でやり取りをする場合には、単語の聞き分けが難しく、神経を集中させるので疲れやすいです。

会議での聞き分けが困難

たくさんの人が出席する会議やミーティングも、聴覚障害があると困難な場面に出会いやすいものです。聴覚障害があると、人の声の聞き分けができず、誰が何を話し、どのような議論に発展しているのかがとてもわかりにくくなります。

そのため、会議では後述のパソコンのチャットツールやスマホの音声認識アプリなどを活用し、誰が何を話しているのか、目で見てわかるようにすると便利です。求人への応募時にも、そのような支援ツールの利用ができるかどうか企業側に確認してみるとよいでしょう。

聴覚障害による体調不良

耳にトラブルがあると、めまいや吐き気などの体調不良が起きやすいということを知らない人も少なくありません。聴覚障害のある方は、気圧の変化や気候の変化に伴って、体調不良になりやすい人もいます。

季節の変わり目や天気の変化で、体調がすぐれない日があることをあらかじめ会社の人に伝えておくと、周囲の人も理解しやすくなります。兆候がある場合は、なるべく早めに休息して体調を整えることも大切です。

聴覚障害者の方の仕事探し

聴覚障害者の方の仕事探し

聴覚障害者の方でも、活躍できる仕事があります。聴覚に障害がある方の仕事の探し方や、仕事を見つけるときのポイント、おすすめの職種などを紹介します。仕事探しの参考にしてみてくださいね。

仕事を探す時に利用できる支援機関

聴覚障害のある方が仕事を探すときには、企業がホームページなどで募集している求人に直接応募するほか、就職サイトや転職サイトの活用、障害者を対象とした合同説明会に参加する、ハローワークの求人に応募するなどの方法があります。一般募集だけでなく、障害者枠が設けられているところには、積極的に応募したいところです。

聴覚障害のある方はどんな支援機関が利用できるのか、代表的な機関を見ていきましょう。

ハローワーク

ハローワークには、障害者専門の相談窓口が設けられています。障害者専門窓口では、障害や特性に理解の深い支援員の他、手話や筆談で対応ができる支援員もいるため、障害者の方が抱える不安や悩みなども相談しやすいでしょう。

また、ご自身の特性・ニーズにマッチした仕事を探す上で客観的なアドバイスを受けたり、就職後もサポートを受けられるといったメリットがあります。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターでは、障害者の方に対する職業リハビリテーションサービスの他、雇用側に対する障害者の方の雇用管理の相談・援助などを行っています。

地域によって提供しているサービスが異なるので、東京障害者職業センターを例に見ていきましょう。

東京障害者職業センターでは、障害者職業カウンセラー等の専門支援員を配置し、ハローワークや障害者就業・生活支援センターといった他機関とも連携をとって就労支援を行っています。

障害者の方の検査や作業を実施して現状分析をし、就職や職場定着、職場復帰等といった目標達成に向けた課題と支援方法・内容について検討した上で、インフォームドコンセントにもとづき今後の職業リハビリテーションの方針を決定します。

引用元
東京障害者職業センターについて

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害者の方が自立を図るために雇用・保健・福祉などさまざまな関係機関と連携し、障害者の方の身近な地域で就業と生活の両面に対し一体的な支援を行うことを目的に、全国の各地域で社会福祉法人や特定非営利活動法人が運営しています。

例えば、東京都板橋区の「障害者就業・生活支援センターワーキング・トライ」では、「働くこと」「働き続けること」を希望する障害者の方を対象に、福祉・医療・企業・教育等の各機関と連携しながら、就労とそれに伴う生活の相談・支援を行っています。

お住まいの地域に関係なく利用することができますが、利便性を考えると自宅から利用しやすい場所のセンターへ相談することをおすすめします。

引用元
障害者就業・生活支援センター ワーキング・トライ

障害者向け就職・転職エージェント

障害者専門就職・転職エージェントは、障害者雇用に取り組む企業と障害者枠での就職や転職を希望する障害をお持ちの方をマッチングするエージェントです。

障害者採用を行っている企業がどの様な人材を求めているかなどのニーズを把握し、障害をお持ちの方の状況や希望をヒアリングして、アドバイスを行ったり希望に沿った求人を紹介したりします。

障害者専門の人材紹介会社は、一般雇用向けの人材紹介会社が保有していない障害者枠の求人を多く取り扱っている点が特徴です。また、障害者枠の仲介経験が豊富なキャリアアドバイザーが担当につき、一人ひとりに合わせた対応を行います。

DIエージェントは、オープン就労を目指す障害をお持ちの方と障害者雇用を取り入れている企業とをマッチングする人材紹介会社です。

専門のキャリアアドバイザーが常駐し、しっかりと要望や状況をヒアリング。求職者それぞれのキャリアの強みを分析して、求人の開拓につなげます。

障害者雇用に特化した就職・転職エージェントとして多数の実績があり、転職だけでなく新卒での就職も多くの成功事例があります。就職後の職場定着率は90%以上と高く、障害者雇用のコンサルティング企業として10年間、多くの就職支援実績があるのが強みです。

障害者手帳申請中の方や転職を検討している段階での登録・相談もできるので、転職を迷っている方や障害者雇用に興味がある方は、気軽に利用申し込みをしてみてはいかがでしょうか。

仕事を見つける時のポイント

採用には、一般採用枠と障害者雇用枠があるのをご存じでしょうか。一般採用枠は、健常者も障害のある方も同様に採用試験を受けることができます。一方で、障害者雇用枠というのは、障害者手帳を保有している方しか受けることができません。

障害者手帳を持っている場合は、障害者雇用枠も積極的に利用していきたいところです。障害者雇用枠を設けている会社であれば、過去に聴覚障害者の方が働いた実績があるかもしれません。そのような場合は、障害に対する理解も得やすく、サポートが整っている可能性も考えられます。

事前に職場の見学ができる場合は、企業から得られる障害への配慮や社内設備がチェックでき、働きやすい職場探しに役立ちます。

おすすめの職種

聴覚障害のある方がチャレンジしやすい職種をいくつかピックアップして紹介します。気になる職種があれば、積極的に応募してみましょう。

データ入力や備品・伝票管理など事務職系

事務職といえば電話応対のイメージが強いかもしれません。しかし、電話応対以外にも入力作業やファイリング作業なども多く、聴覚障害のある方が活躍できる仕事です。特に入力作業は集中力と根気が問われるため、集中力が高い方には特におすすめです。

在庫やメール便の管理など軽作業系の職種

在庫の管理や軽作業系の職種は、聞いて仕事をするよりも、目で見て判断する作業が多いため、聴覚障害者の方も活躍できます。

システム開発、プログラミングなどエンジニア系の職種

パソコンのスキルがある方におすすめなのが、システム開発やプログラミングなどのエンジニア系の職種です。社内システムを構築したり、トラブルを解決したりするなど、社内でも重宝される仕事です。

Webデザイン、DTPデザインなどデザイン系の職種

イメージをカタチにしていくWebデザインやDTPデザインなどは、見る力とセンスが問われる仕事です。聴覚障害の方でWebデザイナーとして活躍している人もたくさんいます。

医療・福祉系の職種

同じく聴覚障害を持った方に、病院内を案内したり、医療用具の使い方を説明したり、医療福祉系の仕事で働く聴覚障害者の方もいます。児童福祉に関わる仕事は、言語よりも身体的なコミュニケーションが必要とされるため、聴覚障害者の方もチャレンジできる分野です。

面接を円滑に進めるためには

就職や転職活動の面接を円滑に進めるには、いくつかのポイントがあります。面接は、自分自身のことをまったく知らない人に、自分のことを紹介する場です。就職活動で必ず聞かれる、志望動機の用意をしておくのはもちろん、その会社で自分がどのように活躍できるかを具体的に伝えることが大切です。

自分の聴覚障害について、できることとできないことを明確に伝え、コミュニケーションがどの程度可能なのかを伝えておくと、企業の担当者も障害について理解しやすいでしょう。

実際に勤務することになったら、どんな仕事を担当することになるのか、障害への配慮はどのくらい受けられるのか、過去に聴覚障害者を雇用したことがあるかなど、職場環境の確認ができると安心です。何度も面接の練習をして挑みましょう。

聴覚障害者の方が円滑に仕事をするためのヒント

聴覚障害者の方が円滑に仕事をするためのヒント

聴覚障害者の方が円滑に仕事をするためのヒントを紹介します。仕事をスタートする前に、頭のなかに入れておいてくださいね。

自分の障害について伝えておく

これまで聴覚障害者を雇用したことがある職場であれば、ある程度障害への理解が得られやすいでしょう。しかし、聴こえ方の程度や必要としている配慮は個人差が大きいため、職場の人に、自分の障害についてきちんと説明できるように準備しておくのがポイントです。してもらえると助かるサポートがある場合は、自己紹介の際などに伝えることをおすすめします。

コミュニケーション手段を臨機応変に使い分ける

誰かとコミュニケーションを取ろうとすると、普段使っているコミュニケーション手段に頼ってしまいがちですが、仕事をスタートすると、いつ、どんな場面に出くわすかわかりません。たとえば、普段は手話で話していても、一般的な会社では手話が理解できない人が大半です。暗がりでは手話よりも、スマホやタブレットでの筆談のほうがスムーズに情報が伝わるかもしれません。

日ごろから複数のコミュニケーション手段を使えるようにし、その場の状況に応じて、臨機応変に対応できるように心がけましょう。

コミュニケーション手段の種類

聴覚障害者の方のコミュニケーション手段は主に、口話・手話・筆談・空書の4種類があります。

  • 口話:相手の話す口の動きを読み取り、自分も音声言語で返事をします。読み取るのには集中力が必要で、口話は疲れるという方が少なくありません。
  • 手話:聴覚障害者の方にとっての「見る言葉」です。手や指の動き、口の動きや表情などと連動しながら物事を伝えます。
  • 筆談:音声を文字に起こして会話をします。すべてを書き写す必要はなく、口の動きや音声、手話などと一緒に用いることもあります。最近では、ペンで字を書くだけでなく、パソコンやスマホ、タブレットのチャットツールも用いられています。
  • 空書:ペンや鉛筆など筆記具を使わずに、指で空中に文字を書いて相手に伝える方法です。指文字であらわせないときなどに使用されることがよくあります。

障害をカバーできる環境づくりをする

円滑に仕事を進めるためには、自分の障害をカバーできるような環境を整えることが大切です。たとえば、来客に気が付きにくいので、来客者に失礼にならないように、入口が見える方向に机を配置してもらう、電話応対を他の人にお願いするなど座席や業務で工夫できると仕事がしやすくなるでしょう。

最近では、スマホと連動した補聴器があり、音量をスマホで操作できます。もし利用する場合は、仕事中に使用することがあることをあらかじめ伝えておきましょう。また、万が一の有事のために、緊急時の対応を決めておくことも必要です。

会社に対しては、できるだけ情報を視覚化してもらったり、仕事について齟齬がないよう、メモを確認してもらったりすることなども依頼できると安心です。

聴覚障害者の方に対する企業の配慮事例

聴覚障害者の方に対する企業の配慮事例

聴覚障害者の方を雇用している企業が行なっている配慮事例を紹介します。取り入れてほしいものがあれば、勤め先に掛け合ってみることをおすすめします。

プログラムの実施やマニュアル作成

聴覚障害者の雇用の定着のため、さまざまな企業が工夫をしています。障害のある社員同士で集まり、キャリア育成を目的としたサミットを実施したり、他の社員とのコミュニケーション強化プログラムを実施したり、障害を持つ社員への理解が深まるように、配属先の社員にマニュアルを作成するなどが行われています。

また、聴覚障害者の方に業務を依頼するときに、メールやチャットツールを使い、文字にすることで齟齬をなくすような工夫をしてくれる企業もあります。

音声認識アプリの導入

多くの人が参加する会議や、話している人が遠くにいて口元が確認できない朝礼などでは、音声認識アプリがあると便利です。音声認識アプリは、機器が音声を認識して即座に文字化してくれるもので、聴覚障害者の方には心強いコミュニケーションツールになります。音声認識アプリはスマホと連動しているものが多いため、いつでもどこでも活用できるのも魅力です。

DIエージェントの完全無料キャリア相談に申し込むボタン

まとめ

まとめ

障害を抱えながら働く上では、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。

「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でも構いませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

▼関連記事
・障害者採用枠で働くことについて、メリット・デメリットを解説しています。これから就職・転職を検討されている方はぜひご一読ください。
障害者採用とは?一般採用との違いやメリット・デメリット、企業選びのポイントをわかりやすく解説!

・「就職・転職活動は検討しているけど、エージェントって何?」という方に向けて、エージェントの特徴や利用方法について解説しています。
障害者枠では転職エージェントを利用すべき?メリット・注意点を含め解説!

・聴覚障害をお持ちの方の転職成功事例をご紹介しています。
年収約200万円アップ!向上心が叶えた夢のような働き方|Tさん (40代女性/聴覚障害)のケース
管理職経験を活かして高年収を狙う!障害者枠の定年後キャリアとは|Kさん (60代男性/聴覚障害)のケース

監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。