生き辛さを感じる大人の「広汎性発達障害」について、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
現在はASD(自閉症スペクトラム)と呼ばれている広汎性発達障害を持つ人は、仕事上のコミュニケーションの難しさや対人関係の摩擦で疲労してしまい、精神的なストレスを抱えてしまうケースが多々あります。
しかし、独特の感性、集中力、記憶力など、広汎性発達障害の特性は、仕事で大きな強みになることも。
この記事では、広汎性発達障害の特性を活かせるおすすめの職種や、理解のある職場環境の見つけ方、就労移行支援やハローワークなど、あなたの転職活動をサポートしてくれるサービスについて解説します。ぜひ参考にしてください。
大人の広汎性発達障害(PDD)とは?
広汎性発達障害(PDD)は、対人関係やコミュニケーションの困難、限定された反復的な行動や強いこだわりを特徴とする発達障害の総称で、現在は自閉スペクトラム症(ASD)に統合されています。
PDDとASDが統合された経緯やPDDの特性、大人になってからPDD(ASD)と診断される人が増えている理由について、詳しく見ていきましょう。
広汎性発達障害(PDD)と自閉症スペクトラム(ASD)の特徴
広汎性発達障害(PDD)は、自閉症、アスペルガー症候群などを含む発達障害の総称でしたが、2013年以降、診断基準が変わり、自閉症スペクトラム(ASD)に統合されました。2013年以前にPDDと診断された人の中には、現在もPDDを使用している人がいます。
PDD(ASD)を持つ人たちは、コミュニケーション、対人関係、興味や行動に特有の偏りが見られます。
非言語コミュニケーションが苦手で、空気や雰囲気を読んだ行動ができず、うまく人間関係が構築できなかったり、特定のことに強い関心を持って過剰に集中したり、特定の行動にこだわるなどの特徴があります。
PDDの特性は個人差が大きく、社会に出たときに周囲との摩擦で生き辛さを感じる人が多い一方で、得意な分野を活かせる仕事に就いたり、周囲の理解とサポートを得ることで、充実した社会生活を送ることができます。
なぜ大人になってから広汎性発達障害と診断される人が増えているのか
発達障害に関する情報や理解が広まり、大人になって生きづらさを感じていた人が、自身の特性をPDDと認識するようになったケースが増えて来たことが、大きな理由の一つとして挙げられます。
また、広汎性発達障害の特性は個人差が大きいため、幼少期には目立たなかった特性が、複雑な人間関係や社会のルールの中で顕在化し、大人になってから診断に至る場合もあります。
そもそも発達障害の認知が広まったのが近年であるため、40~50代以降の人の場合、「変わり者」や「偏屈」、「こだわりが強い職人気質」のような表現で、障害というより性格として片付けられてしまうことも少なくありませんでした。
成長による変化や、社会での認知の広まりが、結果として診断される人の数を増やしているといえるでしょう。
広汎性発達障害(PDD)の人が自分らしく働くために知っておきたい特性
広汎性発達障害の人は、就労において以下に挙げた3つの特徴があります。仕事や職場を選ぶときに意識することで、自分らしく働ける場所を見付けやすくなります。
特定の分野への強い興味や集中力:
広汎性発達障害の人は、特定の分野に強い関心を持って掘り下げ、関心のある内容に対して膨大な情報を記憶しておくことができます。この特性を活かせる仕事を選ぶことで、高いパフォーマンスを発揮できる可能性があります。
コミュニケーションや対人関係の苦手意識:
ジェスチャーや表情、声のトーンなどの非言語コミュニケーションから相手の意図を汲み取ることが苦手で、人間関係を構築するのが得意ではありません。
円滑な関係を築くには、その点を意識して周囲とのコミュニケーション方法を工夫したり、テキストチャットなどでコミュニケーションを取れる環境を選ぶことが大切です。
変化への対応や臨機応変な行動の難しさ:
大きな変化や臨機応変な判断を求められることが苦手ですが、一方で決められた手順を繰り返すことは得意です。ルーティンワークや、変化が少ない仕事を選ぶことで、安定したパフォーマンスを発揮できます。
広汎性発達障害の人が仕事で活かせる特性
広汎性発達障害の人の特性は、ポジティブに活用することで仕事に活かして強みを発揮できます。
集中力と記憶力:
特定の分野への強い興味と集中力を活かし、専門知識やスキル、資格などを習得することで、より専門性が高い仕事で活躍できます。
正確性と几帳面さ:
細部へのこだわりや正確性を活かし、ミスの少ない正確な作業が求められる仕事で力を発揮できます。プログラミングや設計のほか、調剤、経理、さらに工業製品の精密加工など、幅広い分野で活かせる特性です。
論理的思考力とパターン認識能力:
論理的な思考とパターン認識を活かすことで、システム開発やデータ分析などの仕事で活躍できます。
広汎性発達障害の人が仕事上、注意するべきポイント
広汎性発達障害の人は、人とのコミュニケーションや感覚過敏などで仕事上に問題を抱えやすい傾向があります。以下の3つのポイントに注意し、工夫しましょう。
コミュニケーションの工夫:
相手の表情や言葉の意図を理解しにくい場合は、具体的に質問したり、確認したりしましょう。自分の考えや気持ちを伝える際は、誤解を防ぐために、箇条書きなどを使って簡潔で明確な言葉を選ぶのが適切です。
感覚過敏への対処:
音や光、においなどに敏感な場合は、事前に職場環境を確認し、必要に応じてイヤーマフやサングラスなどの対策を検討しましょう。
変化への柔軟な対応:
予定の変更や新しいタスクに戸惑いやすい場合は、事前にスケジュールを確認し、起こり得る変更を想定して、頭の中でシミュレーションしながら心の準備をしておきましょう。また、休憩時間を活用してリフレッシュするのもおすすめです。
広汎性発達障害の人に適した職種や職場の特徴とは?
広汎性発達障害の人に適した職種や職場は、大きく分けて以下の3つの特徴を持っています。
明確な指示と予測可能な環境:
仕事内容や手順が明確に定義されており、ルーティンワークが多い職場は、変化への対応が苦手な広汎性発達障害の人にとって働きやすい環境といえます。
得意分野を活かせる仕事:
コンピューター操作やデータ分析など、特定の分野に強い興味を持っている場合は、それを活かせる専門性が高い職種、業種や、スキルを高く評価してくれる職場が適しています。
理解のある職場環境:
発達障害への理解があり、個人の特性に合わせた配慮やサポートを提供してくれる職場は、安定したパフォーマンスを発揮して働けます。同僚とのコミュニケーションが円滑に進むよう、定期的な面談や相談ができるか、確認しておくのがおすすめです。
広汎性発達障害の人に適した職種
広汎性発達障害の人には以下のような職種が適しており、実際に活躍する人が多くいます。
ITエンジニア:
プログラミングやシステム開発など、論理的思考力や集中力を活かせます。また、コミュニケーションよりも技術力が重視されるため、対人関係のストレスが少ない場合が多いのも特徴です。
研究職:
特定の分野への深い知識や興味関心を活かし、研究に没頭することができ、自分のペースで仕事を進められます。実際に世界的な発見をした研究者の中には、広汎性発達障害を持っていた人も少なくありません。
事務職:
データ入力や書類整理など、決められた手順に沿って正確に作業を進めることで、効率的に業務が進められます。
クリエイティブ職:
デザイナー、イラストレーター、ライターなど、自分の世界観や感性を表現できる。個人の能力が評価されるため、やりがいを感じやすいでしょう。ただし、納期やクライアントとのコミュニケーションなど、対策が必要な場面もあるので注意が必要です。
広汎性発達障害の人が転職をするときに利用できるサービス
広汎性発達障害の人が転職を考えた場合、以下の3つのサービスのいずれか、もしくは複数を利用することで、自分らしい働き方ができる仕事を見付けやすくなります。
障害者専門の転職エージェント:
発達障害の特性を理解したキャリアコンサルタントが、求人紹介から面接対策、職場定着までをサポートしてくれます。
就労移行支援事業所:
就労に必要なスキルを習得するための訓練や学習プログラムがあり、さらに職場体験の機会を提供してくれます。また、就職後の職場定着までサポートしてくれます。
ハローワーク:
障害者向けの求人を紹介してくれるだけでなく、職業相談や職業準備支援セミナーなども利用できます。障害者トライアル雇用制度を利用して、実際に働いてみることも可能です。
障害者専門の転職エージェントを利用する
発達障害の特性を理解したキャリアコンサルタントが、本人の強み・弱みを踏まえた求人紹介や面接対策をサポートしてくれるため、ミスマッチを減らし、安心して転職活動を進められます。
一般には公開されていない求人案件も多く、障害者雇用に積極的な企業の求人を紹介してもらえる可能性があるのも、転職エージェントを利用するメリットといえるでしょう。
就職後も定期的な面談や相談に対応してくれ、場合によっては会社との交渉もできるので、職場での悩みや不安を解消し、長く働き続けられるようサポートを受けられるのも魅力です。
発達障害の特性への理解度やサポート体制はエージェントによって異なるため、実績や評判を参考にして、自分に合ったエージェントを選ぶことが大切です。
就労移行支援事業所を利用する
ビジネスマナーやコミュニケーションスキルなど、働く上で必要な知識やスキルを習得できるプログラムが充実しています。
自分の適性や課題を把握し、自分に合った仕事を見つけやすくなるので、就労後のミスマッチによる早期離職の可能性を抑えられるメリットがあります。
仕事に就いてからも定期的な面談や相談に応じてくれるため、職場での悩みや不安を解消し、安心して働き続けられます。
就労移行支援の利用期間は原則2年間と定められているため、目標を明確にし、計画的に利用することが大切です。
ハローワークを利用する
公共職業安定所であるため、民間企業だけでなく、公的機関の求人も含め、幅広い求人情報が得やすいのが特徴です。
障害者専門の窓口があり、障害特性に理解のある職員が相談に乗ってくれるほか、障害者雇用に関する制度や支援策についての情報も得やすいので、利用できる制度がわからないケースでは強い味方といえるでしょう。
職業相談、職業紹介、職業訓練など、就職に必要な様々なサービスが無料で利用できます。気になる求人があったら、障害者トライアル雇用制度を利用して、お試しができるのもハローワークのメリットです。
担当者によって知識や経験、対応が異なるため、相性が合わないと感じた場合は、我慢せずに担当者の変更を申し出るのが大切です。
広汎性発達障害の特性を活かし、苦手に配慮してもらうことで、自分らしい働き方を
広汎性発達障害の特性を活かし、自分らしく働くためには、自分の強みを理解し、それを活かせる職場を見つけることが大切です。
しかし、一人で転職活動をするのは、情報収集や企業とのやり取りなど、負担が大きいのも事実です。そんな時こそ、障害者専門の転職エージェントの利用がおすすめです。
DIエージェントは障害者の転職に多数の実績があり、非公開の求人案件も多数揃えているので、一人ひとりの特性を理解し、強みを活かせる求人の紹介が可能です。また、面接対策や条件交渉など、様々なサポートを提供しています。
「自分一人で頑張らなくてもいいんだ」と思えるだけで、心強いのではないでしょうか?
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社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。