失語症とは、話す・聞くなどの言語に関する障害です。病気や怪我などが原因で発症し、障害の度合いによっては、日常生活に限らず仕事においても困難が生じる場合があります。
そこで今回は、失語症の方におすすめの職種や仕事の選び方、実際に就職・転職活動を進める方法について解説します。
障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別の病気を発症してしまったりする例も少なくありません。
そうならないように、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。
失語症とは
「失語症」は言語障害のひとつで、「話す」「聞く」「書く」「読む」という能力に支障が生じた状態です。脳梗塞・脳出血・脳腫瘍・アルツハイマー・頭部への外傷など、病気や怪我によって、言語を司る部分に損傷が起きることが原因とされています。
失語症の症状
「失語症」と一言でいっても、前述したように「話す」「聞く」「書く」「読む」と幅広い場面で症状が現れる障害です。そこで、失語症では具体的にどんな症状が出るのかを解説します。
喚語(かんご)困難
喚語困難とは、伝えたい言葉がうまく出てこないこと。失語症にも種類がありますが、どの種類でも現れやすい症状です。
新造語(しんぞうご)
新造語とは、言おうとしている言葉が想像できないほどかけ離れた言葉を発することです。
錯語(さくご)
錯語とは、自分が言いたいと思っているのとは異なる言葉が出てくる症状です。完全に言い間違える「語性錯語」や、部分的に間違う「音韻性錯語」などがあります。
ジャーゴン(ジャルゴン)
ジャーゴンとは、流暢に話しているのに、聞き手には理解できないような言葉であること。新造語や錯語が多いため、何を話したいのかが相手に全然伝わりません。
復唱障害
復唱障害とは、相手が言ったことを復唱するのが難しい状態です。
その他の症状
失語症では、上記で見てきた症状のほか、「聞く」「読む」「書く」ことに支障が出るケースもあります。具体的には下記のような状況です。
- 「聞く」ことへの障害:相手の声は耳に入っていても内容を理解ができない
- 「読む」ことへの障害:文字は見えていても正しく読めない・解釈できない
- 「書く」ことへの障害:文字を書き誤る・正しい字を思い出せない など
失語症の種類
失語症には種類があり、経過とともに種類が変化することもあります。各種類の特徴を見ていきましょう。
失名詞失語(健忘失語)
失名詞失語(健忘失語)とは、スムーズに会話はできますが、人の名前や物の名称といった名詞が出てきづらい(喚語困難)状態です。名詞が浮かばず特徴を挙げて伝えようとするため、回りくどい話し方になってしまいがちな傾向があります。
ウェルニッケ失語(感覚性失語)
ウェルニッケ失語(感覚性失語)とは、脳の「ウェルニッケ野(や)」という部位の損傷により、「聞く」能力が低下した状態のこと。
相手の言葉の意味がよく理解できていないため、すらすらと話せるのに支離滅裂だったりつじつまが合わなかったりして、会話が成立しづらいことが特徴です。認知症や精神障害と誤解されることもあります。
ブローカ失語(運動性失語)
ブローカ失語(運動性失語)とは、脳の「ブローカ野(や)」という部位の損傷により、「話す」能力が低下している状態。単語や短文での会話になりがちだったり、言い間違いが多かったりと、話すために文章を組み立てるのが困難な状態です。
ブローカ野は手足を動かす運動野に近いため、ほとんどのケースで右半身まひを伴っているという特徴があります。
全失語
全失語とは、言語中枢が広範囲にわたって損傷を受け、「話す」「聞く」「書く」「読む」全般に障害がある状態です。全く話せない・「あー」「うー」など意味をなさない発声のみができる・限られた言葉(残語)だけ話せるといった症状が多いです。
失語症の方が仕事をするには
つづいては、社会人になってから失語症を発症した方が仕事をする場合、どんな方法があるのか、また、どんな環境が必要なのかについて解説します。
職場とよく相談して復職する
状況や職場によっては、失語症の状態が落ち着くまで休職し、回復したのちに復帰することも可能です。仕事をしている方が失語症を発症した際は、まずは上司などによく相談してみましょう。
合理的配慮を求める
失語症の方は、一般の方と同様の働き方をする・失語症になる前と全く同じパフォーマンスを発揮することが難しい可能性が高いです。そこで、仕事をする上で困難が生じたときに周りから適切なサポートを受けられるように、配慮してもらいましょう。
文字でコミュニケーションを取れるようにしてもらう・会話などを文字化してくれるツールやアプリを使う・図や写真など視覚的な情報を活用するなど、場面に応じた対応が必要です。
別の企業に転職する
失語症になり、どうしても元の職場に戻るのが難しい場合は、別の仕事を探すことも検討しましょう。障害に対する理解や配慮がある・これまでの経験を生かせるなどの点を確認しながら探すことが大切です。
失語症の方が転職するには?仕事の探し方
失語症をお持ちの方が転職する場合、仕事を探すのに活用できるサービスがあるので、下記で詳しくご紹介します。
ハローワーク
ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。
ハローワークには専門援助部門が設けられており、専門的な知識を有する職員・相談員が障害をお持ちの方の就職活動を支援しています。就業に関する相談や面接への同行など、障害のある方でも安心して利用できるようなサポート体制を整えていることが特徴です。
引用元
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス
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地域障害者職業センター
地域障害者職業センターとは、障害をお持ちの方に対し、就職に向けた専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」が運営しており、都道府県ごとに最低1カ所以上設置することが義務付けられています。
センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。
ジョブコーチや職業カウンセラーなど、障害者の就労について詳しい専門家に支援してもらえる点がメリットです。
引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構
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就労移行支援事業所
就労移行支援事業所とは、障害がある方の一般企業への就職を支援してくれる福祉サービスです。日々の通所を通じてスキルアップができ、就労支援員や職業支援員など、相談しやすいプロのサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。
全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。自分に合ったスキルを身につけてから仕事を探すことができ、就職後も定着のためのサポートをしてもらえるため、長く働ける職場に出会いやすいでしょう。
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障害者雇用に特化した転職エージェント
障害者雇用を行う企業の求人案件を専門に取り扱っている、転職エージェントを利用する方法もよいでしょう。障害をお持ちの方の採用を前向きに行う企業の情報を多く持っており、そのエージェントしか扱っていないような非公開の求人情報を得られる場合もあります。
高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。就職前の準備から就職後の支援までしっかりアシストしてくれるため、二人三脚で自分にぴったりの仕事探しができるでしょう。
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やりがいを得られる仕事に就こう
失語症だからとネガティブにならなくても、自分の特性を持ったまま第一線で輝けるような仕事に出会えるのが理想です。障害の症状・種類・程度などについて自己理解を深めながら、さまざまなサポートを利用してみましょう。
障害を抱えながら働く上では、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。
今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。
DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。
専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。
「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でもかまいませんので、ぜひお気軽にご相談ください。
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社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。