吃音とは?症状や原因、大人が悩む働く上での工夫やサポートも解説

この記事では吃音(きつおん)についてご紹介します。特に大人になって就職・転職活動やビジネスの場で、吃音のために話すことに苦手意識を持たれている方も多いのではないでしょうか。

吃音の症状・特徴や、吃音の分類・原因、吃音症の方が働く上で工夫できる4つのポイント等も解説していきますので、働き始める~働く上でのお悩み解消のヒントをぜひ見つけてください。

吃音とは

吃音とは話し言葉が滑らかに出ない状態で、本人の意志とは反して、言葉のくり返しや、言葉の伸び、最初の言葉が出てくるのに詰まるといったことが起こります。

吃音(きつおん、どもり)は、話し言葉が滑らかに出ない発話障害のひとつです。

引用:国立障害者リハビリテーションセンター「吃音」

幼児期に発症することが多く大人になるにつれ改善していく傾向にありますが、大人になって話す場面が増え「吃音」に改めて悩む方もいらっしゃいます。

 
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からかい、過度な注目や無理解ために、ストレスを強く受けてうつや社交不安障害などの二次障害も引き起こしかねません。
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名称や診断名はさまざま

吃音の名称や診断名は様々で、世界保健機関 (WHO)の診断基準である『ICD-11』では「発達性発話流暢症」、米国精神医学会の『DSM-5』では「小児期発症流暢症(吃音)」と記されています。

参考:公益社団法人日本精神神経学会「ICD-11 新病名案」

発達障害の一つにも含まれる

吃音はトゥレット症候群などと共に「発達障害者支援法」の対象とされています。これにより、様々な福祉サービスを利用できる可能性もあるのです。詳しくは記事後半で解説していきます。

 
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発達障害の特性の表れ方はグラデーションで人それぞれです。
ADHD(注意欠陥)のような特性はなく、吃音のみが起こるという方もいらっしゃいます。

参考:国立障害者リハビリテーションセンター「各障害の定義」
厚生労働省・障害者部会資料「発達障害者支援法の改正について」 NPO 法人全国言友会連絡協議会・日詰正文「吃音と発達障害者支援法」

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吃音の症状と特徴

吃音はどのように表れるでしょうか? 症状と特徴についても簡単に説明します。
吃音の代表的な症状は「連発」「伸発」「難発」が挙げられます。

吃音の種類「連発」「難発」「伸発」

 
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自分が周りの人に理解を得て、安心して過ごせるために伝え方も考えてみましょう。

連発(音のくり返し)

吃音における「連発」とは音をくり返して発することです。

普通の人でも緊張すると「こ、こ、こんにちは」のようにくり返すことはありますが、過度に言葉に詰まり、それが比較的様々な場面で現れると吃音だと考えられます。

伸発(音の引き延ばし)

「伸発」とは特に発語の最初の音が引き延ばされる話し方です。

難発(言葉につまる)

言葉が出てくるまでに時間を要する、いわゆる言葉に詰まってしまうことを「難発」または「ブロック」とも言われています。

 
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また「か行」が言いにくい、「自分の名前」だけが言いづらいなど人によって様々です。

吃音の分類・原因

吃音には「発達性吃音」と「獲得性吃音」の二種類があります。

発達性吃音

吃音の9割は「発達性吃音」で、幼児が複雑な会話をし始める時期に発症しやすいといわれています。

しかし、その原因は明らかになっておらず、「体質(遺伝含む)」「発達」「環境」が関係するのではないかと言われています。

 
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体質的要因が8割程度にのぼるとの見方もあります。

獲得性吃音

「獲得性吃音」はさらに「獲得性神経原性吃音」と「獲得性心因性吃音」の2つに分類され、主に後天的な原因によるものもあります。

獲得性神経原性吃音

「獲得性神経原性吃音」は頭部のケガや脳・神経の病気、薬物の使用で発症します。

獲得性心因性吃音

「獲得性心因性吃音」はトラウマやストレスによって発症します。
吃音の多くは幼児期(2~5歳)に発症しますが、「獲得性吃音」の場合は、10代後半の青年期以降に現れることが多いとされています。

 
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ここからは主に発達性吃音について説明していきます。

年齢ごとに変化する吃音の特徴

吃音は年齢ごとに変化する傾向があります。年齢別の特徴をみていきましょう。

時期

特徴

幼児期(2歳〜4歳頃)

言葉が出始める時期で、音のくり返し(連発)や引き伸ばし(伸発)の発症が多い

主にこの頃に発症することが多い

学童期(6歳〜12歳頃)

言葉につまる(難発)の症状が多い

人前での発表、友達からのからかいなど学校生活で困ることも

思春期(12歳〜18歳頃)

心の発達も伴い、話すことを避ける「回避行動」が見られることが多い

成人期(18歳~)

継続して「回避行動」をとる方もいる

70~80%が特別な治療をせずとも自然に治りますが、18歳以上では全体の1%に吃音が残ると見られています。

 
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あくまで目安であり、人によって症状や困りごとは異なります。周りの理解度や環境に左右されることもありますね。

大人の吃音

ご紹介した通り、発達性の吃音だけでも成人の100人に1人に吃音の症状があります。
特に成人の「吃音」で困るのは仕事の場面ではないでしょうか?
就職の面接の場面で言葉に詰まってしまい思うように喋れなかったり、話すことがメインとなる仕事を選べず仕事の幅が限られてしまったりといった困りごとが考えられます。

 
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「吃音」を知らない社会人も多く、相手に驚かれたり何か言われたりすることが気になる方もいるのではないでしょうか。

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吃音症の方が働く上で工夫できる4つのポイント

そこで「大人の吃音」に悩む方へ、働く上での工夫を4つお伝えします。

  1. 自分を理解する
  2. 環境調整(周りへ働きかける)
  3. 吃音の改善トレーニング
  4. 吃音の支援を活用する

自分を理解する

まずは「どんな時に吃音の症状が表れるのか?」を自分で把握しておくことが大切です。
他の人の体験談・対処法を自分なりに調べてみましょう。セルフヘルプグループやピアサポートに参加して悩みを分かち合うこともおすすめです。

【吃音のセルフヘルプグループ】

参考:吃音ポータルサイト「吃音改善の取り組み」

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環境調整

環境調整とは周囲の対応を変えることで話しやすくなるようにする・働きかけることです。

たとえば……

  • 吃音のパンフレットや、吃音を扱った映画やドラマ、マンガなどを紹介して知ってもらう
  • 周囲に吃音を開示して「このような時に言葉が出づらくなりますが、最後まで話を聞いていただけると助かります」と伝える
  • チャットで仕事のやり取りができるようにお願いする
  • 他のタスクを多く任せていただくかわりに「電話対応」を免除してもらう

 

周囲の働きかけとは別に、喋る場面がなるべく発生しないような職場を選ぶことも良い選択ですね。

 
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障害者雇用枠においてはよくおこなわれる”「合理的配慮」を求める”ということですね。障害者雇用枠で入社していなくても合理的配慮を求めることは可能です!

\伝え方のヒントはこちらをご参考に/

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吃音を知ってもらうツール(サイト・パンフレット・作品)

吃音を自分で理解するためにも、周りに知ってもらうためにも、サイトやパンフレット、映画やマンガなどの作品を使うことは有効です。ここではその一部を紹介します。

 
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動画だとどのような発語になるのかを知ってもらえるので伝わりやすいですね!テレビ番組で取り上げられることも多くなってきました。

吃音の改善トレーニング

自分でもできる吃音改善のトレーニング法はあります。

  • 腹式呼吸(リラックスの練習)
  • 考えをノートやスマートフォンなどに書き出して整理する
  • メトロノームや一定の音・リズムに合わせて話してみる
  • スムーズに話せる場面から話す練習を重ねる

自分に合った方法を探してみてください。

吃音の支援を活用する

吃音でお困りであれば医療や福祉の支援を活用することもできます。
ここでは様々な割引や助成が受けられる可能性もある「障害者手帳」制度と、安心して働くための「障害者雇用枠」についてお伝えします。

また相談先としては、「発達障害支援センター」にも相談ができます。

【全国の発達障害支援センター一覧】
http://www.rehab.go.jp/application/files/9316/5526/2978/61fbe42d340068b9931a050cccf1819e.pdf
(「吃音」の相談をメインにしたい旨を伝えるとスムーズでしょう)

「治したい」「スムーズに話せるようになりたい」と考えているのであれば言語聴覚士へ。言語聴覚士が勤める病院・機関へ相談できないか問い合わせてみましょう。

【一般社団法人 日本言語聴覚士協会】
都道府県士会一覧
 
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民間の高額サービスを検討する前に使える制度がないかチェックしてみましょう!

障害者手帳

既にお伝えした通り、発達障害の一種とみなされているので、生活や働く上で大きな困難がある場合「精神障害者保健福祉手帳」が取得できる可能性が高いです。
また脳の外傷などの後遺症による発語の困難であれば「身体障害者手帳」が交付されることもあります。

 
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うつや不安障害などの二次障害で「精神障害者保健福祉手帳」を取得される方もいるでしょう。

\障害者手帳取得のメリットはこちら/

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障害者雇用で吃音をオープンにして働く

障害者手帳が取得できていれば、障害者雇用枠で働くことが可能です。

  • 面接官も応募者が吃音だとわかっているので、面接に安心して臨める
  • 「電話応対免除」や「電話応対、社外の人と話す仕事のない業務への配属」などの合理的配慮
  • 一緒に働く人たちに開示の範囲を相談できる
 
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在宅ワークはチャットでのやりとりが中心になるので、在宅ワークを目指されるのも良いですね。

障害者雇用枠で働いてみたいと思ったら、障害者枠専門のエージェントへの相談がオススメです。DIエージェントでは吃音の症状や配慮の伝え方、一般枠との併用の道も一緒になって考えます。


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吃音の治療方法

本格的に吃音を治療したいと考えたら。医療機関・訓練期間などへ行くのが良いでしょう。

 
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北里大学病院では「吃音外来」という専門の部門もありますね。

吃音の治療法・訓練法に関しては決まった方法があるわけではなく一人ひとりの症状に応じて、「流暢性形成法」「吃音変容法」「認知行動療法」などのリハビリテーションを受けます。
たとえば「人前で話すのが恥ずかしくて言葉が出てこない」という場合は、心理カウンセリングや認知行動療法が受けられます。

参考:国立障害者リハビリテーションセンター「〔トピックス〕青年期吃音に対する認知行動療法を用いた最新治療-グループ介入研究のご紹介-」
発達性吃音(どもり)の研究プロジェクト「大人の障害の申請について」

吃音とうまく付き合って、自分らしい毎日を!

吃音それ自体が健康に被害を及ぼすことはありません。しかし周囲の理解が得られなかったり過去の思い出にトラウマがあったりするようであれば、話すことがストレス・不安にもなってしまうでしょう。
吃音の理解が広がり、吃音が気にされない・温かく迎えられるような社会になることが理想ですね。
もし「環境を変えたい」と考えていたら、ぜひDIエージェントにもご相談ください。環境を変える一歩のサポートができましたら幸いです。

監修:安部 桐子
産業カウンセラー。EAP事業の立ち上げ経験を活かし、(株)D&Iに入社後には定着支援サービス「ワクサポ」と在宅型就労支援「エンカクトレーナー」を開始。現在は300名以上の障害者の定着化・戦力化に向けたサービスの統括をおこなう。