【社労士監修】障害者の方の2つの収入源を解説|障害年金と障害者雇用について

障害があると「生活費はどうしたらいいのか」「就職・転職した際の年収はどのくらいなのか」と不安に感じる方も少なくないでしょう。

障害をお持ちの方の収入源には主に「障害年金」と「働いて得られる給与」の2つがあります。障害年金は国民年金や厚生年金に加入し、受給要件を満たした人がもらえる年金です。また、就労する場合には企業での一般雇用と障害者雇用があり、それぞれで特徴が異なります。

この記事では、障害年金の概要と障害者雇用について詳しく解説しています。障害をお持ちの方の収入が気になる人は、ぜひ参考にしてください。この記事はYORISOU社会保険労務士法人監修のもと作成をしております。

障害者の方の主な収入源は2つ

障害者の方の主な収入源は2つ

障害者の方の主な収入源にはどのようなものがあるのでしょうか。主に「障害年金」と「働いて得られる給与」の2つがあります。障害年金とは、病気やけがによって日常生活や仕事などが制限されるようになった方を対象とした国の年金制度です。
また働き方としては、障害の有無に関わらず同じ条件で働く方法(一般雇用)と障害者手帳を取得した上で、障害を開示して配慮を得やすい環境で働く方法(障害者雇用)があります。次の項目でそれぞれ解説します。

引用元
NPO法人障害年金支援ネットワーク|【わかりやすく解説】障害年金とは

DIエージェントの完全無料キャリア相談に申し込むボタン

障害年金について

障害年金には2つの種類があり「障害基礎年金」と「障害厚生年金」に分かれています。

障害基礎年金とは、国民年金加入者が受給対象となる年金のことです。一方、障害厚生年金は、初診日において厚生年金に加入している人のうち、厚生年金保険法で定められた障害等級1~3級にあたる方が受給対象の年金です。

それぞれの取得条件と年金額は下表のとおりです。

名称 要件 年金額※2023(令和5)年4月分から

障害基礎年金

  1. 障害の原因となった病気やけがの初診日が以下いずれかに該当すること

    ・国民年金加入期間

    ・20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間

  2. 障害の状態が、障害認定日(障害認定日以後に20歳になったときはその日)に、障害等級表に定める1級または2級に該当していること
  3. 初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること

1級

・67歳以下の方:993,750円 + 子の加算額

・68歳以上の方:990,750円 + 子の加算額


2級

・67歳以下の方:795,000円 + 子の加算額

・68歳以上の方:792,600円 + 子の加算額


子の加算額

・2人まで:1人につき28,700円

・3人目以降:1人につき76,200円

障害厚生年金

  1. 厚生年金保険の被保険者である間に、障害の原因となった病気やけがの初診日があること
  2. 障害の状態が、障害認定日に、障害等級表に定める1級から3級のいずれかに該当していること
  3. 初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること

1級(2023(令和5)年4月分から)

報酬比例の年金額×1.25%+(配偶者の加給年金額228,700円)


2級

報酬比例の年金額+(配偶者の加給年金額228,700円)


3級

報酬比例の年金額

※3級の最低保証額は下記のとおり

・67歳以下の方:596,300円

・68歳以上の方:594,500円

引用元
日本年金機構|障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
日本年金機構|障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額

障害基礎年金および障害厚生年金の年金額の求め方は2023(令和5)年4月より変更されているので注意しましょう。詳細は日本年金機構のWebサイトをご確認ください。

日本年金機構|障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
日本年金機構|障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額

受給の対象となる障害や病気

障害基礎年金および障害厚生年金の受給対象となる障害・病気は下表のとおりです。

外部障害

眼、聴覚、肢体(手足など)、嚥下そしゃくの障害など

精神障害

統合失調症、うつ病、双極性障害、認知障害、てんかん、知的障害、発達障害など

内部障害

呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、がんなど

難病

パーキンソン病、シェーグレン症候群、クローン病、筋ジストロフィーなど

その他

線維筋痛症、慢性疲労症候群、化学物質過敏症、脳脊髄液減少症など

次に、受給対象となる主な病気やケガの「障害状況(例として眼の障害、聴覚の障害)」をまとめました。

【眼の障害】

1級

両眼の視力がそれぞれ0.03以下のもの

2級

両眼の視力がそれぞれ0.07以下のもの

【聴覚の障害】

1級

両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの

2級

両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの

ほかにも、鼻腔機能の障害、平衡機能の障害、上肢・下肢の障害等にも基準が定められています。詳細は日本年金機構公式ページをご確認ください。

日本年金機構|国民年金・厚生年金保険 障害認定基準

なお、障害の程度を数値で表すことが難しい精神障害・発達障害、がん・内科系疾患といった内部障害をお持ちの方は、認定審査の際に「就労にどの程度の制限があるのか」がわかるものを提出する必要があります。

例えば、業務内容や普段受けているサポートのほか、「就労継続支援事業所で勤務している」「短時間勤務である」などを明記するのが望ましいです。

 
キャリアアドバイザー
自分の言葉だけでは不安がある方は、ご家族から普段の様子を知っている方に書類を記入してもらったり、配慮していることをヒアリングし、メモしたものを提出したりするのがおすすめです!

引用元
日本年金機構|国民年金・厚生年金保険 障害認定基準

障害年金をもらうための注意点

障害年金の受給にあたっては「初診日」の特定が重要です。初診日が不明確であったり把握が困難だったりする場合、受給できない可能性があります。受給にあたってはあらかじめ下表に目を通し、それぞれを確認しておきましょう。

初診日の特定

  • 初診日に国民年金または厚生年金に加入していたかどうか」が重要

  • 初診日が分からない場合には申請が難しくなるが、初診日が一定期間の範囲内にあることを特定できれば障害年金を受給できるケースもあるので申請前は確認するのが望ましい

年金の加入・納付

  • 年金に加入していても長期間にわたって保険料を納付していないなどの場合、障害年金の受給対象とはらない

  • 保険料納付要件の条件は以下2点

    1. 初診日の月の前々月までの年金加入期間2/3以上において保険料を納付している

    2. 初診日に65歳未満であること

    3. 初診日の月の前々月までの1年間に保険料未納がない

障害の状態

  • 障害認定日は初診日から1年6ヶ月が経過した日(または症状が固定した日)のこと

  • 障害認定日に、障害等級1級または2級(障害厚生年金の場合は1級から3級)の障害状態である場合に障害年金受給の対象

3級の人が受給できる障害厚生年金の金額

障害等級3級の人は障害基礎年金の受給対象外のため、障害厚生年金のみ受給対象となります。3級は最低保証額が設定されており、最低でも594,500円が支給されます。

1級・2級とは異なり、配偶者の加給年金額は加算されないので注意しましょう。
なお、障害厚生年金の年金額は、2023(令和5)年4月より変更されています。詳細を知りたい方は、日本年金機構のWebサイトをご確認ください。

日本年金機構|障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額

障害者の方の平均年収は?

厚生労働省の「平成30年度障害者雇用実態調査結果」のデータを見ると、障害を持つ方の平均給与や雇用形態、労働時間などがわかります。

別記事(※1)では、身体障害者・知的障害者・精神障害者それぞれの平均年収や高年収を稼ぐコツを解説しています。詳しく知りたい方はご一読ください。

引用元
厚生労働省|平成 30 年度障害者雇用実態調査結果

障害者雇用の給与が低くなる理由

障害者雇用の給与が低くなる理由は、別記事でも紹介しているように、障害によって雇用形態や労働時間に影響が出てしまうことが考えられます。さらに企業によっては労働条件や業務内容で賃金に変動が起きる場合もあるようです。

しかし、障害者雇用の実態について確認すると、厚生労働省のデータでは民間企業・公的機関・独立行政法人それぞれの雇用障害者数は増加し、2022(令和4)年では過去最高を更新していることが分かります。

 
キャリアアドバイザー
『障害者だから正規雇用されない』のではなく、障害や特性によってフルタイム勤務が困難であることが大きな理由です。
十分な給料を得たいときは、無理のない範囲で労働時間を増やしたり、資格を取得して業務内容の拡充につなげたりするのがオススメです。

引用元
厚生労働省|令和4年 障害者雇用状況の集計結果

障害者の方の働き方

障害者の方の働き方

障害者の方の働き方には、障害がない人と同じように働く「一般雇用」と障害を配慮された環境で働く「障害者雇用」があります。それぞれの特徴は下表のとおりです。

一般雇用での就労

障害者雇用での就労

  • 障害のない人と同様の条件で働くこと

  • 昇進・昇給など待遇面の選択肢が多い

  • 体調の変化によっては、配慮が必要になる懸念がある

  • 障害について開示し、配慮を受けながら働くこと

  • 障害があっても無理なく自分らしく働くことができる

  • 障害の影響により、勤務時間や業務内容が限られる懸念がある

 
キャリアアドバイザー
それぞれ障害の度合いから選ぶことができます。日によって症状に強弱があるなどの懸念があるときは、主治医やご家族と相談しながら、自分らしく働ける方法を選びましょう。

障害者の方の就業を支援する制度

「障害があって一般企業での就労が難しい」「自分に合った仕事を見つけたい」「障害があるので、仕事に復帰するのが不安」と悩んでいませんか?

こちらでは、障害者の方の就業を支援する制度についてご説明します。

就労継続支援

就労継続支援は、「一般企業への就職に不安がある障害者」または「一般企業への就職が困難である障害者」に働く機会を提供することを目的としています。

就労継続支援A型と就労継続支援B型の2種類があり、就労継続支援A型では雇用契約を結び最低賃金以上の給与をもらうことができます。

就労継続支援B型は就労継続支援A型とは異なり、雇用契約を結ぶことなく工賃が支払われます。どちらも利用期間に制限はありません。

就労移行支援

就労移行支援では、65歳未満で、一般企業などに障害者雇用または一般雇用での就職を目指す障害者の方が就職するために必要な知識やスキル(ビジネスマナーやパソコンスキルなど)を学ぶことができます。

また、履歴書などの書類添削、面接対策、適性に合った職場探しなどの就職サポートを受けることができ、利用制限は2年となっています。就労移行支援を受けることができるのは、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害(障害者総合支援法の対象疾病)です。就労継続支援と異なり「働く場所」ではないため賃金は支払われません。

就労定着支援

就労定着支援では、すでに一般就労をしている障害者の方が長く職場に定着して働くことができるように福祉サービスが提供されます。

就労定着支援を受けることができるのは、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、生活介護、自立訓練などを利用して一般就労した人です。

具体的な支援内容には、自己管理サポート、勤務先への訪問、医療機関や支援機関との連携、問題解決のためのアドバイスなどがあります。就労定着支援の利用制限は3年間です。

実際の仕事の探し方

「障害者を持っている場合、どうやって仕事を探したらいいか分からない」と悩んでいる人は多いかもしれません。こちらでは、障害者の方の仕事の探し方をご紹介します。

ハローワーク

ハローワークでは、職業相談、職業紹介、職場適応指導などを受けることができます。障害者専門窓口では、障害の種類や状況に合わせて相談に乗ってもらえます。

また、手話や筆談のできる相談員がいたり、精神障害者の支援に特化した相談員がいたりと、障害をお持ちの方向けの支援が整っています。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターでは、就労に向けた準備支援のサポートや日常生活支援を行っています。

具体的には、職業準備訓練、職場実習あっせん、職場定着支援、企業への面接同行支援、雇用後の職場訪問などがあります。

障害者雇用に特化している就職・転職エージェント

障害をお持ちの方の就労に特化している就職・転職エージェントでは、障害の悩みに精通したアドバイザーが求職者の希望に沿って求人を探してくれます。

履歴書などの書類添削、面接対策、面接日調整、給与交渉など就職・転職活動をしっかりサポートしてくれるので安心です。自分だけでは見つけることができない好条件の求人も紹介してもらえることがあるため、「収入を上げたい」「自分の障害に合った仕事を見つけたい」と考えている人にはぴったりのサービスです。

「初めて転職するので何から始めたらいいか分からない」「書類作成や面接が苦手」という人も就職・転職エージェントの利用がおすすめです。

収入を増やすなら障害者雇用に特化したDIエージェントがおすすめ

収入を増やすなら障害者雇用に特化したDIエージェントがおすすめ

障害をお持ちであっても十分な収入を得たい方は、障害者雇用に特化した転職エージェント「DIエージェント」の利用がオススメです。障害者雇用の求人に特化しているので、企業が求める人物像とマッチしていれば、理想的な収入につながります。

さらに、DIエージェントでは、求職者様の希望や条件を丁寧にヒアリングし、その上で経験や経歴に基づいた新たな可能性のご提案までを行います。登録後は専属カウンセラーが書類作成や面接対策、転職活動全般をサポートするので就労まで安心して取り組めます。

さらにDIエージェントを運営する株式会社D&Iでは、在宅訓練に特化した就労移行支援事業所「ワークイズ」、障害をお持ちの方のテレワーク雇用・定着・戦力化を実現する「エンカク」も運営しているので、スキルアップしながら理想的な働き方を見つけることも可能です。

ワークイズ
エンカク

収入アップを目指すなら「BABナビ」

収入アップを目指すなら「BABナビ」

株式会社D&Iでは、障害者雇用枠用求人サイト「BABナビ」も運営しています。気になる求人があれば、DIエージェントからご紹介できるので、いつでも理想的な就労先を探すことができます。

基本的な操作方法は一般的な求人サイトと同じように、勤務地や職種、希望のキーワードを使って検索・応募が可能です。

さらに、障害者採用にまつわる予備知識や転職活動の準備など、知りたい情報もいつでも閲覧できる特設ページもあるので、スムーズな就職・転職につなげたい方はぜひこの機会にご活用ください。

BABナビ(バブナビ)

DIエージェントの完全無料キャリア相談に申し込むボタン

障害者雇用なら転職エージェント

障害者雇用なら転職エージェント

転職におけるゴールは「採用されること」ではなく「自分らしく働ける環境で長く続けること」だと言えます。その視点で、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。

今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。

「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でも構いませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

▼関連記事
障害者採用枠で働くことについて、メリット・デメリットを解説しています。これから就職・転職を検討されている方はぜひご一読ください。
障害者採用とは?一般採用との違いやメリット・デメリット、企業選びのポイントをわかりやすく解説!

「就職・転職活動は検討しているけど、エージェントって何?」という方に向けて、エージェントの特徴や利用方法について解説しています。
障害者枠では転職エージェントを利用すべき?メリット・注意点を含め解説!

初めて障害者枠で転職を実現した方のインタビューを紹介します。
「今は自分のペースで働けています」初の障害者枠での転職経験談 [転職成功事例 Vol.2]

障害者枠であっても、転職によってキャリアアップを実現する方法はあります。給与もキャリアも諦めたくない方はぜひご一読ください。
障害者枠でハイキャリアを目指す!転職エージェントが教える戦略的キャリアの築き方

監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。