適応障害でも仕事は続けられる!休む場合と辞める場合のメリット・デメリットを解説

適応障害とはストレスが原因で発症する障害です。その度合いによっては、日常生活に限らず、仕事においても障害が理由で困難が生じる場合があります。

そこで、今回は、適応障害の方にオススメの職種・働き方など仕事選びのポイントや、実際に就職・転職活動を進める方法について解説します。

障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別のご病気を発症してしまったりする例も少なくありません。

そうならない様、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。

適応障害とは?仕事は続けられる?

適応障害とは?仕事は続けられる?

適応障害の方でも、就労を続けることは可能です。しかし、適応障害の原因は通常、強いストレスに関連しており、症状や原因、治療状況に応じて、一時的に仕事を休んだり、転職することが必要な場合もあります。

まず、適応障害の症状や原因を理解し、自分の状況を把握することが大切です。思い詰めずに、自身の体調や精神状態をしっかりと観察しましょう。

適応障害の治療は、専門家の指導のもとで行うべきです。治療プランに従い、必要なら休職や転職を検討することで、回復の道が開けるかもしれません。自分の健康を最優先に考え、適切なサポートを受けることが、就労と適応障害の両立を可能にする第一歩です。

引用元
e-ヘルスネット(厚生労働省)|適応障害
労働者健康安全機構|メンタルヘルス 不調をかかえた労働者に対する – 治療と就労の 両立支援マニュアル 治療と就労の 両立支援マニュアル

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適応障害とは?症状や原因を知ろう

適応障害とは?症状や原因を知ろう

適応障害とは、ある特定の状況や出来事が原因で強いストレスを受け、それにより情緒面、体調面、行動面に症状がみられる障害です。この障害は、2018年から2022年の5年間で1.7倍に増加しており、その増加率は驚異的です。

日本の雇用環境の変化などが適応障害の急増に影響しており、これは労働者のメンタルヘルスを守るために非常に重要な課題となっています。

適応障害に苦しむ方にとって、仕事との両立は難しいこともあります。しかし前述の通り、適切なサポートや対策を講じることで、仕事を続けることは可能です。

適応障害の克服には、専門家の指導を受けることが不可欠です。治療プランやカウンセリングを通じて、症状の軽減や管理が行われることは、就労においても支障を最小限にする助けとなります。

また、職場の理解と協力も大切です。雇用者は適応障害を抱える方が健康で生産的な仕事を続けられるよう支援することが求められます。

では、適応障害の症状や原因を具体的に見てみましょう。

引用元
JAST Lab|適応障害の患者動向について
労働者健康安全機構|メンタルヘルス 不調をかかえた労働者に対する – 治療と就労の 両立支援マニュアル 治療と就労の 両立支援マニュアル

適応障害の症状(情緒・体調・行動の変化)

代表的な症状としては、下記の症状が挙げられます。

  • 抑うつ気分
  • 不安
  • 怒り
  • 焦りや緊張
  • 動悸がする
  • 汗をかきやすくなる
  • めまいがする
  • 不眠や食欲不振
  • 涙もろくなる
  • 暴飲暴食
  • 無断欠勤
  • 集中力が保てない
  • 人とけんかや口論になりやすくなる
  • 涙もろくなる

適応障害の原因

仕事や日常生活上の悩みなどによる強いストレスが原因です。
大切な人との死別、職場での人間関係、業務内容の負荷の大きさなど、何が原因となるかは人によって異なります。

ストレスの原因・ストレスの源を「ストレッサー」とも呼びます。
「ストレッサー」から離れると症状は次第に改善することが多く、逆に離れられない場合には症状が慢性化することもあります。

適応障害の治療方法

適応障害と診断された際は、下記のような治療法が考えられます。

個人差がありますので、必ず精神科や心療内科を受診し、自分にあった治療法についてアドバイスをもらうことをおすすめします。

  • 原因となっているストレッサーの除去
    (例)人間関係が悪くなっている相手と距離を置く、仕事量や内容の調整など
  • ストレッサーへの適応力を高める
    (例)認知行動療法、ストレス解消法を見つける 
  • 十分な睡眠と休養
  • 服薬

うつ病との違い

適応障害ではストレッサーから離れると症状が改善することが多くみられますが、うつ病の場合はストレス因から離れても症状が持続することが多いのが最大の違いです。

しかし適応障害と診断されても、5年後には40%以上の人がうつ病などの診断名に変更されているとのデータもあり、適応障害から他の病気に発展する可能性も指摘されています。

適応障害で働き続けるには、まずは休息を取るべき理由

適応障害で働き続けるには、まずは休息を取るべき理由

適応障害は大きなストレスが原因で発症する障害です。そのため、適応障害を抱える方が仕事を続けるためには、まずは休息を取ることが不可欠です。

理由は以下の3つです。

1. ストレスの特定と離れることが必要
適応障害の症状は、特定のストレッサー(ストレスの要因)に起因することが大半です。仕事環境や人間関係、プレッシャーなどが原因となります。まずはこれらのストレッサーを特定して一時的にでも離れることが大切です。

2. 休職して心身を休めることで状況整理ができる
適応障害の症状が現れた場合、一度休職して心身を休めることが重要です。休息を取ることで、冷静に状況を整理し、自分の状態を把握する時間を確保できます。

3. 転職を考える場合でも、休職を挟んでからの方が有利
休職中に自分のキャリアや職業について冷静に考え、適切な方向に進むことができます。落ち着いて行動することで、新たな職場での成功の可能性が高まります。

自分の健康を最優先に考え、必要な休息と治療を受けることが、就労との調和を実現するために不可欠です。とはいえ、経済的な不安や復職した場合の再発リスクなどが気になる方も多いでしょう。

休職によるメリット・デメリットを具体的に見ていきましょう。

休職のメリット①「傷病手当金」で経済的損失を最小限に防げる

労災を除いて休職期間中は賃金が支払われない場合がほとんどですが、健康保険に加入していれば傷病手当金が支給されます。
諸条件はありますが、概ね給料の2/3程度の額が支給されます。

引用元
全国健康保険協会|病気やケガで会社を休んだとき

休職のメリット②気持ち・体調を整えられる

休職期間中は業務が免除されるので仕事から解放されて、気持ちを整理したり体調を整えたりすることに専念できます。

休職のメリット③回復後の選択肢が多い

休職期間内であれば、会社に復職できます。

「せっかく入った会社なので、なるべくなら現職を続けたい」
「転職するにしても、転職先の環境が合うかどうか不安」
「療養と転職活動を両立することが難しそう」

……などの場合、転職に踏み切れないかもしれません。

まずは休職をして体調を回復させてから、復職を検討していきましょう。

【使えるサービス】リワークプログラム

リワークプログラムとは精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリテーションを行う制度です。

休職期間中の方は復職に向けた準備を進められます。場合によっては支援者が就業先の企業と連携し職場の環境改善のための支援まで行ってくれる場合もあります。

リワークプログラムは、医療機関や障害者就業センターなどが実施しており内容がそれぞれ異なります。

復職のデメリットは再発のリスク

休職してから復職を目指すことのデメリットとしては、仮に復職後も職場の環境改善がなされていない場合は症状の再発の可能性があることが挙げられます。

復職を検討する際には、発症の要因となった職場環境が改善されているかどうかをよく確認しましょう。

適応障害で休職したあと、転職を選ぶ場合のメリット・デメリット

適応障害で休職したあと、転職を選ぶ場合のメリット・デメリット

休職から転職を検討する際、慎重な判断が必要です。同じストレッサーに再び直面することで症状が悪化する可能性もあるため、注意深くプランを練ることが大切です。

転職を目指す場合は、精神的な障害を負った方の転職に強い転職エージェントの利用がおすすめです。制度やキャリアプランについての専門知識を持ち、あなたのニーズに合った職場を見つける手助けをしてくれます。

新しい職場で新たなスタートを切ることで、過去のストレスとのつながりを断ち切る機会になるでしょう。

一方で、転職にはリスクも伴います。新しい職場環境に適応する過程もストレスフルな場合があり、悪化する可能性があるためです。

転職を選んだ場合の具体的なメリット・デメリットを見ていきましょう。

転職する場合のメリットは、新しい環境で心機一転取り組める

職場での環境改善が見込めない場合、「以前のように体調を崩してしまったらどうしよう」という不安を抱えながら就業することになります。

転職のメリットは、職場を変えることにより人間関係や業務内容が変わり、より自分にあった働き方ができる可能性があります。

退職のデメリット①経済的な負担

休職から退職して転職を目指す場合、一時的に収入が途絶えてしまいます。

経済的に不安定にならないように、退職時に失業給付金などを受け取る手続きが必要です。給付金や支援を利用する準備をしておきましょう。

・傷病手当金
業務が原因で適応障害を発症し、就労困難になった場合は、支給期間は最長で1年6ヵ月、支給額は1日あたり標準報酬日額の3分の2の支給が受けられます。

復調するまでは傷病手当金で生活するという選択ができます。

・失業保険
適応障害で退職する場合、「体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者」という特定理由離職者の条件に該当します。

7日間の待機のあとすぐに支給が始まるので、無収入の期間が短くなり、精神的なストレスを軽減できます。

退職のデメリット②職務経歴書にブランクが生まれる

次の仕事を決めずに退職することで、職務経歴書に空白の期間が生まれることになります。
一概に、空白期間があることが不利になるとは限りませんが、転職の面接などで「この期間はどう過ごしていたのか」などの質問をされたり、応募企業に健康面を懸念されたりする可能性は否定できません。

適応障害でも適職や求人を探すには?

適応障害でも適職や求人を探すには?

適応障害を持っていても、適職や求人を探すことはできます。適応障害は適切な治療と休息によって回復することもあるので、まずは心を休めながら、ストレスを少なくした状況で仕事を探すのが大切です。

仕事を探さなければと思い詰めると、ストレスが大きくなり、症状がかえって悪化してしまうこともあるためです。

心機一転「職場を変えよう」「異動をお願いしてみよう」と思った際に、どんな環境や仕事内容ならストレスなく働けるでしょうか? その観点で考えてみましょう。

適応障害でも向いている仕事は?いろいろな職種の選択肢

  • 適応障害はストレスが原因
  • 自分のストレス源と向き合って条件を絞り込むことが大切

向いていない仕事は?求人探しのポイントはココ!

前述のとおり、人によってストレスに感じることは異なるので、一概に向いていない仕事を挙げるのは難しいです。しかし、ストレス源となりうるポイントを元に職場・求人探しはできますね。

  • 業務量が常に多い
  • 自分で仕事をコントロールしづらい
    (お客さんに合わせる場面が多いなど…)
  • 職場が遠く、通勤時間が長い

万が一、体調を崩した際に柔軟な対応があるか(フレックス勤務や休暇の取りやすさ)も確認しておきたいポイントです。

引用元
J-STAGE|庄司正実,佐藤親次,小田晋,久保田浩也,今井保次(1990)「ソフトウエア技術者の精神健康――II.仕事上のストレッサーの分類および仕事上のストレッサーと精神障害の関連性」『産業医学』(32):258-064

「適応障害を隠さず、配慮のある職場で働きたい!」

適応障害になった場合、障害者枠雇用で働くという選択肢もあります。適応障害をオープンにしたうえで、体調の配慮をしてもらいながらの採用です。

そのためには障害者手帳の取得が必要になる点はご承知おきください。

現在の年収をキープしながら転職もできるチャンスも十分にあります。

適応障害をお持ちの方の転職に役立つ制度や支援は?

適応障害をお持ちの方の転職に役立つ制度や支援は?

適応障害と診断された場合、使える支援制度や福祉サービスが多数あります。

ただでさえ、辛い思いをしているなか、自分で調べるのは大変ですよね。こちらでまとめてチェックしましょう。

就労移行支援

「就労移行支援」とは一般企業への就労を目指す、障害や難病をお持ちの方が利用できる福祉サービスです。

就労移行支援事業所という施設に通所し、体調管理方法やコミュニケーションスキルを学んだり、応募書類作成や面接対策など、転職活動に向けてのアドバイスをもらったりすることができます。

就労移行支援事業所は、地方自治体から指定を受けてサービスを提供しており、全国には約3100ヵ所以上(2023年調査)の事業所があります。また、就職後の職場への定着もサポートしてくれます。

引用元
地域における就労移行支援及び 就労定着支援の動向及び 就労定着に係る支援の実態把握に 関する調査研究

就労継続支援

「就労継続支援」とは一般企業に就労することが困難な障害のある方に、働く場と一般企業などでの就労に向けての訓練を提供する福祉サービスです。

就労継続支援A型事業所と、就労継続支援B型事業所の2種類があります。

リワーク

先ほど紹介したリワークプログラムについて、ここでは、実施主体ごとの特徴を紹介します。

精神科・心療内科などの医療機関

復職支援に特化しており、復職後も長期的に働けるための病状の回復と安定を目指した治療です。

地域障害者職業センター

各都道府県に設置され、障害者に対する専門的な職業リハビリテーションサービスや、事業主に対する障害者の雇用管理に関する相談・援助、地域の関係機関に対する助言・援助を行う機関です。

休職者・就業先の企業・主治医らと連携しながら、復職の支援を行います。下記のサイトで、地域ごとの障害者職業センターを調べられます。

引用元
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構|地域障害者職業センター

就労移行支援事業所

前述した就労移行支援事業所の中にも、休職者を対象としたリワークプログラムを設けている施設があります。通所を検討している方は、お住まいの地域の就労移行支援事業所に問い合わせてみましょう。

ジョブコーチ

ジョブコーチ制度とは、障害者の就労・定着の専門家が、一定期間、障害者の就業先の企業などに在籍もしくは出向し、障害者およびその家族や企業に対し、職場定着のための支援を行う制度です。

障害者本人に対しては、健康管理や職場でのコミュニケーションなどの職場への適応に向けてのアドバイスを、就業先の企業に対しては、本人の体調や障害特性に配慮した雇用に向けてのアドバイスを行います。

利用するためには、従業員と企業双方の合意が必要となりますので、利用を検討されている方は、まず職場の方に相談してみましょう。

引用元
厚生労働省|職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について

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長い仕事人生「どの選択肢が得?」で考えよう

適応障害はストレッサーとの接点や就労環境に、症状や回復が大きく左右される障害です。職場での適切な配慮や、自身に適した新しい就労先への転職は、人生にとって大きな影響を及ぼします。

障害を抱えながら働く上では、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。今の職場を続けていくことに負担・不安をを感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

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監修:安部 桐子
産業カウンセラー。EAP事業の立ち上げ経験を活かし、(株)D&Iに入社後には定着支援サービス「ワクサポ」と在宅型就労支援「エンカクトレーナー」を開始。現在は300名以上の障害者の定着化・戦力化に向けたサービスの統括をおこなう。