障害者手帳1級の対象者が受けられるサービスとは?1級の定義や就労支援サービスについても紹介

障害者手帳には、いくつかの等級があります。その中でも1級は、最も障害が重い方が対象です。しかし、どの程度の障害であれば1級と認定されるのかわからない、という疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、障害者手帳についてや1級の定義について解説し、1級の方が受けられる支援やサポートについても紹介します。

障害者手帳とは?

障害者手帳とは?

障害者手帳とは、障害を持つ人々が福祉サービスや支援を受けるために必要な証明書です。日本では「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3種類があります。手帳を取得することで、さまざまな支援を受けることができるようになります。

交付主体となっているのは、都道府県知事や中核都市の市長など、地方自治体です。取得方法は、自治体によって異なることもあるので注意して下さい。

基本的には、医師の診断書をもとに市区町村で申請を行い、障害の程度に応じて審査を経て交付されます。また、定期的な更新や再申請が必要な場合もあります。

引用元
障害者手帳について|厚生労働省

DIエージェントの完全無料キャリア相談に申し込むボタン

障害者手帳1級の定義

障害者手帳の1級は、最も重度の障害をお持ちの方と定義されます。日常生活において、全面的な支援が必要とされます。

身体障害者手帳1級では、視覚や聴覚の障害・肢体不自由などが極端に重度で、自立した生活が困難な状態が該当します。

精神障害者手帳1級では、精神的な障害が生活全般に強く影響し、長期的な治療や支援が必要とされる状態です。

どちらの障害者手帳でも、1級の認定を受けると、障害者向けの特別な支援や社会的配慮が受けられます。

身体障害手帳の等級

身体障害者手帳は、障害の種類とその程度に応じて1級から6級に分類されます。以下は、身体障害手帳の等級表です。

等級 障害の内容例
1級 ほとんど自立できない重度の障害。例:全盲、両耳の重度難聴、重度の肢体不自由(歩行困難など)
2級 大きな支援が必要な障害。例:片目失明、聴力の喪失、義足の使用が必要な肢体不自由
3級 日常生活に支障があり支援が必要な障害。例:視力低下、片足の障害による歩行の困難、軽度の麻痺
4級 障害はあるが自立した生活が可能な場合が多い。例:軽度の視力障害、軽い聴力障害、腕や足の一部機能障害
5級 軽度の障害で、特別な支援はあまり必要としない。例:視力障害、聴覚障害、軽度の肢体不自由
6級 最も軽度の障害。日常生活への影響がほとんどない場合もありますが、補助的なサポートを必要とすることがある。例:軽度の視力障害

身体障害者手帳の等級は、障害の内容やその程度と診断書に基づき、市区町村で決定されます。

引用元
障害者手帳について|厚生労働省

精神障害手帳の1級の定義

精神障害者手帳は、障害の程度に応じて1級から3級に分類されます。以下は、精神障害手帳の等級表です。

等級 障害の内容例
1級 日常生活に著しい支障をきたし、常に支援が必要な重度の精神障害。例:重度の統合失調症や躁鬱病
2級 日常生活に支障をきたし、時折支援が必要な障害。例:軽度の統合失調症や双極性障害
3級 障害が軽度で、生活における支援はあまり必要としない場合が多い。例:軽度の不安障害やうつ病

精神障害者手帳も、身体障害者手帳と同じく、症状の重さや生活への影響と診断書に基づき、市区町村で認定されます。

引用元
・精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について(◆平成07年09月12日健医発第1133号)|厚生労働省

療育手帳の等級

療育手帳は、知的障害を持つ人々が福祉サービスを利用するための手帳です。自治体によって、等級が異なります。東京都では、療育手帳は「A」と「B」の2つの等級に分類されます。以下は、東京都における療育手帳の等級です。

等級 障害の内容例
A 知的障害が重度で、日常生活に全面的な支援が必要な場合。例:高度な知的障害、常時介護が必要
B 中度または軽度の知的障害で、一定の支援を必要とする場合。例:自立した生活が可能だが、支援が必要

療育手帳を取得するには、医師による診断と市区町村での申請が必要です。等級は、知的障害の程度や日常生活に与える影響に基づいて決定され、各自治体が定めた基準に従って交付されます。

引用元
対象者(愛の手帳Q&A)| 東京都福祉局

障害者手帳1級で受けられる支援・サービス

障害者手帳1級で受けられる支援・サービス

障害者手帳を持つことで、さまざまな支援やサービスを受けることができます。特に1級の場合、生活支援をはじめ、税金や公共料金の優遇措置、交通機関の割引など、多くの支援が提供されます。

どんな支援・サービスを受けられるのか、詳細を見ていきましょう。

生活支援サービス

生活支援サービスでは、障害者が日常生活を円滑に送るために役立つ支援が多岐にわたります。これには、交通機関の割引や公共料金の減免などが含まれています。障害者手帳1級を持っていると、特に多くの優遇措置を受けることが可能です。

交通機関の割引

障害者手帳を持つことで、さまざまな交通機関で運賃の割引を受けることができます。公営交通機関や民間企業が提供する割引サービスは、利用者の負担を軽減し、移動の利便性を高めるための重要な支援です。

例えば、東京都の公営交通機関では、障害者手帳を持っている方に対し、都営地下鉄や都営バス、都電荒川線などの運賃が割引されるサービスがあります。また、JR東日本でも、障害者手帳を所持している方に対して鉄道運賃の割引を行っています。

引用元
都営交通無料乗車券 | 東京都交通局
障害者割引制度のご案内|JR東日本

施設利用料の割引

障害者手帳では、多くの施設で利用料の割引を受けることができます。博物館や動物園といった公共の施設だけでなく、民間のテーマパークのようなレジャー施設でも、障害者向けに特別な割引制度が設けられていることも。

例えば、東京の国立科学博物館では、障害者手帳を所持する方に対して、入館料の割引を行っています。また、上野動物園でも、入園料の割引を受けることが可能です。さらに東京ディズニーリゾートでは、障害者手帳を持っている方に向けて、特別な割引サービスや優先入場のサービスが提供されています。

引用元
利用案内・情報 ≫ アクセス・利用案内|国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo
障害のある方、ご高齢の方へ | 上野動物園公式サイト – 東京ズーネット
【公式】障がいのある方向けのパークチケットについて | 東京ディズニーリゾート

公共料金の割引

障害者手帳の所持者は、公共料金の割引を受けることができる制度があります。水道料金や郵便料金、さらには電気やガス料金の割引なども。

例えば、神奈川県では、水道料金の割引が実施されています。一方、東京都では郵便料金の割引が受けられます。こういった割引は東京都や神奈川県に限らず、自治体ごとに異なるサービスが提供されているので、お住まいの地域ごとに確認してみてください。

引用元
水道料金の減免制度 |神奈川県ホームページ
障害者のその他の公共料金の減免制度 | 目黒区

税金の控除

障害者手帳を持つことで、所得税や相続税、住民税といった税金でも控除が受けられる場合があります。

例えば、所得税における障害者控除は、障害者手帳を持つ本人や扶養している障害者が対象です。障害者控除が適用されることで、課税される所得額が減少し、結果的に納税額が少なくなります。

相続税では、相続人が障害者である場合に、その障害者の相続分について控除を受けることが可能です。また、自治体ごとに課税される住民税でも、控除が受けられる場合があります。

引用元
障害者と税|国税庁

医療サービス

障害者手帳を所持している場合、医療費や薬剤費の助成を受けられることがあります。特に、自治体によっては、障害者の医療にかかる費用の一部を負担してくれる助成制度の利用も可能です。

例えば、東京都の「東京都福祉保健局」では、障害者手帳を所持している方を対象に、医療費助成の一環として、医療費の一部助成を行っています。患者が支払うべき自己負担額の軽減がされる制度です。さらに、対象となる薬剤の費用が減免されることもあり、治療費の負担が大幅に軽減されます。

引用元
心身障害者医療費助成制度(マル障)|東京都福祉局

就労支援サービス

障害者手帳を所持している方は、各自治体が提供する就労支援サービスを受けることができます。このサービスは、障害者が自立した生活を送るために、仕事を得て安定した収入を確保することが目的です。

例えば、東京都は「東京都障害者就労支援センター」を運営しています。このセンターでは、障害者向けの職業訓練や就職活動のサポートを行っており、履歴書作成や面接対策、就職後のフォローアップなど、細やかな支援が受けられます。

また、就労移行支援や就労継続支援といったプログラムもあり、個別に支援を受けることが可能です。

引用元
障害者就労支援センター|東京都福祉局

障害者手帳を取得するメリット

障害者手帳を取得するメリット

障害者手帳を取得することで、さまざまな支援を受けることができ、生活の質を向上させることができます。ここからは、障害者手帳を取得するメリットについて、見ていきましょう。

1.経済的な支援が受けられる

障害者手帳を取得する大きなメリットの一つは、前項で紹介したような、さまざまな経済的支援を受けられる点です。公共料金の割引、交通機関の割引、税金の控除などの支援で、生活費の負担を軽減することができます。

こういった支援により、生活の質を向上させるとともに、より安定した日常生活を送ることができるようになるでしょう。

2.「障害者雇用枠」の求人に応募できる

障害者手帳を所持していると、「障害者雇用枠」の求人に応募することが可能です。この枠は、障害者が就業する際の支援を行うために設けられており、一般の求人よりも柔軟な条件で働くことができるメリットがあります。

具体的には、企業が障害者に配慮した職場環境や業務内容の提供です。例えば、作業内容の調整や勤務時間の柔軟化などが行われることがあります。また、障害者雇用に特化した求人が増えているため、障害をお持ちの方にとっては、より多くの職業の選択肢が広がるでしょう。

障害者手帳をお持ちの方が利用できる就労支援サービス

障害者手帳をお持ちの方が利用できる就労支援サービス

障害者手帳をお持ちの方は、いくつかの就労支援サービスを利用することができます。どんなサービスが利用できるのか、詳細を見ていきましょう。

ハローワーク

ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。

ハローワークには専門援助部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置され、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。

一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。

引用元
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。

センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。

障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。

引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。

利用者にとって、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得でき、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。

全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。

なかぽつは、全国に337カ所(令和5年8月22日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。

障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。

引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省

障害者向け転職エージェント

障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。

障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。

高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。

就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。

障害者手帳の申請方法

障害者手帳の申請方法

障害者手帳は、障害のある方が必要な支援を受けるために重要な証明書です。申請方法は自治体ごとに異なる場合がありますが、東京都を例に、障害者手帳の申請手順を解説します。

障害者手帳を取得するためには、障害が一定の基準を満たしている必要があります。そのため、まずは、医師による診断書を取得しましょう。なお診断書は、指定の様式に記入してもらわなければいけません。

診断書を取得したら、東京都福祉保健局や区市町村の福祉担当窓口で入手できる申請書と共に、福祉担当窓口で申請を行います。

提出された書類をもとに審査が行われ、この審査を通過すれば、障害者手帳が交付されます。交付までにかかる期間は通常1〜2ヶ月程度です。

申請方法や手続きは自治体ごとに異なる可能性があるため、必ずお住まいの地域の福祉担当窓口で詳細を確認してください。

引用元
身体障害者手帳について|東京都福祉局
【都民の皆様へ】精神障害者保健福祉手帳の申請手続き|東京都福祉局
愛の手帳について|東京都福祉局

DIエージェントの完全無料キャリア相談に申し込むボタン

障害者手帳の1級対象者はさまざまなサービスを受けられます

障害者手帳の1級対象者はさまざまなサービスを受けられます

障害者手帳1級は、最も重度の障害をお持ちの方が対象です。1級と認定されると、医療費助成、交通機関の割引、公共料金の割引、税金の控除など、幅広い支援を受けることができます。また、就労支援や生活支援も充実しており、自立した生活をサポートするための重要な制度が整っています。

障害者雇用枠での就職活動を検討する際には、DIエージェントをご利用してみてはいかがでしょうか。DIエージェントでは、ご利用者様に寄り添った支援を行っています。障害者手帳をお持ちの方の就労サポートした実績も、豊富です。ぜひ、この機会にご相談ください。

▼関連記事
・障害者手帳を取得することによって、様々なメリットがあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
障害者手帳の等級・種類|取得するメリットや申請方法も紹介

・障害を持ちながら生活収入を確保する方法について解説しています。以下の記事も併せて
ご覧ください。
【社労士監修】障害者の方の2つの収入源を解説|障害年金と障害者雇用について

監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。