自閉症スペクトラム(ASD)の人に適した仕事や就職前に気をつけたいポイント

自閉症スペクトラム(ASD)とは、遺伝的に脳神経に発生する障害です。自閉症スペクトラムの度合いによっては、日常生活に限らず、仕事においても障害が理由で困難が生じる場合があります。

そこで、今回は、自閉症スペクトラムの方にオススメの職種・働き方など仕事選びのポイントや、実際に就職・転職活動を進める方法について解説します。

障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別のご病気を発症してしまったりする例も少なくありません。

そうならないよう、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。

自閉症スペクトラム(ASD)とは?特性や仕事への影響

自閉症スペクトラム(ASD)とは?特性や仕事への影響

自閉症スペクトラム(ASD)は先天性のもので、発達障害と呼ばれる障害のひとつです。ASDの定義と主な症状、仕事に与える影響について知ることで、適した仕事を探したり、就職前に気をつけておきたいポイントを意識することができます。

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自閉症スペクトラム障害(ASD)の定義と主な症状

ASDは非言語コミュニケーションが苦手で、社会的コミュニケーションに困難を抱えたり、パターン化した行動が特徴です。症状の現れ方は個人差が大きく、「少し空気が読めない」と自分自身でも感じるような軽度から、会話によるコミュニケーションが難しい重度まで様々な段階があります。

また、自閉症スペクトラムの人には感覚過敏や感覚鈍麻などの感覚異常が見られることがあり、音や光、ニオイに敏感な人がいる一方で、痛覚が鈍いなどの症状を抱える人もいます。

発達障害にはASDの他にADHD(注意欠陥多動性障害)やLD/SLD(学習障害)があり、発達障害は複数の障害が重なることもあることに注意が必要です。

自閉症スペクトラム障害が仕事に与える影響

自閉症スペクトラムの人はコミュニケーションの困難さが原因で、職場での人間関係に問題を抱えやすい傾向にあります。

また、ルールや手順に丁寧に従うことが得意な反面、柔軟性に欠けることがあり、臨機応変な対応が苦手で、その場で判断を求められたり、予期しない事態に対処したりしづらいため、仕事の内容によっては遅延したり、中断してしまうこともあります。

さらに感覚過敏によって職場環境の騒音や光など、環境要因がストレスとなることもあり、仕事のパフォーマンスが著しく低下してしまうケースも少なくありません。

適切な支援や配慮がない状況で苦手な環境に晒され続けると、職場でのストレスが増大して、心身の健康に支障をきたすこともある一方で、合理的配慮を受けられれば、正確な仕事ぶりから業務で大きく貢献することも可能です。

自閉症スペクトラムの人に向いている仕事

自閉症スペクトラムの人に向いている仕事

自閉症スペクトラムの人は、特定の分野に対する集中力や記憶力を活かせる仕事に向いています。ASDの特性として、高い集中力や記憶力があり、興味のある分野に対しては、深い知識を持つことができるため、高い専門性を発揮して活躍している人も少なくありません。

データ分析やプログラミングなど、専門性の高い仕事が適しており、自分のペースで作業できる環境が整っていると、能力を最大限に発揮できます。

また、法則性を遵守して同じ動作を繰り返すことも得意なので、ルーチンワークに対しても高いパフォーマンスを出せます。

ルールを守ることが求められる定型作業はASDの特性に合った仕事です。工場のライン作業や清掃業務のような、ミスが少なく、正確に決まった時間で決まった数の作業をこなすことで評価が高くなる職種も向いています。

全体として、業務に関わる対人関係が少なく、人とのコミュニケーションが主体ではない仕事では、ストレスも少なく、障害特性をポジティブな方向へ発揮して仕事ができるでしょう。

一人で完結する作業が多い職種が向いており、オフィスワークやリモートワークなど、対面のやり取りが少ない環境が適しています。自分のペースで作業を進められることが重要で、なおかつ明確な指示やルールがあると、より安定して仕事に従事できます。

自閉症スペクトラムを持っている人が向いている仕事の具体例

プログラマー:
コードを書くことに集中でき、対人関係が少なく、明確な指示やルールに従って作業を進められるため、活躍している自閉症スペクトラムの人も多数います。自分のペースで作業できる環境が整っており、ストレスが小さいだけでなく、リモートワークが可能な場合も多いのが特徴です。

工場の製品管理・ライン作業:
定型作業が多く、ルールに従って作業を進められるだけでなく、業務中は対人関係が少なく、ストレスが少ないというメリットがあります。そのため自閉症スペクトラムの人が得意な繰り返しの作業に対して、集中して高いパフォーマンスを発揮できます。

研究職:
自分の興味・関心に沿った研究テーマを選べ、高い集中力と分析力を発揮できます。過去に大きな研究成果をあげた研究者の中にも自閉症スペクトラムの人は多く、適職のひとつとしてよく挙げられる分野でもあります。

自閉症スペクトラムを持っている人が向いていない仕事

自閉症スペクトラムを持っている人が向いていない仕事

コミュニケーションに困難を抱える自閉症スペクトラムの人にとって、業務上の対人関係が多い仕事や、人とのコミュニケーションが業務の中心になる仕事は、ストレスが大きくトラブルが発生しやすいという問題があります。

相手の気持ちを読み取ることが求められ、臨機応変な対応が必要な場面が多く、ストレスが溜まりやすいため、長期間続けるのが難しいでしょう。また、頻繁に柔軟で臨機応変な判断が求められる仕事は、予期しない事態への対応が求められる場面が多いため、時にパニックを起こしてしまうこともあります。

非言語コミュニケーションを中心とした、その場の空気を読むことが必要な仕事も、相手の気持ちを読み取るのが苦手で暗黙のルールやマナーを理解するのが難しいため、対人関係のトラブルを起こしやすい傾向があり、向いているとはいえません。

自閉症スペクトラムを持っている人が向いていない仕事の具体例

営業職や接客業:
基本的に人と接することを前提とした仕事であるため、対人関係が多く、緊密なコミュニケーションが求められ、臨機応変な対応が必要です。

成果を出すためには常に相手の気持ちを読み取り、柔軟な対応が求められることが求められるため、自閉症スペクトラムの人にとってはストレスが溜まりやすい代表的な仕事といえます。

窓口業務やコールセンター:
こちらも人と接することが前提であり、円滑なコミュニケーションが求められます。イレギュラー対応やクレーム対応も多く、柔軟な受け答えや判断が必要になります。

ルールから逸脱した内容に対する対応を求められるとパニックを起こしやすい自閉症スペクトラムの人にとって、特にアウトバウンドやトラブル対応のコールセンターは避けた方がよい仕事といえるでしょう。

自閉症スペクトラムの人が就労前に考慮すべきポイント

自閉症スペクトラムの人が就労前に考慮すべきポイント

自閉症スペクトラムの人が仕事を始めるとき、自分の障害特性をポジティブな方向に活かしていきたいのであれば、合理的配慮を受ける方がおすすめです。

「普通のこと」や「当り前」といわれる範囲の業務でも、自閉症スペクトラムの人には難しい内容がある一方で、関心がある分野への高い集中力や、それに伴う専門性、ルーチンワークへの適性など、突出した部分があるためです。

合理的配慮を受けることで、苦手な部分をサポートして貰い、得意な部分を活かして貢献することができます。そのためには障害者雇用枠の利用も選択肢に入れるのがおすすめです。

 
キャリアアドバイザー
障害者雇用枠は企業によって数や条件が異なるので、人によって度合いや特性が異なる自閉症スペクトラムの人は、障害者の就労に強いエージェントと相談して自分の障害特性にあった求人を探すのがおすすめです。

障害者雇用枠の利用

障害者雇用枠を利用することで、自分の障害を職場にオープンにする代わりに、周囲の理解や協力を得られやすくなり、最適な合理的配慮が受けやすくなります。また、障害者雇用専門の支援機関を通じて、発達障害に理解がある適切な職場を見つけることも可能です。

注意したい点として、障害者雇用枠で就職するには障害者手帳が必要になります。事前に専門医の診察を受け、自治体に申請しておきましょう。

また、障害者雇用枠の求人情報はハローワークなどでも得られますが、非公開の求人もあるので、障害者雇用に実績がある転職エージェントの利用がおすすめです。

特に面接では自分の障害特性や受けたい合理的配慮について説明することがとても大切ですが、言い辛いことや説明しきれない内容があることも多々あります。そんなとき、企業との交渉に転職エージェントの支援を受けることもできるためです。

自分の得意・不得意を説明できるように資料を作る

自分の障害特性を理解し、得意・不得意を明確にして、客観的に理解しておくのが大切です。

面接や職場で自分の特性を説明できるように、どんな時になにをして欲しいのかなどを紙に書き出して整理し、資料を作っておきましょう。職場でのサポートが得られやすくなり、スムーズに働けます。

そしてなにより、整理した資料を元に自分を客観視することで、より自分に合った仕事を選ぶことができます。就労支援機関や転職エージェントを利用する際にも、障害特性の資料があると便利です。

合理的配慮と求めるべき理由

合理的配慮とは、障害者がスムーズに働けるように職場に配慮を求めることで、障害者差別解消法によってすべての企業で義務化されました。

発達障害は見た目からはわかりにくいため、周囲の理解が得られないケースも多々あります。そこで合理的配慮を通じて、不真面目な行動なのではなく、障害によって苦手であったり、できなかったりするのだと説明することで、人間関係のトラブルを未然に防ぐことができます。

自閉症スペクトラムの人におすすめな就労サービスを活用しよう

自閉症スペクトラムの人におすすめな就労サービスを活用しよう

自閉症スペクトラムをはじめとする発達障害を持つ人が仕事を探すとき、一人で自分に適した求人情報を探すのは大変です。

そこで、就労を支援してくれるサービスを利用するのがおすすめです。公的なサービスには就労移行支援事業所、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、ハローワークがあります。また、一般の転職エージェントを利用するという選択肢もあります。

それぞれのサービスについて特徴を見てみましょう。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、就労移行支援事業の一環として、障害や難病を抱える方が一般企業に就職できるように職業訓練、就職活動支援、職場定着支援などの包括的なサポートを提供する機関です。

18歳以上65歳未満の身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病を持つ方が対象で、障害者手帳がなくても医師の診断書などがあれば利用できます。原則として2年間の利用が可能で、必要に応じて最大12カ月の延長が認められる場合があります。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害者に対して職業評価、職業準備訓練、職場適応援助などの専門的な職業リハビリテーションを提供し、事業主に対しては雇用管理に関する助言や支援を行なう機関です。

身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、高次脳機能障害、難病などを持つ人が対象で、障害者手帳の有無に関わらず利用可能です。

利用は無料で、事前に最寄りのセンターに問い合わせて予約を行い、相談や支援を受けることができます。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある方の職業生活における自立を図るため、雇用、保健、福祉、教育等の関係機関と連携しながら、就業面と生活面の一体的な支援を行う公的機関です。

就業面では就職準備支援、求職活動支援、職場定着支援などを行い、生活面では日常生活の自己管理、健康管理、金銭管理等の助言や、住居、年金、余暇活動などの生活設計に関する支援を提供しています。

身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病等があり、一般企業等への就職を希望する18歳以上65歳未満の人が対象で、障害者手帳の有無は問われず、最寄りのセンターに電話で予約し相談することができます。

ハローワーク

ハローワークには障害者専門窓口があり、専門の職員・相談員が個別のケースワーク方式で求職者の特性に合った求人を紹介し、面接同行や就職後のアフターケアなど、きめ細かな支援を提供しています。

障害者専用の求人票を提供し、公共職業訓練(ハロートレーニング)への斡旋や、障害者を対象とした就職面接会を開催し、企業とのマッチングを支援してくれます。

また、企業訪問を通じて障害者雇用の啓蒙活動を行い、求人条件に対する配慮が必要な場合は企業側と交渉したり、ジョブコーチによる職場定着支援を提供したりしてくれ、長期的な雇用をサポートする機関でもあります。

転職エージェント

障害者雇用の実績が豊富で、専任コンサルタントが障害の内容や希望をもとに適切な求人を紹介し、転職後のフォローまで一貫してサポートします。

障害者専任のキャリアアドバイザーが、非公開求人を含む豊富な求人情報から最適なキャリア相談に応じ、応募書類の作成、面接対策、条件交渉などを行います。

企業担当や就労移行支援事業所と連携、スムーズな入社・就業を支援し、入社後も定着支援が受けられるのが特徴です。

 
キャリアアドバイザー
障害者の転職に強い転職エージェントを利用することで、より自分の特性に適した仕事を探したり、キャリアアドバイザーに今後のキャリアプランを相談しながら仕事を探せます。

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自閉症スペクトラムの人の就職は、ステップバイステップで寄り添う転職エージェントへ

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障害を抱えながら働く上では、 障害の特性に合った業務に就くことや、障害への理解や配慮のある環境選びが大切です。障害があっても「キャリア成長をあきらめたくない」、「自分にあった働き方を探したい」という方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠の就職・転職について情報提供や、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。