病気や障害のために車椅子を利用している方も多いです。車椅子で生活している方は、日常に限らず、就職や転職、実際の仕事においても、障害が理由で困難が生じる場合があります。
そこで今回は、車椅子の方におすすめの職種や、実際に就職・転職活動を進める方法について解説します。
障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別の病気を発症してしまったりする例も少なくありません。
そうならないように、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。
車椅子の方が仕事のときに困る6つのこと
車椅子で生活されている方が仕事の際に困るのは、どのような事柄やシーンなのでしょうか。6つご紹介します。
1.身支度で手間取る、時間が掛かる
まずは出勤前です。起きてから朝食をとり、身支度を整えるまでの流れは、車椅子の方にとってハードルの高い作業。足腰にしびれがある方などは、ズボン・靴下・靴をはくのにも一苦労です。
そのため、車椅子の方は、立ったり歩いたりすることができる方に比べて、朝の準備にどうしても時間がかかってしまいます。
2.電車通勤は問題だらけ
次に、通勤の問題です。職場まで電車で通う方もいますが、駅の設備(スロープ・エレベーターなど)が整っていないと、そもそも駅内での移動も困難。単純な電車の乗り降りでも、段差などがあると一人では難しく、駅員さんなどのサポートが必要です。
さらに、車椅子での乗車にはスペースをとり、満員電車には乗りにくいため、ラッシュの時間は避けなければなりません。
3.社内の設備|多機能トイレ
社内の設備も確認しておきましょう。車椅子の方がチェックしたいもののひとつに、多機能トイレがあります。
車椅子のまま出入りしやすい広さであるかという点はもちろん、自力で排尿できずカテーテルを使用する方もいるため、使用後のカテーテルを洗うための設備とスペースも必要です。
4.社内の設備|段差・階段
社内に段差や階段などがある場合は、車椅子の方が移動する場合の配慮があるかもチェックする必要があります。
スロープやエレベーターが設置されているか、社内がバリアフリーになっているか、他の社員や通りがかった方にサポートをお願いできるかなど、物理的・人的な環境を確認しましょう。また、1階に仕事をするフロアがあり、上下の移動が不要な企業もおすすめです。
5.上司や同僚からの理解
車椅子の方が働く上で、一緒に仕事をする周りの方々からの理解が得られないと、精神的にストレスを溜めてしまう、仕事ではなく人間関係が嫌になってしまう、などの可能性が高まります。
ここまでの項目とも関連しますが、出社時間の配慮や勤務中のサポートなど、上司や同僚による協力が必要です。
6.座り続けることの難しさ
車椅子を使用している方のなかでも、足が不自由・下半身不随・全身疾患などそれぞれ状態が異なります。
長時間同じ姿勢で座りっぱなしでいると、疲れてしまったり、疾患によっては体力や体調の面でつらくなったりすることも。車椅子のままでは体位変更もしづらく、仕事に集中ができなくなるほどの状態になる場合もあります。
困らないように企業側に求めたい工夫や対策
仕事において、車椅子の方がなるべく前章のような困難を感じないように、企業に対して工夫や対策を求めることも大切です。してもらえる可能性のある配慮とはどのようなものなのか、下記で見ていきましょう。
服装の緩和
職場や担当業務によっては、スーツ着用ということもあるでしょう。しかし、前述したように身支度に困難を抱える車椅子の方にとって、ストレッチ性のないスーツを着ることほど大変なものはありません。
そこで、軽装化させてもらえると、出勤前の準備に余計な時間が掛からなくなります。
余裕のある出勤時間
時差出勤ができる・フレックスタイム制を導入しているなど、出勤時間に余裕があれば、身支度で時間が掛かっても焦らずに済みます。前章のような手間のかかる電車通勤の場合でも、遅刻などの心配が軽減されるでしょう。
社内設備の整備
前章で触れたような社内設備も整えてもらえると助かります。多機能トイレを設置する、段差や階段でしか行けない場所にはスロープやエレベーターを準備するなどの配慮があると、車椅子の方が社内で過ごす際にも安心です。
職場環境・人間関係の良好さ
前述したように、職場の人間関係も重要です。良好な人間関係があると、車椅子の方の精神的ストレスが軽減されやすくなります。また、職場の方が理解してくれていれば、仕事中に何かあった際もサポートを求めやすいでしょう。
こまめな小休憩
座り続けてお尻が痛くなったり内臓に負担がかかったりした場合に、一度仕事を離れてストレッチをする・体位変換を行うなど、短時間の小休憩でもいいので認めてもらえると、体が楽になります。
こまめに休むことにより、仕事のパフォーマンスも保ちやすくなるでしょう。
車椅子の方が自ら発信・伝えるべきこと
つづいて、車椅子を利用している方が、職場の方々に対して自ら伝えておきたいことも押さえましょう。
余裕を持った時間設定
前でも触れていますが、車椅子の方は仕事に行く前の準備から時間が掛かります。体が不自由なため、行動に時間を要するのはやむを得ないことです。
そのため、出勤時間・勤務時間・休憩時間・退社時間など、仕事におけるすべての時間に対して余裕が必要であることを伝えましょう。
天候など急な変化に対して対応しにくい
天候の急変時など、やむを得ない事情があると対応が難しいことを、あらかじめ周囲に伝えて理解してもらうのも重要です。
たとえば、大雨などで突然電車が止まった場合の迂回通勤はなかなか大変で、遅刻してしまうこともあるでしょう。このような際に職場の方が理解を示してくれるだけで、車椅子の方の働きやすさがグッと変わってきます。
どういうサポートがあれば、自分の仕事がスムーズに進められるか
自分が仕事を進めるにあたって、職場の方にどのようなサポートをしてもらう必要があるのかを伝えることも大切です。
「自分にできる仕事の範囲はここまで」ということを理解してもらった上で、「周囲のサポートによって仕事がスムーズに完結する」ことに重きを置いて、周囲と連携していきましょう。
車椅子の方の仕事探し方法
車椅子の方の職探しをサポートしてくれるさまざまなサービスがあります。各サービスの種類と特徴をチェックしましょう。
ハローワーク
ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある機械で、国内中の求人情報の検索が可能です。
ハローワークには専門援助部門が設けられており、専門的な知識を有する職員・相談員が、障害をお持ちの方の就職活動を支援しています。就業に関する相談や面接への同行など、障害のある方でも安心して利用できるようなサポート体制を整えていることが特徴です。
引用元
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス
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地域障害者職業センター
地域障害者職業センターとは、障害をお持ちの方に対し、就職に向けた専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」が運営しており、都道府県ごとに最低1カ所以上設置することが義務付けられています。
センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。
ジョブコーチや職業カウンセラーなど、障害者の就労に詳しい専門家に支援してもらえる点がメリットです。
引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構
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就労移行支援事業所
就労移行支援事業所とは、障害がある方の一般企業への就職を支援してくれる福祉サービスのこと。日々の通所を通じてスキルアップができ、就労支援員や職業支援員など、相談しやすいプロのサポートを受けながら仕事を探せる点がメリットです。
全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。自分に合ったスキルを身につけてから仕事を探せて、就職後も定着のためのサポートをしてもらえるため、長く働ける職場に出会いやすいでしょう。
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障害者雇用に特化した転職エージェント
障害者雇用を行う企業の求人案件を専門にしている、転職エージェントを利用する方法もよいでしょう。障害をお持ちの方の採用を積極的に行う企業の情報を多く持っており、そのエージェントしか取り扱っていないような非公開の求人情報を得られる場合もあります。
高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。就職前の準備から就職後の支援までしっかりアシストしてくれるため、二人三脚で自分にぴったりの仕事探しができるでしょう。
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末永く快適に仕事を続けていくために支援サービスをうまく利用しよう
車椅子を利用している方にとって、行動が制限されたり行動に時間が掛かったりすることは当然のことです。仕事をする際は、周囲の理解や適切なサポートが欠かせません。
しかし、自分から言わなければ理解してもらえない部分もあるため、無用な遠慮はせずに伝えていきましょう。
障害を抱えながら働く上では、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。
今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。
DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。
専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。
「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でもかまいませんので、ぜひお気軽にご相談ください。
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社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。