障害支援区分とは、障害をお持ちの方が必要とする、支援の度合いを総合的に示したもののことです。
しかし、名前を聞いたことがあっても、ご自身がどの区分に当てはまるのか・認定を受けることでどのように生活に影響があるかについては知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は利用できる制度があっても、制度そのものを知らないために利用できていない可能性があります。
そこで今回は、障害支援区分について詳しく解説します。障害支援区分の概要についてはもちろん、認定後に受けられるサービス、障害者認定によって受けられる自立支援給付などについてもお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
障害支援区分の概要
ここからは、まず障害支援区分の概要として押さえておきたい以下の項目についてご紹介します。
- 障害者総合支援法とは
- 認定基準
- 6段階の支援区分
- 必要な手続き
- 有効期間
障害支援区分について見聞きしたことはあっても、自身に該当しているのか詳細について知らない方は、各項目に目を通しておきましょう。
障害者総合支援法とは
障害者総合支援法とは、障害をお持ちの方の支援について定めた法律のことを指します。日本にはもともと障害者自立支援法という法律がありましたが、2013年4月に内容を改め、新たに施行されました。
障害者総合支援法については、以下のページで詳しく解説しています。詳細について知りたい方は、あわせてご覧ください。
障害者総合支援法のひとつである障害支援区分とは、サービス利用における支給を、障害や心身の状態で必要な支援を1から6までの段階に分けた区分のことです。
数字が大きくなるにつれて支援の度合いが高くなり、高齢者の介護保険と類似した仕組みになっています。
区分認定は、認定調査員による区分調査、医師の意見書などを根拠に、コンピューターによる一次判定と審査会による二次判定で決定されます。
認定基準
認定基準は、1から6つの区分で決められます。しかし、障害の特性や心身の状態には個人差があるほか、なかには医療的支援を活用しながら生活を送る方もいます。
支援が必要となる程度の総合的な基準なので、福祉サービスを受けるためには、認定基準に該当することが条件となります。認定基準の調査項目は、全部で80項目あるので、ここではそのなかの一例を表にして紹介します。
障害支援区分の認定基準 | 概要 |
---|---|
1. 移動や動作等に関連する項目(12項目) |
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2.身の回りの世話や日常生活等に関連する項目(16項目) |
|
3.意思疎通等に関連する項目(6項目) |
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4.行動障害に関連する項目(34項目) |
|
5.特別な医療に関連する項目(12項目) |
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引用元
障害者総合支援法における「障害支援区分」の概要|厚生労働省
6段階の支援区分
認定基準は「非該当」と「区分1」から「区分6」に分けられており、、それぞれ「申請者に必要とされる支援の度合いがこれまでに区分1~6(または「非該当」)と判定されるケースが最も多い状態像に相当する場合」としています。
引用元
障害者総合支援法における障害支援区分 認定調査員マニュアル|厚生労働省
なお、平成21~23年度の認定データ約14,000件から、申請者(調査対象者)と同じ状態にある障害者の二次判定結果を取り出し、そのデータのうち、最も確率が高い二次判定結果を障害支援区分の一次判定結果とします。
障害支援区分の認定基準は、「障害支援区分に係る市町村審議会による審査及び判定の基準等に関する省令」において定められているものの、非該当、ならびに区分1~6の定義は、上表のイメージで認定調査員が判定します。
必要な手続き
障害支援区分の認定手続きは、お住まいの市区町村の窓口(社会福祉課や障害福祉課など、市区町村によって課の名称が異なるので注意)でおこないます。
認定手続き後は、認定調査員による認定調査があります。申請者の自宅を訪問し、聴き取りや行動の調査を実施した後は、コンピューター判定による一次判定、市町村審査会による二次判定が行われます。障害支援区分認定の結果はこの仕組みにより申請から2ヵ月ほどかかることもあるので、認定結果が出るまでは時間を要することを考慮してください。
障害支援区分認定を受けると、障害福祉サービスの利用が可能になります。なお、サービスを受けるにあたっては、自己負担額や上限が所得によって変動する仕組みです。詳しい費用について知りたい方は、最寄りの市区町村窓口に問い合わせることをおすすめします。
なお、手続きには医師の意見書が必要です。認定を受ける予定のある方は、受診時に障害支援区分の認定手続きをおこなう旨を医師に話し、必要項目を記入してもらいましょう。
有効期間
障害支援区分の有効期間は原則3年間と定められています。有効期限後もサービスを利用し続ける場合は、再度認定調査を受ける必要があるので注意しましょう。
なお、認定調査を受け直す場合は、最初の調査同様に、申請から認定までに2ヵ月程度かかる場合があります。期限が切れてしまう前に、自治体より連絡がおこなわれますが、更新時期が気になる場合や、再申請を忘れたくない方は、あらかじめ自治体に問い合わせておくと安心です。
認定後に受けられるサービス概要
障害支援区分の認定を受けた後は、どのようなサービスを受けられるのでしょうか。自分が障害支援区分の対象だとしても、受けられるサービスを把握していないと、その必要性に気づけない場合もあるので、ここでしっかり押さえておきましょう。
障害支援区分によって受けられるサービスは、以下の2つに分類されます。
- 各自治体の取り組みによって受けられる地域生活支援事業
- 障害福祉サービス
地域生活支援事業は、地域の特性や環境のほか、利用者の状況に応じて、市区町村が実施主体となり、おこなわれる支援事業です。地域などによってサービス内容が異なるので、お住まいの市区町村に確認することをおすすめします。
一方、障害福祉サービスには、「介護給付」と呼ばれる日常生活の支援が受けられるものと、「訓練等給付」と呼ばれる訓練等の支援が受けられるものがあります。この2つの支援については、次項で詳しく解説します。
障害者認定によって受けられる自立支援給付
障害支援区分に認定されると、障害福祉サービス、または地域生活支援事業を受けることが可能です。
ここでは、前項で触れた障害福祉サービスにおいて、介護の支援を受ける場合の「介護給付」と、訓練等の支援を受ける場合の「訓練等給付」にあわせて、障害者認定によって受けられる自立支援給付の「補装具費支給制度」の3つについて解説します。
介護給付
障害福祉サービスの体系のひとつである介護給付は、9つのサービスを含んだものです。サービス名と内容は下表のとおりです。
サービス名 | 内容 | |
---|---|---|
訪問系 | 居宅介護 | ホームへルパーを住宅などに派遣し、入浴、排せつ、または食事の介護などをおこなうもの なお、区分1以上などの条件がある |
重度訪問介護 | 重度の肢体不自由者であり、常時介護を必要とする障害者の住居などにホームヘルパーを派遣し、入浴、排せつ、または食事の介護や外出時における移動中の介護を総合的に提供するもの なお、区分4以上などの条件がある |
|
行動援護 | 知的障害、または精神障害により、行動上著しい困難を有する人が、行動する際に危険を回避するために必要な援護をおこなうもの | |
重度障害者等包括支援 | 常時介護を必要とし、その介護の必要の程度が著しく高い障害をお持ちの方に対して、居宅介護などの複数のサービスを包括的に提供するもの 区分6に該当 |
|
同行援護 | 視覚障害により、移動に著しい困難を有する方に、移動時、およびそれにともなう外出先において、必要な支援・援助をおこなうもの | |
日中活動系 | 短期入所 | 家族の病気などにより、一時的に保護が必要となった障害をお持ちの方に対し、障害者支援施設などに短期入所させ、入浴、排せつ、または食事の介護をおこなうもの なお、区分1以上などの条件がある |
療養介護 | 医療、および常時介護を必要とする障害をお持ちの方に対し、主に昼間の病院などの施設で機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理のもとにおける介護、および日常生活上の世話をおこなうもの なお、区分5以上または、医療と介護が必要な方などの条件がある |
|
生活介護 | 常時介護を必要とする障害をお持ちの方に対して、主に昼間の障害者支援施設などの施設で、入浴、排せつ、食事の介護、創作的活動、または生産活動の機会を提供するもの なお、区分3以上などの条件がある |
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施設系 | 施設入所支援 | 施設に入所する障害をお持ちの方に対し、主に夜間や休日の入浴、排せつ、または食事の介護などをおこなうもの なお、区分4以上などの条件がある |
なお、入所施設サービスの場合、昼と夜でサービスがわかれていますが、それぞれを組み合わせての利用も可能です。
なお、それぞれのサービス対象者については、下記に記載した厚生労働省ホームページよりご確認ください。
訓練等給付
訓練等の支援を受ける場合に利用できるのが訓練等給付です。具体的なサービス名と内容は下表のとおりです。
サービス名 | 内容 | |
---|---|---|
居住支援系 | 自立生活援助 | 一人暮らしに必要な理解力・生活力を補うため、定期的な居宅訪問や随時の対応により、日常生活における課題を把握し、必要な支援をおこなうもの |
共同生活援助 | 夜間や休日、共同生活を行う住居で、相談、入浴、排せつ、食事の介護、日常生活上の援助をおこなう | |
訓練系・就労系 | 自立訓練(機能訓練) | 自立した日常生活ができるよう、一定期間、身体機能の維持、向上のために必要な訓練をおこなう |
自立訓練(生活訓練) | 自立した日常生活ができるよう、一定期間、生活能力の維持、向上のために必要な支援、訓練をおこなう | |
就労移行支援 | 一般企業などへの就労を希望する方に、一定期間、就労に必要な知識および、能力の向上のために必要な訓練をおこなう | |
就労継続支援(A型) | 一般企業での就労が困難な方に、雇用して就労の機会を提供するとともに、能力などの向上のために必要な訓練をおこなう | |
就労継続支援(B型) | 一般企業などでの就労が困難な方に、就労する機会を提供するとともに、能力などの向上のために必要な訓練をおこなう | |
就労定着支援 | 一般就労に移行した方に、就労にともなう生活面の課題に対応するための支援をおこなう |
なお、事業を利用する場合は、利用者それぞれの個別支援計画が作成され、利用目的にかなったサービスが提供されます。
補装具費支給制度
補装具費支給制度は、補装具を必要とする障害をお持ちの方などを対象に、体の欠損、または損なわれた体の機能を補完・代替する用具などに要する費用の額を一定条件に基づき支給する制度です。
お住まいの市区町村長に申請し、心身障害者総合相談所などの判定、または意見に基づく市区町村長の決定によって、補装具の購入、借り受け、または修理費用の支給を受けられます。なお、支給を受けるときは、所得に応じた利用者負担があります。利用者負担額は下表のとおりです。
区分 | 世帯の所得状況 | 負担上限額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
一般 | 市町村民税課税世帯 | 37,200円 |
引用元
補装具費支給制度について|保健福祉部心身障害者総合相談所
補装具費支給制度の概要|厚生労働省
障害をお持ちの方が利用できる社会保障制度
ここからは、障害をお持ちの方が利用できる社会保障制度について解説します。
障害年金
障害年金とは、病気やケガ、障害を原因とする障害により、仕事や日常生活などに支障をきたした場合に支給される年金です。
障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2つあり、国民年金に加入している方は障害基礎年金が、厚生年金に加入する方は障害基礎年金にくわえて、障害厚生年金が支給されます。
障害年金については、下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
傷病手当金
傷病手当金とは、病気休業中に被保険者と、その家族の生活を保障するための制度のことです。被保険者が病気やケガによって会社を休み、企業から十分な報酬が受けられない場合に支給される手当金です。
傷病手当金については、下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
労災保険
労災保険とは、業務中や通勤中による労働者の病気、ケガ、障害、死亡に対して、労働者やその遺族のために必要な保険給付をおこなう制度のことです。
労災保険については、下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
障害をお持ちの方が受けられる医療保障制度やサービス
ここからは、障害をお持ちの方が、受けられる医療保障制度やサービスについて解説します。
なお、自立支援医療については、下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
障害者手帳
障害者手帳とは、障害をお持ちの方が取得できる手帳の総称のことです。身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の3つがあり、それぞれ、社会活動の支援を目的とするほか、障害者総合支援法に基づく福祉サービスを受けることができます。
障害者手帳については、下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
身体障害者手帳
身体障害者手帳は、身体障害者福祉法に基づき、身体障害をお持ちの方の自立、社会活動の参加を促し、支援することを目的とした手帳です。
身体障害者手帳については、下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
療育手帳
障害者手帳のひとつである療育手帳は、知的障害をお持ちの方に対して、一貫した指導・相談をおこない、各種の援助措置を受けやすくする目的をもつ手帳です。
療育手帳については、下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
障害支援区分によって利用可能サービスは異なる!上手に利用し自分らしい働き方を実現しよう
障害をお持ちの方の生活を支える制度には、実は細かな要件が定められていたり、自治体によって異なるケースがあったりと、非常に複雑です。
ただし、本来利用できる制度があるにも関わらず、知らないことによって利用していないことは避けることが望ましいでしょう。まずは最寄りの市区町村に確認し、ご自身がどのような制度を利用できるのかを確認されるとよろしいかと思います。
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大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。