喘息を抱える方の仕事を休む目安とは?|障害者手帳や転職も視野に入れよう

気温や湿度、アレルギーによって引き起こされる喘息は、ごく身近な病気のひとつです。最近ではアレルギー体質が深く関係したことにより、10人に1人が小児喘息に罹患するといった情報も見受けられます。

そこで今回は、喘息になってしまった方や、喘息の症状が悪化してしまった方へ仕事を休む目安について解説します。喘息の種類や概要のほか、向いている仕事ややむなく仕事を続けられなくなった場合に利用できる制度や対策について紹介するので、ぜひ今後の参考資料としてお役立てください。

喘息とは?|喘息の種類と原因を正しく知ろう

喘息とは?|喘息の種類と原因を正しく知ろう

喘息は気管支喘息のことを指し、15歳未満までに罹患するものを小児喘息、15歳以上の罹患は成人喘息と呼びます。厚生労働省の喘息予防・管理ガイドラインでは

  1. 自然にあるいは治療により可逆性を示す種々の程度の気道の狭窄。
  2. 気道の過敏性が亢進。
  3. Tリンパ球、マスト細胞、好酸球などの炎症細胞、気道上皮細胞、線維芽細胞をはじめとする気道構成細胞、及び種々の液性因子が関与する気道の慢性の炎症性疾患。
  4. 持続する気道炎症は、気道傷害とそれに引き続く気道構造の変化(リモデリング)を惹起する。

引用元:2. 気管支喘息の定義、診断4) 1)気管支喘息の定義・概念|厚生労働省

と、4つの特徴から定義づけています。

小児と成人の喘息は同一の疾患とされる一方で、多くの相違点があるといわれています。小児はダニ・ペット・カビなどを因子としたアレルゲン物質によるアトピー反応からの喘息であるのに対し、成人は非アトピー、つまりアレルギー反応による喘息であり、慢性重症例が多い点などが挙げられます。

資料によってそれぞれ見解に違いがあるものの、小児喘息の場合は10%強の、成人喘息は10%弱ほどの罹患率とされ、概ね違いはないといわれています。

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気管支喘息

気管支喘息には以下の特徴があります。

  • 呼吸がしにくい
  • 息苦しさを感じる
  • 痰が絡む
  • 喘鳴がある

成人喘息はアレルギー反応による発症が多いと考えられており、喘息による発作が強まると以下のような症状がみられます。

  • 強弱のある咳によって呼吸がしにくい
  • 呼吸困難に陥りやすい
  • 埃やダニによって咳が悪化する
  • 静かな環境での咳により周囲の目が気になる

仕事や日常生活に支障をきたすケースも多いことから、重傷化を防ぐためにも、症状が続く日数・発作の強弱について自分なりに把握しておくことが大切です。

咳喘息

咳喘息には以下の特徴や症状があります。

  • 因子によって激しい咳が出る
  • 飲食しにくい
  • 眠れない(眠りが浅い)
  • 作業に集中できない

咳喘息は8週以上咳が続くことを基準としており、2ヶ月以上にわたって続く咳に悩まされるのが特徴です。その影響から食事がしにくい・眠れない・作業に集中できないといった支障がみられます。

また、職場や自宅環境に寄っては受動喫煙・埃・ダニなどの因子から症状が重くなるケースや、咳喘息から気管支喘息に移行する例も少なくありません。

 
キャリアアドバイザー
喘息は大人になってから重くなる傾向にあります。そのため、職業によっては発作が強く出る可能性を視野に入れる必要性、そして強い発作から体を守るため、働きやすい仕事について考えることが大切です

喘息を抱える方に向いている仕事とは?|職場環境が重要ポイント

喘息を抱える方に向いている仕事とは?|職場環境が重要ポイント

喘息を抱える方が働く場合、症状や考えられる因子を理解したうえで働くことが大切です。埃やダニが舞いやすい職場やじめじめとした職場だと、喘息の症状が悪化し業務に集中できなくなる恐れがあります。

ここでは、喘息を抱える方に向いている仕事について解説します。就職(転職)を検討中の方は、これまでの症状を振り返りながら読み進めていきましょう。

1. デスクワーク

デスクワークは、快適な環境での業務となるよう空調が設置された企業が多く、埃やダニといった因子から体を守り、喘息の発作を抑えながら働けます。デスク前に座っての作業が中心なので、場所移動や体を動かす必要もなく、喘息を気にせず働けるでしょう。

なお、デスクワークを中心とした仕事を希望するときは、喘息の発作を最小限に抑えられるよう、オフィスが清潔に保たれていること、換気システムが導入されていることなどに重点を置いて探すとよいでしょう。

2. 在宅ワーク・テレワーク

自分の家に作業スペースを設け、過ごしやすい環境で働ける在宅ワーク・テレワークは、パソコンを使った仕事が中心です。なかにはパソコンが使えなくてもシール貼りや製品の加工を主とした内職も多く、体に負荷をかけることなく働けます。喘息の発作が気になるなら、これまでの職歴や経験を踏まえ、在宅ワークやテレワークでも対応できる職種はないかを探すとよいでしょう。

なお、在宅ワークやテレワークで働く場合は、長時間同じ場所での作業が必要になることを踏まえ、埃やダニの因子から体を守るよう作業スペースをきれいに保つことが大切です。

 
キャリアアドバイザー
喘息だからと言って仕事を諦める必要はありません。最近では在宅ワークを取り入れた企業が多く、スキルや経験によっては在宅ワークを中心とした就職でも歓迎される場合があります。職場別で就職先を探す以外にも、自宅を使って働ける職種があることも視野に入れると働ける幅が広がります

仕事中に喘息の発作を起こしにくくするには?|周囲の理解を得よう

仕事中に喘息の発作を起こしにくくするには?|周囲の理解を得よう

喘息はさまざまな因子によって悪化する可能性があります。埃やダニといったアレルゲン物質以外にも、喫煙者の多い職場であれば受動喫煙によって喘息が悪化する恐れもあります。しかし、それらを完全に排除することは不可能ともいえるでしょう。

ここでは、仕事中に喘息の発作を起こしにくくする工夫を解説します。4つの項目を押さえ、喘息と仕事の両面と上手に向き合うコツを見つけましょう。

1. 風邪予防を徹底する

風邪予防を徹底する理由は、風邪の諸症状による気管支への影響や、免疫力の低下による咳の重症化を防ぐためです。喘息は気管支に大きな負担を与える病気です。そのため、風邪に罹患すれば咳が重症化する可能性が考えられます。

風邪は万病の元と言われるように、喘息を抱える方にとっても大敵です。風邪を予防するには、手洗い・うがいをはじめ、体を冷やさないよう長袖やブランケットの使用を意識的に取り入れましょう。

2. アレルゲンとなる物質を避ける

成人喘息は、その多くがアレルゲン物質からの症状です。喘息を抱える方は、考えられるアレルゲン物質の吸入を防ぐ対策も取り入れましょう。空気中に漂うアレルゲン物質は主に以下の5つです。

  • PM2.5
  • 花粉
  • 埃(粉塵)
  • ペットの毛
  • 黄砂

喘息が重症化しないようマスクを着用するほか、埃やダニの吸入が少ない職場を選ぶとよいでしょう。経皮からのアレルギー反応であれば、長袖の着用が認められた職種や、自宅での作業が中心の在宅ワーク・テレワークを選ぶのがおすすめです。

3. ストレスをためない

ストレスは喘息を悪化させるとした研究結果があります。そのため、ストレスと上手に向き合い、発散する工夫を取り入れることも大切。ストレスによる喘息の悪化を考慮し、体を酷使しない働き方やストレスを感じにくい働き方を心がけましょう。

引用元
悪化因子の対策|独立行政法人環境再生保全機構
日常生活におけるぜん息悪化の要因|独立行政法人環境再生保全機構

4. 発作の前触れを知っておく

喘息の発作には前触れがあることをご存じですか?たとえば、呼吸とともに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった音(喘鳴)があるときは、喘息の前触れに該当します。

早朝に深い咳が出る日が続いたり、痰が絡む咳が出たりする場合も発作の前触れに含まれるため、これまでの日常生活を振り返ってみましょう。

いずれかの症状がみられるときは、速やかに医師へ相談し、適切な治療を受けましょう。

前触れを知っておけば受診のタイミングがわかりやすく、どのような症状がどのようなタイミングで起きるかが明確になります。体を労りながら働くためにも、発作の前触れはしっかり押さえておきましょう。

 
キャリアアドバイザー
喘息は、状況や環境によって症状が大きくも小さくも変化する病気です。喘息を抱える方は、発作を最小限に抑える工夫を取り入れ、体を労りながら働くことが大切です。

喘息が悪化する前に!仕事を休む目安

喘息が悪化する前に!仕事を休む目安

喘息を抱えながら働くときは、仕事を休む目安を自分なりに設定するのがおすすめです。目安を設定しておけば咳の重症化を防ぎ、仕事と体の双方を考えた働き方が可能になります。

喘息の症状を踏まえ、ここでは喘息が悪化する前に仕事を休む目安を3つご紹介します。

1. 過換気(過呼吸)で呼吸が苦しくなったとき

喘息の症状として多くみられるのが長期的な咳・深い咳・呼吸困難です。これらの症状が数日続き日常生活に支障が出る場合は、医療機関を受診しましょう。

このとき、仕事内容や働く環境について医師に相談すると、喘息を抱える方に沿った働き方のヒントを得られる場合があります。なお、豊富な知識に基づき休職や転職を促された場合は、今後の働き方についても相談するとよいでしょう。

2. 喘息の症状が数週間続いているとき

喘息の症状が数週間続くときも、仕事を休む目安のひとつになります。長期的な咳は、喘息が悪化した可能性が考えられます。このようなときは無理に働こうとせず、医療機関へ受診し、医師の判断に従いましょう。

なお、喘息が悪化した理由や働き方を振り返り、職場環境が原因と考えられる場合は、休職や転職も視野に入れると症状の緩和につながるかもしれません。

3. 職場環境が喘息にとってよくない環境になったとき

職場環境が原因で喘息が悪化した場合は、喘息でも働ける職種は何かを視野に休職や転職を検討しましょう。職種によっては異動が多く、従業員とのコミュニケーション不足が要因となって想像以上のストレスが体に負荷をかけていた可能性があります。

症状が悪化し、日常生活もままならないと感じるときは、喘息を抱える自分を第一に考え、別の仕事を探すのが望ましいでしょう。

どうしても仕事が続けられなくなったら|障害者年金や障害者手帳取得も

どうしても仕事が続けられなくなったら|障害者年金や障害者手帳取得も

喘息の症状によっては、障害年金や障害者手帳の取得対象となる場合があります。ここでは、喘息を抱えながら働く方へ、利用できる可能性のある制度について解説します。

1. 喘息における障害年金とは

喘息を抱える方は障害年金を受給できる可能性があります。受給条件としては以下のとおりです。

初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていること(保険料納付要件)が必要です。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。

  1. 初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
  2. 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

引用元:障害年金|日本年金機構

どれだけ喘息の症状が深刻でも(1)を満たしていない場合、受給できません。年金の納付条件については最寄りの年金事務所に問い合わせるとよいでしょう。

なお、障害年金についてはDIエージェントでも詳しく解説しているので、以下のページをご確認ください。
障害年金はいくらもらえる?等級別金額の一覧やデメリットまでやさしく解説!

2. 喘息における障害者手帳とは

喘息は気管支喘息に該当し、呼吸器疾患に分類されます。呼吸器疾患には3つの等級があり、喘息の症状から該当するものがあれば、障害者手帳を取得できます。各等級の概要は下表のとおりです。

1級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

引用元:第10節/呼吸器疾患による障害 1 認定基準|日本年金機構

DIエージェントでは、障害者手帳や呼吸器機能障害について詳しく解説したページもございます。詳細については下記ページよりご確認ください。
障害者手帳とは?対象疾患・等級、 受けられるサービスなどもわかりやすく解説!【専門家監修】
呼吸器機能障害とは?身体障害者手帳の活用法から日常生活・仕事での工夫まで解説

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仕事を休む目安を明確に持ち、仕事の見直しもしてみよう

仕事を休む目安を明確に持ち、仕事の見直しもしてみよう

今回は喘息の概要と仕事を休む目安、喘息でも利用できる制度について解説しました。生活するうえでは、働き収入を継続させることが大切です。しかし、自身の体を酷使してまで働く必要はありません。

喘息は環境・生活習慣・ストレス・疲労など、アレルゲン物質に限らず多くの因子によって重傷化しやすい病気です。体調を考慮しながら働くためにも、仕事を休むことも検討する必要があります。

まずは医療機関などに相談し、客観的な医師の診断を踏まえて、具体的な対処方法を検討したり、周囲に相談したりすることをお勧めします。

場合によっては仕事についても見直す必要があるかもしれませんが、職場では言い出せない方や、症状と向き合いながらこれから就職を考えている方は、障害者枠で就職・転職するという手段もあります。

初めから症状を伝えて、配慮をあらかじめすり合わせしたうえで入社することによって、安心して働くことができます。

実際に、障害者枠で働き始めた方々からは「隠しながら就業していた頃よりも安心して働ける」「配慮をいただきながら働くことに後ろめたさがなくなった」というご感想をいただいております。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害をお持ちの方々の生活に有益な情報の発信に努めて参ります。

「今の自分に無理のない働き方をしたい」「症状に理解のある環境で働きたい」というご希望をお持ちの方に対して、就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

お一人おひとりの状況やご希望に合わせて適切なご提案をさせていただきますので、ぜひ一度ご相談ください。

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監修:高橋 平
早稲田大学卒業後、(株)D&Iに入社。 障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 現在はHRソリューション事業部の副部長として、DIエージェントの責任者を務める。