職業準備性をチェック! 障害者雇用で働く・復職する前に確認したい5つの項目

「職業準備性」という言葉を知っていますか? 実は障害者採用担当者が選考の際に重視しているポイントです。今回はその職業準備性について分かりやすく解説をし、ご自身でも簡単にチェックできるようにいたしました。
就労移行支援事業所ワークイズの就労支援員監修でお届けします!

職業準備性とは?

高齢・障害・求職者雇用支援機構の『令和3年度版就業支援ハンドブック』によれば、職業準備性とは「個人の側に職業生活をはじめる(再開も含む)ために必要な条件が用意されている状態」と定義づけています。
具体的には「心身の健康管理」「日常生活の遂行」「職業生活の遂行」といった要素からなるものです。

職業準備性、つまり働くための基本的な習慣や心構えが備わっているかは、雇い入れる企業からも重視されています。
しかしこれまでの経験や障害・疾患によりこれらの力が備わっていなかったり、一時的に損なわれていたりすることもあるでしょう。

 

職業準備性 就職・転職活動を始める前に「何ができているか?」「働くにあたってどこを伸ばすべきか?」をセルフチェックしてみましょう。

参考:発達障害ナビポータル「職業準備性(レディネス)とは」

職業準備性ピラミッド

また、職業準備性は、「健康」を土台にし、日常生活、職業への理解や準備というようにピラミッド型に表すことができます。

職業準備性ピラミッド
参考:発達障害ナビポータル
「職業準備性(レディネス)とは」

段階に応じてそれぞれ必要な支援や制度が用意されています。
たとえば、「まだ、自身の気持ちのコントロールが難しい」という場合は医療機関へ、「働いた経験が少なく、就職まであと一歩どうしたらよいか分からない」という場合は就労移行支援などに通うことが考えられます。

 

もし、今できていないことが多くても大丈夫! 様々な機関・福祉サービスを活用しながら職業準備性は向上させることができます。

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職業準備性をチェック

職業準備性は本来就労移行支援事業所などで専門家の下、チェックし、就職のためのプログラムを組んでいきます。

たとえば障害者就業総合センターの『就労支援のための訓練生用チェックリスト』以下の4つのカテゴリに対して27の質問が用意されています。

  1. 日常生活
  2. 対人関係
  3. 作業力
  4. 作業への態度
 

実際の職業準備性チェックリストはこちらのリンクからもご覧になれます。就労移行支援等の職員が利用者さんに対して活用するものになっています。

ここではより細かく具体的に示されている 山梨障害者職業センター作成「職業準備性のピラミッド」を参考に5つの項目についてわかりやすく説明します。

参考:山梨障害者職業センター「障害のある方へのサービス」

健康管理・病気の管理・体調管理

まずは土台となる健康管理に対しての項目です。

  • ☑睡眠
  • ☑食事
  • ☑通院や服薬
  • ☑自身の体調の把握
  • ☑対処や援助の方法

充分な睡眠が取れ、食事はバランスよく3食とれているかといったことから始まります。

 

食欲はありますか? きちんと眠れていますか?
お医者さんの指導のもと健康の基礎を作りましょう。

そして、ご自身の障害・特性の理解を深め、どのような時に体調が悪くなるのか、適切に周りにSOSを出せるのかを把握しておくことも重要です。
基本的な項目ですがこちらは就職の前から就職後も定期的に確認・振り返りができると良いでしょう。

 
CA

障害の理解は自分一人でおこなうにはなかなか難しいですよね。専門家のフィードバックを受けながら理解を進めるのが良いですよ。

生活リズム・日常生活

前の項目とも深く関係しているのが「生活リズム・日常生活」についてです。社会生活を送る上でのマナーもこちらに含まれます。

  • ☑規則正しい生活リズム
  • ☑身だしなみ
  • ☑金銭管理
  • ☑社会性・礼儀作法や生活のルール
 

たとえばうつ状態になると、部屋の片づけや入浴すら億劫になることもあります。
まずはご自身が少しでも快適な生活を送れるように衛生管理の習慣を取り戻していきましょう。

働いて収入を得る前に、金銭をきちんと管理できるか・計画を立てて使えるかを身につけておく必要があります。
また必要に応じて、生活保護費や障害年金の受給なども検討してください。

 

②の項目で不安があり、どこに相談したらよいか分からないという場合は、医療・福祉・就労・教育関係の機関と連携を取りながらサポートを受けられる障害者就業・生活支援センターへ相談することをオススメします。

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対人技能

いわゆる「コミュニケーション能力」の分野です。

  • ☑あいさつ
  • ☑言葉づかい
  • ☑協調性(共同作業ができるか)
  • ☑感情のコントロールや表現
  • ☑非言語的コミュニケーション

ここでは「誰とでも30分以上雑談ができるようになりましょう」といったことは求められません。
お互いが気持ちよく意思疎通を取れ、また自分からも困った時や「断り」「提案」を発信できるようになることが目指されています。

 
CA

口頭での連絡に苦手があるようだったらメールやチャットなどの代替方法がないかを模索する…このようなことも働くための準備になりますね。

基本的労働習慣

「基本的労働習慣」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、一つひとつ細かく見ていくと既にできているようなことも多くあるのではないでしょうか。

  • ☑「働く」ことに対する意欲
  • ☑集中力を保って作業し、持続する力
  • ☑報告・連絡・相談
  • ☑職場のルール理解(ビジネスマナー)
  • ☑安定出勤

一般常識とされる礼儀作法にくわえて、ビジネスの場における特有のマナーもありますね。

また、特に重要となるのが「安定出勤ができること」です。
ここで挙げたような力は就労移行支援や就労継続支援でも養えますし、通所を継続することで就職・転職時に企業にPRする「安定根拠」を作れます。

 

一日6時間×週5日通所し、そこで集中して訓練ができるよう頑張りましょう!

「基本的労働習慣はできている!」という方は、就職活動も始めていきましょう。
DIエージェントではお仕事のご紹介だけでなく、次に挙げる「職業適性」に関してもご相談にのりますよ!


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職業適性

ここまでくると「就職活動」のスタート~一般企業などで活躍していくための準備段階になるかと思います。ハローワークの職員や障害に詳しいキャリアアドバイザーなどの助言も受けながら、より自分らしく働くためのステップアップを目指しましょう!

  • ☑就労能力の自己分析(作業適性・量)
  • ☑作業のスピード、正確性、効率化の工夫
  • ☑指示の理解
  • ☑職場環境の変化への対応力

実習やトライアル雇用にチャレンジしつつ、実践の中で身につけていくのも良いですね。
これらをすぐに身につける必要はありません。就職後も伸ばしていって欲しい力となります。

 

テレワーク(在宅勤務)で働きたいとお考えの方はこれらに加えて、「テレワークならではの職務遂行能力」も必要とされます。
就労移行支援ワークイズでは在宅訓練・テレワーク就労に特化した訓練も行っていますよ。

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RIASECによる自己診断

RIASEC診断結果のレーダーチャート

RIASECとは30問程度の簡単な質問に答えると職業への関心の傾向が分かる診断です。ジョブカード(厚生労働省管轄)のサイトから簡易診断を受けられます。

厚生労働省|ジョブ・カード制度総合サイト「RIASECによる自己診断」
https://jobcard.mhlw.go.jp/selfanalysys/riasec.php
 

この結果が全てという訳ではありませんが、自分を理解するためにもチェックしてみると意外な発見があるかもしれないですね。

ハローワークでも無料で様々な適性診断を受けることができます。

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障害者のためのハローワークの利用方法

職業準備性を高めたいなら就労移行支援も利用してみて!

「職業準備性」がどのようなものか分かり、ご自身の中でもっと伸ばしていきたいと思うことは見つかりましたか?

今までお伝えしてきた通り、就労移行支援や就労を利用することで、プロの支援を受けながら職業準備性を高めることができます。
実際、就労移行支援事業所のワークイズではこのようなチェックシートなどを用いながら、就労支援員や生活支援員と共に客観的に定点観測をしていきます。

職業準備性チェックリスト経過記録表
▲クリックで原文が見られます(外部サイト:「チェックリスト経過記録表」)

ワークイズへのご相談はこちらからお気軽にどうぞ。

備えをしっかりおこなった努力は企業からも評価いただけます。

「職業準備性」で挙げられた項目を意識して、自分らしい働き方を実現してください!

監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。