障害者の方が、未経験で事務職に就くにはどうすれば良いのでしょうか。この記事では、障害者の方が事務職に就職・転職するためのポイントを中心に、事務職の種類や就職・転職に有利なスキル、心構えなどを紹介します。障害者の方で、未経験で事務職に就職・転職する方法が知りたいという方は、ぜひチェックしてみてください。
事務職とは
一口に「事務職」といっても、仕事の内容は多岐に渡ります。まずは、事務職の種類や仕事内容について学んでみましょう。
事務職の種類
事務職と呼ばれる仕事は、細かく分けると一般事務や営業事務のような、多くの会社にある仕事から、経理事務や法務事務、貿易事務、医療事務のような専門性のある仕事まで、さまざまな種類に分かれます。
電話応対や来客応対、書類の作成、整理、データ入力などの業務を全般的に行い、ほかの社員の業務をサポートするのが一般的です。実際にどのような仕事をするかというのは、就職先の会社の規模や、所属する部署によって異なるため、応募の際には仕事内容をしっかりチェックしておくことをおすすめします。
未経験からでも働きやすい
事務職の求人は未経験でも応募できるケースが少なくありません。なかでも、多くの人手を欲している金融・保険業界やIT・通信業界、一部のメーカーなどは、未経験者を受け入れていることが多く、未経験でも働きやすい環境が整っています。
配属先によっては、経理事務のような専門知識を得られることもよくあり、キャリアを積んでステップアップしていく人も多くいます。
事務職は、PCを使って業務を行うものが大半です。ワードやエクセルといったOfficeソフトのスキルは多くの求人で歓迎条件や必須スキルに設定されていますので、これらのPCスキルがあることは就職や転職で有利になります。
障害があっても働きやすい
事務職の仕事は多岐に渡りますが、決められた仕事をルーティーンでこなすものも多く、障害者の方でも自分のペースで働きやすいことがメリットです。求人をチェックするときは、データ入力や経理業務、書類整理など仕事内容を見て自分の得意な仕事かどうかを確認するとよいでしょう。
事務職に必要なスキル・心構え
事務職に応募したいと思ったら、事務職に必要なスキルや心構えを知っておくと良いでしょう。求められるスキルや事務職に就くときの心構えをまとめました。
PCスキル
事務職にはさまざまな種類の仕事がありますが、ほとんどの場合でPC操作が必要になります。特別高度なスキルが求められることはめったにありませんが、タイピングのスキルにくわえて、ワードやエクセルといったOffice系のソフトが使えることが求められます。
Microsoft Officeに関する国際資格である「MOS」の資格を取得しておくと、採用担当者にもその人のPCスキルや学習意欲が伝わりやすく、就職や転職の書類選考や面接で有利になることが多いでしょう。また資格については、障害者の方の資格取得について|就職や転職を目指す方におすすめの資格も紹介の記事で詳しく紹介しているので、気になる方は参考にしてください。
コミュニケーションスキル
事務職はPCスキルのほかに、コミュニケーションスキルが問われることもよくあります。事務職は、その仕事単体で業務がすべて完結するような仕事ではありません。他の部署で働く人のサポートとして動いたり、会社とお客様との間に立って働いたりすることが多い仕事です。一緒に仕事をする人やお客様と円満な関係を築くことが大切です。
柔軟性と積極性
事務職は、基本的にはルーティーンでこなす仕事が多いのですが、場合によっては、急ぎの仕事が途中で入ったり、受けた仕事の内容が、相手の事情で変更になったりすることもあります。その都度、仕事の依頼を柔軟に受け止めるという心構えが大切です。
PC作業が多いため、社内システムが更新されると、新たにPCスキルや事務スキルを習得する必要があります。そのような場面では、積極的に学ぶ姿勢も重要です。
未経験から事務職に就職・転職する方法
障害者の方が未経験から事務職に就職・転職したい場合には、どうしたら良いのでしょうか。未経験から事務職に就職・転職する方法を紹介します。
就職・転職エージェントを利用する
最近では、障害者雇用枠に特化した就職・転職エージェントを活用する人が増えています。就職・転職エージェントとは、就職や転職のプロが求職者のアドバイザーとして担当し、企業とのやりとりをサポートしてくれる人材紹介サービスです。
エージェントの強みは、企業の細かい採用ニーズを把握している点です。
例えば「未経験歓迎」と求人票に記載されていても、「業務でPCを触ったことすらない人でも大丈夫」なのか「事務職は未経験でもいいが、PC利用の経験がないとNG」なのかは、企業に聞いてみないとわかりません。そういった細かい要件を把握し、自分のスキル・経験に合った求人を紹介してくれるのがエージェント利用の大きなメリットといえるでしょう。
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地域障害者職業センターを利用する
地域障害者職業センターは、全国の各都道府県に1か所以上ずつ設置されている施設で、障害のある方の就職・転職に役立つような専門的な職業リハビリテーションが受けられます。
障害者の方が就職に対して不安に感じることへ、専門的なアドバイスとサポートが受けられるのがメリットです。障害者雇用に関する事業主へのサポートも行い、サービス内容は障害者が働くことについて特化しています。
地域障害者職業センターとは障害をお持ちの方と働く場所の双方を支援している施設です。これからお仕事探しをしようと考えている方も相談ができる場所です。この記事では、地域障害者職業センターの概要や受けられる支援内容・利用方法などを紹介していきます[…]
障害者就業・生活支援センターを利用する
障害者就業・生活支援センターとは、障害者の方の職業準備訓練や、職場定着に向けた支援などを行う施設です。保健所の館内に設置されているため、地域障害者職業センターよりも各都道府県での設置数がたくさんあります。
地域に密着しているのが特徴で、障害者の方の就職や就労に関するサポートだけでなく、生活面に関する支援も行っているのがメリット。仕事や生活全般に相談したい場合におすすめです。
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ハローワークを利用する
ハローワークとは、国が運営する無料の職業紹介所のことで、相談員による職業紹介を中心に、相談や職場適応指導などが行われています。ハローワークのインターネット求人検索サービスは、障害者の方専用の検索があります。
民間の求人サイトと比べて民間の求人サイトと比べて圧倒的に求人数が多いため「事務」「未経験」での検索でもヒットする可能性が高いです。地域障害者職業センターとも連携しています。
ハローワークは、求職者・事業者双方への情報提供、雇用保険手続きや助成金事務など、様々なサービスを行っている国の公的機関です。 この記事では、ハローワークでできることや利用手順、メリット・デメリットを解説します。また、障害をお持ちの方がハロ[…]
障害を開示するべきか
障害者の方が就職や転職を行うときに多くの方が悩むのが、障害を持っていることを周囲に公開するかどうかという点です。障害を抱えていることは、必ずしも開示しなければならないというものではなく、開示するかどうかは本人の自由です。
障害について開示(オープン)する場合と、非開示(クローズ)にする場合、それぞれのメリット・デメリットを知って、自分はどうしたいのかを考えることが大切です。
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オープンで働く場合
障害を抱えていることをオープンにする場合は、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。それぞれをまとめてみました。
メリット
障害をオープンにすることの大きなメリットは、職場や社内で一緒に働く人に障害についての理解が得られ、さまざまな考慮をしてもらえるという点です。
会社に障害者用の特別制度がある場合はそれを受けることができますし、声かけや座席の配置など、社内の人に障害に配慮した対応の仕方もしてもらえるでしょう。通院や服薬がある場合は、就業時間や休暇の取得についても考慮してもらえる可能性があります。
より働きやすい環境が求められるというのが、障害をオープンにして働くことのメリットです。理解が得られているという安心感は、ストレスの軽減にも繋がります。
デメリット
障害者であることをオープンにすると、応募できる求人の選択肢が狭まることが多いのがデメリットです。
これまで障害を抱えた方を雇用したことがない会社の場合は特に、障害を抱えながら働くというイメージが湧きにくく、担当として与えられる業務範囲が限定的なケースもあります。本人の働きたいという気持ちや、こんな仕事したいという気持ちと、担当する業務が必ずしも一致するとは言い切れないのが現状です。
特に、自分だけで就職・転職活動を行うときに起こりがちなデメリットなので、オープンにして就職・転職活動を行うときは、就職・転職エージェントなどを活用して、企業とのやりとりなどは、プロのサポートを受けることをおすすめします。
クローズで働く場合
障害を抱えていることを企業に伝えず、クローズで働く場合は、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。さっそくチェックしてみましょう。
メリット
比較的体調が安定していることが多い方の場合、クローズで応募する人もいます。障害を抱えていることを企業に伝えないということは、一般求人で応募するだけでなく、働くことが決まったあとも、障害者であることを伝えないということです。
一般求人は業種や職種がたくさんあります。クローズで求人へ応募する場合は、障害者の方のみを対象とした求人よりも応募できる求人が多いことや、仕事の選択肢が広がるケースがあることが大きなメリットです。
デメリット
クローズで働くことの大きなデメリットは、心身への負担が大きいということです。会社に障害を抱えていることを伝えていないため、もし会社に障害者の方を支援する制度が設けられている場合でも、その制度を受けることがきません。
体調不良や通院、服薬などについても、同じです。通院日や服薬のタイミングなどに配慮してもらえることがないため、休暇の取得が難しい会社で働くときは体調に心配が残ります。障害を隠して働いているため、「いつか隠していることが分かってしまうのではないか」という不安が付きまとうのも、デメリットのうちのひとつです。
まとめ
一人で就職・転職活動を進めるのが不安な場合は、プロの担当者がついてサポートしてくれる就職・転職エージェントを活用してみましょう。障害者の方の就職・転職事情に詳しいため、どのようにすれば未経験でも事務職に就けるのかというアドバイスが受けられるでしょう。障害者の方も、勇気を出して未経験から事務職にチャレンジしてみましょう。

早稲田大学卒業後、(株)D&Iに入社。 障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 現在はHRソリューション事業部の副部長として、DIエージェントの責任者を務める。