障害者の方が就職や転職をする際には、面接をクリアしなければなりません。障害者雇用の面接で、何を聞かれるのか分からなくて不安という方も少なくありません。この記事では、障害者の方の面接の受け方や、具体的な質問内容、答え方のポイントなどを紹介します。面接を受けるときの参考にしてみてください。
障害者の方が、障害者雇用の面接を受ける際に聞かれる内容の特徴とは
障害者の方が面接を受けるときには、一般的な質問のほかに、いくつか質問項目が増えることがあります。面接は、企業が応募者のことを知るために設けられます。その人について詳しく知りたいというのが企業の本音です。
面接を受ける前には、自己分析や自分の障害についての振り返りをして、スムーズに答えられるよう準備をしておきましょう
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ご自身の障害について教えてください、という内容は必出
障害をお持ちの方の面接では、「自身の障害について教えてください」という質問は必ず受けることになるでしょう。採用に当たってどのような配慮が必要なのか、長く一緒に働くために会社が準備した方が良いことを検討するための質問です。
できることとできないことを明確にし、客観的な視点で正確に伝えることが大切です。正確に伝わらなければ、仕事がスタートしてから不便を感じてしまうかもしれません。自分の障害の特性や、働くときにお願いしたい配慮がある場合には、面接の機会に伝えておくと安心です。
障害者の方が、障害者雇用の面接を受ける際に聞かれる質問(15例)と回答のポイント
一般枠の採用と障害者枠の面接で、共通して質問されることもあれば、障害者だからこそ聞かれる質問もあります。自己紹介や志望動機、職務経歴、転職理由などは、面接で一般的に質問されやすい内容です。障害者の方は、障害についての質問が加わると思っておけば大丈夫です。
障害者の方が面接で受けやすい質問と、回答のポイントを解説します。
【1】自己紹介、自己PRをしてください
自己紹介や自己PRをしてくださいという内容の質問は、一般採用、障害者雇用に関わらずよく聞かれるものです。会社の採用担当者は、書類上でしか応募者のことを知らないため、どのような印象の人なのかというのを知りたがっています。
会社によっては、1分程度や3分以内など、時間に制限が設けられるときもあります。
どんな性格なのかや、前職について軽く触れるなどをしながら、自己紹介を手短にまとめます。明るく前向きな印象が残せるよう、答えるときは笑顔を心がけるのがポイントです。
【2】ご自身の障害について教えてください
障害者の方の面接で説明を求められることが多いのが、自身の障害についてです。
障害者の方を雇用したことがある会社であれば、ある程度障害への理解がありますが、そうでない場合は、会社は障害者の方を受け入れる具体的な準備の仕方が分かりません。採用担当者は、応募者にどんな仕事が依頼できるのか、雇用するためにはどういった配慮が必要なのかを知るために質問しています。
障害について伝えるときには、自分にできることとできないことを明確にしておきましょう。例えば、聴覚障害の方の場合、「相手の口元を見ながらの口話はできるが、電話応対は難しいのでご配慮ください」と伝えれば、採用担当者はその人が働く姿のイメージが湧きやすいでしょう。
障害に関して詳しく知らない面接官も少なくありませんので、わかりやすく伝えることを意識してください。
【3】最近の調子はどうですか?
障害者の方の面接の受け答えで、どう答えて良いかわからないと悩みがちなのが、最近の調子を聞かれる質問です。安定した生活が送れているかということが聞かれており、採用担当者は、休まずに勤務できるかどうかを確認したいという意図があります。
【4】勤務中の体調不良の対処方法はありますか
勤務中に起こりそうな体調不良や、その対処法を聞かれることもあります。どのような仕事であれば働きやすいか、どのようなサポート体制が必要なのかを会社が考えるために聞かれる質問です。
その際に、「薬を飲んでいるので、薬を飲んで30分程度すると症状が落ち着く」など、自分で対処できる方法があればそれも伝えておき、安心感を与えるのがポイント。もし、何かサポートが必要な場合は、併せて伝えておきましょう。
【5】会社に配慮してほしいことがあれば教えてください
障害者の方を雇用したことがない場合は、どのようにサポートをすれば良いのかわからないという会社もあります。すでにあるサポートは継続されるでしょうし、会社によっては、新たに何かサポートを考えてもらえるかもしれません。
「自分ではこのように対策をしているので、それでカバーできない分を配慮してください」というスタンスを伝えると好印象が残せます。
《例》
ADHDの特性として、書類の誤字脱字などのケアレスミスをしやすい傾向があるため、自己対処としてダブルチェックや指差し確認などをしています。
そのため、納期性の高い業務がある場合は、早めにお知らせいただけると落ち着いて取り組むことができます。
【6】前職(これまでの仕事の経歴)やキャリアについて教えてください
障害者雇用だけでなく、一般採用の際にも聞かれるのが、前職の仕事内容やこれまでの経歴です。会社は、応募者がどんなことができるかを具体的に知りたいと思っています。経験が活かせる仕事がないか、どのような仕事を依頼すればスムーズに進みそうかを検討するために必要となる情報です。
【7】前職の退職理由について教えてください
退職理由は、志望動機と同じくらい採用担当者が気になるポイントです。体調のことや退職理由に一貫性があるか、退職理由を述べるときに他人のせいにしていないかなどがチェックされます。
前職の退職理由が克服できていなければ、入社してもすぐに辞めてしまいかもしれないと不安にさせてしまい、採用が見送られてしまうことも。しっかりとポイントを押さえて答えましょう。
「障害があることで周囲に遠慮してしまい、コミュニケーションがうまく取れず退職してしまいました。その後、カウンセリングを受けて、コミュニケーションの取り方に自信が付き、また働きたいと思えるようになりました」というように、退職理由をカバーすることで、イメージを悪くすることなく退職理由が伝えられます。
【8】志望動機を教えてください
志望動機は面接で必ず聞かれるので、しっかりと準備しておくことをおすすめします。どのくらい働きたいと思っているのか、どのような理由で会社選びをしているのかということを通して、応募者の働く意欲や本気度をチェックしています。
その会社のことはもちろん、業界全体や競合他社についても調べておくと、志望動機が作りやすくなります。
その会社のどこに惹かれ、自分のどういったところを活かし、どんな風に活躍したいのかを伝えられればベストです。
【9】転職する理由を教えてください
転職する理由を聞かれるのは、退職理由と志望動機をセットで聞かれているのと同じだと思ってOKです。長々とは話すのではなく、退職理由と志望動機を組み合わせて、簡潔にまとめて答えられるよう準備しておきましょう。
【10】前職でストレスに感じたことはどのようなことがありましたか?
一般的に何か障害を抱えていると、ストレスを感じやすいといわれています。働きやすい環境を整えるためにも、企業は応募者がどんなことにストレスを感じるのかが知りたいのです。
まずは、自分でも日常生活でストレスを感じることが何かをチェックしてみましょう。自分のストレスと向き合うことで、自分のストレスの原因や対処方法を探すことができます。就職活動だけでなく、日常生活もスムーズに運びやすくなるという点でもメリットがあります。
正直にストレスを感じやすい状況を伝えることが大切です。ストレスとどのように向き合っているか、日ごろの対処方法などを交えながら説明することがポイントです。前職で、工夫してストレスを乗り越えた経験があれば、積極的に伝えましょう。
【11】残業することはできますか
障害者雇用枠の求人では、残業は配慮してもらえることが多いですが、一部の企業や職種によっては残業が発生する場合があります。体調が第一優先ですので、無理に「大丈夫です」と答える必要はありませんが伝え方に気を付けましょう。
【12】得意なこと(仕事)や苦手なこと(仕事)を教えてください
得意なことや苦手なことを聞かれたら、これまでの仕事を思い返し、褒められたエピソードや、ミスの多かった仕事などを思い浮かべて答えましょう。仕事に関する、できることとできないことを聞かれていると捉えてOKです。
【13】薬を飲む頻度や、副作用などあれば教えてください
どのくらいの頻度で薬を飲む必要があるのか、薬を飲んだときの副作用などの情報を企業が把握しておくための質問です。会社に薬や体調のことを把握しておいてもらえると、体調が悪くなったときに配慮してもらえることがあります。
【14】睡眠時間や生活リズムについて教えてください
症状によっては睡眠や生活リズムに影響が出る方もいるため、会社はそれによる遅刻や欠勤がないかを心配し、質問をしています。
仕事をはじめたら、決められた時間に出社する必要があり、それができる体作りをしなければいけません。就職すると決めたら、生活リズムをしっかりと整えるようにしましょう。
【15】休日はどのように過ごしていますか、ストレスの発散方法などありますか?
ストレス発散ができているか、生活に楽しみがあるかを尋ねる質問です。障害を抱えているとストレスが溜まりやすいと言われています。疲れを溜めてしまって、欠勤や遅刻に繋がることを会社は心配しています。
友人とカラオケ、サイクリング、映画を見ることなど、自分の楽しみやストレス発散になっているものを答えればOKです。
障害者雇用の面接で、面接官(採用担当者)が見ていることは何か
質疑応答の答えが知りたいだけなら、面接でなく書面での質疑応答で十分ですよね。では、なぜ面接をするのでしょうか。面接で採用担当者がチェックしているのは。質疑応答の答えだけではありません。障害者雇用の面接で、採用担当者がチェックしているポイントを紹介します。
身だしなみ、言葉遣い、立ち居振る舞い
面接は、直接その人に会って行うことに意味があります。採用担当者は、応募者の身だしなみや言葉遣い、立ち居振る舞いの仕方が、社会人としてふさわしいかどうかをチェックしています。
面接は誰でも緊張するものですが、できるだけリラックスして、自然な笑顔で答えられるようにしたいものです。服装に清潔感があるかどうか、話し方や態度に好感が持てるかなどがチェックポイントになります。
長く一緒に働いていける方かどうか
面接は、会社の採用担当者が、その会社で一緒に仲間として働ける人を探すためのものです。採用担当者は、実施に応募者に会ってみて、長く一緒に働いていけるかどうかを確認しています。
仕事に対する意欲があるか、周りの人と協力して仕事に取り組めそうか、すぐに辞めてしまいそうではないかなどを、質疑応答の受け答えやその人の与える印象で判断されます。
どんな仕事に適性がありそうか
面接の様子で、応募者にその会社の仕事のどの部分を任せるかが検討されます。採用担当者は、応募者にできることとできないことを尋ねたり、これまでの経験を尋ねたりして、どんな仕事に向いている人なのかを考えます。
社風に合っているか
どんなに能力のある人でも、その会社の雰囲気とマッチしない場合は、採用が見送られることがあります。たとえば、チームで仕事をすることが多い会社に、自分の意見で仕事をすすめたい人が入社しても、足並みが揃わず、思ったような結果が出ないことがあります。
業務をスムーズに進めるためには、その会社の社風に合う人かどうかというのは、大きなポイントになります。
面接対策をするには
面接を通過するには、前もって準備をしておくことが大切です。どのような質問がされるのかをリサーチし、それに向けた回答を考えます。スムーズに答えられるように、繰り返し練習しておきましょう。誰かに話し方をチェックしてもらって、好印象が与えられるかを確認しておくと安心です。
エージェントなどを利用する方法もある
なかなか面接が通過できないと悩む人や、ひとりで就職や転職活動を進めるのが不安な人は、転職エージェントの活用がおすすめです。転職エージェントには障害者の方専門のエージェントがあり、プロのキャリアカウンセラーなどが就職や転職全般をサポートしてくれます。
履歴書の書き方のチェックや模擬面接なども受けられるため、初めての就職・転職活動でも安心です。自分に合った働き方を見つけるためにも、エージェントを積極的に活用することをおすすめします。
まとめ
障害者の方の採用試験の面接では、自分のスキルや経験だけでなく、障害についてや働く上でのさまざまな事柄について質問されます。あらかじめどのようなことを聞かれるのかをリサーチして答えを準備し、落ち着いて上手に面接を乗り切りましょう。

早稲田大学卒業後、(株)D&Iに入社。 障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 現在はHRソリューション事業部の副部長として、DIエージェントの責任者を務める。