双極性障害と診断を受けた後、休職を検討するものの、なかなか踏み切れずにいる方も多いのではないでしょうか。社内の同僚や上司、仕事のボリュームなどを考えると、思い切った決断ができないのも無理はありません。
そこで今回は、双極性障害による休職方法として、手続きの流れや休職後の過ごし方について解説します。社内のことが気になるのはやむを得ないことですが、まずは自分の体を最優先に考え、効果的な過ごし方などを押さえておきましょう。
双極性障害とは
双極性障害は、うつ状態に加えて躁状態もみられ、それらを繰り返す慢性的な気分障害の一つです。今までは躁うつ病と呼ばれていましたが、両極端な症状が起こることから、双極性障害と呼ばれています。
WHOによる国際疾患分類「ICD-11」では「障害」という言葉があらぬ誤解を招く懸念を考慮して、新たに「双極症」という日本語訳が使用される予定としています。
双極性障害についてはこちらの記事でもまとめているので、気になる方はこちらもぜひご一読ください。
双極性障害で休職する|手続きの流れ
双極性障害と診断を受けた後、体調を考慮した上で休職を検討する方もいるでしょう。ここでは休職の流れについて解説するので、休職する際はぜひ参考にしてください。
➀会社の休職制度を確認する
休職前に、まずは会社の休職制度の有無について確認しましょう。一般的な就業規則では、最短で3ヶ月、長くて3年と定めているようです。ただし会社によっては休職制度自体を設けていなかったり、一般的な期間と異なることもあります。休職する際は、会社の就業規則に目を通し、休職にまつわる規則事項を確認しましょう。
なお就業規則または契約書等に目を通しても休職について記載がない場合も珍しくありません。このようなときは人事部署等に確認することをオススメします。
➁医師に診断書の発行を依頼する
双極性障害による休職を希望する際は、医師から診断書を発行してもらうことも大切です。診断書を会社に提出することで、業務における影響や症状、業務遂行そのものが困難であることを客観的に伝えることができます。自分の障害について言葉で伝えることは難しいです。
「どのように伝えれば良いか分からない、けれど仕事を続けることは困難」といったときほど医師に診断書の発行を申し入れ、上司に相談しやすい環境を作りましょう。
休職を検討する場合は、できるだけ早いうちに医師に診断書を依頼しましょう。
③直属の上司または産業医に休職について相談する
医師による診断書が発行された後は、直属の上司または産業医に休職について相談しましょう。休職を求める際は、なぜ休職を希望するのかに加えて、治療計画や復職の意思などを具体的に伝えることで手続きがスムーズに進みやすいです。
相談する際は、どのような理由で休職を求めるのかについて文章をまとめておくと良いかもしれません。
例えば、どのような経緯・理由で双極性障害と診断を受け、どれくらいの期間休職を希望したい、といったイメージです。具体性のある相談内容ほど、相談を受けた側に緊急性や休職の必要性が伝わり、手続きまでの流れがスムーズになるでしょう。
④上司または担当部署へ診断書を提出する
最後に上司または担当部署へ診断書を提出します。なお、診断書だけを提出しても、上司や産業医は現状をうまく把握しきれません。診断書を提出する際は、自分の状態について自分の口で正直に伝える姿勢を心がけましょう。
双極性障害での休職|傷病手当金の利用について
休職期間に給与が支払われない場合は、全国健康保険協会・健康保険組合のどちらかから傷病手当金の給付を受けることができます。
傷病手当金とは、業務以外での病気・ケガによって働けない場合に被保険者に支給される給付金のことです。申請にあたっては労務不能を証明するためにいくつかの書類を用意する必要があります。
詳細についてはこちらの記事でまとめています。傷病手当金について知りたい方はぜひご一読ください。
休職後の過ごし方
会社から休職を許可された後は、自分を最優先に考えながらゆっくりと過ごしましょう。ここでは休職後に参考にしてほしい7つの過ごし方について解説します。
➀休養に専念する
休職後は休養に専念しましょう。無理はしようとせず、まずは自分の体調を思いやる時間を過ごすようにしてください。
休み始めの頃は、どうしても会社のことが気になるかもしれません。しかし、休職手続きが済み、無事に休めているのですから、今は何事も深くまで考えないようにすることも大切です。
休もうと思っても最初は難しいかもしれませんが、できる限り自分のことを1番に考える姿勢を維持しましょう。
➁規則正しい生活を心がける
休職前は仕事のことで手一杯で、ゆっくりと休むこともできなかったかもしれません。そのような方は、休職を機に、規則正しい生活に戻すことを始めてみましょう。
規則正しい生活をしようと思っても、最初は決めた時間に眠れないなど、問題が生じることもあります。深夜にならないうちに眠りにつく、朝は9時までには起きるなど、達成しやすい目標を立てて取り組むことで、徐々に規則正しい生活に戻すことができるでしょう。
③通院・服薬を忘れない
双極性障害では、薬物療法による治療が一般的です。そのため、通院や服薬を忘れてしまうと、症状が悪化する恐れがあります。
また治療が進みうつ状態および躁状態の症状に緩和がみられると、自己判断で通院や服薬をやめてしまう方が少なくありません。
どれだけ症状が緩和していても、自己判断で治療をやめると服薬等を忘れたときと同様、症状が悪化したり治りにくくなったりする可能性があります。
症状が落ち着いていたとしても、医師による診断を受けるまでは、通院・服薬は忘れない・やめないよう心がけましょう。
④軽度な運動を取り入れる
症状が落ち着きをみせはじめたら、1日の活動量を増やす目的から、軽度な運動を取り入れるのもオススメです。うつ状態がひどいときは、仕事を休んでいることや周囲に迷惑をかけているといった心配から、様々な焦りを感じやすいです。
様々な事柄に対し強い不安感等を感じるときに活動量を増やすと、かえって心身に負荷をかけて症状が悪化する可能性があります。
症状が落ち着きをみせ心に余裕ができたときは、15分程度のウォーキングをはじめたり室内でラジオ体操をしたりするなど、軽度な運動を取り入れてリフレッシュできる時間を作ってみましょう。
⑤栄養バランスを意識した食事をとる
仕事を頑張り過ぎるあまり、栄養バランスを意識した食事ができていなかった方も多いでしょう。そのようなときは休職を機に、主食・主菜・副菜・汁物などを取り入れた食事を心がけてみましょう。
乱れた食生活を続けると、精神を安定させる働きを担うセロトニンが不足すると言われています。心身が辛いときに食生活を意識することは、最初は時間がかかるかもしれません。そのようなときは、栄養バランスを考えて作られた宅配弁当を利用すると良いでしょう。
⑥趣味や特技を見つける・取り組む
体調が良い日が比較的長く続くようであれば、趣味や特技をみつけ、取り組んでみるのも効果的です。特に趣味や特技がないといった方は、後回しにしていた積読を読み始めるのも良いでしょう。
なお外出する際は急な症状の悪化に備えて、公共交通機関を複数乗り継ぐ必要のある場所に出掛けるのは避けてください。体調をみながら自分なりに工夫し、気分転換につながることを始めましょう。
⑦体調をみながら疑似職場に参加する
体調が良い日が続き、復職を視野に入れたいときは、疑似職場に参加するのも良いでしょう。リワーク・プログラムとも言われ、一般的な会社に近い雰囲気の中で自分の体調・体力を整えながら業務に取り組めます。
実施機関には公共施設でもある地域障害者職業センターをはじめ、医療機関や会社等があります。心身の状態をみながら復職に動きたいといった方は、このような支援を利用するのも方法の一つです。
双極性障害で休職|活動期のポイント
双極性障害で休職後、心身の状態が回復をみせはじめたときは、復職や退職、転職など、自分のこれからについて考える時間が増えます。しかし、症状が落ち着いているからといって、大きな決断をするのは避けましょう。
ここでは今後を視野に入れて活動をはじめる時期において押さえておきたいポイントを紹介します。
➀双極性障害について理解を深める
復職や退職、転職などを考えるときは、まず双極性障害について理解を深めることから始めましょう。
例えば復職を申し出る場合、自分の症状について理解を深めておくと、障害について会社に不足なく共有することができます。きちんと説明を受けることができれば、会社も必要な配慮について考えるきっかけとなり、これまで以上に働きやすい環境に整備される可能性があります。
活動期の中で今後について考えるときは、どのような配慮が必要で、どのような業務だとスムーズに取り組めるかを伝えられるよう、自分の症状について理解を深めておきましょう。
なお、復職する場合は、復職が可能な環境かを確認するため、会社側の合理的配慮について調べておくことも大切です。合理的配慮については以下の記事でまとめていますので、ぜひご一読ください。
➁過度な飲酒・喫煙や昼夜逆転は避ける
症状が落ち着きをみせていても、過度な飲酒・喫煙、さらには昼夜逆転した生活は避けましょう。このような生活を続けると、生活習慣や体に必要な栄養素が不足し、症状を悪化させる恐れがあります。
飲酒や喫煙については、医師に相談し、どの程度まで許容範囲かを聞いておくと安心です。
③転職活動はマナーを守って取り組む
休職中の場合、会社はあなたの復職を待っているでしょう。色々考えた結果、別の業種が向いていると思い勝手に転職活動を進めると、会社に混乱を招く可能性があります。
今の業種が自分に合わないと判断したときは、転職活動をするのではなく、退職を申し出る準備を整えることから始めましょう。
すでに転職を視野に入れているのなら、双極性障害があっても働きやすさを感じる職種や環境について調べるまでに留めるのが望ましいです。
休職はあくまで復職を前提としている可能性を踏まえ、それでも退職を希望するときは直属の上司に相談し、順序を守るよう心がけましょう。
休職中は自分の体調を優先にしよう
休職手続きがスムーズに終わり、無事に休職できた場合は、会社のことは今は考えず、自分の気持ちが穏やかになるまでゆっくり過ごしましょう。
今の時期にあれこれと考えても、かえって障害が強く出るなどの悪影響を招きかねません。「休職できたのだから今は休もう」と、気持ちを切り替え、まずはきちんと睡眠を取るなどの生活改善に励んでみても良いでしょう。
休職中にこれまでの業務等について考え退職した場合は、時期をみて転職活動が必要になるでしょう。転職活動に不安があるときや、自分に合う業種が分からないといったときはDIエージェントをご活用ください。
DIエージェントでは様々な障害をお持ちの方の就労をサポートした実績があり、常にご利用者様に寄り添った支援を行っています。就労における不安や相談事がある方は、ぜひこの機会にご相談ください。
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双極性障害だと仕事が続かない?転職を繰り返すことなく長く勤められる職場環境とは
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。