統合失調症は職場に迷惑?働きやすい環境や仕事選びのポイントを知ろう

仕事において、強い被害妄想が起きたりやる気が起きずミスが増えたりして、周りに迷惑をかけていると感じる場合、統合失調症かもしれません。

そこで、統合失調症とはどんな病気で、職場ではどんなことに困難を感じやすいのかを解説します。あわせて、統合失調症の方が働きやすい環境や仕事探しのポイントなども伝えるので、働き方を考える際の参考として役立ててください。

統合失調症とは?症状の種類

統合失調症とは?症状の種類

統合失調症とは、思考がまとまらない・幻覚や妄想にとらわれる・意欲が減退するなどの症状が発現する精神疾患の一種です。原因は解明されていませんが、神経伝達物質のバランスやストレスなどが関係しているのではといわれています。

統合失調症は大きく分けて3つの症状に分類されるので、下記でそれぞれの症状について解説します。

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陽性症状

統合失調症の陽性症状とは、健康なときにはなかったものが現れた状態。幻覚や妄想が代表的な症状です。

幻覚のなかでも「幻聴」はよく見られる症状で、実際には聞こえないはずの声が聞こえます。自分の悪口やうわさ話が聞こえる気がして、苦しんだりふさぎ込んだりする方も多いことが特徴です。

また、幻聴と会話したり笑ったりすることもあり、周囲から不思議な目で見られるケースも。ほかにも、何者かにずっと監視されている・嫌がらせをされているなどの被害妄想や、抑えられないような苛立ち、支離滅裂な会話などの症状も見られやすいです。

陰性症状

陰性症状とは、陽性症状とは逆に、健康なときにはあったものが失われた状態。身の回りに気を遣わなくなる・行動や仕事へのやる気がなくなるといった意欲の低下や、喜怒哀楽といった感情表現の喪失、引きこもりなどの症状が見られやすいです。

他者と感情を共感できず、他者との関わりを避けるようになり、自分の世界にこもってしまうというパターンもよく見られます。

認知機能障害

認知機能障害とは、日常生活において必要な能力に支障が出たものです。記憶力・判断力・集中力・注意力などが低下してしまいます。

その結果、新しいことを覚えることが困難になったり、やるべきことがうまく遂行できなかったりして、人間関係や仕事において問題が起こりやすくなることが特徴です。

統合失調症の方が職場で感じやすい困りごと

統合失調症の方が職場で感じやすい困りごと

では、統合失調症になった場合、仕事でどんな困難を抱えやすいのでしょうか。4つに分けて解説します。

1. 集中できない

統合失調症を発症すると、周りから監視されている・悪口を言われているなどの幻覚症状が出て、仕事に集中しづらくなることが多いです。仮に「実際にはそんなことはない(幻覚)」とわかっていても、精神的に大きなダメージを受けてしまいます。

また、認知機能障害による集中力低下も起こりやすいため、仕事に打ち込めなくなる方も多いです。

2. 仕事に対する気力がわかない

陰性症状により、やる気が起こらず仕事がなかなか進まないこともあります。予定通りに進行できず、周囲に迷惑をかけることもあるでしょう。また、新しい仕事を覚えられない・納期に間に合わないなどの可能性もあります。

3. パフォーマンスが低下する・業務遂行が困難

上記とも関連しますが、集中力や注意力などが低下するため、これまでスムーズに行えていた業務に支障が出ることも。具体的には、ミスが増える・時間がかかりすぎる・スキルの低下によりできていた仕事ができなくなるなどです。

職場からの評価に響く可能性もあり、さらに意欲が低下するという悪循環に陥る恐れもあるでしょう。

4. 疲れやすい

上述のような状態で仕事をすると、心身ともに疲弊しやすくなってしまいます。同じ業務をする場合でも、発症前に比べて負担を感じやすいでしょう。

また、仕事への意欲の低下から出勤自体が心身への大きな負担になり、ベッドから起き上がれず休みがちになるというケースも見られます。

統合失調症の方が働きやすい職場とは

統合失調症の方が働きやすい職場とは

前章のような困難を抱える統合失調症の方は、どんな環境だと働きやすいのでしょうか。よい職場環境の特徴を見てみましょう。

症状への理解がある職場

1つめは、統合失調症により気力やパフォーマンスの低下などが起きる可能性があることを理解し、その上で適切な仕事を任せてくれたり必要に応じてサポートをしてくれたりする職場です。

さらに、統合失調症の方はストレスや環境の変化などに弱いため、そのような面でも配慮してもらえると働きやすいでしょう。話をよく聞いて相談に乗ってくれる上司がいたり、臨機応変に対応や調整をしてもらえたりするとベターです。

また、服薬や休憩のための時間を設けてもらえるのも助かります。

自分の特性に合っており負担が少ない職場

2つめは、本人の状態を細かく確認し、特性に応じた部署や仕事内容にしてくれる職場です。

出勤の調整ができる・細かい判断や柔軟な対応が必要な業務ではない・心身に負担がかかりにくい・幅広い業務をまとめて担うのではなく1つずつに分けてこなせるなど、個人の特性に合わせた働き方ができると、長く勤めやすいでしょう。

 
キャリアアドバイザー
職場から配慮してもらうのはもちろん、服薬や通院を続けること、体調が悪いときには無理をせずに休むことも重要です

統合失調症の方が就職・転職活動をするときのポイント

統合失調症の方が就職・転職活動をするときのポイント

ここまでの内容もふまえた上で、つづいては統合失調症の方が仕事を探すときのポイントを解説します。

1. 医師によく相談する

まずは仕事をしたいという意思を医師に伝え、まだ治療に専念すべきか、それとも働いても大丈夫な状態なのかを確認してください。

ある程度回復してからでないと、実際に仕事を始めて環境が変わることで負担やストレスを感じ、統合失調症が再発してしまう可能性があるためです。

自分では大丈夫だと思っているかもしれませんが、自己判断は危険なため、きちんと専門家の意見を仰ぎましょう。

2. 無理のない範囲で自分のペースでできる仕事か確認する

前述したように、統合失調症の方は集中力が低下したり、疲れやすかったりする傾向があります。出勤時間の調整や時短勤務などができる・テレワークやフレックス制で自分のペースで働けるなど、自分に合った働き方ができる業務かどうかを確認しましょう。

なお、そのためには、自分の症状がどんなときに起こりやすいのか、どんな症状が出やすいのかなどの特性を分析しておくことも重要です。

3. 自分にとって働きやすい職場かを確認する

前章にも通じますが、統合失調症には多様な症状があるため、自分の状態や特性について理解を深め、適切な職場で働くことも大切です。

疲れやすい場合は時短勤務やこまめな休憩が可能な職場、人と関わるのが苦手な場合は個人で進められる仕事やテレワークなど、自分が働きやすく長く続けられそうな職場を選択しましょう。

4. 障害者枠での応募を検討する

統合失調症で障害者手帳を取得している方の場合、障害者雇用枠への応募も可能です。障害を開示せずに一般枠で就職するよりも、障害に対してある程度の理解があり配慮を受けられるため、働きやすい可能性が高いでしょう。

ただし、統合失調症についてあまり広く知られたくないという方もいるかもしれません。その場合は、入社の際に開示の範囲を伝えておくと安心です。

5. 支援サービスなどを活用する

就労を支援してくれるさまざまなサービスがあるため、仕事探しのときに利用するのもおすすめです。

就職・転職のノウハウを持っており、就労に向けて適切なアドバイスや提案、企業との仲介などをしてもらえるでしょう。前項で述べた「障害者枠」の求人情報を多く持っている機関もあるので、活用してみてください。

具体的なサービスについては後述します。

統合失調症の方に向いている仕事

統合失調症の方に向いている仕事

統合失調症の方には、マニュアル化されている仕事やあまり人と接さずに済む仕事・細やかな対応が不要な仕事などが向いています。具体的には、事務職・商品管理・軽作業などです。

ただし、事務職でも来客対応や電話応対が必要な仕事だと、対人関係が苦手な場合は適していない可能性もあります。重ねての話になりますが、自分の症状や特性に合った仕事を選ぶことが重要といえるでしょう。

統合失調症の方の就職・転職活動に役立つサービス

統合失調症の方の就職・転職活動に役立つサービス

ここからは、統合失調症の方が仕事探しをするときに利用できるサービスを紹介します。求人情報誌やサイトなどで一人で探すこともできますが、プロの力を借りることでスムーズによい職場と出会える可能性が高まるので、ぜひ検討してみてください。

ハローワーク

ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。

ハローワークには専門援助部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置され、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。

一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。

参考
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。

センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。

障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。

引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。

利用者にとって、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得でき、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。

全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。

なかぽつは、全国に337カ所(令和5年8月22日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。

障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。

引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省

障害者向け転職エージェント

障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。

障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。

高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。

就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。

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統合失調症でも活躍できる職場は見つかる!

統合失調症の方は仕事で困難を感じることもあるかもしれません。しかし、職場に迷惑をかけるからと就労を諦める必要はなく、あなたにも働きやすい職場はあります。今回紹介した仕事探しのポイントを参考に、支援サービスも活用しながら探してみましょう。

なお、今の職場を続けることが不安な方や、これから自分に合った仕事を探したい方は、ぜひDIエージェントにご相談ください。DIエージェントでは、専任のキャリアアドバイザーが、お一人おひとりのご希望をもとに適切な働き方や職場を提案しております。

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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。