発達障害の人に向いている仕事の特徴は?強み・弱みや職場選びのポイントを知ろう

発達障害とは先天的な脳神経の障害です。その度合いによっては、日常生活に限らず、仕事においても障害が理由で困難が生じる場合があります。また、発達障害の種類ごとに仕事における特徴も異なり、強みも弱みも同様にさまざまです。

そこで、今回は、発達障害の方にオススメの職種・働き方など仕事選びのポイントや、実際に就職・転職活動を進める方法について解説します。

障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別のご病気を発症してしまったりする例も少なくありません。

そうならないよう、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。

発達障害の人の仕事における強み・弱みや困りごとの特徴

発達障害の人の仕事における強み・弱みや困りごとの特徴

発達障害にはASD、ADHD、LDなど、いくつかの種類があります。発達障害の症状が出るのはひとつだけとは限らず、複数の発達障害が同時に出ることもあり、人それぞれに障害の度合いや特性が異なるのが特徴です。

そのため、「発達障害」という大きなくくりで考えず、自分の状態に最適化して仕事に対する強み、弱みを把握しておくことが大切です。

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ASDの場合

ASD(自閉スペクトラム症)には、仕事において以下のような強みと、弱みや困りごとがあります。

強み

ASDの人は、興味のある分野に対して強い集中力を発揮し、質の高い作業ができます。また、ルールやマニュアルに従って正確に作業を進めることが得意で、細部に対する注意力が優れており、見逃しがちなミスを発見しやすいという強みがあります。

同時に論理的に物事を考える能力が高く、特定分野で高い専門性を発揮している人も少なくありません。

弱み・困りごと

ASDの人は非言語コミュニケーションを通じて相手の意図を読み取ることが苦手で、言葉の裏や空気を読むような意思疎通に問題が生じやすい弱みがあります。

変化への対応や曖昧な指示の理解が苦手なので、新しい状況やイレギュラーな事態に対処するのが難しく、抽象的な指示や冗談を理解するのが難しく、混乱してしまうことも少なくありません。

また、マルチタスクが苦手で一度に複数の作業をこなすことが難しく、効率が低下することがあります。

ADHDの場合

ADHD(注意欠陥多動性障害)には、仕事において以下のような強みと、弱みや困りごとがあります。

強み

ADHDの人は独創的なアイデアを生み出す能力が高く、問題解決において新しい視点を提供できるという強みがあります。また、興味のあるタスクに対して非常に集中し、短時間で高い生産性を発揮することができるのも、ADHDの人の特徴といえるでしょう。

さらにADHDの人は迅速に意思決定を行う能力があり、緊急事態において効果的に対応でき、エネルギッシュでタスクを迅速に進めることができるので、短期間に集中的な成果をあげることができます。

弱み・困りごと

ADHDの人は時間管理が苦手で、タスクの優先順位付けや締め切りの遵守が難しく、遅刻や期限切れが頻発する傾向があります。また、注意散漫になりやすく、特に退屈なタスクに対して集中力を維持するのが難しいという弱みを持っています。

物事を整理整頓するのが苦手で、重要な書類や備品をなくしやすく、デスク周辺や引き出しの中がごちゃごちゃになってしまうことも少なくありません。

さらに感情のコントロールが苦手で、職場でのフィードバックや批判に対して過敏に反応することがあり、人間関係にトラブルを抱えがちです。

LD/SLDの場合

LD/SLD(学習障害)には、仕事において以下のような強みと、弱みや困りごとがあります。

強み

LD/SLDの人は、読み書きや計算のような分野が苦手な一方で、特定分野で優れた能力を発揮することが多く、創造性と問題解決能力に長けており、独自の視点から問題を解決する創造的なアプローチが得意です。

また視覚や聴覚を活用した学習や作業に強みを持つことがあり、細かい部分に対する注意力が高く、特定のタスクで高い精度を発揮します。

弱み・困りごと

LD/SLDの人は、文章の理解や計算の概念の認識などに障害を持つことが多く、文章での指示を理解するのが難しいため、繰り返しミスが発生しやすい問題を抱えています。

数字の理解や計算が苦手で、業務に支障をきたすケースや、書字障害によって報告書や議事録などの文章作成が難しいケースのほか、短期的な記憶が苦手で口頭での指示を覚えきれず、メモを取ることができないなどの困りごとが起きることもあります。

発達障害の人に向いている仕事や職場の特徴

発達障害の人に向いている仕事や職場の特徴

発達障害を持つ人の症状や困りごとは個人差が大きく、同じ発達障害を持っていても、必ずしも同じことが得意とは限りません。そのため、それぞれの障害特性に合った職場を選ぶのがもっとも大切なことです。

また、同じ職種であっても、職場によって対応できる条件や環境が異なるので、障害者雇用に強いキャリアアドバイザーや転職エージェントに相談するのも、より良い職場を見付けるポイントです。

 
キャリアアドバイザー
障害者に対する合理的配慮や意識は、職場によって大きく異なります。どうしても入りたい職種、業界で発達障害に理解がある企業を選ぶには、エージェントとの相談が大切です。

ASDの場合

ASD(自閉症スペクトラム)の人に向いている仕事や環境には、大きく以下のような種類や特徴があります。

ASDの人に向いている仕事

プログラマー、エンジニア:
論理的思考と詳細への注意力が求められ、独立して作業できる環境が多く、開発現場で活躍する人が多くいます。

データアナリスト:
データの分析やパターン認識が得意な特性を活かし、静かな環境での作業が可能です。AIの普及で求人需要が伸びています。

ウェブデザイナー:
指示に従って細かなコーディングをしたり、デザインのセオリーを守って、一人で作業ができるので、ASDの人がパフォーマンスを発揮しやすいでしょう。

ASDの人に向いている職場の特徴

静かで臨機応変を求められない環境:
騒音や突然の状況や条件の変化が少なく、ルーチンワークが多い職場は、働きやすい環境といえます。

明確な指示と目標がある:
仕事に対して具体的な指示や明確な達成目標が提供される職場は、ASDの人にとって判断に困ることがなく、働きやすいでしょう。

柔軟なスケジュール:
過剰に集中して疲れやすいため、必要に応じて休憩が取れたり、リモートワークを選べたりする職場は、ASDの人に適しています。

ADHDの場合

ADHD(注意欠陥多動性障害)の人に向いている仕事や環境には、大きく以下のような種類や特徴があります。

ADHDの人に向いている仕事

クリエイティブな仕事:
広告デザイナー、ウェブデザイナー、アーティストなど、発想力や創造性、独創性が求められる職種は、瞬間的なひらめきが得意なADHDの人に適しています。

専門的な技術を活かせる仕事:
エンジニアや研究職など高度な専門性が必要な分野は、興味関心を持った分野に対して高い集中力を持つADHDの人に向いているでしょう。

行動力を発揮できる仕事:
営業職、起業家、ジャーナリストなど、決断力とスピード感のある行動力が強みとなる職種も、ADHDの人が強みを発揮できる分野です。

ADHDの人に向いている職場の特徴

柔軟な勤務体系:
ADHDの人は気が散りやすく、集中力を維持することが苦手なので、リモートワークが可能で集中しやすい環境を選べる職場の方がパフォーマンスを発揮できます。

割り込みが少ない職場:
タスクの優先順位を決めたり、マルチタスクをしたりするのが苦手なので、急な割り込みが発生しないか、少ない職場を選ぶと、スムーズに仕事ができます。

個人の強みを活かせる環境:
ADHDの人は得意分野に特化でき、苦手分野をサポートして貰えることで、大きな成果を出しやすくなります。

LD/SLDの場合

LD/SLD(学習障害)の人に向いている仕事や環境には、大きく以下のような種類や特徴があります。

LD/SLDの人に向いている仕事

視覚や聴覚など感覚を活かした仕事:
アーティスト、デザイナー、アニメーターなど、五感の鋭敏さや感性やセンスが求められる職種は、鋭敏な感覚を持つことが多いLD/SLDの人に適しています。

身体を使う仕事:
料理人、園芸家、スポーツインストラクターなど、センスが求められる一方で、読み書きや計算が少ない職種も、才能を活かしながら苦手な分野を少なくできます。

器用さ・繊細さを活かす仕事:
指先の感覚が鋭敏な人が多いので、手先の器用さを活かせる工芸職人や、メカニックも適しています。

LD/SLDの人に向いている職場の特徴

ツールの使用が認められる環境:
識字障害や計算障害などをフォローする、タブレット等の電子機器やソフトウェアを活用できる職場は、障害による苦手をカバーできます。

文書作成や計算が少ない職場:
文書作成やメールのやり取りが少ないか、もしくはなんらかのツールを導入して簡便になっている職場や、数値の計算とは関わりのない部署は、苦手分野から離れるので働きやすいでしょう。

障害者雇用枠を利用して、向いている仕事や職場を選ぶポイント

発達障害を持つ人が障害者雇用枠を利用して向いている仕事を選ぶポイントは、自分の特性を説明できるようにすることです。

面談時に説明できるように、事前に障害特性を整理した資料を用意しておくと、適切な合理的配慮を受けやすくなります。また、合理的配慮の内容について職場と具体的な交渉をしてくれる転職エージェントを利用するのも大切です。

リモートワークやフレックスタイムなど、発達障害の内容に応じて柔軟で多様な働き方が選べる職場を選ぶには、求人情報だけではわからないことも少なくありません。

Web検索などで情報をしっかりと集めるだけでなく、障害者雇用に強い転職エージェントを利用することで、不安なことや疑問に対して踏み込んだ内容まで相談できます。

発達障害の人には向いていない仕事の特徴

発達障害の人には向いていない仕事の特徴

発達障害の人にとって、障害特性とあわない業務が多く、向いていない仕事も少なくありません。しかし、職場環境によっては対応できることもあります。

一般的に向いていないと言っても、合理的配慮によって可能なこともあるので、「どうしてもこの職種で働きたい」、「この業界でキャリアを伸ばしたい」という強い希望がある場合は、企業と採用について交渉できる転職エージェントに相談してみましょう。

 
キャリアアドバイザー
特定のことが苦手な発達障害を持っている人には、向いていない仕事や職場があります。しかし、発達障害は人によって度合いが異なるため、自分だけで探すには限界があることも多々あります。転職活動は親身に障害特性を把握しながら、伴走してくれるサービスを利用するのがおすすめです。

ASD(自閉スペクトラム症)の人に向いていない仕事の特徴

対人コミュニケーションが多い仕事:
営業や接客など、頻繁に他人とコミュニケーションを取る必要がある仕事は、対応のミスが起きやすく、ASDの人にとってストレスが大きい職種でもあります。

イレギュラーな対応が求められる仕事:
「いい感じに」「臨機応変で」「現場の判断で」などの曖昧な指示や、突然の変更や予期しない事態に対応する必要がある仕事は、ASDの人には向いていません。

マルチタスクが必要な仕事:
その場で優先順位を判断しながら、同時に複数のタスクをこなす必要がある仕事は、柔軟な判断を苦手とするASDの人にはストレスがたまりやすい環境です。

ADHD(注意欠如・多動性障害)の人に向いていない仕事の特徴

細かいスケジュール管理が必要な仕事:
秘書や経理など、遅延が発生すると大きなトラブルにつながり、厳密なスケジュール管理が求められる仕事は、スケジュール管理が苦手なADHDの人には適していません。

長時間安定して集中する必要がある仕事:手術を担当する外科医や旅客機のパイロットなど、長時間安定した集中力を必要とし、些細な注意欠陥によるミスが重大なトラブルを招く仕事は、気が散りやすいADHDの人にはハードルが高い職種です。

マルチタスクが求められる仕事:
タスクの優先順位を決めることが苦手なADHDの人は、同時に並行して複数のタスクをこなす必要がある仕事は、ストレスがたまりやすく業務の遅延につながることが多いので向いているとは言えません。

LD/SLD(学習障害)の人に向いていない仕事の特徴

読み書きが多い仕事:
事務や編集、ライターなど、文章の読み書きが頻繁に求められる仕事は、識字障害を持つLDの人の人には難しい業務です。ただし、デジタルであれば識字に問題ない場合もあるので、ケースバイケースです。

計算が必要な仕事:
経理やレジ打ちなど頻繁に計算を行う必要がある仕事や、設計書の数値を見る必要がある設計や建築現場などの業務は、計算障害を持つLDの人には難しいでしょう。

メモを取る必要がある仕事:
口頭や電話での指示をメモする必要があるコールセンターや事務などの業務は、音と文字を結びつけることが苦手な障害を持つLDの人には適していません。

発達障害について職場にオープンにするべき?

発達障害について職場にオープンにするべき?

発達障害を持つ人は、障害を伏せて働くケースも少なくありません。職場に対して障害を知らせるオープン就労と、知らせずに働くクローズ就労ではどちらが良いのかは、ケースバイケースです。オープン就労のメリット、デメリットをよく知った上で選択しましょう。

オープン就労のメリット

合理的配慮が受けられる:
就職に際して事前に相談できるため、障害に応じた業務内容や職場環境の配慮が受けられるので、働きやすい環境が整います。

定着支援が受けられる:
就職後もジョブコーチや支援機関のサポートが受けられ、職場定着率が高まります。

職場や周囲の理解:
障害について職場が理解してくれるため、ストレスが軽減されてパフォーマンスを発揮しやすくなります。

オープン就労のデメリット

職種の選択肢が限られる:
障害者雇用枠は業種や職種が限られることがあり、特定の分野ではキャリアアップの機会が少ないことがあります。

 
キャリアアドバイザー
オープン就労にはさまざまなメリット、デメリットがあります。あまり自分の障害を人に知られたくないという場合はクローズ就労が可能ですが、合理的配慮を受けられないなどのデメリットにも注意しましょう。

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発達障害の人に向いている仕事や職場を探すなら就職エージェントに相談しよう

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障害を抱えながら働く上では、 障害の特性に合った業務に就くことや、障害への理解や配慮のある環境選びが大切です。障害があっても「キャリア成長をあきらめたくない」、「自分にあった働き方を探したい」という方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。