統合失調症を発症し、今の仕事を続けられるのか、治療のため退職したけれど再就職できるのかなど、不安や迷いを感じている方も多いのではないでしょうか。実際に統合失調症の症状が業務に影響して、このまま仕事を続けられないのではないかという不安を抱えている方は少なくありません。
そこで、今回は統合失調症の方が、仕事上でどんなことに困るのかを踏まえた上で仕事を続けるためのコツを紹介し、おすすめの仕事や仕事探しのポイントについて解説します。
今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。
統合失調症とは?
統合失調症は、見えない・聞こえないはずのものが見える・聞こえる、気力がなくなるなどの症状が現れる精神疾患です。症状は大きく分けて3つあります。
主な症状
それぞれの症状が一つだけの場合は、統合失調症とは診断されません。一定期間にわたって次の3つの症状が続く状態を言います。
- 陽性症状
- 陰性症状
- 認知機能障害
それぞれを詳しく見ていきましょう。
陽性症状
陽性症状は、幻覚・幻聴や被害妄想などが大きな症状です。過敏になり、ささいなことで興奮状態に陥ることも。
自分を責めたり命令する声が聞こえる、周囲の人が自分の悪口を言っていると思い込む、嫌がらせをされている・テレビやSNSで自分の情報が拡散されているといった妄想に取りつかれます。
陰性症状
陰性症状は、抑うつ状態や無気力、感情の鈍麻や引きこもりなどです。人と話すのが苦痛になり、ぼんやりと一日を過ごすようになることも。
倦怠感が強く、昏々と眠り続けたり身なりに気をつかわなくなったりすることもあります。
認知機能障害
認知機能障害の症状は、理解力や記憶力、判断力の低下などが挙げられます。思考が混乱しまとまらない、集中できない、とっさに判断できないといった症状です。
言いたいことがまとまらず伝えられない、相手の話を理解できない、ミスが増えるなど、社会生活や日常生活がままならなくなることもあります。
統合失調症になっても仕事は続けられる?
統合失調症を発症した場合、仕事を続けられるのかと不安になる方も多いでしょう。結論から申し上げますと、統合失調症で仕事をされている方は多くいます。
ただし症状の治療が最優先です。無理に仕事をすることで、症状の悪化や長引くことも考えられるため、休職や退職で治療に専念し、症状が安定してから復帰したり就職活動したりするのが望ましいでしょう。
その際には医師に相談して判断を仰ぎ、無理をしないことが鉄則です。
統合失調症の方が仕事上で困ることとは?
統合失調症の方が仕事をする上で、その症状ゆえに困ることや辛いことを整理してみましょう。
幻覚や幻聴で集中できない
陽性症状の幻覚や幻聴で仕事に集中できない、ということがあります。正体不明の声に邪魔されて業務が滞る、常に人に見られている感じがして気が散る、周りの人がみんなで自分の悪口を言っているという妄想にかられ、仕事どころではなくなってしまうなどです。
気力がわかない
陰性症状のうつ状態や無気力、倦怠感で仕事への意欲が湧かなかったり、感情の鈍麻や無関心で身だしなみに気を配れなくなったりと、すべてがどうでもよくなってしまい、仕事への気力がわかないということもあります。
職場に疾患を伝えていなければ、やる気がないと捉えられ、注意される回数が増えることでさらに症状が悪化することにもつながりかねません。
認知機能障害が原因で業務に支障が出る
まとまらない思考や物忘れなどの認知機能障害の症状でミスを連発したり、判断ができずに業務に支障をきたしたりといったことも起こります。
発症前には得意だったこともスムーズにできなくなったり、さばける業務量が大幅に低下することで周囲の信頼を失ってしまったり、業績が上げられないなど、さらに自信を失ってしまうこともあるでしょう。
疲れやすい
陽性症状で常に緊張している状態が続いたり、陰性症状でうつ状態なのに無理に頑張ろうとしたりすることで、通常よりも疲れやすくなります。
業務に集中しようとする横で、常に声がしたり、無気力の自分を奮い立たせたりするのはエネルギーがいるため、以前は何事もなくこなせた仕事でも疲れを感じやすくなるでしょう。
統合失調症の方が働きやすい職場環境・職種とは?
ここまで見てきたように、統合失調症の方が仕事を続けるにはさまざまな困難があります。そのため、自分のタイミングで休みがとりやすいなど、柔軟に働けるかどうかが重要です。
統合失調症の方が働きやすい職場環境や、おすすめの職種を紹介します。
症状への理解がある職場
統合失調症の方が仕事を続けるには、疾患に対する理解を得ることが大前提だといえます。どういった症状があるのか、その症状が原因で仕事にどのような影響があるのかといったことを理解してもらい、配慮してもらえる環境が必要です。
時短勤務やテレワークが可能だったり、フレックス制度があったりする職場であれば、症状に合わせて対応できるため安心でしょう。
マイペースにできる・サポートを得やすい仕事がおすすめ
陰性症状や認知機能障害があるため、マルチタスクを求められる仕事やプレッシャーを感じやすい仕事は避けるのがベターです。
おすすめなのは、事務職や軽作業などプレッシャーを感じにくく、就業時間が比較的規則的な仕事や、活発なコミュニケーションを必要としない仕事。テレワークが可能なシステムエンジニアやプログラマーなどもおすすめです。
自分の采配で業務をすすめられる、マイペースにもくもくとできる仕事が向いているでしょう。
統合失調症の方が仕事を探すときのポイント
統合失調症の方が仕事を探す際には、いくつか心に留めておきたいポイントがあります。もちろん人それぞれ困りごとや譲れない条件は違うため、一概に言うことはできません。
そこで、ここまで見てきたような統合失調症の方に共通する困りごとを踏まえ、無理なく働ける職場に就職するポイントを見ていきましょう。
1.就職活動をはじめる前に主治医に相談する
統合失調症は、不安や不眠などの症状が出始める前兆期、陽性症状・陰性症状などが強く出る急性期、陽性症状が落ち着き陰性症状が続く回復期、症状が落ち着き安定した日常生活を送れるようになる安定期(慢性期)の4つのステップがあります。
十分に回復していない状態で就職活動をはじめると、体調や症状が悪化する可能性も。そのため、治療に専念して症状が落ち着き、医師に問題ないと判断されてから活動をはじめるようにしましょう。
2.自己分析で自分の特性を把握する
就職に向けて自己分析をすることは、自分に合った仕事を見つける上でも重要です。それまでの経歴や性格、好きなことや得意なことなどは人それぞれなので、向いている仕事も一つではなく、発症前の仕事が必ずしも適職とは言えないでしょう。
今の自分にできることとできないことを明確にし、働く上で必要な配慮についても整理することが大切です。
3.無理せずに仕事を続けられるかを見極める
統合失調症は症状がなくなったからといって、完治したとは言えない疾患です。治療を中断すれば7割の方が再発すると言われ、服薬などの治療を続け症状をコントロールする必要があります。
定期的な通院もしなければならず、前兆が現れれば欠勤して病院に行くことも必要です。そのため、職場に理解してもらい、柔軟に対応してもらわなければなりません。
時短勤務やフレックス勤務、テレワークが可能な仕事であれば調整がしやすいでしょう。体調を優先して働ける環境かどうかを見極めることが大切です。
4.障害者雇用での就職を検討する
ここまで何度も出てきたキーワードに「職場の理解」というものがあります。職場に疾患を伝え、理解してもらった上で必要な配慮を求める場合、一般雇用ではなかなか思うような配慮を得られない可能性が高いでしょう。
通院や服薬、症状が出た場合の欠勤などに理解を得るには、障害者雇用枠での就職も考える必要があります。
障害者雇用枠は、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)を取得した人の安定した雇用を後押しする制度で、企業には合理的配慮をすることが義務づけられているもの。
障害者手帳のメリットやデメリット、詳しい制度の内容は以下の記事を参考にしてください。
統合失調症の方が仕事を続けるためのコツ
統合失調症の方が安定して仕事を続けるためには、いくつか気をつけなければならないことがあります。
仕事を末永く続けるためのコツを見ていきましょう。
1.継続的な薬の服用と通院
治療の中断は、どんな理由であっても避けるべきです。症状をコントロールしながら仕事を続けている方と、再発や症状の悪化をしてしまう方の違いは、治療を継続しているかどうかだと言っても過言ではありません。
忘れずに薬を飲むこと、定期的に通院することで症状を安定させ、仕事や私生活への悪影響を抑えることができます。
2.症状の把握や対処法の確認をしておく
先にも触れましたが、統合失調症の症状が現れる前には前兆があります。前兆期に現れるのは、強い不安や緊張感、ささいなことに過敏になる、眠れない日が続くなどの症状です。
前兆期に現れる症状を把握し、それらの症状が出始めたらすぐに主治医に相談しましょう。薬物療法やリハビリテーションなどの治療をいち早く始めることで症状の悪化を防ぎ、より早く回復できるでしょう。
3.生活リズムを整える
統合失調症の方は、ストレスやプレッシャーが少ない環境で過ごすことが大切です。ストレスを軽減するには、規則正しい生活を心がけ、生活リズムを整えることもおすすめ。
何よりも睡眠時間を確保することがストレス軽減につながるため、規則正しい生活リズムを継続させ、なるべく毎日同じペースで過ごすことを心がけましょう。
生活の安定は、仕事を続ける上でも大切な要素です。
4.相談先を確保する
職場での困りごとを相談できる人や機関を確保しましょう。上司や先輩など信頼できる人が必ずしも職場にいるとは限りません。
そこで、相談窓口がある職場を前提に探したり、定着支援など外部の専門家に相談できる機関を利用したりするのがおすすめです。
また就職後にも相談を受け付けてくれたり、就職してからの支援が手厚い就職支援サービスを利用したりするのもいいでしょう。
統合失調症の方が仕事探しで利用できる支援機関やサービス
就職を支援する機関と言えば、ハローワークをまず思い浮かべる方も多いかもしれません。国が運営するハローワークには障害者窓口があり、次に紹介するいくつかの支援事業とも連携して、就職までをサポートしてくれます。
統合失調症の方が利用しやすい支援サービスは他にもあるので、自分に合ったサービスを積極的に利用するのがおすすめです。就職で利用できる機関やサービスを紹介しましょう。
1.地域障害者職業センター
ハローワークと連携して障害をお持ちの方に職業リハビリテーションを提供する地域障害者職業センターは、各都道府県に設置されています。
希望や職業能力などを把握した上で、職業準備訓練や職場適応援助などを行うほか、雇用主に対しても職業管理上の課題分析や助言などを行う機関です。
2.障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは名称の間にある「・」から、なかぽつや就ぽつとも称されます。
障害をお持ちの方の就職だけでなく、生活面での支援を行う機関で、さまざまな支援機関と連携しています。就職活動や職場定着の支援、生活習慣の形成や健康管理などに対する助言などの支援など、社会復帰に向けたサポートを受けることが可能です。
3.就労移行支援事業所
就労移行支援事業所とは、障害をお持ちの方の社会参加や復帰を目指し、就業に必要なスキルの訓練を通して、働く上で重要な考え方・価値観なども習得できる支援サービスです。
基本的に通所型が一般的ですが、なかにはテレワークが可能なところもあります。
引用元
就労移行支援事業所ワークイズ
4.障害者雇用専門の転職エージェント
民間の転職エージェントの中には、障害者雇用に特化したものもあります。民間のサービスですが、無料で利用できることが多く、手厚いサポートを受けられるのが特徴です。
優良企業の非公開求人などを取り扱っていることもあり、市場に出回っていない好条件の求人に出会える可能性もあります。
手厚いサポートと求人開拓で頼れるDIエージェントとは
障害者雇用専門の転職エージェントの中でも、DIエージェントは10年以上の実績があり、数々の転職を支援してきました。
専属のカウンセラーによるキャリア診断、書類作成や面接対策、企業とのやりとり代行など手厚いサポートが特徴です。1対1で、カウンセリングから就職成功までを伴走するので、はじめての転職でも安心して利用できるでしょう。
DIエージェントは就労移行支援事業所のワークイズや定着支援のワクサポ、求人サイトのBABナビなど、障害をお持ちの方を支援するサービスを提供するD&Iグループの一つ。それぞれのサービスの連携で、就職をサポートしています。
障害をお持ちの方向けの求人情報サイト「BABナビ」
BABナビは障害者雇用枠専門の求人サイトで、求人数2,530件(2024年2月時点)。これまでに5,000件を超える求人を掲載してきました。
ここでは、BABナビに掲載中の求人を2つほど紹介します。なお、この求人は2024年3月時点のものなので、すでに募集が終了していることがあるかもしれません。ご了承ください。気になった方は、是非BABナビで実際の求人をチェックしましょう。
一つ目は、非公開求人のため社名はお伝えできませんが、ソフト開発に関わるシステムエンジニア・プログラマーの募集です。
テレワークも可能で、正社員登用のチャンスもあります。
二つ目は、アクセンチュア株式会社 みなとみらいオフィスの採用アシスタント・リクルーターの求人です。
アクセンチュアは、デジタル、クラウドおよびセキュリティ領域において卓越した能力で世界をリードするプロフェッショナルサービス企業で、障害への合理的配慮の事例も豊富。
テレワークにも対応可、スーパーバイザーやジョブコーチの配置などもあり、安心して働けるでしょう。
症状を把握して無理せずに働ける自分に合った職場を探そう
統合失調症は、陽性症状や陰性症状、認知機能障害などの症状が原因で、これまでのように働くことが難しくなるケースもあります。無理に仕事を続けると、症状の悪化を招き辛い時期が長くなってしまうこともあるでしょう。
一度休職や退職で治療に専念することも大切です。医師のお墨付きをもらってから、復職や就職活動をする必要があります。
仕事をする上でもっとも大切なことは、職場の理解です。疾患を理解し、前兆が現れたらすぐに対処できる環境を確保し、服薬や通院への理解も得る必要があります。
転職におけるゴールは「採用されること」ではなく「自分らしく働ける環境で長く続けること」だと言えます。その視点で、 障害の特性に合った業務に就くことや、障害への理解や配慮のある環境選びが大切です。
今の職場で働き続けていくことに将来的な不安を感じている方、障害があってもキャリアの成長や自己実現をあきらめたくない方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。
DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠の就職・転職について情報提供や、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。
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大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。