発達障害をお持ちの方向け「わたしの障害について」の書き方 ~よくあるQ&A付き~

発達障害をお持ちの方の中で「わたしの障害について(障害に関する自己紹介シート)」の書き方に迷っている方は少なくないのではないでしょうか。「わたしの障害について」は履歴書や職務経歴書とあわせて企業に提出する書類の一つですので、しっかりと作成していく必要があります。本記事では、前半で「わたしの障害について」の作成手順とポイント、後半で「よくあるQ&A」をご紹介します。
「二次障害については書いた方がいいの?」「転職先に伝えておきたいことはどう書くの?」といった、求職者の方からよく寄せられる質問にもお答えしていますので、ぜひ参考にしてください。

「わたしの障害について」とは、自分の障害に関する情報をA4用紙1枚程度にまとめた書類のことで、応募先の企業に提出する自己紹介シートのことを指します。正式な名称があるわけではなく、一般的に「わたしの障害について」や「障害に関する自己紹介シート」などと呼ばれることが多いです。
求人に応募する際の提出は必須ではありませんが、企業に希望する配慮事項がある場合や、エージェントを利用せずに企業に直接応募する場合には提出をおすすめします。なぜかというと、採用担当者としては「応募者がどのような障害を持っており、企業側でどんな環境を提供するべきか」ということを重要視するためです。

次の項目から、具体的な書き方の手順やポイントをご紹介します。


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《作成の前に》自分の障害特性を整理する

そもそも「自分の障害特性がわからない」という方向けに、障害特性について整理する方法からご説明します。
障害の特性とは、障害の特徴のことです。その中でも転職活動の場では、企業側は入社者に合理的配慮を行う責務がありますので、「障害の関係上、その人が苦手としていること」を特に気にする傾向があります。
そのため、下記のような手順で障害特性について洗い出してみましょう。

【STEP1】業務上の「苦手事項」の振り返り

まずは、これまで仕事上で苦手に感じたことやミスをしてしまったこと、人から指摘を受けたことを洗い出してみましょう。

《例》

  • 代表電話の対応をしているとき​、取り次ぎ先がわからず混乱してしまった
  • 業務の締切が早まってしまったとき​、何から進めていいかわからず手が止まってしまっ

・・・対応できずにミスをしてしまう、手が止まってしまう 等

  • 自分の業務をしながら電話対応をすることができない​
  • 急に声をかけられて新しい業務や差し込み業務を任されると混乱する​

・・・もともとやっていた業務を忘れてしまう​ 等

【STEP2】「苦手事項」の共通点をまとめる

箇条書きで洗い出せたら、それらの共通点をまとめてみましょう。「どんな状況でそれが現れるか」という視点で考えると、まとめやすくなります。

  • 対応できずにミスをしてしまう、手が止まってしまう​

・・・まとめると「臨機応変な対応が苦手」等

  • もともとやっていた業務を忘れてしまう​

・・・まとめると「同時進行・優先順位付けが苦手」等​

【STEP3】どんな工夫を行っていたかを書き出す

それらの苦手事項に対し、自分では何を工夫して行っていたかを書き出してみましょう。

《例》

  • 電話応対の時、何を聞けばいいかわからず、手が止まってしまう​

→「会社名」「電話番号」「誰宛てか」「要件」「折り返しの有無」など、​聞かなければいけないポイントをまとめたメモを用意する​。

  • 新しい業務を急に振られたとき、何からやったらいいかわからない​

→指示者に締切を確認し、タスクを書き出して優先順位を番号付けし、順番に取り掛かる

【STEP4】自己対処でカバーできないことを整理

次に、上記の自己対処を行ってもカバーしきれなかったこと、改善が難しかったことを整理します。

その結果、出てくるのが「会社に希望する配慮事項」となります。

《例》
電話応対の際、メモの取り方を工夫することで聞き取りミスは減ったが、電話の頻度が多すぎると他の業務との同時進行ができなくなる。

例えばこのような場合には「電話応対が多い部署の場合は対応範囲を相談したい」「電話応対は内線の取次ぎのみに制限してほしい」といったことが「配慮事項」として考えられます。

以上が、「わたしの障害について」の作成前に必要となる、障害特性の整理の仕方です。次の項目では、実際の「わたしの障害について」の書き方を解説します。

「障害概要」「特性と自己対処」「配慮事項」の3つを記載

大きく分けて、障害の説明は「障害の概要」「特性」「必要配慮」の3点を押さえることが大事です。例文をふまえて順に解説します。

「障害概要」の書き方と例文

診断名や手帳の等級、通院回数といった客観的な事実は、採用担当者があなたの障害の概要を理解するうえで重要です。書類の冒頭に記載しましょう。

《実際の書き方の例》

■障害概要

診断名:ASD(自閉症スペクトラム)
手帳:精神保健福祉手帳 3級
通院/服薬:月1回(曜日不定)/ 朝晩各1回
就業許可:有

 
 
あくまで概要ですので、ここは簡潔で構いません。通院は勤務形態などに関係するので、曜日や頻度も書くとよいでしょう。
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「特性と自己対処」の書き方と例文

次に、障害特性を記載しましょう。相手が理解しやすいよう、2~3つにまとめることをおすすめします。また、「自己対応」を書くことで「どこまでが自助努力で対応できて、配慮を必要とするのはどこからなのか」のラインが明確に企業に伝わります。また、自分で創意工夫をしながら対応できている姿勢のPRにもなるでしょう。

《実際の書き方の例》

■特性 / 自己対処

私には以下のような特性がございますが、それぞれの特性に対し自助努力を継続する事で業務遂行をしております。

特性(1)短納期の作業(入力業務など)を急いで行う際にケアレスミスが起きやすい
特性(2)過集中傾向がある
特性(3)マルチタスクが苦手

自己対応(1)ミスをしやすい箇所をリスト化し、納品物の提出前に確認の時間を設ける。
自己対応(2)適度に小休憩を取る事を意識する事で過集中になることを防ぎ、それに伴う疲労・集中力低下の予防を行う。
自己対応(3)作業開始前に優先順位を決める事、各作業を時間単位で区切るなどでマルチタスクに対応する。

 

 
 
特性と自己対処は上記のように番号をふって対応させて書くとわかりやすくなります。ただ、厳密な記載ルールはありませんので、全体の文字数のバランスなどによっては自己対処は省略しても問題ありません。

「配慮事項」の書き方と例文

配慮事項は「どんな場合に必要な配慮なのか」がわかるようになるべく具体的に記載しましょう。また、残業時間や、休憩時間などは定量的に表現するとよいでしょう。

《実際の書き方の例》

■ご配慮いただきたいこと

自身の特性に対して前述のような自己対応を行っていますが、自己対応のみでは難しい下記に対して、ご配慮いただきたく存じます。

配慮(1)通院配慮:月に1度通院のためのお休みをいただけますと幸いです。
配慮(2)過度な残業:残業は月に約10時間以内を希望いたします。
配慮(3)相談環境:業務で悩む場合など相談しやすい環境があると、スムーズな業務対応ができます。

 
 
「していただけますと幸いです」「を希望します」「~~していただくと~~できます」などの表現を使うと、押しつけがましくなく、丁寧な印象に伝わります。
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よくある質問

次の項目で、「わたしの障害について」の作成時に求職者の方からよく寄せられるご質問にお答えします。

Q.うつ症状などの二次障害については書いた方がよいでしょうか?

A.現在も服薬・通院・必要配慮があれば、その内容を書きましょう。

《実際の書き方の例》

発達障害を起因とする二次障害として、◎◎年に双極性障害の診断を受けました。現在は、2~3か月に一度の通院(土曜)と1日1回の服薬がございます。

現在は寛解したものの、過去に二次障害が見られた場合は、下記のように補足することをおすすめします。

《実際の書き方の例》

二次障害として◎◎年頃に抑うつ症状が見られました。療養により寛解し、現在は症状の表出はなく安定しております。

Q.「障害特性」はどんな基準で書いたらいいのですか?思いつくものを書き出すと2~3つ程度にまとめきれません。

A.どのように書くか迷う場合は、(1)自己対処を行ってもカバーしきれない特性かどうか、かつ(2)業務に影響が出そうな程度の特性かどうかという基準で書くとよいでしょう。

より具体的には、

  • 直近の1~2か月を振り返って、その障害特性によって業務で失敗したり人から指摘を受けたりしたか
  • それは、転職先の業務でも同様に起こり得るか

などに当てはまるかどうかを考えるとよいかもしれません。いずれにも当てはまる場合は、障害特性として記載した方がよいでしょう。

例えば「人の目を見て話すのが苦手」という障害特性があったとしても、それによって業務に支障が出ておらず、転職先でも特に問題にならなそうであれば、必ずしも「障害特性」として記載する必要はありません。

一方で、対人業務が多い職種を希望している人の場合は、人の目をうまく見られないことが業務に影響するかもしれませんので、記載したほうがよいでしょう。

Q.業務に支障をきたすレベルではないものの、転職先に伝えておかないと不安なことはどうしたらよいでしょうか?

A.「補足事項」などの欄を設け、下記のように記載するとよいでしょう。

《実際の書き方の例》

■補足事項
・特別な配慮は必要ありませんが、障害の特性として、人の目を見て話すことが苦手な傾向がありますので、何卒ご理解いただけると幸いです。
・特別な配慮は必要ありませんが、障害の特性として、雑談やフリートークをすることが苦手な傾向がありますので、ご理解いただきたく存じます。等


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まとめ

本記事では、発達障害をお持ちの方向けに「わたしの障害について」の書き方についてお伝えしました。どんな観点で作成すればよいのか、具体的な手順、よくあるQ&Aなどをご紹介したので、ご参考になれば幸いです。

またDIエージェントでは、専門のキャリアアドバイザーによる「わたしの障害について」の添削も承っています。お気軽にご相談ください。

監修:高橋 平
障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザー。
早稲田大学卒業後、(株)D&Iに入社。 障害者雇用ソリューション営業、転職キャリアアドバイザーと幅広い領域を担当。現在はHRソリューション事業部の副部長として、DIエージェントの責任者を務める。