相手が話している言葉が聞き取りにくくて何度も聞き返したり、高い音が聞こえにくくなってしまう感音性難聴は、内耳機能の損傷で起きる聴覚障害です。
しかし、心当たりがあったとしても、実際の症状や対処法が分からず、ご不安に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
さまざまな原因がある感音性難聴は、早期発見と早期治療が大切です。そこで、よくある症状や原因を知り、理解を深めて、万一の時にはすぐに発見できるようにしましょう。
また、感音性難聴によって音が聞き取りにくくなってしまった場合でも、日常生活を送るために受けられる治療や、続けられる仕事についても紹介しているので、ぜひ最後まで目を通してください。
感音性難聴とは?原因や症状
感音性難聴は、内耳または神経系に何らかの問題が発生したときに起きる聴覚障害で、特定の音域、特に高音域が聞こえにくいのが特徴。
また、感音性難聴を発症すると、複数の音源からの音を同時に分離・識別するのが難しくなり、何度も聞き返してしまうことが起きます。
感音性難聴の原因はさまざまで、先天性の内耳の障害から、加齢による内耳の劣化、感音神経の損傷まで、多くの原因が考えられます。
いずれの場合も専門的な診断と治療が必要です。また、発症すると投薬治療による回復が難しい難聴であり、補聴器や人工内耳による治療が一般的となっています。
感音性難聴の原因は?
感音性難聴の原因は大きく先天性と後天性に分けられます。先天性の感音性難聴は、出生時から存在する内耳の障害によるものです。
一方、後天性感音性難聴の原因は多岐に渡ります。代表的な原因と言われる騒音性は、工事現場や工場、ライブ会場などで、日常的に大音量環境に晒されると発症しやすくなります。
また、ヘッドホンやイヤホンで大音量の音楽を長時間聞き続けることも原因のひとつです。ヘッドホン難聴と呼ばれる騒音性の難聴を発症するリスクを高め、10代の若い人にも聴覚障害が広がっています。
ほかにも、急に発生する突発性難聴、低い周波数の音が聞こえにくくなる急性低音障害型感音難聴、加齢による老人性難聴、さらにメニエール病、ストレスや過労なども、感音性難聴を引き起こすといわれている要因です。
後天性の感音性難聴は、主に内耳の蝸牛という器官の中にある「有毛細胞」が損傷し、音を感知して脳に伝えるのが困難になることで起きます。
音の振動を感知して脳に電気信号として伝えている有毛細胞が壊れてしまうと、音を感じ取ることが難しくなり、感音性難聴を引き起こします。
この有毛細胞は音の大きさと聞いている時間に比例して傷付き、壊れてしまうだけでなく、一度壊れたら二度と再生しません。
WHO(世界保健機構)は80dBで週40時間以上、もしくは98dBで週75分以上の音に晒されると難聴の危険性があると警告しています。また、100dB以上の大音響を聞くと急に難聴になることもあり、耳に直接大きな音を入れないことが大切です。
引用元
WHO releases new standard to tackle rising threat of hearing loss
感音性難聴の症状
感音性難聴の具体的な症状は、以下のようなものが挙げられます。
- 高音域の聞こえにくさ
音楽の旋律や鳥のさえずり、若い女性や子供の声などが聞こえにくくなります。 - 騒がしい環境での聞き分けの難しさ
カフェや公共の場所での会話が聞き取りにくいなど、雑音が多い環境での会話が難しくなることがあります。 - 聞き返しの増加
電話での会話が特に難しく感じる、人の話を理解するのが難しいなど、聞き返しの回数が増えることも感音性難聴の兆候とされます。 - 耳鳴り
キーンという高い耳鳴り、もしくはゴー、ザーという低い耳鳴りを感じることがあります。 - 耳が詰まった感じ
耳が詰まった感じがしたり、音が籠もるような感じで、閉塞を感じる症状があります。 - 一方の耳だけの難聴
片方の耳だけが聞こえにくい、または全く聞こえない場合も感音性難聴の可能性があります。 - 音の歪み
内耳の異常で音が正常に処理されず、音が歪んで聞こえる、音が遠くで響いているように感じるなどの症状が現われます。
伝音性難聴と感音性難聴の違い
伝音性難聴と感音性難聴は、原因が発生している場所によって分類される難聴の二つの主要なタイプです。以下の表でその違いを整理してみましょう。
伝音性難聴 | 感音性難聴 | |
---|---|---|
原因 | 外耳または中耳の問題 | 内耳の問題 |
症状 | 音が遠く感じる、聞こえにくい、耳の圧迫感 | 高音が聞こえにくい、騒音下での聞き分け難しさ、音の歪み、片耳の聞こえにくさ |
代表的な原因 | 耳垢の詰まり、中耳炎、骨の変形など | 高齢、騒音曝露、突発性難聴、メニエール病、遺伝など |
代表的な治療法 | 耳垢の除去、抗生物質による感染症の治療、耳管形成術、鼓膜形成術等 | 補聴器の使用、人工内耳インプラント、ステロイド治療、メニエール病に対する特定の治療法 |
伝音性難聴は、耳垢のつまりのような外耳道のブロックや、中耳炎のような中耳の異常などによるものです。伝音性と感音性の両方の要素が混在している場合、混合性難聴と呼ばれます。
感音性難聴の治療法
感音性難聴は、早期発見と早期治療である程度の症状回復が見込めるため、症状を感じたらすぐに治療を受けるのがもっとも重要な治療法です。
特に難聴の症状が発生してから48時間以内であれば、ある程度の機能回復が期待できるケースが多いと言われています。
しかし内耳の器官や神経に発生する障害なので、難聴の症状が進行してしまった場合は、残念ながら聴力を回復する治療法は現在ありません。
難聴の症状が進行するのをゆるやかにするため、早めに補聴器を装着し、耳の負担を和らげる対症療法になります。
軽度から中度の難聴の場合は補聴器を使用しますが、重度や極度の場合は人工内耳をインプラントするケースもあります。
補聴器の装着
現在の聴力にあった補聴器を装着することで、耳への負担を軽減し、聴力の低下を抑えることができます。
補聴器には形状によって、以下の3種類があります。
- 耳かけ型
耳介に引っ掛けるように装着する耳かけ型の補聴器です。一般的に広く普及しているタイプで、操作しやすく、おしゃれなデザインも増えています。 - 耳穴型
耳栓やワイヤレスイヤホンのように装着する補聴器です。目立ちにくく、耳介による集音機能も活かせるのが特徴です。通常は耳の穴と現在の聴力にあわせてオーダーメイドします。 - ポケット型
本体とつながったイヤホンを装着し、本体は胸ポケットなどに入れておく補聴器です。本体側もコンパクトでスタイリッシュな軽いものが増えています。
補聴器は専門医の指導のもと、最適なものを選定して適切な調整をすることが大切です。自分に適した補聴器を装着することで、聴力の補助が期待できます。
人工内耳のインプラント
人工内耳は、重度から極度の感音性難聴に対して、聴力を改善するための医療デバイスです。自然な聴力を完全に再現するものではありませんが、周囲の音を感じ取り、話し言葉を理解する能力を向上させます。一部では音楽を聞く能力が回復したという報告もあります。
人工内耳を埋め込むための条件は個々の状況で異なるため、医師との相談によって決められます。
おおむね90dB以上の重度から極度の感音性難聴があり、補聴器では聴力を補助できない場合や、聴力の低下によって意思疎通が難しくなっている場合などです。
人工内耳は衝撃や圧力によって故障する可能性があるので、頭部をぶつけたり、潜水などの気圧の影響が変わったりする状況には注意してください。また、人工内耳の種類によってはMRIの一部は利用できません。
低周波や高周波を使用する電気治療も、故障の原因になるため避ける必要があります。静電気にも注意しましょう。
感音性難聴になった場合の仕事上の注意点
感音性難聴と診断された場合、仕事上の安全や配慮を求めるため、自身の状況を上司や雇用主に適切に伝え、必要な合理的配慮を求めることが大切です。
補聴器や人工内耳が一定の聴力改善をもたらしますが、元の聴覚を完全に回復するものではありません。
たとえば、大音量の環境での勤務を継続すると、耳にさらなる負担を与え、難聴を悪化させる可能性があります。さらに、音が聞こえにくいことで安全性が確保できない職種(工場での機械操作や運転職)では、安全上の問題から配置の変更が必要です。
感音性難聴になった場合の障害者手帳の取得
聴覚の低下を理由に障害者手帳を取得する場合は、基本的に両耳の聴力が一定水準を下回っていることが条件になります。そのため、片耳だけの難聴の場合は、手帳が取得できないケースがあります。
ただし、難聴や内耳機能の損傷による平衡機能の障害も認定に含まれるため、医師と症状についてよく相談しましょう。
目安として、6級は両耳の聴力が70dB以上、もしくは片方の耳が90dB以上で、反対の耳でも50dB以上が基準です。
障害等級 | 該当状況 |
---|---|
1級 | 該当なし |
2級 | 両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上(両耳全ろう) |
3級 | 両耳の聴力レベルが90デシベル以上(耳介に接しなければ大声語を理解しきないもの) 平衡機能の極めて著しい障害 |
4級 | 両耳の聴力レベルが80デシベル以上(耳介に接しなければ話声語を理解しきないもの) 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50パーセント以下 |
5級 | 平衡機能の著しい障害 |
6級 | 両耳の聴力レベルが70デシベル以上 (40センチメートル以上の距離で発声された会話語を理解しきないもの) 一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上 |
引用元
身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)
障害者手帳の取得条件などに関しては、詳細を下記ページで詳しく解説しています。
あわせてご確認ください。障害者手帳とは?対象疾患・等級、 受けられるサービスなどもわかりやすく解説!【専門家監修】
感音性難聴は早めに補聴器を装着して、転職も検討に
感音性難聴は内耳機能の損傷によるため、一度発症してしまうと、薬などでは回復しない聴覚障害です。そのため、早めに補聴器を装着して、さらに聴力が低下するのを防ぐのが大切です。
感音性難聴を発症してしまった場合、合理的配慮を求めても、耳が聞こえにくい状況では勤務の継続が難しい職場もあります。その場合は、障害者雇用枠での転職も検討してみてはいかがでしょうか。初めから症状を伝えて、配慮をあらかじめすり合わせしたうえで入社することによって、安心して働くことができます。
実際に、障害者枠で働き始めた方々からは「隠しながら就業していた頃よりも安心して働ける」「配慮をいただきながら働くことに後ろめたさがなくなった」というご感想をいただいております。
DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害をお持ちの方々の生活に有益な情報の発信に努めて参ります。
「今の自分に無理のない働き方をしたい」「症状に理解のある環境で働きたい」というご希望をお持ちの方に対して、就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。
お一人おひとりの状況やご希望に合わせて適切なご提案をさせていただきますので、ぜひ一度ご相談ください。
関連記事
障害を持ちながら生活収入を確保する方法について解説しています。以下の記事も合わせてご覧ください。
障害者の方の2つの収入源を解説|障害年金と障害者雇用について【社労士監修】 │DIエージェント
聴覚障害のある方の仕事や転職については、以下の記事で詳しく解説しています。
聴覚障害者の方の仕事について|仕事探しや働くうえでのヒントなど解説|DIエージェント
早稲田大学卒業後、(株)D&Iに入社。 障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 現在はHRソリューション事業部の副部長として、DIエージェントの責任者を務める。